ガールズ&パンツァー ドイツ極秘戦闘隊と親善試合です!   作:ロングキャスター

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緊迫する戦況です!

 

 

E75とVK4502pの出現で流れを大きく崩された大洗連合は思うように攻める事が出来なくなっていた。

 

「E75がこっちに来た!」

 

「クソ!まだ待ち伏せもいる!」

 

無線が混線する。

 

「こっちにVKが!あひゃっ!」

 

VVKの攻撃で勝矢メグが撃破される。

 

「皆さん!」

 

みほが混乱する隊を統率するために全体へ呼びかけた。

 

「敵の後続部隊がもう到着する頃だと思います。この場は相手の手中ですからこのまま一気に突破して戦力を分散しましょう。」

 

「大丈夫なの?」

 

みほの提案にエリカが聞く。

 

「もう相手との戦力差はありません。分散することで相手の待ち伏せも無効化出来ると思います」

 

「分かりましたわ。それで行きましょう」

 

ダージリンが賛成した。

 

「それではみなさん!C47E地点に集合してください!突破します!」

 

みほの言葉で今まで防戦一方だった大洗連合が一気に動き出した。

 

「敵が動いた!」

 

「ヤケクソか?!突っ込んでくる!」

 

「突破するつもりだ!ファインツ!抑えろ!」

 

ウィットナーは大洗の動きを読み、敵が向かうであろう所にファインツを向かわせた。

 

ファインツ先に着いたファインツは建物を榴弾で壊し瓦礫の裏に隠れるように防衛線を引いた。

 

「全員!気合い入れろ!」

 

「この感じ…ベルリンを思い出す」

 

砲手が呟いた。

 

「ああ…俺達が命をかけて守ったベルリンにな」

 

操縦手も同じように昔の記憶を呼び起こしていた。

 

「結局守れなかったけどな」

 

装填手も会話に入ってきた。

 

「俺達はベルリンを守ったんじゃない。ドイツの未来ある子供達を守ったんだ…」

 

ファインツが言う。

 

「あいつら、元気でやってんのかな?」

 

「よく考えれば、今の俺達ってあいつらより歳下になっちまったんだなぁ?」

 

操縦手、装填手が言う。

 

「世の中不思議な事もあるもんだ」

 

砲手が笑う。ファインツは車内の通信手席に視線を向けた。5人乗りのティーガーにぽっかりと空いた座席。

 

「お前も居てくれたらな…」

 

ファインツが寂しそうに呟いた。乗組員達は誰に対しての言葉なのかわざわざ聞くことはなかった。彼等自身も同じ気持ちだったから。

そんな他愛もない話をしているとエンジン音が段々と近くなっているのに気付いた。

 

「来るぞ!」

 

ファインツが言った直後、大洗連合の車列が現れた。

 

「フォイア!」

 

ティーガーが放った砲弾が先頭のポルシェティーガーに

命中。しかしさすがティーガーの亜種だけあって容易に撃破は出来なかった。

 

「敵のティーガー発見」

 

「どうする?あれ使う?」

 

「ん~使ってもこの大人数じゃねぇ〜」

 

 

ツチヤの提案をナカジマは却下した。

 

「ここは大人しく、彼女を待とう」

 

安藤が言う。

 

「こちらC47C地点。敵のポルシェティーガー以下6両発見。とりあえず押さえてる」

 

「よし、そのまま押さえてくれ。…マーズ、前進!」

 

それまでほとんど不動だったウィットナーのティーガーⅠが遂に動き出した。

 

「1両相手に向かって来ない…何を企んでる?」

 

ファインツは敵の動きを不審に思った。1対多数なのだからポルシェティーガーを先頭に強行突破でくると想定していたが彼女達は車体をいわゆる『お昼ごはんの角度』でじっと留まっていた。

 

「ローズヒップちゃんちょっといい?」

 

 ナカジマがローズヒップに問いかける。

 

「なんでございましょう!」

 

「そろそろ頃合いだから、うちのあれ使って横を突っ切るから付いて来て」

 

「かしこまりましたわ!」

 

「よ~しレオポン前進」

 

遂にレオポンが動き出した。

 

「動いた!」

 

「後ろにクルセイダーがいる!弾を受けてその隙に回り込ませるつもりだろう。させるな!」

 

