今回から九校戦編突入です。(とはいってもその前に一つありますが)
進は一体どんな活躍を見せるのか。
それではお楽しみください。
*誤字脱字報告ありがとうございます。速さ重視で投稿前に読み返しはしていないので、修正は皆さんにお任せします。もちろんミスしないようには心がけますが。
第六話
一高襲撃事件が解決して平和が訪れた一校の時の流れは速く、いつの間にか七月に突入しようとしていた。そんな中、体育館で相対する進とエリカの二人はそれぞれ自分の得物を持ち、その間には達也が立っている。ギャラリーとして二人を囲むのは剣道部と剣術部の面々。その中には壬生と桐原の姿もあり、変わり種では摩利や真由美の姿もある。
「ではルールを確認する。魔法あり、直接攻撃ありで一本取るまでの勝負、ということだな。審判は俺が務める」
二人は模擬戦をするために体育館で向かい合っていた。二人は模擬戦の約束をしていたが、約束したのは四月。現在は七月に入ろうとしている。ここまで遅くなったのは、単純に互いに事情で予定を作ることができなかったためである。
ギャラリーは二人の戦いの行方をざわつきながらもじっと見守っている。あちこちでどちらが勝つかの予想もされていた。壬生と桐原、それに近づいた摩利と真由美も例にもれず、予想を立てている。摩利と紗耶香はすでに和解しており、積極的に話すような関係ではないものの、会えば話をするような関係になっていた。
「三人は、どちらが勝つと思っているのかしら?」
四人の中で唯一剣の経験がない真由美が三人に問いかける。直後ノータイムで答えが返ってくる。三人ともすでに自分の考えがあるようだ
「私は正直、どちらが勝つかわからない。何分、どっちの剣技も知ってしまっているが故に判別つけがたいというのが本音だ。強いて言うなら……、エリカのほうかな。視覚っていうのは重要だからな」
「私もエリカですね。友達として勝ってほしいっていうのもありますし。何より、本当に強いですから。戦った私が保証します」
「逆に俺は進ですね。純粋な剣技であれば、おそらく全国でも十本の指に入ると思います。それに彼の身体捌きはハンデ差を打ち消すレベルで高いですから」
真由美は三人の意見を聞き、うんうんと唸る。エリカの剣の実力は非常に高い。それは千葉家の名に恥じないレベルにある。が、進の実力もまた高い。剣術で都大会優勝の名も決して伊達ではない。そのせいでオッズは半々程度になっていた。
二人の間から離れ、所定の位置に着いた達也は腕を上げ、合図を出す。最初は二人とも動かない。得物を持ったまま、固まっている。ギャラリーはその様子を緊張感を持って見守っていた。すると、進が口を開く。
「先手は譲りましょう。どうぞお先に攻めて来なさい」
その言葉を聞き、エリカは体をかがめ、突進の体勢を取る。
「それじゃ、お言葉に……、甘えてっ!」
エリカが弾丸のように飛び出し、手の警棒型の法機を進の腹部に打ち込む。が、進は予想していたかのように杖で受け止める。一連の行動に周りから「おお」と感嘆の声が上がる。
すぐさまエリカは自己加速術式を発動し、進の背後に回り、頭部に一撃を打ち込む。が進はエリカに背を向けたまま、上段の一撃を難なく受け止める。間髪入れず、側面、前方、背後に回り、連撃を打ち込んでいくが、進はすべての攻撃を受け止め、流し、捌いていく。エリカの苛烈な攻撃と進の防御技術にギャラリーは興奮し、歓声を上げる。摩利はエリカの攻撃で自分がしごかれた記憶を思い出し、身体をブルリと震わせる。それと同時にその攻撃をさばききれる進の技量にも驚愕していた。
進がテロリスト相手にあそこまでの大立ち回りができたのは、彼らが毛が生えたような素人だからと思っていた。しかし、進はエリカの質の違う波状攻撃に難なく対応している。しかも息一つ切らさずにである。進の技術の高さに改めて舌を巻いた。
エリカは一度引き、体勢を整えるとともに思っていたことを進に問いかける。
「ねえ、なめてるの?魔法もそうだけど、一歩もそこから動かないなんて」
エリカの問いかけに進は杖の石突を地面に突き立てる。そして問いかけに対して答えた。
「だと思うのでしたら、動かせるように努力していただけますか?」
進の皮肉交じりの言葉にエリカの内心腹を立てる。試合の最中であるにもかかわらず得物を下ろしたことにも同様だ。エリカは表情を不機嫌そうに変え、再び進に突撃する。先ほど以上の苛烈な攻めを仕掛け、法機を打ち込んでいくが、それでも進を動かすことができない。
