無能力者だけど『技術』と『呼吸法』で能力者達に混じるのはありですか?   作:『納得』は全てに優先しません?

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風の王

「あれ?」

 

(おれはいったい、何が起きているんだ?確か接近戦に持ち込もうと全力で走った筈なのに。地面を蹴った感覚が無い。)

 

不思議とそう思ったジョーカーは下を見る。足の先にあるのは青と白の空間だった。上を見たら、地面だった。そして、強い衝撃が走る。

 

(風が気持ちいいなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかったぞ!俺は空中にいるんだ!」

 

その瞬間、地面に激突しそうになるジョーカーと地面との間に丸い、透明な何かが出現し、ジョーカーの体を受け止める。丸い何かは透明だが虹色がかっているようにも見えた。

 

「何あれ?!」

 

「何あれ?!はこっちのセリフだ!いきなり体が中に浮くとかいったいどんな能力なんだ!風か?いや違う!俺が今感じた風は心地がいい!そんな風が人を吹き飛ばす力なんて無い!」

 

「心地のいい風……ありがとう」

 

大妖精は笑顔を向ける。そして次にジョーカーのセリフを否定した

 

「でも違いますよ。心地がいいからこそ、弱い風でも人は浮いてしまうんです!」

 

するとジョーカーの体は再度宙にフワリと浮かぶ。

 

「なるほどな、わからん。だが優しい風は好みだぜ。何せ翼を持たぬ軽きモノにとっては優雅に舞踊れるのだから!」

 

ジョーカーは手を合わせた。次に手を広げる。すると小さく丸い透明の何かが、今度は沢山風に揺られる

 

「シャボン玉?」

 

無数のシャボン玉が決闘場にプカプカと浮かぶ。風にのってあちらこちらと移動している

 

「そうさ、これが俺の武器だ!」

 

「はわ〜、凄く綺麗」

 

大妖精は子供のように目を輝かせながらシャボン玉を見つめる。

 

「綺麗なだけなら武器は務まらないさ。所詮はただの『泡』だからな。だが、それでもいいのさ。俺にはな」

 

ジョーカーはまた手を合わせる。

 

「食らえ!シャボンランチャー!!」

 

「うっ!」

 

大妖精はとっさに腕で顔を守るように防ぐ。

 

 

 

(ただのシャボン玉じゃあない!何か良く分からないけどビリっとくる!それに弾いた瞬間に軽く殴られたような痛み!沢山食らうのはやめた方がいいかも!)

 

大妖精は腕を広げると周りの風が吹いてシャボン玉を辺りへ飛ばす

 

「『風』と聞いた時点でもうやな予感はしてたんだよなぁ。と言うかはっきりとわかってた事なんだよな……シャボン玉が風に呆気なく飛ばされるってことは」

 

(厄介だ。最初っから本気を出すやつはいねえ。だからあの風は序の口だな。それでも人を浮かす力がある。『心地がいい』。それが理由で本当に弱い風でも人は浮くのだろうか?そもそも関係無い気がする)

 

「なあ、教えてくれよ。風の秘密を、心地よいだけで人が浮くなんて誰か考えたっておかしいだろ?」

 

「おかしい?それが『能力』ですよ?」

 

真っ直ぐに走るジョーカーを大妖精が起こした風がそれを邪魔する。体が浮いて、近づくどころじゃい。

 

「そろそろ心地の良いのは止めますね」

 

「……ッ!」

 

その直後、先ほどとはうって違って突風が吹く。宙にある体はもろに影響を受けてまともな受け身をとれずに着地する。そして何回転かして止まった。風が強いために立たず低い姿勢をとる。弱い風で人が浮くのに強い、大型台風でもきたかのような風では姿勢を低かろうが関係なく飛ばされる

 

(……飛ばされる筈なんだが、ただの強風だからか。低い姿勢を保てば飛ばされない)

 

「ちょっと擦りむいた!HPは!」

 

残りHPを確認すると僅かにゲージが減っているだけだった。いや、僅かに減り続けていた。

 

「な?!単なる風でダメージを負う筈が!『痛み』は無いぞ!攻撃を受けた『衝撃』もだ!」

 

