ガールズ&パンツァー ドイツ極秘戦闘隊と親善試合です!   作:ロングキャスター

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こちらも編集を加えました。


まるでノルマンディです!

 

大洗連合は森を越えた先にある農村に陣取っていた。そしてその農村には小高い丘があり、丘の頂上には教会が建っている。

 

みほはその教会を本部とし防衛戦を展開することにした。

 

「優花里さん、状況はどうです?」

 

みほは教会のさらに上、鐘がある鐘塔に登り辺りを偵察していた。

 

「特に変化ありません」

 

「了解しました。引き続き警戒をお願いします」

 

「なかなか現れませんね」

 

「やっぱり防衛線引かれてるのを警戒してるのかな」

 

華と沙織が言う。

 

「多分...でも、来ないからこそ今のうちに完全な防衛線を敷いておかないと」

 

「西住隊長、こちらレオポン。全車輌の修理終わったよ」

 

ナカジマから無線が入る

 

「了解しました。それでは各車持ち場についてくださ...」

 

「西住殿!敵部隊来ました。12時方向、正面です!」

 

優花里からの一報が入った。

 

「皆さん、正面です警戒してください!」

 

みほは改めて注意を促した。

 

だが、この時その場の全員が再び雨が降って来るなど夢にも思わなかった...

 

「敵部隊そのまま来ます!」

 

優花里はそう伝える。左右に別れる気配もなく楔型陣のままこちらに突っ込んでくる。

 

「正面に増援を送ります。サンダース、ベルウォールの皆さんお願いします」

 

みほは指示した。

 

「なぁ、なにか変な音しないか?」

 

麻子が言う

 

「変な音?」

 

「確かに聞こえますね」

 

みほが聞き返すと華も聞こえると言ってくる。

 

「上から?」

 

一同が上を見上げたちょうどその瞬間、辺りの地面が噴火したかのような轟音と爆発を起こした。

 

「キャァァァ!」

 

「な、なに!?」

 

突然の出来事に皆の思考はついていかない。そんな状況の中で、空から飛来する謎の爆発物は一向にやむ気配がない。

 

「こ、怖い!」

 

「助けて!」

 

皆の悲痛な叫びが轟音に混じり聞こえる。

 

「皆さん、外に出ている人はすぐに戦車の中か下に隠れて!」

 

だが、聞こえないのかただそこでうずくまるものや、右往左往して逃げ惑うものばかりで誰もみほの声など聞いていない様子だった。

 

「このままじゃ...」

 

みほは爆発音の中に聞こえる不気味な音に気がついた。みほはその音の主の方に振り向く。それは教会が崩れ落ちる音だった。

先ほどまで綺麗な西洋風のレンガ作りの教会だったのに、今はそのレンガを四方にばらまきながらくずれ落ちている。

みほは息を飲んだ。今目の前で起きてるこの惨劇は戦車道なんかじゃない。

 

やがて砲撃は止み、辺りには静けさが戻った。

 

「大丈夫か!」

 

「みほ、応答しなさい!」

 

無線が混線している。みほは現状の把握と混乱している仲間たちを落ち着かせる為に無線を入れた

 

「皆さん無事ですか?とりあえず落ち着いて。各車長、乗員の安否を確認してください。」

 

しばらく無線は鳴りやんだが、すぐに安否を報告する無線が入ってくる。

とりあえず、全員無事なようだ。

しかし、みほはハッとした。

 

「ゆ、優花里さん!」

 

みほは崩れた教会を見上げた。ボロボロになった教会の鐘塔に優花里の姿を探した。

 

「な、なんとか生きてます...」

 

無線機から優花里の声がした。みほは安堵した

 

「やだもぉ...」

 

「恐怖を感じた...おばあより怖かった...」

 

皆恐怖を覚えたようだったが、ブラッド・ハウンド隊は容赦などしなかった

 

「こちらに安藤、正面から敵部隊!」

 

先ほど前進していたブラッド・ハウンド連合が正面まで来たようだった。

 

ボカージュの入り組んだ道を少し進むと、マジノ、BCが構築した防衛ラインが現れる。そしてそこに、のこのことやって来たのはケイラーのパーシングだった。

パーシングは安藤のソミュアを発見すると発砲するのだが、手前に落ちてしまう。

 

