星廻る杖と魔法科高校の劣等生   作:カイナベル

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 どうも私です。

 特に言うこと無いので、誤字報告してくださっているみなさまにお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。


第七話

 九校戦に先立って行われるパーティーはホテルの最上階で執り行われるその中で進は一人端のほうのでたたずんでいた。理由としては目が見えないということに尽きるだろう。

 

 単純に目が見えないと飲み物一つとることも難しい。それに目に黒い布を巻いた気味の悪い人物には誰も近づこうとはしないというのが現実だ。

 

 ただじっと壁に体を預けていた進のもとに一人のウエイトレスが軽い足取りで近づいていく。

 

「お飲み物はいかがですか?」

 

「いただきます。エリカさん、ご給仕のお仕事ですか?」

 

「そ。このホテルに泊まるためのアルバイトよ」

 

 メイド服に身を包んだエリカは手に持ったトレイからグラスを手に取ると進に手渡す。それを受け取った進はその中身を流し込む。一気に中身のなくなったそれをエリカは驚きながら、グラスを受け取り給仕としての仕事を全うする。

 

「喉乾いてたんだね。おなかはすいてる?」

 

「空いてないと言ったらうそになりますね。正直に言うと空いています」

 

「じゃあ、ついでに取ってきてあげるからちょっと待ってて」

  

 エリカは雑踏の中を片手に持ったトレイが嘘のような速度ですり抜けていく。それを見送った進はエリカが戻ってくるまでの間手持ち無沙汰になると思っていた。がそうならなかった。

 

「大変そうだな。目が見えないというのは。戦闘時の切れっぷりが嘘みたいだな」

 

 いつの間にか隣に立っていた達也の言葉に進は答える。

 

「いや、気を張れば食べ物の一つもとれるのでしょうが、ここで気張るというのは……」

 

 進は頬をかく。進も気張れば誰ともぶつからず食べ物を取ることはできるだろう。しかし、気張るというのは少なからず戦闘モードに切り替わるということ。むやみやたらに火種をまき散らすというのはよろしくない。ましてやここは未来のライバルになりえる存在達のひしめく場所だ。それに今だけでもリラックスしておくのは大切なことだろう。

 

「お待たせー、……って達也君。飲み物いる?」

 

 トレイの上に料理の乗った皿を乗せ、軽やかな足取りで戻ってきたエリカは達也の存在に気付き、トレイを差し出し、飲み物をドリンクを取らせる。

 

 エリカから皿を受け取った進はどんどんと料理を口に運んでいく。進が食べている間に深雪やほのか、しずくたちが集まってくる。彼らの会話を聞きながら、料理を食べ続けていた進は決して少なくない量が盛られていた皿をすぐに空にする。

 

 しばらくして雑談をしていた深雪たちが一校生徒たちのもとに向かっていく。進もそれを見送ろうとするが、そうはいかないようだ。 

 

「進さん、あなたも一緒に行きませんか?」

 

 深雪の言葉に進は内心動揺するが、顔には出さずに応答する。

 

「私が行ってもしょうがないと思いますよ。せいぜい不気味がられるのがオチです」

 

「そんなことはありませんよ。進さんは私以上の実技成績一位。きっと皆さんもっとあなたのことを知りたいと思っているはずです」

 

 深雪の言葉に雫とほのかの二人は同調する。進の存在は不気味であると同時に興味の対象でもあるのだ。絶世の美女といっても差し支えない深雪以上の魔法力は魔法科高校の生徒にとって非常に興味深かった。

 

「いってきたらどうだ?」

 

 達也の援護射撃でたやすく折れた。進はほのかたちに手を取られ、一校生徒の群衆にはいりこんでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このパーティはプレ開会式としての側面のほかにも学生たちの出会いと再会の場としての側面もある。二、三年生はライバルとの再会。一年生は未来のライバルとの出会い。

 

 各校の幹部勢が引っ張るようにして、静かに生徒たちの出会いの場が広がっていく。

 

 この出会いの場。やはりひときわ異彩を放っていたのは深雪の存在である。がそれと同等に人目を引いていたのは進の存在であった。

 

 目に布を巻いている以上に、深雪以上の魔法力の高さは各校で噂になっていた。

 

 しかし、進の奇妙さは隠せない。よって、お近づきになろうとしている人物が多いのは深雪のほう。少なくとも生徒たちはその美貌に惹かれ、深雪に話しかけようとそのチャンスをうかがっていた。

 

 赤色の制服に身を包み、肩の紋章は八芒星。今年の一校の最大のライバルと称される三校の生徒たちがそこにはいた。

 

「見ろよ、あの子超カワイクねえ?」

 

 発言した三校生徒の視線の先には深雪の姿がある。その声に振り向いた一条将輝は少女に見惚れながらも隣に立つ参謀である吉祥寺新九郎に彼女の情報を乞う。

 

「ああ、名前は司波深雪。出場種目はアイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バット、一校一年女子のエースだよ」

 

