ガールズ&パンツァー ドイツ極秘戦闘隊と親善試合です!   作:ロングキャスター

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こちらは前回言っていた新4話となります。


丘上の攻防戦です!

 

丘の周りを全速力で掛けるパンターとT-34の部隊。

しかしツェフィカへ一報が入る。

 

「ツェフィカ曹長!一時の方向!上です!」

 

その声はツェフィカのパンター小隊の一員、パンターG型車長からだった。ツェフィカは報告された方角を見た。そこには丘を全力で降る黒森峰の戦車群がいた。

 

「敵が降りてきた?!いいわ迎え撃ってあげる!全車、一時方向!転進!」

 

一転して丘を駆け上がるツェフィカ隊。一方エリカの黒森峰隊も速度を落とすことなく一騎打ちの体制に入る。すると敵のパンター隊を追い越す形で敵のT-34/85が前に割って入る。

 

「T-34、撃たれるよ」

 

「ああ、あんたが早々に退場しないよう弾受けしてやるよ!」

 

T-34は盾になるつもりのようだ。

 

「撃ち方用意!」

 

エリカの指示を受け小梅のパンターG型とパンターG型2号車がT-34を照準器に捉える。

 

「いいわ…この全身が熱くなる感じ…最高じゃない!」

 

ツェフィカはかなり興奮している様子だった。

お互いの距離がぐんぐん近づき、そして…

 

「撃て!」

 

エリカの令でパンター2両が砲撃。砲弾は正面のT-34を撃ち抜いた。直撃を受けたT-34はそのまま白旗を揚げ、ツェフィカ達はその行動不能になった戦車を回避しさらに前進する。しかし今度はツェフィカのパンターD型の左右前方にそれぞれパンターG後期型、A型が配置。

 

「ほい!」

 

ツェフィカの合図で2両のパンターがドリフトの要領で砲身は正面のまま車体をそれぞれ左右に振る。

そしてもう一度ツェフィカは合図を出す。二度目の合図でD、A、G型が寸分の狂いもない同時射撃を開始。砲弾は黒森峰のパンター2号車に直撃。強力な75mm砲弾を3発同時に受けたパンターは車体をバウンドさせ急減速。そのまま白旗が揚がった。エリカ達は白旗を揚げた戦車を避け再び隊列を整える。

ツェフィカ等の車体を振った2両はすぐに体勢を戻し、

 

「今!」

 

ツェフィカの合図でパンター3両が左右に展開。彼女らの後方に居た残りのT-34/85、2両とパンターG型1両が現れ、

 

「撃て!」

 

シャラシャーシカの指示で残った3両が砲撃。エリカや小梅等は回避出来たが彼女の後ろに居たプラウダのT-34/76が1両、2発の攻撃を受けて白旗退場となる。

お互い速度をそのままに交差した。エリカのⅢ号とシャラシャーシカのT-34が激しく火花を散らしながらすれ違う。

 

「ほいっ!全力ターン!」

 

ツェフィカ以下3両のパンターが向きを変えて交差したエリカ、小梅らの3両と対峙する。一方残った3両は頂上目掛けて一直線だ。このままではひまわり、あじさい中隊の側面を取られる事になる。

 

しかし、エリカは伊達に黒森峰の隊長をしてる訳では無い。これを想定した上で飛騨エマのⅣ号G型とT-34/76を待機させていた。

 

「あのやろうを通すな!撃て!」

 

エマの号令でⅣ号、T-34が攻撃。しかしそれらはパンターに防がれてしまう。

 

「んなもん効くかよぉ!」

 

パンター車長は声を張り上げる。数的にも火力的にも完全に不利なエマ達が彼ら完全に食い止めるのはまず困難だ。このまま容易に突発されると誰も思っくだろう…しかし

 

「頼むわ!」

 

「了解」

 