ファインツが言う。砲手がゆっくり近づくレオポンの車体正面の切り欠きに狙いを付け号令を待った。

 

「フォイア!」

 

「ほい!」

 

「よっと!」

 

ナカジマの合図にツチヤはEPSのボタンを押し、ポルシェティーガーがみなさんご存知のあの加速で一気に距離を詰めていく。

クルセイダーもアクセル全開でスリップストリーム状態で追従する。

 

「なんだありゃ!」

 

「あれが噂のEPSってやつか!」

 

「あんなの戦車のスピードじゃねぇよ!」

 

砲手、ファインツ、操縦手が呆気に取られ彼女達の突破を許してしまった。

 

「クソ!回頭急げ!クルセイダーを先に…!」

 

ゆっくりとクルセイダーへ向けて回頭していた時、ファインツは視界の隅になにやら黒っぽい物が動いた気がした。

 

ファインツがそこに視線を向けるとそこには…

 

「しまった!奴らは囮だ!12時方向回頭!」

 

再びティーガーが反対方向に車体ごと回頭する。一瞬照準器に黒っぽい戦車を捉え引き金を引いたがそこに戦車は居らず虚しく空を切り裂いた。

黒い戦車はそのままファインツの懐に回り込み、ガラ空きの側面に17ポンド砲を撃ち込んだ。

 

「クソ!やられた!アイツが出て来たぞ!」

 

ファインツを撃破したその戦車はそのまま転回して先に突破したレオポン達に合流した。

 

「アイツって誰だ?」

 

ファインツの無線を聞いていた他のブラッドハウンドの隊員が問う。

 

 

「やってやる〜やってやる〜や〜ってやるぜ、イヤなアイツをボコボコに〜」

 

大洗連合の無線に歌声が流れる。

 

「隊長が歌い始めた」

 

「ということは」

 

「これからが本番ね」

 

メグミ、ルミ、アズミが言う。そして…

 

「ケンカは売るもの堂々と〜」

 

みほが続けて歌う。

 

『肩で風きり啖呵きる〜』

 

みほと愛里寿がデュエットを始めた。最終戦に向けて大洗連合が更にシフトチェンジを始めた…!

 

 

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「こちらももう突破されます!うわぁやられた!」

 

「やられてないって…」

 

ブラッドハウンドの他の隊も大洗の強行突破を守り切りれず、突破を許してしまう所が出て来た。

 

「大尉がやられた。大洗の切り札も来た。ちょっとヤバくない?」

 

ケイラーが言う。

 

「敵の指揮官はあの大洗女子の西住みほだ。こんなもんだろう」

 

「ちょっと?向こうに寝返る気?」

 

ウィットナーの言葉にケイラーが問う。

 

「いや、大洗連合と戦ってるんだ。こうでなくちゃ面白くない」

 

「で、どうします?隊長?」

 

エンドラーが指示を仰ぐ。

 

「そうだな…お前等の好きにすると良い」

 

ウィットナーのこれまでにない程適度な指示に一同驚愕した。

 

「ちょっと!なにそんな投げ出してんの?」

 

ケイラーが強い口調で言う。

 

「落ち着け。もう戦力は当初の半分を切り向こうも切り札を出したってことは、待ち伏せとかそういうのは考えてないって事だろう。」

 

ウィットナーは一呼吸置いて再び話し始めた。

 

「試合も終盤になり俺が出すべき指示は、思う存分楽しめってとこだ」

 

ブラッドハウンド連合の全員がその言葉に驚いた。

 

「勝っても負けても、やってもやられても、誰も死なないのが戦車道だ。最後ぐらいそれを思う存分、全力を出し切って楽しめ!」

 

「全く…なら最初からそう言えばいいんですよ」

 

エンドラーが一見呆れたような口調で彼に言うが、その顔には薄っすらと笑みがあった。

 

「よし!では大隊長から最後の指示だ!楽しめ!以上だ!」

 

無線から割れんばかりの返答があった。

それまでの統率の取れた隊列はなくなり、各々が各々の判断でチームを組んだり、誰を狙うか話し合い分散していく。

 

「それじゃぁパンター小隊集合!」

 

「グレッグ、ドム、俺について来い」

 

