星廻る杖と魔法科高校の劣等生   作:カイナベル

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第二十二話

 リーナと深雪の対決を見届けた次の日、進は日曜であるにもかかわらず学校に呼び出しを受けていた。呼び出し主は司波達也。呼び出しの理由はパラサイトの捜索に関しての情報を共有するため。レオが遭遇した一件から幾度となくパラサイトに遭遇した進は現状で最も情報を持っていることになる。そんな彼から情報を聞き出さないわけにはいかない。

 

 呼び出しを受けた進が約束の生徒会室に入るとそこには既にエリカ、幹比古、克人、真由美、達也、深雪が勢ぞろいしている。どうやら進が一番最後の様だった。全員がそろったことを確認した達也は全員に着席を促し、情報共有の話し合いを始める。

 

「昨晩、三時間おきに特定パターンの電波を発信する合成分子機械の発信機を吸血鬼に打ち込みました」

 

 早速達也の口から飛び出した爆弾発言に進を除いた四人から少なからず驚きの感情が漏れ出す。どこでそんな高度なものを入手したのかという疑問などが主であるがそれはさておき。達也としては念のための手段であったのだがとんだ計算違いで使わざるを得なくなったのだから。まさか、進が乱入してきて戦闘をかき乱していくとは思わなかったのだ(とはいえ、進のおかげでリーナとの戦闘が楽になったのは本人も否定できない事実である)。

 

 驚きからか悔しさからか真由美やエリカから声が漏れる中、達也は言葉を続ける。

 

「我々が追いかけている吸血鬼の正体ですが、USNA軍から脱走した魔法師のようです」

 

 達也の一言で四人が議論を深めていく中、進は一言も話さずに黙り込んでいた。わかっていないのではなくあえて何も話さないでいたのだ。これはこの後さんざんじゃべられることに対しての予感だったのかは本人にも分からなかった。

 

 自分の持っている情報をすべて出した達也は後のことを五人に任せて深雪とともに退室しようとする。それを見送った五人は別の話題に移る。

 

「それでは風間。お前がパラサイトと遭遇した時の話を聞かせてもらおうか」

 

 話を切り出したのは克人。色々とかみ合っていない場の面々を慮っての措置だったかは知らないが、それでも話を始めやすくなる。克人の一声できっかけのできた進は、パラサイドと遭遇した時の状況を話始める。

 

「では最初に遭遇した時、はもうお知りになられていると思うのでその次に遭遇した時の話を」

 

 進はパラサイトと交戦した際の話を始める。その話に介入する形でエリカたちの補足が入り、非常に滑らかに話が進む。しかし、生徒会室の雰囲気が良くなることはなく相変わらず重い雰囲気であった。

 

 そんなことを気にも留めずに進は昨日の交戦状況を話始める。

 

「次に昨日の交戦状況を」

 

「待って。昨日パラサイトを見つけていたの!?」

 

 進の言葉を遮る形でエリカから横やりが入る。それも当然と言えば当然である。昨日いきなりいなくなったかと思えば、パラサイトと交戦したとなれば突っ込みを入れざるを得ない。

 

「ええ、パラサイトと赤髪の魔法師の戦闘に介入する形で交戦しました」

 

「それって確か達也君も交戦していたパラサイトだったわよね」

 

「そばでは達也さんも機会をうかがっていたみたいですね」

 

 達也並みの爆弾発言を明け透けとした態度で伝える進。エリカはいらだったような視線で進を睨み、真由美はその奔放さに溜息をつく。幹比古はさらに悪化した雰囲気に胃を痛め、克人は特に動じない。

 

「それで交戦したのですが……、あれはもうダメですね。さんざん叩いたせいで私を見ると一目散に逃げだすようになってしまいました」

 

「未確認の存在を相手にそこまでやったの……」

 

 さらなる追撃に真由美は呆れたような、ドン引きしたような声を上げる。未だに進を睨みつけていたエリカは不満げに頬を膨らませている。そんな二人を他所に進は話を続ける。

 

「十文字さん。私も捜索に加わったほうがいいでしょうか?」

 

「いや、これは本来十師族と警察の問題だ。これ以上一般人が関わる必要は無い」

 

「わかりました。では私は独自に動いて」

 

「いや、じっとしておいてくれ。お前が動くとこちらの計画に誤差が生じかねない」

 

「うーん、いまいち納得いきませんがわかりました。()()()家でおとなしくしておくことにします」

 

 克人と怖いもの知らずのやり取りを終えた進は、立ち上がると自分の持っている情報をすべて伝えたことを伝え、生徒会室を後にした。その時、幹比古が助けを求める視線と、エリカが何かを訴えるような視線を向けていたがそれに進は気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わざわざ日曜日に出てきてただで帰るのを嫌った進は、剣術部に顔を出す。剣術部の面々のバチバチとした気配を感じ取りながら進は手始めに桐原達剣術部十人をメタメタにした。十人がかりでも傷一つ追わせることが出来ないふがいなさを感じながら、十人がかりであれば何とか相手をできることに自身の成長を感じる桐原達。以前の彼は二十人でかかっていって傷一つ追わせることが出来ずにボッコボコにされた過去がある。それを踏まえれば二分の一の人数である程度戦えるようになったのは成長だろう。もう彼らに大人数でかかっていって恥ずかしいなどという気持ちはなく、ただひたすら進の技術を盗みたいという気持ちでいっぱいだった。 

 