「押田、ARLの支援求む」

 

「了解」

 

押田のARLともう1輌のARLがケイラーに照準を合わせる。

押田車の砲弾は砲塔をかすめ、もう1輌のは命中することなく空を切る。

 

「流石にARL2輌は分が悪いなぁ」

 

ケイラーのパーシングは後退を開始

 

「正面に、ARL2輌、ソミュア3輌、B11輌がいるよ」

 

「了解した」

 

ケイラーはウィットナーに報告を入れ返答があったのを確認すると

 

「キャシー、お願いね」

 

と、後続の車長に言った。キャシーは「yes ma'am」と元気に答えると、後退したケイラーの代わりに前方に入った。

 

「ん?またスーパーパーシングか」

 

パーシングが隠れた生垣からぬうっと出てくる長い砲身を見て言った。

 

しかし、その戦車の全貌が明らかになったとき、それがスーパーパーシングでないことに気付く

 

「何だと!」

 

「な、何ですのあれ...」

 

押田とエクレールが声をあげ、

 

「T、T29...」

 

とフォンデュが言う

 

『T29』とは、アメリカ軍が第二次世界大戦後半頃に開発した重戦車だ。キングタイガー対策のT26E4火力こそ十分な性能は持ち合わせていたが、M26から砲を変更しただけといういわゆるその場しのぎ程度でしかなかった為に火力、防御力共にキングタイガーに対抗出来る事を目指して開発された戦車だ。

 

 

キャシーはARLを狙うように指示した

 

「fire!」

 

T29が放った105mm砲弾がARLの2号車の車体正面を撃ち貫く。

 

「くそ!」

 

押田はT29目掛けて砲撃する。しかし、弾は弾かれてしまう。T29はゆっくりと前進を開始、それに合わせてケイラー達も後に続く。

 

「エリカさん、そちらから射線は通りみすか?」

 

「いけるわ。アンナ支援砲撃を!」

 

みほの質問にエリカは素早く答えティーガーⅡの入間アンナにT29へ攻撃を指示。

 

 

「敵ケーニヒスティーガー、R43地点に存在。ヤークトパンターはR52地点です。なお、敵指揮車輌は丘上から不動の模様」

 

ブラッド・ハウンド隊の偵察車が大洗連合の戦力を偵察いていた。

 

「了解した。駆逐部隊、ヤークトパンター、ティーガーⅡを攻撃。高射部隊は再度丘上を攻撃し、それとタイミングを合わせてシャラシャーシカ隊が右側方をつけ」

 

「「了解!」」

 

ウィットナーの指示に皆が答える。

 

一方、みほは崩れた教会から降りる優花里を気遣っていた。

 

「優花里さんけがは?」

 

「ご心配に及ばず、大丈夫です。」

 

「でも、流石にあれはひどいよ!ゆかりん殺されかけたじゃん!」

 

「私もケーキが台無しですわ」

 

マリーが言う

 

「あんなん卑怯だ!正々堂々真っ正面から来やがれってんだよ!」

 

「まったくその通りね」

 

ベルウォールの山守 音子と土居 千冬が言う

 

「とりあえず、あの攻撃の正体を突き止めないと...」

 

みほは言う。

 

「榴弾砲じゃ無いんすか?」

 

「榴弾砲であの弾幕は無理じゃなくて?」

 

ペパロニの予想にマリーは言う。

 

「確かに、あれだけの弾幕を榴弾砲でするにはとてつもない数がいるよな」

 

アンチョビが言った。

 

「そういえば、飛来して来る前にロケットのような音しましたよね」

 

優花里は攻撃が来る前を思い返していた。

 

「ロケット...」

 

「ロケットなら、カチューシャで決まりね!」

 

みほが該当戦車を思い返していると、威勢良くカチューシャが言った

 

「カチューシャ、あれは戦車にならないので規定違反ですよ」

 

ノンナが冷静に言う。

 

「わ、分かってるわよ!」

 

「じゃあ一体...」

 

そうみほが再び考えようとした直後だった。

 

「また来る!」

 

あの飛来音を聞いたエミが言った。

そして丘上は再び地獄と化した。

 

