星廻る杖と魔法科高校の劣等生   作:カイナベル

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第二十四話

 進の身体がパラサイトに乗っ取られかけてからおよそ二週間が経過する。彼はその間一切学校に顔を出さず、どこかへ行ってしまっていた。パラサイトに取り憑かれかけ、心臓を貫いた光景を目の当たりにしていた、友人代表のエリカや幹比古が心配して彼の自宅を訪れたが、どこかへ行ってしまっているのか全く応答がない。携帯端末にメッセージを送っても帰ってくることはなく、まさに音信不通の状態になっていた。まさか、という悪い知らせを頭の一辺で思ってしまった彼らは何もできないまま、二週間という長い時間を過ごしていた。

 

 そんな中であった。進が何もなかったかのように学校にやってきたのだ。最後に一校の面々が姿を見たときの殺気に満ち満ちて、顔を見ることすらできなかったあの時と違い、以前のような薄ら笑みを浮かべており、感情が読み取ることが出来ない。同じクラスであの事件に関わっていた深雪がその姿を見たとき、うすら寒い感情を覚えたとのことである。

 

 さて、彼が学校にやってきたと聞いて黙っていない者たちがいる。昼休みになってすぐ教室を出た進の前に立ち塞がる人物たち。

 

「進。ちょっと付き合ってくれ」

 

 達也とそれに付き従う深雪が散歩に出ようと教室を出た進を呼び止める。顔を合わせづらい進としてはあまり気が乗らなかったが、説明の義務があるというのも納得していたため素直に従い、案内された小教室に入る。

 

「では改めて感謝と謝罪を。達也さんのおかげで捨てるはずだった命を拾うことが出来ました。そして申し訳ありません。私の意思でないとはいえ、杖の攻撃を達也さんたちに向けてしまいました」

 

「謝意は無用だ。進なりにパラサイトを排除しようとした結果でしかない。恐らくお前も仕留めきったと思ったんだろう」

 

「そういってもらえるといろいろとありがたいです」

 

 あえて先に言葉を発した進に続いて言葉をつづける達也。二人のやり取りは本題に入る。

 

「まず、身体の調子はどうだ?」

 

「いいか悪いかで答えるならば、相当快調ですね。これもパラサイトに寄生されかかった副作用というやつなのでしょうか」

 

 進の言葉に反応した達也は精霊の眼で進のことを確認する。そこに移る情報には進の身体にパラサイトの一辺が取り残されているというのものだった。

 

「進、お前の身体にはパラサイトの欠片が残されている。体の調子が以前と違っているのはその影響だろう」

 

「そうですか。恐らく心臓を貫いた際に肉体の一辺を切り落としてしまったのでしょう。その影響で残ってしまったのでしょうか。……ということは最近妙なものが認識できるのも副作用でしょうか」

 

「何、どういうことだ?」

 

「パラサイトに寄生されかかった直後くらいからでしょうか、世界が想子の輪郭で認識できるようになったんです。精度はさほど高くありませんが人も輪郭で捉えることが出来るようになりました」

 

 そのことを聞き、達也は思考を始める。パラサイトに寄生されかかったことで進の肉体に変化が訪れ始めており、それと同時にそれは彼が半分パラサイトのような存在になっていることを示している。このまま放置するのは危険度が高いが今の彼にはどうこうできる力はない。

 

「……パラサイトに寄生されかかって、結局されなかった人間というのは前例がない。体に妙なことが起こればすぐに知らせてくれ」

 

「ええ、パラサイトになった時には形も残らないほど消し飛ばしてください」

 

「まあ、最終手段としてそうすることにする。それよりこの二週間何をしていたんだ? エリカたちが心配していたぞ」

 

「力不足を感じたので時代遅れですが、知り合いの山で山籠もりを。肉体に変化もあったので好都合でしたね」

 

「あとでエリカたちにもあっておくといい。何を言われるかはわからないがな」

 