 将輝は深雪のことをただならぬ視線で見つめ続ける。すると、その視界に得てせずにして、男子のエースが飛び込んでくる。

 

「ゲッ!?なんだよあいつ!?あんなに仲良さげに話しやがって。うらやましいー!」

 

 大げさに反応する同級生をしり目に将輝は同じように吉祥寺に問う。すると、間髪入れずに答えが返ってくる。

 

「名前は風間進。出場種目はクラウド・ボールとモノリス・コード。司波深雪以上の魔法力で一校一年男子のエースを張るモノリス・コードでの僕たちの対戦相手だ」

 

 吉祥寺は薄く笑みを浮かべながら、将輝に進の情報を伝える。が、将輝は表情を変えることなく、しかし、不可解そうな視線で進を見つめていた。

 

「ああ、彼は数年前に事故にあって、視力を失ったらしいよ。目に巻いている布はそれを隠すためじゃないかな?」

 

 将輝の視線の意味を感じ取った吉祥寺は将輝の疑問に正解を出す。すると将輝は納得したように少し口角を上げ、再び視線を深雪に戻した。

 

 しかし、それが面白くない者もいた。一条将輝を取り囲む親衛隊である。ずっと自分たちから逸れ続けている視線を何とか戻そうと呼びかけ続けているが、将輝の耳には届かない。

 

 それを軽蔑するような目で見ている者たちがいた。名を一色愛梨。そして、四十九院沓子と十七夜栞。いずれも数字付きであり、三校一年女子のエース格である。

 

 その三人のお眼鏡に深雪は止まる。その暴力的なほどの美しさからどこぞの名家と勘違いをした愛梨は深雪のもとへあいさつに向かう。

 

 が、深雪が一般の出であることを知った愛梨は一転して小馬鹿にしたような口調で簡単に挨拶を済ませ、その場を立ち去る。

 

 得てせずして、その場に立ち会わせてしまった進は近くにいた深雪に捕まる。

 

「一体何がしたかったのでしょうか?」

 

「単純に宣戦布告でしょう。あれだけいえるということはそれだけ自信があるということでしょう」

 

 こうして話を続けていると来賓のあいさつが始まり、ほどなくして九島烈、世界最強の魔法師の一人と目されていた老人の挨拶が始まった。

 

 が、進の勘が小さく警鐘を鳴らす。進は杖にゆっくりと両手をかけ、有事に備える。杖から光があふれ、いざというときに備わっていく。が次に発せられた言葉で杖にかけられた手は離れることになる。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する」

 

 烈の言葉で進の中で鳴っていた警鐘が鳴りやみ、進はそっと手を下ろす。そのあとは烈の演説が大いに振るわれた。魔法とは手段であって、目的ではない、という烈の一言が生徒たちをたきつけた。

 

 烈の演説が終わり、会場全体が拍手に包まれる。漏れなく進もその中の一人であり、烈の演説に感銘を受けていた一人であった。進は気づいていなかった。烈が壇上から怪しく視線を向けていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティが終了し、進はいつものようにホテルの庭を散歩していた。視力を失ってから趣味になった散歩であるが、なかなかどうして気づくことが多いと進は散歩を楽しんでいる。

 

 が、楽しんでもいられなくなる。進は会場に不穏な空気を感じ取り、彼の第六感も鳴り響く。会場内にいてはいけない存在だと察知した進はその方向へ走り始める。

 

 その速度でぐんぐんと距離を縮めた進はついに賊の背中を捕らえ、杖を振りかざし、とびかかる。二メートル近い生け垣を魔法なしで飛び越え、順手に持ち替えた杖を振り下ろす。

 

 が、それより早く雷が賊を捕らえ、その意識を刈り取った。着地と同時にその魔法を放った幹比古が姿を現す。

 

「誰です?」

 

「君は確か……」

 

 が、この二人は初対面である。幹比古は顔は知っている程度の認識であるが、進は幹比古を少しも知らない。賊だと勘違いしても不思議ではないだろう。杖に手をかけ、居合のような体勢を取る。それに驚いた幹比古はとっさに呪符を手にし、備える。

 

 一触即発の空気が流れる中、陰から達也が現れ、二人の間に立つ。 

 

「進、幹比古は俺のクラスメイトだ。剣を収めろ」

 

 進は達也の呼びかけで杖を下ろし、謝罪する。ともに謝罪を終えたところで、達也は幹比古の問題を指摘し始める。一連のやり取りを終えたところで、幹比古はホテルの警備員を呼びにその場を立ち去る。

 

 それを見計らっていたかのように二人のもとに共通の知人が現れる。

 

「ずいぶん容赦のないアドバイスだったな。特尉」

 

 聴きなじみのある声に進は驚きを隠せない。だが、ここにいても不思議ではない。ここは軍の関係施設であるからだ。

 

「それに、さらに切れが増したんじゃないか?息子よ」

 

 風間の言葉に達也は内心仰天する。

 

「やっぱりそうでしたか……」

 

「なんだ特尉。調べはついていたのか?」

 