「ここは危険です。全車撤退します!」

 

みほは教会を放棄することにした。ここに居ても的になるだけだろう。砲撃はしばらく続き教会は完全に元の姿を失い、瓦礫と化してしまった。

 

 

「丘上への攻撃が始まった。シャラシャーシカ隊、侵攻を開始せよ」

 

ウィットナーは言った。

 

正面をケイラー隊が襲い、村の右側面をシャラシャーシカ隊が攻める手筈になっていた。ウィットナーはこちらが不利にならぬよう、丘上を陣取るみほ達を追い返したのだ。

 

「駆逐部隊状況はどうだ?」

 

「ヤークトパンターの注意を引き付けていますが、ティーガーⅡは陣地を変換し、もう1両のヤークトパンターからの砲撃を受けています」

 

「そうか...そのまま攻撃を続行してくれ」

 

「ヤヴォール」

 

黒森峰、ベルウォールの駆逐戦車は遠方より攻撃してくる敵駆逐部隊と交戦していた。

 

「く...流石にこの距離は難しい...」

 

ヤークトパンターの車長、小島エミは言った。

それもそのはずだ。交戦距離は優に1kmは超え、2kmに達するレベルだ。この距離を狙撃するのは容易なことではない。しかし、着実に相手はこちらへの精度をあげている。その証拠に何発かの砲弾がヤークトパンターに命中した。しかし、ヤークトパンタへの当たりが甘くその弾はことごとく弾かれていた。

 

「何で当てられるんだ?!」

 

ヤークトパンターの砲手は言った。

ブラッド・ハウンド隊は死地を潜り抜けて来た。その結果、彼ら的には一般的な技術でも、この世界では驚異的な実力をもっていることになってしまっているのだ。

もちろん、その中のトップに君臨する名砲手がいるのだが。

 

 

「流石のお前でもこの距離の撃破は無理か?」

 

「いや、遮蔽物が邪魔で撃ち抜くのが難しいだけだ」

 

車長の言葉にブラッド・ハウンドのミハエル・イェーガーは言った。

 

イェーガーはヤークトティーガーの砲手だ。

 

 

狙撃は簡単ではない。この事実は誰もが容易に理解できるだろうが、実は想像以上に難しいのだ。

砲手は距離と風速をある程度読む必要がある。これは誰もが分かるだろう。しかし、現実はこれに合わせて温度も読む必要がある。

気温もそうだが、砲弾は大量の火薬によって飛び、その飛距離と威力を増幅させるために砲身に刻まれたライフリングによって加速していく。この時砲身は発砲と摩擦熱で熱くなる。つまりは撃つ度に加熱され弾道も変わっていくのだ。

 

要約すると砲手は距離、風速、気温そして砲身の温度まで計算しなければならないのだ。

 

「エレファントまで来たな」

 

ヤークトティーガーの車長は言った。エレファントにはベルウォールのマークが付いている。

 

「千冬、おせぇんだよ」

 

「あら、知らないの?エレファントは足が遅いのよ」

 

音子の言葉に千冬は言った。

 

「あのヤークトティーガーやってくれ。あいつが一番腕利きだ」

 

「分かったわ」

 

千冬はイェーガーのヤークトティーガーを狙った。

 

 

「シャラシャーシカ隊、そちらから約2時方向、ヤークトティーガーがいる。距離はおよそ300」

 

「了解。サーシャお願い」

 

「да」

 

シャラシャーシカは先頭を走るサーシャのIS-2に依頼した。そして、生垣から側面を向けるベルウォールのヤークトパンターに狙いを定めた。けたたましい砲撃音と共に間にある生垣を2列ほど吹き飛ばしてヤークトパンターが白旗を揚げる。

 

「なに!右から!?回り込まれた!」

 

小島エミは言った。

 

「おい大隊長、右からも侵入されたぞ」

 

「了解しました。サンダース、聖グロリアーナ、レオポンさんは正面、プラウダ、ベルウォール、アリクイさん、かめさんチームが右手をお願いします。残りは待機」

 

「了解しましたわ。でも、相手が対地装備を持っている以上、集合するのはよろしく無いのではなくて?」

 

「...」

 