ジョーカーは自身の体を確認すると所々に浅い切り傷があった。その数はどんどん増えていく。

 

「カマイタチか!くそ!シャボンバリア!」

 

大きなシャボン玉が作り出され、ジョーカーが中にいた。これによりジョーカーは一切の風の影響をうけない。

 

(仮想世界の設定で『痛み』が無いから気づくのが遅かった!この突風に煽られては風を受けている『衝撃』でカマイタチによる『衝撃』が無い!ちくしょう、HPを余計に減らしたが僅かだ。いや、その僅かが影響を及ぼす事が無いことを祈ろう)

 

「コオオオオオ」

 

(この間に何か対策を練らないと。このシャボンバリアも直ぐに割られる)

 

ジョーカーは『呼吸』をする。それはただの呼吸ではなかった。

 

「割れない?」

 

(カマイタチじゃ割れないシャボン玉……なら、もっと強ければ!)

 

フィールド全体に吹いていた風は止み、あちこち移動していたシャボン玉も落ち着きを見せる。しかし、その瞬間、ジョーカーが入っているシャボン玉が割れる。それと同時に姿勢を低くするも、風はまるで竜巻のように、渦巻いており、ジョーカーの体は無理矢理後方へ飛ばされた

 

「これは!台風か何か!周りの風が無い……一点集中か。これは相当に能力のコントロールが上手いと考えた方がいいな」

 

(渦を巻いているおかげでカマイタチが正面だけでなく体全体に、あちこちに傷をつけやがった)

 

「……?心地いい」

 

風は突風から心地の良い風に戻った。

 

「癒される。サウナに入っているとき別の人が扉を開けたときの僅かな涼しい風よりもだ……だが何故だ。これじゃあ俺自身は吹き飛ばしてもシャボン玉が攻撃可能だ」

 

そう疑問に思っていると気づいたのかそれに答えるように大妖精は口を開く

 

「私は、強い風が嫌いなんです。洗濯物は飛ばしちゃうし目に砂が入る。だから誰もがそれを逃れようと洗濯物は家に入れるし砂が目に入らないように手を軽く顔にやります。傘だって壊します……でも」

 

ジョーカーの体がまたフワッと浮いた

 

「心地のいい風は好きです。髪は綺麗になびきますし肌を優しく撫でられているようで暖かいんです。暑いときは涼しくて、だからより感じていたいんです。よりその風に当たりたいんです。それが私の能力、『風の王』。好きだからこそ、集まる。嫌いだからこそ、離れていく。それが『王』に使えるもの」

 

大妖精の周りに風が吹く。

 

「何かまずい!何かやな予感がする!くらえ!シャボンカッター!!」

 

シャボン玉を高速回転させ、カッターのような鋭さを与えた。それは心地の良い風を切り裂き、大妖精へと一直線に向かう。しかし、大妖精はかわした。

 

「そんなのありかよ……人類の夢だぞ」

 

大妖精は優雅に舞う。風は大妖精を歓迎するかのように空へと舞い上がっていた。空を飛んでいた

 

「『王』とは、統一する者。そこに集まる戦うものは『屈強の兵士』」

 

大妖精は手を上にあげる。すると手のひらの上に向かい、そこに向かうように全方向から突風が吹く

 

(やべえ!何かわからんがやべぇ!)

 

「シャボンカッター!」

 

シャボン玉は大妖精のてのひらの上に吸い込まれるように移動し、潰されるように割れた。それだけじゃない。周りにあるシャボン玉も全て吸い込まれる。

 

「ダメだ!くそ!『武器』さえ忘れてこなければ、きっと何とか……だが無い!無いものはどうしようもない!どうする!」

 

「『屈強の兵士』は集まった」

 

風が弱くなり、心地の良い風になったとき、大妖精の手のひらの上は異常な事が起こっていた。そこには何もない。その筈なのにそこだけ歪んで見えるのだ。そこだけ世界が違うかのような、狂っているかのような

 

「屈強な兵士を連れていくのは『迅速な馬』!」

 