あまりの防御の硬さにエリカは無意識のうちにむきになり、意地になって防御を崩そうと攻撃し続ける。それは攻撃が単調になり、徒に体力を消耗させた。それに気づいたエリカはいったん息を整えるため、進から距離を取ろうと試みる。が、その隙を進は見逃さなかった。
エリカの重心が後ろに傾いたところで、進はエリカの足の間に自分の足を差し入れ、一気に自分のほうに引き寄せる。いわゆる足払いに足を取られたエリカは派手にしりもちをつき、転倒する。普段は転ぶことはないのだが、進の行動で頭に血が上っていたのに加え、体力が消耗していた。それが痛恨的だったのだ。
転倒したエリカの首元に杖が突き付けられ、杖で顎を上げられる。エリカは自身が敗北したことを察してしまう。そもそも二人の得物にはリーチの差がある。長い杖を首に突き付けられている状況で警棒を振ったところで、当たるものではない。立ち上がるにしろ、そんな隙を進を見逃すはずがない。今のエリカにはどうすることもできない。積みだ。
「……降参よ。あたしの負け」
エリカは法機から手を離し、両手を天井に掲げる。それを確認した達也が勝者を言い放つ。その瞬間、体育館が大きくざわめいた。
進は座り込んでいるエリカに手を差し伸べる。それをエリカは荒っぽく掴み立ち上がる。
「ほんとに手も足も出ないとも思わなかったわ。千葉家の名が泣くわ……」
「そんなことはないと思いますよ。あえて煽るように言って動きをコントロールしていただけですから。正直、うまくいきすぎな気もしていましたが」
「あたしが単純だとでも言いたいの?それに剣のことに触れない時点で剣の腕に自信があるのは明白よ」
エリカの言葉に進は「どうでしょうね?」とはぐらかす。それが癇に障ったのか、エリカは進のすねに軽く蹴りを入れ、体育館を後にする。
それを見ていた摩利は驚きで言葉が出ないような様子で口を開く。
「いや、圧倒的な試合内容だったな……。私が勝てないエリカをこうも圧倒するとは……」
「目が見えなくなって衰えるどころか、逆に冴えてるんじゃないか……。……よし、やっぱり加入させにいくか」
「あっ、ずるい!彼には剣道部に入ってもらうんだから!」
桐原と壬生は勝利した進のもとに近づいていく。それを見送った二人は言葉を交わす。
「こりゃ、九校戦のメンバー入りは確定だな。これだけの実力と魔法力があれば、文句を言うやつはいないだろう」
「私もそのつもりで入るんだけど……」
真由美は言葉に詰まる。
「けど?」
「どの競技に参加させればいいのかしらね……。目が見えないんじゃ、選択肢はおのずと絞られるわよね」
「そうか……。九校戦の競技は目が必要な競技ばかりか……。ちょっと考えるべきか」
「そうと決まれば、さっそくリンちゃんたちと話し合いましょう!」
二人も体育館を後にし、生徒会室に向かった。
七月中旬になり、一校では期末考査が終了した。いつもの面々の中で特に悪い点数を取った者はおらず、進級に響きそうなものはいなかった。進は今回も実技で一位を取り、一位から四位までA組が独占するという結果に終わった。筆記さえよければ、というのが共通の友人たちの感想だった。(この男、筆記では二十位以内どころか五十位以内にすら入っていない。総合で二十位以内に入っているのが奇跡である)
クラスではテストの結果を一喜一憂しており、進もその中の一人だった。自身のテストの結果にどう反応してよいか、困っていると、森崎が近づいてくる。
「風間、お前もう少しどうにかならなかったのか?」
言わずもがな、筆記のことである。もう少し筆記が高ければ、深雪たち上位陣に食い込む、あるいはといったことだってできたのである。
「残念ながら、これが私の精一杯なのです。これ以上は勉強をいくらしても恐らく取れません」
森崎は少し残念そうな表情で進を見るが、すぐに自身の席へ戻っていく。
どこか憐みの視線で見られているように感じ、進は小さくため息を吐いた。
放課後、深雪や雫やほのか、森崎たちとともに、進は生徒会室に向かっていた。
「なんの呼び出しでしょうね?」
そういったほのかの表情は緩んでいる。なんとなく何を言われるかの察しがついているのだろう。同様に雫と森崎の表情も緩んでいる。
生徒会室にたどり着き、真由美の待つ生徒会室に入る。世間話もほどほどに、本題を告げられる。
「皆さんには九校戦に第一高校代表として出ていただきたいと考えています」
真由美の言葉に三人は大きく喜びを表現する。もちろん二つ返事で了承し、九校戦メンバーに内定する。がいまいち浮かない表情をしているものがいた。うれしくないというわけではない。それ以上に不可解なことがあったからだ。
「あの、私は何の競技に出るのでしょうか?私の目では遠距離系の競技には出られないと思うのですが……」
