星廻る杖と魔法科高校の劣等生   作:カイナベル

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第二十話

「そういえば息子さん、例の吸血鬼騒動に首を突っ込んでいるらしいですね」

 

「当然突っ込むだろうな。未知の力を振るい、事実上斬っても問題のない存在だ。首を突っ込まないほうがおかしいだろう」

 

「昔から好戦的なほうだと思っていましたけど、ここ最近余計に好戦的になっていませんか」

 

「親として耳の痛い話だな。もう少し盲目らしく落ち着いて生活してほしいんだが」

 

「彼の周りには特尉がいますからね。彼の存在に引っ張られて好戦的になっているのでは?」

 

「ともあれもう少し落ち着くように今度行っておくか……」

 

「それを行って聞くような子でしたっけ、進君?」

 

「…………そういえば君に頼んでいた息子用のCADの件はどうなっている」

 

「あ、話逸らした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、進は再び夜の町を歩き回っていた。本日はエリカたちは別行動。というよりわざと進がはぐれたというほうが正しいかもしれない。昨日、達也が介入したということは今日から本格的に参戦してくる可能性も高い。となれば彼と獲物の取り合いになる可能性がある。

 

 そう考えた進は通信端末のトレーサーシグナルを切断し、エリカたちからの通信を拒否したうえでシレっと彼女たちの下から姿を消し、夜の町を駆けまわっていた。

 

 しかし、彼らから離れたことが災いしたのか、うまい事吸血鬼の気配を捕らえることが出来ずに二時間をどぶに捨てることになってしまった。なんとなくいやな気配を感じ取ることが出来ているのだが、三勢力の魔法師が同時に跋扈している影響で、ただでさえ薄い気配が余計に薄まりうまく察知できていなかった。こういう時に便利な探知系の魔法を鍛えていなかったことを悔やみながら進は夜の町を駆け巡る。

 

 さらに三十分ほど走ったところで進は微かに闘争の気配を感じ取る。あるかないか、始まっているのかいないのかも不明確なそれであったがそれでもはっきりと闘争が起こると感じ取った進はその方向に向かって走り始めた。

 

 最初の位置から移動し続けている闘争の気配であったが、進の嗅覚はそれを捉えて離そうとしない。嗅ぎ取って十五分ほど走り続けた進は、ついにはっきりと吸血鬼の気配を捕らえることに成功した。無意識のうちに口角を吊り上げた、進はさらに加速し、接触を試みる。

 

 そんな彼の進行を妨げるものが現れる。路地を進み、曲がり角を曲がろうとした進の顔面に向かって躊躇なくコンバットナイフが振るわれる。吸血鬼の気配を追うことに集中しきっていた進は回避のみに集中せざるを得ない。上体を逸らし膝をつきながらスライディングすることで回避した進は進路を切り返すと襲い掛かってきた人物の気配を探る。

 

「貴様、また我々の邪魔を!」

 

 彼に敵意と殺気を向けていたのは昨日、肘を極められ投げ飛ばされたレイチェルであった。彼女は走る進を見つけると自己加速術式で彼の進行ルートに回り込んだのだ。歯をギリギリと鳴らし怒りを表現する彼女は右手にコンバットナイフを左手にサプレッサー付きの拳銃を構えそれらを進に向けている。

 

 躊躇なく拳銃から発射された弾丸を進は素早く立ち上がると、躱せるものは躱し躱せないものを杖で弾く。打ち出された十発の弾丸は、一発たりとも進に当たることなく小気味いい音を立てながら地面に落ちる。

 

「バケモノめ……」

 

 十発の弾丸を傷一つなく魔法未使用で回避した進を、埒外の生物を見るかの目で見たレイチェルは拳銃に残された弾丸をすべて打ち尽くそうと、再び銃を進に向けるが既に彼女の前に進はいない。いつの間にかいなくなっていた進に動揺したレイチェルは、反射的に彼が吸血鬼のもとに向かっていると判断し走るために重心を前に出す。その直後、彼女の胸部に衝撃が走り前に出た重心が強制的に後ろに戻される。

 

 レイチェルの懐で彼女の胸部に肘鉄を打ち込んだような体勢を取っている進は、杖を振りぬき彼女の脇の下を殴りつけた。脇の下は人体急所。肺の中に入っていた空気がすべて強制的に吐き出され、その機能が一時的に低下する。突然の衝撃と肺機能の停止により、呼吸がおぼつかなくなったレイチェルはそのまま地面に倒れこみ患部を抑え込んでいる。二、三十分はまともに立ち上がれなくなった彼女を見下ろした進は、再び吸血鬼のもとに走り始めた。

 

 それから三分。ついでにもう一人、あやしい気配を発している人物の前に顔を出し、襲い掛かってきたその人物を打倒した進は、ついに吸血鬼のもとに辿り着いた進は跳び上がるため、アスファルトが砕けそうなほど強く踏み込む。そして地面と平行に飛び跳ねると吸血鬼と仮面の魔法師の戦闘に介入した。