ジョーカーの腹に押し出されるような感覚が伴う。不思議に思い、手を当ててみると風が吹いたいた。その風は風穴、とでも言うべきだろうか。パイプのようになっている。そして異常な何かは真っ直ぐにジョーカーへと向かっていた

 

「腹に当たっている風はあの異常な何かの、『屈強の兵士』の通り道!まずい!あれをまともにうけたら!HPが0になる可能性だって!……やめろおぉぉぉ!!!シャボンランチャー!」

 

異常な何かは止まらなかった

 

「シャボンカッターー!!!」

 

空中にいるために避けることができないため、必死にシャボン玉で、何十発も、出せる限界の量をだすが異常な何かを防ごうとするが焼け石に水、全くの意味をなさない。

 

「離れろぉぉお!!攻撃を止めるんだぁぁぁ!!!」

 

最後に自身と異常な何かの間に大きいシャボン玉が作られる。それも虚しく一瞬で割れてしまった。

 

そして、それはジョーカーの腹を切り裂き、ソフトボールぐらいの大きさの穴が空き、向こう側がはっきりと見えるになるまでであった。ジョーカーの真っ正面から見ても後ろにある野球選手の像がついでに破壊されているのが目視できる

 

「……ッ!」

 

ジョーカーはゆっくりと地面に落ちた。いや、降ろされた。止み、慈悲なのか足から優しく降りた。ジョーカーは茫然とした。ゆっくりと顔を上げ、残りHPを見てみると、1000に設定されていたHPも100を切っていた。体の損傷による持続的ダメージは無いようだ。だが大妖精のHPはまだ900以上もあり、もはや決着はついているようなものだ。

 

「満身創痍……ですか」

 

「…………」

 

ジョーカーはただ突っ立っているだけで動かない。いったいどこを見ているのか上の空だった。

大妖精は穴の空いた腹を見て、オドオドしながらこう言った

 

「ご、ごめんさない。いくら仮想世界だからと言ってここまでしちゃうのは。妖怪でも無いのに。本当にごめんなさい」

 

そして頭を下げる。ジョーカーは無反応だった。数秒頭を下げた大妖精は顔を上げ、手を前に出す

 

「でも、だからと言ってやめるわけにもいきません。戦いは、どちらかが終わるまで終わらないんですから」

 

「…………確かに、どちらかが終わるまで終わらないな……そうやってすぐに終わらせようとしないお前が終わるけどな」

 

「え?」

 

その瞬間、ジョーカーは後ろにシャボン玉を1つ撃った。大妖精はそれに気づかなかった。

 

「俺の力は『波紋』と言って簡単にいうと生命エネルギーなんだ。とは言ってもそれを扱うには予備動作が必要なんだよ。『呼吸』と言うのなのな……そしてさっき仮想世界だから俺の腹に穴を空けたんだよな」

 

ジョーカーは指を指す。大妖精は疑問に思いながらも指を指す方を見ると大妖精のHPが徐々に減っていることを気づく

 

「いつの間に?!」

 

「仮想世界は色んな設定ができる。今回は『痛み』が無いんだ。熱いのだって痛みだろ?」

 

そこで初めて気づいた。大妖精の背中が燃えていることに

 

「暖かいとは思っただろ。でも温度が高すぎたら感じなくなる。『痛み』がないから燃えていることに気づかないんだ」

 

「こんなのすぐに!」

 

大妖精は自身の背中に風を吹かせようとする。その瞬間、目に衝撃が走り、視界がブラックアウトした。

 

「目がぁ!」

 

突如の事で風を吹かせるよりも目を押さえる方を優先的に行動してしまった。そしてジョーカーは数個シャボン玉を飛ばす

 

「真っ黒に貫光しろ!」

 

「きぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「これで終わりと思うなよ!」

 

後ろに放ったシャボン玉が勢い良く割れ、何かを弾いた。それは、野球選手の像にあった野球ボールの彫刻だった。 それがジョーカーの所へ飛び、それをキャッチする。

 

「何!」

 

ジョーカーの体はフワリと宙に浮く。そしてカマイタチ玉を作っていた。

 