エリカは誰かを呼んだ。

そしてパンターがゆっくりと照準を付けられ、一発の砲声が場の空気を変えた。パンターに強い衝撃が走り車体前方から黒煙が上がる。彼を狙ったの黒森峰のティーガーⅠ(212号車)。それは西住まほの搭乗車だった。しかし彼女はドイツ留学中だ。その為今はドイツからの留学生「ツェスカ」が搭乗していた。

 

攻撃を受けよろめくパンター…

 

「なんとぉ!」

 

パンター車長が叫ぶ。辛うじて直撃は避けられたようでヨロヨロしながらも前進をやめない。しかしあの攻撃で隊列が乱れたのは事実で、その一瞬の隙をエマは見逃さなかった。再び放たれるⅣ号とT-34の砲弾はシャラシャーシカのT-34を襲う。

 

「隊長!」

 

咄嗟に追従するもう1両のT-34が体当たりで回避させたが結果として彼が白旗を揚げることになってしまった。

 

「くっ…!ここは一旦体勢を整えたほうが良さそうね」

 

シャラシャーシカの言葉でパンターとT-34が転進。一旦距離を置く事にした。

 

「ふふふ…それでこそ黒森峰!最高よ!この試合の為に戦車道の戦い方を入念に叩き込んで来たんだから!」

 

「みんな、押し込むわよ。裏取り部隊が来る前に!」

 

エリカは風向きがこちらに向いている今のうちに再び攻勢に出た。

 

 

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頂上でドライ、ベータ中隊を砲撃中のあじさい中隊長、メグミは周辺を警戒しつつ一つの疑問を感じた。

 

「おかしい…コスモス、あさがお中隊を突破した部隊がもう現れてもおかしくないはず…」

 

彼女は一向に現れないアルファ、ツヴァイ中隊を不審に思った。

 

(まさか丘は攻撃目標じゃない?まさかアズミ達を待ち伏せしてるのかしら?いや、単純に丘を私達が取ったから出るに出られないとか?)

 

メグミはあらゆる可能性を模索した。

 

「こちらメグミ。アズミ聞こえる?」

 

「こちらアズミ。どうしたの?」

 

「そっちを突破した中隊が見当たらないの」

 

「え?もう現れてる頃よね?」

 

「ええ、だからあんたを待ち伏せてる可能性もあるから警戒し

て」

 

「了解」

 

メグミ、アズミの両名は簡素に情報を共有し通信を終える。そしてその時だった

 

「敵中隊、およそ8分で頂上へ来ます」

 

小島エミの一報でメグミは前方に視線を向ける。確かに敵中隊が距離を縮めている。

 

「いい!登らせちゃ駄目よ!ニーナ、あのヤークトティーガーを木っ端微塵にしちゃいなさい!」

 

カチューシャは言う

 

「全く人使い荒い人だべ」

 

KV-2がドライ中隊のヤークトティーガーに砲撃。しかしKV-2の152mm砲であってもヤークトティーガーの分厚い戦闘室は撃ち抜けない。

 

「やぁっぱアイツはバケモンだべ!」

 

「全車、攻撃を止めるな!敵の反撃を最大限阻止しろ」

 

エンドラーは前進する全車に通達し作戦を練る。

 

(さて、丘を奪取するにはどうするか…鍵だったツェフィカが黒森峰の迎撃でほぼ使えなくなってしまった。正味今現状は向こうに有利な風が吹いている。地形の不利を補うには…隊の到着まで地盤を固めとかないといかん。その為にはなんとかツェフィカに息を吹き返してもらわないとな)

 

エンドラーは無線に手をやる

 

「ケイラー曹長、ドゥーェン、頼みがある…」

 

「…ok、分かったわ」

 

「ヤヴォール。でもいいんですか?」

 

「ああ、今は戦力がほしい」

 

エンドラーの指示に二人は承諾しすぐ行動を開始し、彼も無線を終えキューポラから頭を出し今一度状況を確認する。そして激しい衝撃と共にけたたましい跳弾音が車内に轟く。

 

