星廻る杖と魔法科高校の劣等生   作:カイナベル

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第二十一話

 リーナが逃げないように取り囲みながら彼女の処遇を話す四人。その最中、深雪がリーナから目を離すといったトラブルがあったが、進、達也、そして達也の体術の師匠で忍術使いである九重八雲に睨みを効かされることで彼女を制止させる。 

 

 その後も訊問でリーナから情報を引き出そうとする達也。それに対して反骨心を見せるリーナ。話が平行線をたどろうとしたところで達也が一つ提案するのだった。

 

「リーナ、フェアに取引と行こう。一対四がずるいというなら、一対一で勝負と行こうじゃないか。君が勝ったら今日のところは見逃すことにする。その代わり、俺がかったら訊かれたことに正直に答える。これでどうだ?」

 

 しかし、達也の提案はリーナに対して何のメリットもない。自分の正体は知られたままであり、敗北すればすべてを正直に話さなければならない。彼女を取り囲んでいるのは一対一でも勝利できるかどうか怪しい人物だけである。全く釣り合っていないものであった。しかし、彼女に断ることはできない。これを断れば少なくとも絶大な戦闘力を持つ兄妹二人と、最悪の場合囲まれている四人を同時に相手取らなければならない。このほうが最悪である。

 

「……わかったわ」

 

「あ、じゃあ私が……」

 

「待ってください! お兄様、リーナとの勝負は私にお任せくださいませんか?」

 

 リーナが提案を飲むと同時に進が対戦相手を立候補しようとするが、それを遮る形で深雪が口を開いた。彼女の口から飛び出したのは兄に対する深い愛情と自らの完全勝利を告げる不遜な言葉だった。それに対して敵愾心むき出しで応答するリーナ。そんな二人に意識を向けながら唇を尖らせている進をなだめるように達也は肩を叩く。

 

「悪いが今回は深雪に譲ってもらうぞ。相手は今度してもらえ」

 

「こういう時じゃないと本気でやってもらえないじゃないですか」

 

()()を本気で使うつもりか?」

 

「意外と繊細な使い方もできるんですよ。一つだけでもかなりの威力はありますしね」

 

 バチバチと火花を散らせている二人を他所に緊張感のない雑談を繰り広げる達也と進。その二人に気配をスススと近づいていく八雲。彼が二人の背後一メートルのとこまで近づいたところで二人は示し合わせたようにぐるりと体を回転させる。

 

「どうかしましたか師匠」

 

「おおう。二人ともぴったり振り向かないでくれよ。びっくりするじゃないか」

 

「背後に回られたらそっちに意識が向くのは当然でしょう」

 

「いやはやどちらもすごいね。ある程度手を抜いていたとはいえバレるような気配の消し方をしているわけじゃなかったんだけどね。いやいや、風間君の息子はまだ一度もお目にかかったことがなかったからね。一度お目にかかってみたかったのさ」

 

「ああ、あなたが父の師匠である九重八雲様ですか。初めまして、風間進といいます」

 

「んー、丁寧なあいさつどうもありがとう。それにしても君の持つその杖、やっぱり特異な気配を発しているね。オーパーツに近いのかな?」

 

「研究者の方々が言うにはそうらしいですね。現代技術じゃ再現不能なものらしいです」

 

「まあそれはそうだよねぇ」

 

 その後、二人の戦いのために場所を移す五人。進は八雲とともにリーナを挟み込むような形でモーターセダンに腰かけている。しんと黙り込み車が止まるのを待ち続ける進。その最中、リーナから緊張の高まりが感じられ少しだけ緊張感を高め、杖に手を掛ける。

 

「大丈夫だよ進君。彼女が僕の行動を勘違いしただけだよ。だから杖に手を掛けないでくれ」

 

「だったらいいんですが。勘違いされるほうが悪いのでは」

 

「まあ、そうかもしれないけどね。僕にはそんなつもりはないんだよ」

 

 気楽な口調で会話を繰り広げる二人の間で縮こまっているリーナ。黙り込んでいるだけの状態が辛くなった彼女はこんな状況であるにもかかわらず情報を引き出そうと口を開く。

 

「ねえ、シンの持ってるその杖、話に聞く感じだと普通の杖じゃないみたいだけどそれは一体何なの」

 

「んー、話してもいいんですかね。まあ困ることでもないので大丈夫でしょう」

 

「いいのかい。結構すごいものだと思うけど」

 

「まあ、話したところで特にせんのない事でしょう。父にも口止めしろとは言われていませんし」

 

 八雲の忠告に対してゆるゆると返答した進は、一瞬口をつぐむと杖について話始める。

 

「そうですね。この杖はオーパーツのようなものらしいのですが、魔法じゃない方法で刃を出して斬りつける攻撃が出来るんです。杖の方も仕込み杖になっていまして」

 

 あっけらかんとした口調で杖の詳細を話した進。それに対してリーナが愕然とする。オーパーツとなれば世界中の軍事機関が喉から手が欲しいほどに貴重なものであり、秘匿すべき情報である。それをあっさりと話すなど本来であればあり得ない事なのだ。

 

「やっぱり話さないほうがよかったんじゃないかい。リーナ君があっけに取られているよ」

 