 

 二人の間に割って入る形で戦闘に介入する進。その姿を同時に視認する仮面の魔法師と吸血鬼。今まで相対していた仮面の魔法師から逃げ出す機会を探っていた吸血鬼は彼の姿を視認した瞬間それどころでなくなり、一目散に逃亡することを選択した。しかし、そんなことを仮面の魔法師、そして進が許すはずもない。

 

 逃げ出そうと背を向ける吸血鬼の足に杖の先を掛けると、それを振り上げ体勢を崩し転倒させる。走り出そうとした勢いでもんどりうって倒れこむ吸血鬼。それに跳びかかろうと重心を低くする進。もう逃げられないと怯えた雰囲気を発しながら進を見る吸血鬼。しかし、進が吸血鬼に跳びかかることはできなかった。

 

 彼の背後で鳴り響く銃声とそれに反応して振り返りながら弾丸を弾く進。続けざまに放たれる三発の弾丸とそれを弾く進。仮面の魔法師は突然乱入してきた進に対し金色の瞳に苛烈な眼光を宿し睨みつけながら、「シット」と小さく呟いている。仮面の魔法師と進、二人の魔法師が相対し、睨み合っている(一方に目はないが)と、彼らに向けられて発砲音が発せられる。ピスリという音とともに発せられた弾丸は進と仮面の魔法師にではなく、逃げ出そうと立ち上がっていた吸血鬼に当たる。その衝撃でぐらりと体勢を崩す吸血鬼であるが、足運びで踏みとどまるとそのまま一目散に駆け出す。

 

 逃がさんという意思のまま、行動を起こす達也と進。CADを抜き放ち分解魔法で打ち抜こうとする達也、オルガノンを起動し、今度こそ撃ち落とすため刃を振り落とそうとする進。だが、残された最後の一人がそれを許さない。

 

 進に向けてダガーを投げつけ、達也に向けて拳銃を向ける仮面の魔法師。その対処に当たらざるを得なくなった二人は発動しようとしていた攻撃でそれを対処する。吸血鬼に向けて振り下ろそうとしたオルガノンの刃を障壁のように自分の前に持ってきてダガーを受け止める。向けられた銃に対象を変更し分解魔法を発動しようとする達也。その途中で銃の構造などの影響で情報体(エイドス)分解の魔法から実体分解の魔法に変化させるといった一悶着があったが、それは一瞬の出来事であった。

 

 分解魔法で打ち出された弾丸を分解した達也は続けざまに、仮面の魔法師を取り巻く情報体(エイドス)の偽装を分解する。その直後、拳銃を構える仮面の魔法師の姿が幻のように溶け、その奥から一校の留学生であるリーナが姿を現す。彼女が自分の姿を視認されたと同時に彼女は五発の弾丸を打ち出すがそれが達也に届くことはなく、すべて塵に分解される。

 

 続けて彼女の持つ銃を分解され、さすがに動揺を隠しきれなくなったリーナ。そんな彼女に対して達也は声を上げる。

 

「よせリーナ! 俺は君と敵対するつもりはないっ」

 

 そんな達也の言葉に進は小さく動揺を見せた。まさか今まで遭遇してきた仮面の魔法師がリーナであるとは思わなかったのだ。もしやとは思ってはいたのだが、彼女の学校での雰囲気と、戦場で見せた雰囲気があまりに違っていたため確信を得ることができていなかった。加えて進の斬る相手の正体なんぞ、別にどうでもいいという意識が確信を得る気がないという方向に進めていた。

 

「え?」

 

 それをはっきりと声に出した進。しかし彼の言葉は二人には届いていない。達也の言葉に青い瞳にキツイ光を宿すことで応えたリーナはスローイングダガーを握り達也に向かって突進する。それを迎撃するため彼女に指弾を打ち出す達也であったが、それはリーナに当たることなくすり抜ける。指弾をすり抜けたリーナはそのままナイフを振りかぶると、スローイングダガーを投げつけた。達也の認識から一メートルずれた場所に飛翔するスローイングダガー。九島家の秘術「仮装行列(パレード)」に毒づく達也。

 

 その一連のやり取りを目の前でやられた進は一瞬考え込む。果たして彼女に対して攻撃を仕掛けていいものか。一応彼女はクラスメイトであり、USNAからの留学生である。加えてスターズの大隊長。そんな彼女を襲って国際問題にならないかと一瞬考えるが、すぐに答えを出す。

 

 「ま、いっか」という無責任かつ適当な答えで結論付けた進は二人に向かって走り始める。それに気づいた二人は同時に彼に視線を向ける。走りながら杖を振り上げ、二人との距離が五メートルのところまで詰めたところで、進は虚空に向かってそれを振り下ろす。達也から()()()何もない場所に杖を振り下ろしただけ。しかし、達也はその意図をすぐに理解した。進が杖を振り下ろした場所にリーナがいる。