ツェフィカとバークがそれぞれ隊を率いて前進する。

 

「よろしい?敵の百人隊長センチュリオンはこちらで対処します。手出しなさらぬよう」

 

「だが…」

 

「構わないから他の雑魚共をやりなさい」

 

口が悪くなり始めたエマを察し、チャレンジャーの車長が付け加える。

 

「この場合はエマ隊長に従った方がよろしいかと」

 

「まぁそう言うなら…」

 

ケイラーはそんなやり取りを軽く流しつつ無線のスイッチを入れた。

 

「それじゃぁ全車!ファイナルステージへ…Let's Go!」

 

 

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「まずは黒森峰の重戦車から始末しよう。あれが最後まで残られたら厄介だ」

 

「そうだな。そうしよう」

 

ブラッドハウンドのIS-2、IS-3の車長が言う。

すると程なくしてゆっくりと走るティーガーⅡを発見した。

 

「おっ運がいいな!ティーガーⅡ発見!」

 

「よし!追うぞ!」

 

2両のISがティーガーⅡを追う。

 

「JS-2、3が追ってきた!」

 

「アンナちゃん、そのままこっちに誘導して!」

 

「分かった!」

 

アンナはエミの言うように上手く誘導するためにジグザグに逃げるようにして走った。

交差点をいくつか曲がりった所でエミのヤークトパンターが遮蔽物に車体半分隠すように待ち構えていた。

 

「撃て!」

 

ヤークトパンターの砲弾はIS-3の正面を捉えたがそのキツイ傾斜装甲の前に弾かれた。

 

「なんの!動いてるティーガーⅡより、停まってるヤークトパンターを撃とう」

 

IS-3がヤークトパンターに狙いを付け砲撃。運良く弾は遮蔽物の方へと逸れた。

 

「準備はいい?」

 

エミが聞いた。

 

「いつでもいいわよ?」

 

「発砲オーライ!」

 

「うっ…」

 

「撃て!」

 

再装填が完了したIS-3が砲撃しようとした直前、ベルウォールのエレファントとサメチームのMk.Ⅳが側面から攻撃された。

 

「どんなもんだい!」

 

「さすがに側面の直撃を受ければ…」

 

エレファントの土居千冬が言いかけたその時、

 

「敵!砲塔指向中!」

 

アンナからの無線が入る。IS-3の砲身が煙をかき分けるようにゆっくりと彼女達へと向けられる。

 

「嘘!抜けないなんて…!」

 

「側面は弱点じゃなかったのかよ!」

 

千冬、ムラカミが驚愕していると、エレファントに攻撃を仕掛けた。幸い分厚い装甲部に命中したので撃破はされなかったが、強い衝撃に見舞われた。

 

「危ない危ない。狙いが甘くて助かったぜ」

 

「仕方ない。一時退却!」

 

サメチームと千冬が後退を開始。それをエミとアンナが支援するがIS-3はそれをいなして千冬達を追う。

 

追われるサメチームと千冬達。そしてエミ、アンナはIS-3、2を追いつつ次の作戦を練る

 

「側面が無理なら後方は?」

 

「JS-2がピッタリ付いてるから狙えないわ」

 

エミの提案に千冬が答える。

 

「横も後ろも無理ならどこを撃つんだい?」

 

フリントが問う。

 

「私が体当たりして隙を作ってエミちゃんが肉薄するのは?」

 

「JS-2がいるんだよ?撃たれちゃうよ」

 

アンナとエミが言う。お銀も何か良い方法はないかと模索する。自分の数少ない経験の中で何か応用出来る方法はないかと頭を巡らせる。そして…

 

「あたいに良い考えがあるよ」

 

お銀は全体に作戦を伝えた。

 

「確かに、作戦としてはいいけど…」

 

「相手を撒けるの?」

 

アンナ、エミが問う。

 

「ああ、そこは…」

 

「大丈夫そうね。どうやら狙いは貴方ではないようだし」

 

千冬がお銀に割って入る。敵はエレファントに集中して攻撃している様子だ。型落ちのMk.Ⅳはアウトオブ眼中のようだ。

 

「そういうことなら…やりましょう!」

 

アンナが言う。

 

「それじゃぁヤークトパンターとやら、付いてきな」

 