「名字でなんとなく怪しいと思っていたんですが、まさか本当にそうだとは」

 

「それより親父殿。先ほどから達也さんのことを特尉と呼んでいらっしゃいますが?」

 

「彼はうちの隊の秘密兵器だ。登録名は大黒竜也」

 

 もちろん他言無用だ、と念押しをする風間。お互いに秘密を知り合ったところで風間は本題に入る。

 

「さて、この賊は犯罪シンジゲート、無頭竜のものと考えられる。この九校戦で何かしてくるかもしれない。二人には気を回しておいてもらいたい」

 

 風間の頼みに達也は敬礼で応答し、進はうなずくことで応答する。

 

 二人に用件を伝えた風間はそのまま闇に溶けるようにその場から離れていく。それを見送った進も散歩の続きをはじめ、達也もその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 九校戦初日。開会式もそこそこに協議が開始される。初日のプログラムは真由美の出場するスピード・シューティングと摩利の出場するバトル・ボードである。

 

 が、ぶっちゃけ見えない進には関係ない。いつものように会場をふらふらと歩き回っていた。一校のスターが出場する二つを見ないというのはやはり珍しく、人目に付く。ましてや、一校エースの進が歩いている。目を引かないわけがない。

 

 ふらふらと歩き回ってた進だが、すぐに興味を持たれてしまい、引き留められてしまう。 

 

「あら……、確か風間進、さんでしたか?」

 

 進を引き留めた愛梨は進を足元から視線を上げていく。やはり目を引いたのは、目付近であった。が、事故にあったということには触れない。触れてはいけないものなのだろうと思ったからだ。

 

「そちらは一色愛梨さんでしたか?お噂はかねがね」

 

 進は愛梨の声が昨日の懇親会で聞き覚えのあるものだと感じ、すぐに思い出す。

 

「ふーん。それで風間さん。あなた、何かしらの優勝経験はおありでしょうか?」

 

 愛梨はいつも通りのようなそっけない対応で進に問いかける。これが彼女のやり方なのだとすでに察していた進は気にすることなく答える。

 

「こうなる前は、剣術大会で頂点を取りました。そのあとは表舞台には一切出ませんでしたが」

 

「ふーん。司波深雪さんよりは実績はあるみたいね。それよりこんなところにいてもいいのかしら?先輩方の応援はいいの?」

 

「見えない私があそこにいても仕方ないでしょう。それに一校の先輩方は私の応援なしでも勝ちますから」

 

「あなたって口調とは違って自信家なのね」

 

「事実でしょう。七草先輩の敵は高校にはおらず、渡辺先輩の敵はせいぜい七校程度。負ける理由がありません」

 

 この発言に愛梨は内心ムッとする。先輩を馬鹿にされたように聞こえるからだ。

 

「まあいいわ。それでも今年は三校が優勝します。覚悟しておくことです」

 

 それだけ言い残した愛梨は進に背を向け、自身の天幕へ向かっていく。

 

「そんなに実績が必要でしょうか……」

 

 ふと思ったことを虚空に打ち明け、進はまたふらふらと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かなりの時間歩き続けていた進はいったん休憩するために、近くのベンチに座り込む。耳を澄ませると、会場から盛り上がった歓声が聞こえてくる。その盛り上がりに九校戦を見てみたいとも思ったが、ないものは仕方がない。一度大きく息を吐くと、ベンチから立ち上がり、再び歩き始める。

 

 すると、歩き始めてすぐ、進の耳に聞き覚えのある声が届く。

 

「進君、久しぶり。顔を合わせるのは久しぶりね」

 

「その声は……、藤林さんでしょうか。お久しぶりです」

 

 アダルトな雰囲気を醸し出しながら、響子は進に話しかける。しかし、彼女も進がここにいることに疑問を持つ。

 

「試合会場に居なくていいの?お友達も見に行っているんでしょ?」

 

「私見えないのでいる意味があまりないんですよね」

 

「でも、会場にいて雰囲気をつかむっていうのも大事よ?会場でしかわからないこともあるし、それ以上に会場の雰囲気を感じておくことで緊張しにくくなるわ。OBが言うから間違いないわ」

 

「私が緊張するタイプではないことはわかっていると思ったんですが……」

 

 進の言葉に響子はクスリと笑う。響子の指摘はもっともであるのだが、進は緊張しいではない。確かに緊張は大事であるが、進の場合は緊張しない方がベストなパフォーマンスが発揮できる。

 

「確かにそうかもしれないわね。でもチームメンバーの応援は大切よ。でもその気がないんだったらちょっとお茶でもどうかしら?今なら隊のみんなもいるし、つもる話もあるんじゃないかしら?」

 

「お誘いいただきありがたいのですが、またの機会にお願いいたします。言われてしまいましたから、せっかくですから観戦に行ってみたいと思います」

 

「そう。じゃあまた今度ね」

 

 響子はその場から離れ、それを見送った進はゆっくりとした足取りで真由美たちの試合会場へ向かった。

 

 

 

 





 次くらいで進の競技かな……。
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