小さく手を上げた進が真由美に問いかける。その問いに真由美は優しく微笑みながら答える。
「進君にはクラウド・ボールとモノリス・コードに出場してもらいます。モノリス・コードは防御担当として出場していただきます」
進の特性を考えて、話し合った結果がこれである。進が得意としているのは、障壁魔法や領域干渉といった防御系の魔法。それをあの干渉力で発動すれば、破れるもののほうが少なくなる。
同じモノリス・コードに内定した森崎が進の肩をつかみ、興奮した口調で話しかける。
「おい風間!絶対に出場しろよ!選ばれるだけでも名誉なことなんだからな!」
森崎の言葉に進は少し考えこむ。実際、夏休みに予定はないため、出場すれば、暇つぶしにはなるだろう。が、九校戦では直接的な戦闘行為を禁じている。ここがあまり気が乗らない原因であった。が、断る理由がないうえに、魔法を使用すれば、熱い戦いを繰り広げることができる。
「では、よろしくお願いいたします」
進の返答に真由美は表情を明るくさせる。真由美の中で一番心配だった進だったからだ。が、一度仲間に引き入れてしまえば、これほど頼もしい存在も他にはいないだろう。
「それじゃあ、皆さんよろしくお願いします。後日選定会議がありますので、追って連絡させていただきます」
その場は解散となり、それぞれ帰宅の途に就いた。
後日選定会議が終わり、選手として確定した進は発足式でバッチを受け取り、さっそく練習に移った。
練習に移って一時間ほど。進の近くには同じくクラウド・ボールに選ばれた桐原が倒れこんでいる。息を荒くしている桐原を進は見下ろしている。
「一体、どんな、魔法力だよ。なんで、俺とお前のコートを遮るように、障壁を張り続けても、びくともしないんだ」
進が最初に取った戦法は単純明快、桐原のコートと、進のコートの境目に隙間なく障壁を張っただけ。あとは自軍にボールが入ったときに、少し障壁に穴をあけて、そこにボールを打ち込み、閉じる。これを繰り返して、桐原のコートにすべてのボールを入れた。桐原はこの障壁を破ることができず、自分のコートでバウンドするボールを必死で追いかけ続けることとなった。
「一度その戦法はやめろ。お前の練習にならなすぎる」
「桐原先輩はずいぶんと練習になったみたいですね」
桐原は疲れ切り、進の皮肉に返すこともできない。一部始終を見ていた真由美も絶句している。
「進君。それもいいけど負担が大きいから別パターンも用意してね?」
「ええ。ではお付き合いお願いします」
真由美は同じく新人戦クラウド・ボールの選手たちのほうを見るが、彼らは拒否するように高速で首を横に振る。出場経験のある先輩を圧倒したやつとは戦いたくないというのが本音だった。
「わかったわ。練習相手になります」
それを聞いた進はコートに入り、杖を構え、CADを操作する。読み込んだ術式は自己加速術式。今度は単純な体術勝負に出るつもりである。
真由美は拳銃式のCADを構え、いつでも魔法を発動できるように準備した。
ブザーが鳴り響き、一つ目の低反発ボールがコートに放たれた。
八月一日。九校戦に出発する当日。バスはハイウェイを進み会場へと向かっていた。バスの中は程よい緊張感に包まれており、あまり私語もない。進も誰かと私語を交わすことなく、一番後ろのせいで静かにしていた。が、その静寂も長くは続かなかった。
「危ない!」
誰かが叫んだ叫び声で、進の意識が覚醒し、耳に何かが引きずられるような音が飛び込む。それが、高速を滑る何かの音だと理解したとき、進は杖を持ち、立ち上がる。進が杖に両手をかけると、光が杖からあふれ出す。
しかし、ほかにもこれに対処しようとしている人物がたくさんいることを理解した進はあふれ出た光を引っ込め、おとなしく席に着いた。この車内には優秀な魔法師がたくさんいる。それこそ場慣れしている人物だっている。
それに無秩序に魔法式を重ね掛けすれば、魔法式が相克を起こし、キャスト・ジャミングと同様の状態に陥ることになる。この場は動かぬが吉。そう判断した進は最初からCADを触ることなく、黙って状況を見守った。
結果その判断は正しく、克人と深雪たちが冷静に対処した。
九校戦の理由付けは適当っちゃ適当です。それなりに説明できてると思いますが。(え、クラウド・ボールについて話してないって?高速で動く人間を感覚で捕らえる人間がボール程度捕らえられないわけがないでしょう。言わせないでくださいよ)
ともあれ、次回から本格的に九校戦突入です。前作を読んでいただいた方ならわかると思いますが、もちろん彼女たちも出ます。私の好みです。
それではさいなら、また次回。