「小島エミよ!」

 

 

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「う〜む…参ったな…」

 

一人ゆっくりと市街地を走るコメット。車長は困り果てた様子だ。

 

「まさか迷子になるとはな」

 

砲手が言う。

 

「仲間とはぐれだうえ、無線機も故障とは…全く今日はとんだラッキーデーだ」

 

コメットは大洗の強行突破時の攻撃で無線機を損傷してしまっていた。

 

「どうだ?まだ治らんか?」

 

車長は無線を修理中の装填手に聞いた。

 

「だめっすねぇ。うんともすんとも言わないっす」

 

「こんな時に限って敵が大人数で来たりするんだろうなぁ」

 

車長はため息混じりに言った。

 

「車長それ、今ではフラグって言うらしいですよ」

 

操縦手が言った。

 

「なんだそりゃ」

 

そんな他愛もない話をしていた時だった。

 

「ん?停止!」

 

車長はおもむろに停止を指示。そして少し後退させて右手の方を見た。

 

「すごいな…アヒルの子ってこんなにデカくなるもんなんだな」

 

車長は右手の小さい庭園の湖に浮かぶアヒル達に釘付けになる。

 

「ホントだすごいデカいっすねぇ」

 

装填手も作業の手を止めてハッチからそれを覗く。

 

「すごく愛くるしい顔をしてるじゃないか…って!んなわけあるか!敵だ!撃て!撃てぇ!」

 

コメットは慌てて砲塔を向けてアヒルに攻撃を開始。

 

「わっ!気づかれたぞ!」

 

コメットに感づかれ、西、玉田、福田の3両が慌てて池から飛び出す。

 

「やっぱりか…小賢しい真似を!追え!」

 

逃げ出した知波単各車をコメットが追う。

 

「3対1…他勢に無勢ですが…」

 

「大丈夫だ。3対1でも相手は旧型でしかもこっちが追いかけてるからな!」

 

「ダメだ…フラグにしか聞こえない…」

 

車長の自信ある言葉に操縦手は頭を抱えた。追うコメットは知波単各車に対して攻撃するものの回避行動を取られて思うように当てられない。

 

「敵車両動きあり!」

 

砲手が叫ぶ。逃げていた知波単が向きを変えこちらを向く。その時前方から別車両が合流した。

 

「うわ!マチルダさ〜んだ!」

 

「だから言わんこっちゃない!」

 

「そこの道を左に!」

 

車長は交差点を左に曲がらせた。追う側から追われる側になったコメット。砲塔を後ろに向けて応戦体勢になるが…

 

「カウルが邪魔で俯角が取れない!」

 

英軍戦車のクロムウェル、コメット、チャレンジャーのマフラーには排気方向を変えるための通称『ノルマンディーカウル』という物がエンジンデッキにある。その為砲塔を後ろに向けるとカウルが干渉して俯角が取れなくなるのだ。

 

「機銃で応戦しろ!」

 

車長の指示で機銃を斉射するが、7.92mm弾のベサ機関銃程度ではどうすることも出来ない。

 

「行くよ!Dクイック!そ~れ!」

 

突如建物の陰からアヒルチームが右前方から飛び出しコメットへ攻撃した。弾は防盾で防いだものの車体右前方にピッタリと横付けされた。

コメットは右手に砲塔を向けてアヒルチームへ反撃しようとする。

 

「長谷川!」

 

「よっと!」

 

砲塔が真横を向いた時だった。アヒルチームから遅れて飛び出していた福田のハ号がコメットの右後方、アヒルチームの真後ろに横付けし砲塔を旋回できないようブロックした。

 

「今度はなんだ!」

 

 

砲手が毒づき、車長はペリスコープを使って車外を確認する。

 

「この!…どきやがれ!軽戦車ども!」

 

車長はハッチ開けて身を乗り出し罵声を浴びせた。

 

「うちは軽戦車じゃないし」

 

「中戦車だし」

 

どこかで聞き覚えのある台詞を吐くアヒルチーム。

 

「壁に押し付けてやれ!」

 

コメットが2両を押し出す。2両も押し戻そうとするが2両がかりでもパワー負けしてしまっている。

 

「玉田!用意はいいか!」

 