「ちっ…JS-2か…こちら中隊長車。そちらのJS-2でプラウダのスナイパーの動きを鈍らせてられるか?」

 

「了解。やってみます」

 

エンドラーはシャラシャーシカ隊のIS-2、2両にノンナに精密射撃させないよう頼んだ。

2両のIS-2が射撃しノンナ車を激しく揺らす。

 

「中隊長。頂上到着までおよそ6分」

 

エンドラーはヤークトパンター車長からの報告を受け腕時計を確認した。

 

「全車!微速前進!少しタイミングを合わせよう」

 

ドライ、ベータ中隊の動きが鈍る。ひまわり、あじさい中隊はチャンスとばかりに攻撃を一層強めた。

 

「エリカがパンター隊を抑えたせいで、計算が狂ったようね。とすると、敵は打開するために増援を呼んだと考えた方が良さそうね」

 

さすが大学選抜チームの中隊長に任命される人物だ。メグミは鋭い洞察力でエンドラーの手を読む。しかし全てを読み取った訳では無いようだ。

 

「攻撃が激しくなってきたな」

 

エンドラー車の装填手がそっと呟く

 

「そうだろう。恐らく向こうさんは俺らが動きを遅らせたのを見て、『別動隊が抑えられて計画が狂った』と考えてるんだろう」

 

エンドラーはすかさず敵の動きを汲み取る。

 

「だとしたら、完全に手の内はバレてるじゃないですか」

 

これは別のヤークトティーガー車長だ。

 

「いや、完全には汲み取れてないはずだ。…所詮、俺達がただの囮だってことはな」

 

 

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「そういえば、なぜ丘を取らないんです?その方が有利でしょう」

 

ブラッドハウンド連合、シャーマンファイアフライの車長がウィットナーに問う。

 

「確かに高所有利は戦闘の常識だ。だがその為に大損害は出したくない。」

 

ウィットナーは淡々と答える

 

「今俺達がやってるのは戦車道だ。実戦のように規模も部隊も自由に選べる訳じゃない…通常なら砲兵や航空機を使うが決められた数、レギュレーションに則って戦う必要がある。第一、選抜戦でカールなんぞ出してくる奴らだぞ?たまったもんじゃない」

 

「だったらこっちも出せば良い」

 

ファイアフライ車長が言う

 

「そう、だから()()を持ってきたんだ。本当は数が許すならシュツルムティーガーを持ってきたんだがな」

 

「ええ、でしたら我々もビショップを持ってきましたのに…」

 

英軍『ファントムナイツ』の隊長、エマ・パターソンが少し落胆して言った。

 

「ビショップ?プリーストじゃなくて?」

 

ウィットナーが聞く。

 

「プリースト?あんな物は下品よ!ビショップこそ可憐で美しいわ!」

 

「…なんでコイツはプリースト嫌いなんだ…?」

 

 

ウィットナーは呆れたように呟く。

 

「アメリカ製だからですよ。この人、純英国製しか認めないんですよ。…俺等のファイアフライやアキリーズも仕方なく使ってるらしいし」

 

皆苦笑するしかなかった…

 

「純英国製なんて言いように言うな。この人変なのばっかり好きだろ」

 

「やっぱうちの隊長は変わってんなぁ…駄目かもしんね」

 

「なんてことだ…もう助からないぞ」

 

チャレンジャーの装填手、車長、操縦手がそれぞれぼやいた。

 

「試合が終わったらよ〜く覚えて置きなさいよ」

 

ニッコリと笑うエマだがその目は笑っていない。

そうこう話している内に通信が入った。

 

「敵中隊接敵。およそ10時30分の方向、およそ450ヤード」

 

ウィットナーは双眼鏡を覗いた。

あんこうチーム率いるたんぽぽ、すいせん中隊だ。ウィットナーは無線に手をやる。

 

「全車、10時30分方向へ回頭。縦隊を組んでゆっくりと網をかけるように敵のしょうめに回れ」

 