「一言二言お小言をもらうくらいは覚悟しておきます」

 

 ハハハと自嘲するような笑いを発する進。

 

「時間を取らせてすまなかったな。これで失礼する」

 

 小教室から出ていく達也を見送った進も小教室を後にし、さあ、散歩をしようと歩き始める。が、その直後首根っこを掴まれ小教室に引き戻される。

 

 小教室に引き込まれた進は、そのまま教室の奥まで引きずられると引き倒される。引き倒された進の前にはいわゆる怒髪天の様相であるエリカが立っていた。腕を組み怒りを表現している。

 

「えっと、エリカさんであっていますか?」

 

「そう。エリカさんであってるわ」

 

 エリカは口調だけ聞けば穏やかに捉えられるかもしれないが、その実、声のトーンは非常に低く込められた怒気は周りの空気を重くしていく。

 

「あの時いきなりいなくなったかと思えば、二週間音沙汰なしなんてずいぶんなことよ。ねえ、進くん?」

 

 エリカは思いの丈を怒りの声とともに吐き出すと進に詰め寄っていく。しかし、詰め寄られる方はいたって冷静、彼女の怒りを受け止めると冷静に応対する。

 

「いやぁ、あんな無様をさらして顔を合わせづらかったもので」

 

 軽薄に見える笑みを浮かべながら応対する進に、さらにボルテージを上げそうになるエリカであったがここで声を荒げたところでどうにもならないことはそれなりの付き合いでわかっている。心で煮えたぎる怒気を抑え込むと冷静を装って口を開いた。

 

「そう。どうせ言ってもどうにもならないだろうしもういいわ。それより体のほうはどうなの?」

 

「問題ありませんよ。今日からまたやりますか」

 

「もちろん。二週間取り返す勢いでやるわよ」

 

「それは難しいのでは……」

 

 進とのやり取りで満足気な笑みに変わったエリカは小教室を後にする。それに続くように進も小教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あぁ~。歩きたくない」

 

「見るからに辛そうですね。やっぱりオーバーワークですよ」

 

 エリカはまるで屍のような足取りで通学路を進とともに歩いていた。あの後、進に対抗魔法を教わったエリカは自分のサイオン量と相談することなく、無鉄砲に特訓を続けたため、身体的に疲れ果ててしまっていた。ふらふらとおぼつかない足取りで歩いており、いつ倒れるか、進は気が気ではなかった。

 

「送っていきましょうか?」

 

「んー……。進くん、新しい魔法開発しちゃうなんてね。そんなに成績よくないのに」

 

 進の問いかけにエリカははぐらかし、肝心なところは何も答えない。寝ぼけているかのようなふわふわとした言葉の中に見える一本の針で突かれるような感覚を覚えた進であったが何も言わない。

 

 エリカがここまで疲弊しているのには訳がある。一つは単純なオーバーワーク。二人は二時間近くほとんど休憩も入れずに戦い続けていた。魔法も織り交ぜての戦闘であるため、その疲労度は普通の運動とはけた違いである。むしろ平気そうな顔で歩いている進がおかしいのである。

 

 もう一つが進の新しい魔法にあった。術式斬壊、想子で作り上げた剣で自分に迫る魔法式を切り裂き破壊するというものだ。進と同じ剣士であるエリカがこれに目を付けないはずもなく。彼女は進から話を聞くとすぐに練習を始め同時に特訓に導入したのだ。

 

 しかし、これが大問題であった。進は術式斬壊をほぼ感覚でやっているに近い。起動式自体はあるが想子を圧縮するとか感覚でできるでしょという他の魔法師に聞かれたら助走をつけて殴られるような精神でやっている。それをいきなり練習とはいえ実践に組み込むなど無茶である。案の定、できない魔法に集中力を奪われそれでもその魔法に力を入れるエリカは自分の体力以上のオーバーワークに走り歩くのもやっとのところまで消耗していた。