後方から追う西が先回りした玉田へ呼びかける。

 

「準備万端であります!」

 

「よし…ではルクリリ殿よろしくお願いします!」

 

「しっかりと付いて来なさいよ」

 

西とルクリリはこうやり取りした後、西はチハをマチルダの後方へ隠れるように後ろについた。

 

「好き勝手しやがって…!操縦手!そのまま押し出して合図で左にハンドルを!砲手はそのタイミングで4時方向へ砲塔を旋回!」

 

コメット車長が反撃のため指示を飛ばす。

 

「今!」

 

「玉田!行け!」

 

西よりも早くコメット車長が合図を出し、操縦手、砲手が指示通りに車体を動かした。急にコメットからの押し込みが無くなった事で2両は体勢を崩してしまう。更にコメットが減速した事でハ号が射線上に突出してしまいそのまま撃破されてしまう。

 

「次だ!あの八九式を…」

 

「くっ!向こうが早かったか!」

 

体勢を整え再び前進を始めたコメットの前に玉田のチハが滑り込み全力で戦車に制動をかけて敵の動きを止めようとする。しかし敵の方が先に反撃に出た事もあって当初の作戦は破綻してしまっていた。

 

「なめるなよ!こちとら600馬力だ!」

 

玉田のチハが抑え込もうとするがコメットの600馬力エンジンの前にはチハの200馬力級のエンジンではほとんど太刀打ちできず、意に反して押し返されてしまう。

 

「砲手!1時方向に固定!操縦手!一旦押し出して減速して左旋回!」

 

車長が再び指示を出し乗員はそれ通りに戦車を動かした。

押し出され、減速左旋回された事で玉田もまた射線上に来てしまい後ろから撃ち抜かれた。

 

「よし、そのまま旋回して後方のマチルダを!」

 

コメットはそのまま後方から追っていたマチルダを標的とした。

ルクリリとコメットが距離を詰めていく。

 

「撃て!」

 

コメットがルクリリへ攻撃したその時、ルクリリもそのタイミングを狙い右へ回避行動を取った。すると後方から追従していた西のチハがルクリリとは反対方向に動きコメットを追い越した。

 

「しまった!」

 

車長は声を上げた。装填手が急いで再装填を行うが確実に旋回が間に合わない。

 

「後ろを取られる…!」

 

チハの主砲がこちらへ指向するのがすごく遅く、ゆっくりとまるでスローモーションのように感じた。

主砲が火を吹くのを予感した刹那、チハが大きく吹き飛ばされた。

 

「なっ!」

 

その光景に一同言葉を失った。

 

「な、なんかよくわからんけど助かったぜ!このままマチルダを追え!」

 

間一髪で窮地を脱したコメットが残ったルクリリとアヒルチームを追いかける!

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

「チハ撃破!ふぅ~…間一髪だったなぁ」

 

ヤークトパンターの車長は言った。

 

「マチルダと八九式もやりますか?」

 

「いや、あれはコメットだけで十分だろう。…てかなんでアイツは応答しなかったんだ?」

 

車長は砲手の問いに答えつつ、双眼鏡越しにコメットを見た。

 

「さぁ?それどころじゃなかったんじゃないっすか?」

 

装填手が言う。

 

「それもそうだな。よし、操縦手。陣地転換!一階上がるぞ」

 

ヤークトパンターはその場を動き別の狙撃ポイントに移った。

 

「それにしてもここは良いな。360°見渡せるし高さを自由自在…いいところに立駐があった」

 

ヤークトパンターは各方面へ狙撃できるよう立体駐車場に陣取っていた。

 

「よし、あの優々と走ってるチャーチルをやろう」

 

車長がそう言うと操縦手、砲手がチャーチルを射線上に捉える。

しっかりと的を絞り偏差射撃を行うが距離があったため一撃で仕留めることは出来なかった。

 

「手前に落ちたな…もう2度ほど上に修正」

 

車長が着弾点から推測し砲手に修正させた。そして砲撃の合図を出そうとしたその時だった。車長は何か嫌な気配を感じた。

 

「ん?今かすかにコイツ以外のエンジン音が聞こえた気が…」

 

車長はそっと耳を澄ませる。ご存知の通り立体駐車場は音が響く。何かいるなら例え離れていても聞こえるはずだ。

 