「了解。砲撃します?」

 

エマが問う

 

「いや、300ヤードを切るまで待機」

 

ウィットナー達アイン、チャーリー中隊は横隊から縦隊へ隊列変えゆっくりとたんぽぽ、すいせん中隊の正面に回り込む。

 

「こちらダージリン。敵発見、1時の方向距離450ヤード。」

 

みほはダージリンの言う方向を確認する。敵の部隊がゆっくりと縦隊になって正面に回って来ようとしていた。

 

「敵はティーガーに、Ⅲ号、Ⅳ号、コメット、ファイアフライ、チャレンジャー、アキリーズ、ブラックプリンスって感じですね」

 

双眼鏡で見ていた秋山が相手の戦力を読み上げていく。

 

「17ポンド持ちが大勢いますわね...わたくし達もブラックプリンスを持ってくれば良かったわ」

 

「...持ってませんけど...」

 

「敵は恐らく、火力、防御力を武器に正面突破を狙ってると思います。このまま11時方向に転進。」

 

みほの指示の元、たんぽぽ、すいせん中隊は進路を変えた。

 

「なるほど。そっちと丘上で俺達を挟もうって事か」

 

ウィットナーはみほ達の動きを読み取る。

 

「エンドラー、そっちの状況は?」

 

「こちらは依然敵と交戦中。微速にて前進中です」

 

「ケイラーは?」

 

「あと3分待って」

 

「よし…全車、縦隊から横隊へ変更。敵正面に突っ込む」

 

ウィットナーの中隊が横隊になり速度を上げて向かってくる。

 

「敵、来ます!」

 

ルクリリがいう

 

「データによるとこちらは36%戦力が劣っています」

 

毎度の如く、アッサムはパソコンとにらめっこしている。

 

「撃って来ない…」

 

「確実な距離まで引き付けてるのでしょうか」

 

みほが呟き、華が語り掛ける。

 

「でも丘は取ってるわけだし、こっちが有利でしょう?」

 

「大学選抜戦を忘れたのか?」

 

沙織の言葉に麻子が被せる。

 

「あじさい中隊、支援可能ですか?」

 

「こちらメグミ、準備は出来てるわ」

 

「分かりました…それではみなさん砲撃開始!」

 

号令により大洗連合の砲撃が始まる。敵への命中弾はないがしっかりと砲弾は届いた。

 

「撃って来たか…少々早いがこっちも撃ち返すか。全車、砲撃!」

 

すかさずウィットナー達も反撃。彼女達よりも強烈な反撃が襲う。

 

「ぐぅ…さすがに狙いは正確ね」

 

ベルウォールのエミが言う。さすがに実戦で十二分の練度を上げてきた彼等の砲撃は命中こそなくとも脅威と言えた

 

「あじさい中隊、支援お願いします。」

 

 

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「あじさい中隊!砲撃開始!」

 

みほの要請を受けメグミ率いるあじさい中隊は砲撃を開始。放たれた砲弾がウィットナー達の戦車を大き揺らすが、依然進軍スピードが衰えることがない。

 

「そのまま撃ち続けろ!」

 

あじさい中隊は手を緩める事はない。

しかし一本の無線が戦局を変えた。

 

「西住さん!後ろ!」

 

そど子からの無線がこちらにも流れてきた。メグミはたんぽぽ、すいせん中隊の後方を見た。そこにはアメリカ戦車が数輌回り込んでいた。

 

「回り込まれた!?」

 

みほは咄嗟に言う

 

「すいせん中隊転身。目標7時方向。...アズミ、そっちを突破したのはどんな部隊?」

 

ルミは情報を求めた。

 

「パーシングとシャーマンの部隊よ」

 

「てことはあれが突破した中隊か」

 

「中央じゃなく、たんぽぽ、すいせん中隊を狙うとは...あじさい中隊目標変更!目標2時方向。たんぽぽ、すいせん中隊の支援を開始よ!」

 