 八雲の言葉でリーナは現実世界に帰還する。が八雲の言葉を聞きながら、進は続く言葉とともにあっさりと流してしまうのだった。

 

「大丈夫でしょう。使おうとすれば死ぬかもしれない杖なんて使いたくないでしょう?私も目を失いましたし」

 

 進の言葉で車内が静まり返る。その直後、三人を乗せたセダンが停車する。セダンの止まった場所は都内の河川敷でライトがなければ何も見えないほどに真っ暗な場所であった。

 

 河川敷に五人に集結するとリーナと深雪の二人が再び火花を散らせ始める。

 

 八雲を審判として二人の試合が始まった。先制し深雪に攻撃を仕掛けようとするリーナであったが彼女の攻撃は深雪が速度を優先させた攻撃によって出鼻をくじかれる。それに歯を噛み締めたリーナは気持ちを切り替え自己加速術式で深雪の側面に回ろうとする。

 

 しかし、深雪はわかっているかのようにリーナを意識上で捕らえると彼女の得意とする減速魔法を発動し、リーナを自分の領域に引き込もうとするが、リーナは何とか踏みとどまり次に備えて思考を整える。

 

 彼女を引き込めなかったことをすぐに理解した深雪は減速魔法を解除することで押しとどめられていた空気を放出させる。爆風と同義の威力で放たれた空気を魔法の多重発動で堪えたリーナは武装デバイスを取り出し、それを振るいそれを引きつけると、直後に進たちに対しても使ったダガーで奇襲をかける。それを深雪の全周防御用の魔法で受け止めるとダガーにかけられている運動をかき消してしまった。

 

 そんな二人の高度な攻防を見届けた進と八雲は声を上げる。

 

「すごいですねぇ、あの二人。私にはあんなに高度な戦い出来ません」

 

「そうなのかい。魔法力だけなら君もできそうだけどねぇ」

 

「目が見えなくて攻撃魔法がうまくできないんですよねぇ。最近はなんとなくましになってきているんですが」

 

「二人とも呑気に話をしていないでください。来ますよ」

 

 達也のふたりをたしなめるような言葉と同時にリーナと深雪の大魔法が発動される。晶光煌く氷雪の世界と、雷光瞬く炎雷の世界で世界が塗り替えられ、地獄が発生する。深雪の放った「ニブルヘイム」とリーナの放った「ムスペルスヘイム」はお互いにぶつかり合いながら世界を塗りつぶしあう。

 

 しかし、時間が経つにつれてどちらが優勢であるかが明白となっていく。冷気の世界がじわじわと勢力を拡大していき、プラズマの世界は徐々に勢力を弱めていく。深雪は広範囲を制圧することに長けた魔法師であり、リーナは単体に対して魔法を作用させることで絶大な効果を発揮させる魔法師。ならばこの戦いでどちらが有利であるかはもはや明確であるだろう。

 

 それを理解しているリーナも悔しそうに声を漏らす。そして彼女は背中に収められた武装デバイスに手を伸ばした。この状況で他の武装デバイスを使うことは自殺行為。実質的にこの世界の塗りつぶしあいに敗北したといったようなものだった。彼女の実質的な敗北宣言と同時にこの戦いが成立しなくなったと判断した達也は手に握るCADの引き金を引き二人の発動している魔法式を消し飛ばした。

 

 彼が引き金を引くと同時に制御されていた冷気と炎雷が瞬く間に弾け、矛盾した二つの空気が達也に襲い掛かろうと迫りくる。それは隣で観戦していた進にとっても同じ。このままでは自分もまきこまれると判断した進は、オルガノンを発動させ、ブレードで自分と達也、八雲たちと空気を隔てるように壁を作った。それと同時に達也の前に不可視の障壁が張られ、進のブレードともに手厚く防御される。

 

「お兄様、何て無茶をなさるのですか!」

 

 彼の前に障壁を張った深雪が悲痛な叫びをあげながら駆け寄ってくる。その後ろでは進のブレードの後ろで腕を組みながら眉間に皺を寄せていた。

 

「いやはや達也君、これどうするんだい?」

 

「師匠……、どうする、とは?」

 

 八雲の苦言は深雪とリーナの勝負をぶち壊してしまったことに対してのものだった。この勝負には一対一であることが条件であり、達也が介入することでその原則が崩れてしまったのだ。勝負が成立しなくなってしまい、リーナとの条件も成り立たなくなってしまう。自分のやったこととはいえ、どうやってこの事態を収束させるか悩む達也であったが、救いの手は意外な場所から向けられる。 

 

「ワタシの負けでいいわ」

 

 リーナが自らの敗北を認めたような言葉を発する。あのまま続けていればリーナが負けていたのは明白であったからだ。そのことを客観的に理解していたリーナは無駄な悪あがきをすることなく、そのことをはっきりと認めた。 

 

 しかし、敗北を認めることと条件をそのまま飲み込むことはなかった。

 

「ただし、答えは『イエス』か、『ノー』よ。それで答えられない質問には答えないから」

 

 達也が介入したことを餌に条件の変更を突きつける。達也としても介入したことに負い目があるため、ノーとは言えない。敗者と思えないほどのいい笑顔を浮かべるリーナに対して達也は頷くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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