ヤークトパンターのけたたましいエンジン音の隙間からかすかに普段では聞こえない音が漏れていた。

 

「まさか!誰が来てる!」

 

車長は声を上げた。

 

「攻撃中止!誰か来るぞ!迎撃しろ!」

 

車長の指示で操縦手は自らが登ってきたスロープの方に旋回させた。

そっと誰かが登って来るのをじっと待ち伏せするヤークトパンター。そしてかすかに聞こえていた音は着々と大きくなっていった。

 

「もうすぐだ。…あと20秒くらいだ!」

 

車長は音からおおよその時間を推測し秒数を数えた。

20秒を数えた直後照準器に白い戦車がスロープから飛び出した。砲手が引き金を引くが敵は予想以上に速く射撃した時にはもうそこにはいなかった。

 

「しまった!速い!」

 

「回り込まれるぞ!旋回急げ!」

 

ヤークトパンターが慌てて車体を旋回させるが敵の方が動きが素早く、砲身が彼らの後方を狙っている。

 

「トゥータ」

 

ヤークトパンターの後方に攻撃が命中。白旗が揚がった。

 

「くそ!ジャック気をつけろ!立駐にBT42がいる!」

 

車長は下で待機していたジャックことヘルキャットに注意を促した。

 

「いつの間に!」

 

付近を警戒していたが隙をついて中に入ったのだろう。ジャックは駐車場を見上げ息を呑む。

それもそのはず。駐車場の4階相当の高さからBT-42が飛び出して来たのだから。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

「攻撃地点まで凡そ30秒」

 

IS-3、2を追うアンナが言う。

 

「そっちはどんな状況だい?」

 

「しっかりと付いてきてますわよ」

 

お銀は囮の千冬に問うとそう返答があった。

 

「それじゃぁあんたの方は?」

 

お銀はエミにも聞いた。

 

「こっちもいいけど…ずいぶんと無理矢理なやり方ね」

 

エミは答える。

サメチームとエミのヤークトパンターは橋の上でIS-3が通り過ぎるのを待っていた。もちろんただ待つのではなく、Mk.Ⅳの上にヤークトパンターが乗り上げて車体を斜めにしている。

 

車体ごと傾けることで俯角を稼ぎ橋の上からIS-3のエンジンデッキを撃とうというのだ。

 

「どうやら、こういうやり方が大洗の戦車道らしいからね」

 

「到着まで残り5、4、3,2…」

 

お銀の言葉を軽く流すようにアンナが秒読みを始めた。

 

「よし!撃て!」

 

敵が真下を通り射線上に出たタイミングでエミの号令が掛かる。

 

ヤークトパンターの砲弾がIS-3のエンジンデッキに突き刺さり行動不能となった。

 

「なに!上から!」

 

後続のIS-2車長が驚きのあまり声を上げた。

 

「どうします!車長!」

 

砲手が判断を仰いだ。

 

「エレファントだ!せめてエレファントだけでも…!」

 

車長からの指示を受け砲手がエレファントを狙うべく砲塔を旋回させる。しかし、ティーガーⅡを牽制するために後ろを向けていた事が仇となり、エレファントを照準器に捉えた時には相手もこちらを捉えていた。

前後からエレファント、ティーガーⅡに挟まれたIS-2。

 

「ここまでか…!」

 

車長が言った直後、2両からの攻撃が直撃した。砲手が道連れにとエレファントへ攻撃していたが重装甲部に命中し虚しく防がれた。

 

「やった!大戦果!」

 

喜ぶエミ。

しかしカトラスが接近する戦車に気付いた。

 

「左から敵!」

 

ケイラーのパーシングがサメチームとエミへ砲撃を始める。

 

「ヤバい!逃げろ!」

 

「とっつぁんから逃げる大泥棒みたいにずらかるよ!まぁあたいらは大泥棒じゃないけどね」

 

「うっほ!」

 

急いで逃げ出すサメチームとエミのヤークトパンター。

 

「ずいぶんと派手にやったわねぇ逃さないよ〜」

 

それを追うケイラーのパーシング。

 

 

 

まだ乱戦は始まったばかりだ。

 

 

 

 

次回「両者譲らない戦いです!」

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