メグミはすかさず攻撃目標をケイラー達アルファ中隊に切り替え攻撃支援を開始。しかし再び別の無線が入る。

 

「姐さん!後ろっす!」

 

ペパロニがアンチョビを呼ぶ無線だった。その声の直後あじさい中隊の後方に砲弾が着弾する。

ファインツのドライ中隊が丘に進行していた。

 

「こっちも!敵の主力は森林を突破した方か!こっちと向こうの敵はただの囮か!」

 

メグミはファインツの隊へ攻撃を開始。

 

「お待たせ〜。バレないように遠回りしたから大変だったよ」

 

「そのせいで俺達は長い間待たされたし」

 

ケイラー、ファインツが言う。エンドラーはそれを軽く流し

 

「よし、全車前進!」

 

エンドラーの隊が速度を上げて前進を開始した。

 

「うわっ…こちらヤークトティーガー2号車。履帯損傷、行動不能です!…やろう!こっちの足回りはレア物なんだぞ!」

 

「ヤークトティーガーを置いて残りは全速!丘を一気に奪取する!」

 

「まずい…!エリカ隊長!敵中隊が速度を上げて前進!」

 

ティーガーⅡの入間アンナがエリカに報告する。

 

「くっ!間に合わなかった!」

 

「さぁどうする?黒森峰の隊長さん。悠長に構えてる時間はないわよ」

 

ツェフィカは言った。

エリカが指示を考えていたその時、衝撃と共に着弾音が響いた。エリカが後方に視線を向けると、ファインツの隊からツェフィカへの援軍が全速力で向かっていた。

 

「Ⅱ号L型!」

 

「ルクス!」

 

エリカと小梅は増援の到着に声を上げた。

アルファ中隊からのM18とドライ中隊の偵察車、Ⅱ号戦車L型 ルクスの2両だ。

 

「全員撤退!丘を放棄してたんぽぽ、すいせん中隊と合流!」

 

エリカはそう伝えるとすぐに丘を登り頂上の中隊への合流を急いだ。

 

「させない!」

 

シャラシャーシカのT-34がエリカのⅢ号を狙うが、間一髪で割って入った小梅のパンターに防がれてしまう。

 

「にゃろう!覚えてろ!」

 

エマのⅣ号も転進。プラウダのT-34が後を追うがM18の餌食となった。

 

「おっと、お前は行かせん」

 

M18は全速力でT-34と並んだと思ったら、戦車の周りをドリフトするように旋回し、車体を滑らせながらT-34の車体正面を撃ち抜いた。M18そのまま撃破した戦車を一周回り、エマのⅣ号を追いかける。機動力の差で追い詰められるエマだったが辛うじてツェスカのティーガーの攻撃で動きを遅らせる事ができた。

 

エリカ達は頂上まで登り、撤収中のひまわり、あじさい中隊と合流。そのままたんぽぽ、すいせん中隊と合流の為に丘を降りた。

 

「たんぽぽ、すいせん各車へ。エリカさん達の合流まで堪えて下さい!合流後は左舷の森林へ入って敵を撒きましょう。その後農村地帯に入ります!」

 

「こちらアズミ。コスモス、あさがお中隊は迂回してそちらと合流します」

 

大洗連合は一つ一つ冷静に対処を始める。

 

「こちらエンドラー、丘の奪取に成功しました。敵は丘を放棄して撤退。追撃を開始します。」

 

エンドラー達は撤退する敵中隊を追いかける。

 

「ツェスカ、しっかり付いてきなさいね」

 

エリカは優しく声をかける

 

「はいっ!煙幕を張って時間を稼ぎます!」

 

「頼んだわ」

 

ツェスカはティーガーの発煙装置からスモークを展開。敵の視界を断つ。

 

「クソっ煙幕か!迂回しろ!」

 

ファインツは部隊に指示する。

 

「Это чувствует дежаб(これはデジャブを感じますね)」

 