 

 完全に自分の位置を理解しているかのように的確に振り下ろされる杖を動揺しながら回避するリーナ。杖を振り下ろした進はそこからさらに踏み込むと手首を返し勢いそのままに切り上げる。佐々木小次郎の燕返しそのままに二連撃を振るった進。リーナは斬り上げを一撃躱しきれずに前髪に二、三本落とす。後ろに重心が移動し、倒れこみそうになる。それと同時に空っぽの立体映像が体勢を崩す。

 

 達也はそこを見逃さなかった。進の攻撃している位置と、立体映像の体勢をすり合わせた達也はリーナの額辺りに本日二回目の指弾を打ち放った。目論見通りにリーナの額を捕らえる指弾。それをうけたリーナは不意に受けたことで「キャン」と雰囲気にそぐわない声を上げながら尻もちをつく。 

 

 その直後で進はCADを操作し、公園全体に領域干渉を発動する。進の領域干渉に塗りつぶされパレードを解除させるリーナは達也に物理的に姿が見える形で彼らの前に姿を現す。

 

「どうして……、どうしてパレードを見抜けるの……」

 

 二人に見下ろされる形で地面に座り込んでいるリーナは進を睨みつけながら胸に抱いた疑問を投げかけた。悠々と彼女の前に立つ進は、隠す理由もないため、彼女の問いに答える。

 

「刺すような気配が漏れ出ていたので。あとは直感で」

 

 進の人外じみた答えに目を見開くリーナ。そんな彼を見て溜息を吐く達也。

 

「進を自分たちと同じと思わないほうがいいぞ、リーナ」

 

「それよりこれ以上斬らないほうがいいですよね」

 

「当たり前だ」

 

 そういった達也はリーナの仮面に手を伸ばす。慌てて立ち上がり距離を取ろうとするリーナであるが、いつの間にか彼女の側面に回りこんでいる進に足を払われ、再び転倒する。左手の指を動かそうとするが進の放った加重魔法で地面に手を縫い付けられる。手が目の前まで伸びいよいよマスクに手がかかったその瞬間、リーナは叫び声をあげる。

 

「アクティベイト、『ダンシング・ブレイズ』!」

 

 彼女の叫びとともに吸血鬼、進に投擲済みのダガーが動き出し、達也に殺到する。二本が右腕、残りの三本が彼の右肩、脚、左腕に向かって飛翔する。急所を外したダガー。当たれば死ぬことはなくても確実に戦闘不能になるだろう。

 

「危ないもの持っていますね、リーナさん」

 

「助かる」

 

 しかし、それは当たればの話である。素早い動きでナイフの飛翔経路に割って入った進はそれを指の間で挟み取っていく。片手で五本のダガーを掴み取った進は、その五本のナイフを空中に投げるとオルガノンを起動、すべて鉄片へ変化させた。そんな彼に一言感謝を告げた達也は再びリーナのマスクを引き剥がしにかかる。高速で飛翔するダガーをすべて掴み取り破壊した進の動きに不覚にも見惚れてしまったリーナは思考が鈍り判断が遅れてしまう。

 

 達也にマスクを引き剥がされついにその美貌を露わにするリーナ。その直後、彼女はその口から絹を裂くような悲鳴を上げる。それに慌てて二人はびくりと肩を揺らした(揺らしただけで別に動揺はしてない)。

 

 本来であればその声を合図として彼女の仲間が現れるはずだったのだろうが、彼らが姿を見せることはない。何が起こっているのかわからないまま、リーナは悲鳴を上げ続けるが仲間が姿を現すことはない。それを横目に見ながら進は落ち着いて遮音障壁を展開し、外界に彼女の悲鳴が届かないようにする。

 

「申し訳ございません。近くにいた怪しい人物でしたら二名ほど倒してしまいました」

 

「手が早いのか。それとも偶然か?」

 

「偶然ですよ。ナイフで突き殺されそうになったので行動不能にしてきただけです。何人いるかは知りませんが、今頃その二人の確認でもしているのでは?」

 

「おそらくそれらしい格好をしているだろうが、進には見えなかったのか」

 

「警官の格好でもしていたんですかねぇ」

 

 進に仲間を倒されたことを知りへたりこむリーナを横目に二人は呑気に会話を繰り広げる。その後遅れてやってきた深雪たちを加えた四人に囲まれ行動をとれなくなったリーナ。四人はそのままこれから彼女をどうするかの相談を始めた。

 

 

 




いやーアニメの進み速いですね。もう来訪者編の二巻の半分ですよ。
……これうっかりダブルセブン編いかねえよな? まあ、書く気ないからいいんだけどさ。

次から書く小説の種類

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