 

 その直後であった。エリカは何かに躓いたように足元をもつれさせると、そのまま前のめりに倒れこむ。疲れで動きが鈍っているのか、動作が緩慢で前に出そうとする手も非常に遅い。このままでは地面に顔面から落ちることになると判断した進は彼女の腰に手を回し倒れこむ彼女を支える。

 

「……今日は送っていきますね。一人で帰すのはあまりにも危険ですので」

 

「ん~? じゃ、お願い」

 

 そういうと彼女はゆっくりと体を起こし再び緩慢な動作で歩き始めた。進の手を借りずに歩き続けるのは彼女の武人としての意地なのだろうか。

 

 キャビネットに乗り込み、千葉家の最寄り駅に向かった二人はキャビネットを降りる。そこに着くまでの時間で多少回復したのか、エリカの動きに精彩さが戻ってくる。そこから先はさすがにトラブルの起こる余地のない近さ。ここまでで十分だと判断したエリカは一人で千葉家に向かって歩き始めた。

 

 その背中を見送ろうとする進。しかし、エリカは歩き出してすぐに立ち止まると思い出したようにくるりと振り返ると進の元へ戻ってくる。そして珍しく小脇に抱えたカバンから綺麗に包装された何かを取り出した。

 

「ハイ。義理だけど一応ね」

 

 エリカから突然手渡されたものに進は困惑する。年に一回の行事などこの男が覚えているはずがない。故に今日が何の日かも全く把握していない。彼の様子を見てそれを察したエリカは少しばかり声を荒げ、今日が何の日かを伝えた。

 

「バレンタインよ、バレンタイン。いつも稽古つけてもらっているし感謝の気持ちをね」 

 

 エリカは進に感謝の念を抱いている。さんざん試合を行いそこで手に入れた技術は確実に彼女のものとなっている。これは紛れもない事実であり、自他ともに認めるものであった。今日のことも含めて感謝してもしきれない彼女は彼にだけチョコを手渡した。まあ、別の念がないのかは彼女のみぞ知ることではあるのだが。

 

「ああ、そんな行事ありましたね。すっかり忘れてました」

 

 エリカの言葉でようやく今日が何の日かを理解した進はエリカに差し出されたそれを手に取り静かに受け取った。それを手に持った進は頬をほころばせながら言葉を紡いだ。

 

「それにしてもバレンタインに何かをもらうのは初めてですね」

 

「そうなの? 結構もらってたと思ってたわ」

 

「私こんななので女子が引いて近寄ってこなかったんですよね。昔は下駄箱なんて文化もあったらしいですが、そんな文化は廃れてますし」

 

「ふーん、ま、いいわ。渡せたし私はこれで」

 

 チョコを手渡したエリカは即座に踵を返しその場を後にしようとする。進はそれを引き留めることなく彼女の背に言葉を投げた。

 

「ありがとうございます。大事に食べさせてもらいますね」

 

 その直後、エリカは躓いたように体をよろけさせる。やはり、と思った進であったがエリカに拒否されてしまう。ふらついた足取りで歩いていくエリカの背を見送る進は、一抹の不安を覚えながらもそのままキャビネットに乗り込み、自宅近くの最寄り駅に向かった。

 

 翌日、エリカに馬鹿正直にチョコの味の感想を告げた進によって、珍しくエリカがいじられる側に回るという状況が出来上がることになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 




 次回はいきなり最終決戦に跳びます。理由は書くことがないから。
 青山霊園のところはかけるような気がすると思いますが、進を入れたら彼一人で全部が解決しかねないので書きません。ここでパラサイトを渡さないで確保してしまうと後々面倒なことになりかねないので。
 では次回で来訪者編は最後になります。来週までお待ちください。

次から書く小説の種類

  • PSO2×ダンまち
  • 東方×仮面ライダーオーズ
  • ワールドトリガー
  • あべこべ小説
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