「Да, полностью(ええ、まったく)」

 

「二人とも、日本語で話なさいって!」

 

ロシア語で喋るノンナとクラーラに毎度の如く怒鳴るカチューシャ。

 

撃ち下ろしが出来るポイントに車体を停めたSU-85とM36。

SU-85が放った85mmのAP弾がKV-2の砲塔側面にかするように命中し跳弾した

 

「こんのぉ...ナメんなよぉ!」

 

ニーナが言い、KV-2は152mm弾を放つ。そしてなんと、奇跡的にそのSU-85に命中しSU-85は仰け反るようにひっくり返ると底面から白旗を揚げた。

 

「わっ!あたってべぇ!?」

 

「クソッタレ!」

 

M36の砲手は毒づき、お返しとして90mmのAP弾を撃った。砲弾はきれいにKV-2を捉え白旗を揚げた。が、その直後に正面からノンナのIS-2からの砲撃をくらいM36も転倒した。

 

「だあぁぁぁっ!クソ連が!」

 

「やはりバイアスは最強...」

 

「現実世界でもバイアスは存在した?!」

 

「お前らな...」

 

SU-85とM36の車長の言葉にファインツは呆れる

 

「良し!俺達も追い込むぞ!」

 

ルクスが稜線を駆け上がり撤退するカチューシャ達の後方に出ようとした。

しかし、突然甲高い金属音が断続して鳴り響く。

 

「なんだ?」

 

車長が周りを見る。するとそこにはこちらに8mm機銃を掃射するカルロベローチェがいたのだ。

 

「豆タンクか。気にするな!」

 

車長はそのまま無視することにした。しかしカルロベローチェに乗るペパロニは執拗に機銃を浴びせ、前方に回り込んで再び掃射した。

 

「クソっ!カンカンうるさい奴だ!コイツからやれ!」

 

砲手はペパロニに向けて20mm機関砲を発射。8mmとは違う重厚な発砲音だ。しかしペパロニは翫ぶように機銃を浴びせたり、肉薄して機関砲の死角に入ったりして挑発し続ける。

 

「こんのぉ!小賢しい奴!」

 

「鬼さんこちら手のなる方へ〜」

 

ペパロニを追うルクス。

起伏を飛び越え追い詰めようとしたが、そこには継続のKV-1Eが待ち伏せていた。

 

「アバババ!かーべーは聞いてない!」

 

ルクスは慌てて進路を変えてその場を後にする。間一髪の所で砲撃を回避しそのまま逃げる。

 

「全車、追撃中止!あとはお預けだ」

 

ファインツの令を受けて追撃が中止された。

 

 

ひまわり、あじさい中隊が難を逃れた後、たんぽぽ、すいせん中隊は膠着状態のまま、ウィットナー等と交戦を続けていた。

 

「こちらエリカ、まもなくそっちと合流出来るわ」

 

「了解しました。合流後は速やかに森林を抜けます!」

 

「全車輌、撤退準備!」

 

みほの言葉を引き継ぐようにルミが言う。

散発的に、相手に攻めこまれないように砲撃を続けると左手から戦車隊が現れた。

 

「合流を確認しました。全車輌、右の森林に転身!」

 

みほは撤退の指示を出した。

 

「敵中隊の合流を確認。攻めますよ」

 

「待て!攻撃は続行しつつ撤退させろ」

 

エマの指示をウィットナーは止めた。

 

「こちらの損傷車両を放置するわけにはいかん。深追いせず部隊を再編し警戒して乗り込むんだ」

 

「…了解です」

 

エマは不服そうに答える。まあ、先ほどあんなことを言ってたのだし、そういう反応が妥当だろう。

アインス、チャーリー中隊は見せかけの撤退阻止攻撃を行い大洗連合を見送る。

 

程なくして大洗連合は森林の奥深くまで撤退し、辺りには交戦前の静けさが戻った...

 

 

 

 

 

 

次回、「アンブッシュ」


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