 のされた桐原達を移動させた進は、次は残った剣術部の面々に顔を向けた。次は俺たちかと溜息を吐きながらもどこか嬉しそうにしている彼ら。しかし、彼らが進の相手として戦うことはなく、体育館に音を立てて入ってきた人物によって妨げられる。

 

 バタンと快音を立てながら体育館に乱入してくるエリカ。その表情は非常に不満げであり、余計なことをいえば斬ると言わんばかりの殺気を放っていた。これには体育館にいる一部を除いた面々は笑うこともできずに縮こまる。今のエリカは怒り心頭。いつの間にかいなくなっていたかと思えばパラサイトと交戦していたという進に振るえるほどの怒りを覚えていた。

 

 礼もなしに体育館に足を踏み入れたエリカはどたどたとわざとらしく足音を立てながら進に歩み寄っていく。足音の正体がエリカであることに気づいた進は黙って立ち尽くしている。二人の距離が手を伸ばせば届くところまで近づいたその瞬間、エリカはスカートであることを気にせずに足を大きく振り上げる。そして、その足を進の脛めがけて振り下ろした。色男であればこの一撃を反省の一撃として享受するのであろうが、進には反省など一切ない。振り下ろされた足の前に自身の足を差し出すと、彼女の蹴撃を受け止めた。彼女の足を傷つけないようにクッションのようにして使うことを忘れていない。

 

 しかし、エリカの怒りは収まらない。降ろした右手を斜め下から顎めがけてアッパーのようにして振り上げる。同時に左手を進の腹部に向かって突きだす。しかし、この二つの同時攻撃も進は余裕のある様子で受け止め防御する。

 

 両腕を抑えられ、思うように行動をとれなくなったエリカは進の手を振り払おうとするがここで離せばまた攻撃が飛んでくることが分かっている進は離そうとせず、逆に握る力を強くする。逃げられないと悟ったエリカは肉体攻撃をやめ、言葉での口撃に移行する。

 

「ねえ、アタシたちって足手まとい? あたしたちだってそこまで弱くないわよ」

 

 エリカの怒気のこもった言葉に受け流した進は彼女の納得できるような言葉を選びながら問いかけに応える。

 

「いいえ、エリカさんは十分強いですよ。昨日のは単なる私のわがままです。決して足手まといなんてことは」

 

「でもトレーサーシグナル切ってたってことはやっぱり邪魔だったんじゃないの」

 

「まあ、確かにそうかもしれませんね」

 

 この言葉が発せられた瞬間、「頭数減りますし」という進の補足を断ち切るように、エリカの「バカ!」という罵倒のオマケつきの頭突きが進の胸部に直撃する。両腕でエリカの両腕を抑えていた進は咄嗟の防御を取ることが出来ずに彼女の頭突きを受けてしまう。幸い大した威力でなかったが痛みに悶えるということはない。逆に頭突きをした張本人が少々痛がっている始末である。患部をさすりたくてもさすれないエリカは先ほどの勢いが嘘のように落ち着き、怒気の薄れた声で進に要求を告げる。

 

「もう何もしないから離してくれる?」 

 

 進は彼女の言葉を信用して手を離した。直後、進の脛に衝撃が奔るが非常に弱い一撃であり、約束を破ったと追及するのもあほらしいほどの一撃であった。

 

「……そうよね。進君を制御しようとする私たちがバカだったのよね。自由にやらせておけば自然と結果出すんだから勝手にやらせておけばよかった。……なんかさんざんやりたいことやったらだいぶすっきりしたわ」

 

「ならよかったです。後にしこりが残るのは厄介ですから」

 

「あんたのせいよ!」

 

 進の煽るような口調を聞き、エリカは再び怒りを覚え進の足に踏みつけを放つ。それを足を引くことで回避する進。「一度くらい黙って食らったっていいじゃない」と思うエリカであるがそんなことを行っても彼が聞かないことを彼女は知っている。もう何も言うことはない。

 

「それに初めて進君に一撃加えられたからね。今回はそれで許してあげる」

 

「そういえばエリカさんから攻撃を受けるのは初めてでしたね」

 

「それじゃ今日もやりましょうか」

 

「そうですね。まあその前にこの空気をどうにかしたほうがいいかもしれませんが」

 

 進に言われてエリカは周囲を見回した。周りにいる面々はどこか妙な、具体的には甘ったるい雰囲気を放っていた。突然乱入してきて進に攻撃を加えるエリカ。二人のやり取りは傍から見て痴情のもつれに見えても不思議はないのだ。桐原と壬生という前例がある以上、この二人がそういう関係になってもおかしくない。そう考えたうえで彼らはそういう空気を発しているのだ。

 

 しかし、エリカはこの空気を訂正しようとはしなかった。人の噂も七十五日というしどうせいつか消えるものだと考えている。この空気などどこ吹く風でエリカは進との試合を始めようと許可を取るために駆け出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、登校した進はリーナと顔を合わせるが特に気にした様子もなく授業を受ける。最もリーナの方は進のことをどことなく警戒しているそぶりを見せていたが、進がそれを気にするそぶりはない。そんな感じでつつがなく日常が進み、昼休みになる。特にエリカや達也たちから呼び出しを受けていない進は、いつものように校内を散歩し始める。

 

 しばらく歩き続け、そろそろ腰でも下ろそうかと思ったその時、彼の直感が校内に侵入する妖しい気配を察知する。幾度となく捉えたその気配、三度も逃げられたパラサイトのものであると直感した進はまだ薄いその気配を辿りパラサイトのもとへ走り始めた。

 

 

 

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