「全身が燃えて何も見えない状態なのに、確実に仕留めようとしている!冷静だ!炎は持続的ダメージだが余裕があるから大丈夫なのか!……なら、もっと燃えろ!」

 

ジョーカーは体を捻り、手首でスナップを聞かせながら彫刻の野球ボールをぶん投げた。そのボールは凄まじい『回転』がかかっており物凄く曲がった。

 

「これで終わりです!避けられないし防げない!この勝負は私の勝ちです!」

 

 

カマイタチ玉をジョーカーへと飛ばす。

 

「ああ、避ける事も防ぐ事もできない。食らうしかない……ただし、食らうのはボールの方だ。投げたボールの方だ!」

 

強烈な『回転』のかかったボールはブーメランのようにジョーカーへと戻ってきていた。

 

「これに当たればぶっ飛ばされて、カマイタチ玉は当たらずにそのままボールをお前に投げる!だが残りHPが少ないから自滅する可能性だってある!だからもうお前の攻撃は現時点で関係無い!」

 

ジョーカーは飛んでくるボールに対し、防御の体制をとる。

 

「この戦いの決着をつける権利は、俺だけにある!」

 

ジョーカーは自身の投げたボールを自身で食らった。そして飛ばされる。それによってカマイタチ玉は外れ、奥にある野球の石像を完全に木っ端微塵にした。

 

 

「……俺の勝ちだ」

 

残りHP、3。ジョーカーはボールを掴み、握りしめ、捻り、投げる。そのボールは大妖精の腹に直撃し、肉をえぐりとるように『回転』し続けた。

 

「『回転』によってお前の代謝を早めた。これよりお前は異常に汗をかく、吸血鬼に血を吸われたように干からびるだろう……良く燃える薪の出来上がりだ」

 

大妖精を燃やす炎が一気に勢いを増した。ボールは『回転』し続け攻撃し続ける。大妖精のHPはドラゴンクエストの青い縞模様の床を移動している時のようにHPが減っていった。

ジョーカーは反撃の事を考えて砲丸投げの像の後ろへと回る。

 

(これでカマイタチを防げる。カマイタチ玉ならともかく目は瞑れているし、あるかはどうか知らないが風を感じて居場所を探ることも全身が燃えてできない……多分)

 

「……やっぱそこらのボールじゃ『回転』はここまでか。でもまあ充分だろ。後どのぐらいでHPが0になるか確認するか」

 

ボールは大妖精の足元を転がっていた。ジョーカーは残りHPを確認する。ジョーカー HP1 大妖精 HP ???

 

(大妖精は減り続けているから数値まではわからないが残り僅かってことはわかる。俺のHPは1か。ギリギリ……1?!)

 

「さっき見たときは3だった筈だ!」

 

(いつ、どこで?!自身でボールを食らってから1度も食らっていない筈だ!だったらいったい!)

 

「ともかく、シャボン玉バリアだぁぁ!!割れなければ攻撃は受けない!大妖精のHPは残り僅か!俺の勝ちだ!」

 

その直後、シャボン玉は速攻で割れてしまった

 

「え?」

 

横を横を見る。そこには石像にスレスレで当たっていないカマイタチ玉が浮いていた

 

「何故?!俺の居場所を感知する方法なんて無い筈なのに!」

 

その時、大妖精は大声でこう言った

 

「貴方は今!絶対に隠れている!場所は、居場所がわからないと過信して近くの石像にです!近くの石像は3つ!1つは破壊されています!確率は半分!私のHPはきっと残り僅か、ならどちらかにかけるしかない!」

 

ジョーカーは咄嗟に石像から離れる。その瞬間、ジョーカーの腕に小さな切り傷ができた

 

「しまっ?!」

 

その瞬間、何事もなかったかのように、初めからになったかのように、この闘技場は元通りになった。破壊された石像は元の場所に立っている。ジョーカーの傷は塞がっており大妖精の全身やけども無くなっている。

 

「…………ッ!」

 

「…………??」

 

互いに困惑していると、二人の目の前にメッセージウィンドウが現れる

 

【Winny!!大妖精!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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