ダージリンの言葉にみほは黙った。

確かにこの現状で戦力を集中させるのはかえって危険だ。

 

「とりあえず、相手が何なのかを突き止める必要がありますね」

 

カルパッチョは言った。

 

「でも、戦車道に出れるロケット戦車なんているの?」

 

カチューシャは聞いた。皆が黙るなか、優花里は該当戦車を思い付き、口を開こうとしたちょうどその時だった。

 

「あるわ一つ」

 

優花里が言うよりも先にケイが口を開いた。

 

「なんだ?それ」

 

アンチョビが聞く。

 

「...カリオペよ」

 

 

カリオペはアメリカ軍が開発したロケット発射装置だ。この『T34 カリオペ』はM4 シャーマン戦車の砲塔頂部に取り付けられ、ロケット弾を60門束ねたもので射程は4kmにも達する。

カリオペはこの発射機の事を指しているが、シャーマンに取り付けられている姿の為、このシャーマンも合わせた姿でカリオペと呼ばれることが多い。

 

「なによそれ」

 

「シャーマンに60門のロケット弾をくっ付けたものよ」

 

「相手が使うなら、私達も持ってくれば良かったですね」

 

アリサが言った。

 

「ちょっとなによそれ、持ってるの?!」

 

「もちろんよ。シャーマンだし、何よりクールじゃない?」

 

「あんなの受けてクールとか良く言えるわね...」

 

ケイの言葉にカチューシャはあきれた。

 

「カリオペだとしたら厄介ですね」

 

優花里は言った。

大学選抜チームのカール自走臼砲よりも厄介だろう。カールは巨体に600mm砲というロマンだけを追い求めたような車輌であるのに対し、カリオペはシャーマン戦車の車体に60門のロケット砲を積んだ戦車だ。カールの装甲が極薄であるのに対しカリオペはシャーマンの車体なのでそこそこの装甲を持ち、機動性も良好でりながらたちの悪いことに、その60門のロケット砲は弾が切れたら再装填(発射機を取り替える)事ができる。

 

「自衛用の主砲まで持ってますからね」

 

「でも、主砲と連動させるために穴を開けてるってあるけど?」

 

優花里の言葉に沙織が戦車でーたを見ながら言った。

 

「確かに、そういう風になっていたけど現地改修で防盾の張り出しに板を付けてそこに取り付けるようにしているのもいるから、恐らく相手もそういう改修をしてるはずよ」

 

ケイは言った。

 

「言われてみれば、うちが森林で戦闘してた時にアタッチメントのようなものを付けたシャーマンを見た気がするわ」

 

アズミが言う。

 

「恐らく、発射機だけ外して戦列に加わっていたのではないでしょうか…このまま野放しには出来ませんよね?」

 

優花里がみほに問う。

 

「どんぐり小隊で行く?」

 

杏が何やら楽しげに言っている。

 

「会...じゃなくて、角谷先輩お願いします」

 

「ほ~い。じゃあどんぐり小隊再度出撃!チョビもついてきてねぇ~」

 

「私もか...というか、チョビって呼ぶな!」

 

「西住殿」

 

「何?優花里さん」

 

「もう一度、丘上で偵察します」

 

「何いってるの?ゆかりん!」

 

「恐らく、偵察車輌で丘上を監視してたんだと思いますが、人が一人だけいるだけだと、遠方からは確認しづらいでしょうし、なにより一帯を把握しないと...」

 

「でも...」

 

「危険だぞ」

 

皆が優花里の行動を止めようとする。だが、優花里の言っていることも一理あるのが、みほの判断を余計鈍らせる

 

「西住殿、私を信じてください」

 

優花里はただみほの目をしっかりと見据えた

 

「...わかりました...でも、危ないと思ったら直ぐに帰って来てください!」

 

「はい!」

 

優花里はそう言うと車外に飛び出した。みほはキューポラの上から心配そうに優花里を見つめる。

 

 

 

 

 

一方、ウィットナーは後方から双眼鏡を片手に戦局を見守っていた。

そんなウィットナーのもとにティーガーによじ登ってくる一人の男がいた。

 

「隊長、どうぞ」

 

エンドラーだった。

 

「ん、ダンケ」

 

ウィットナーな差し出されたコーヒーを手に取り、一口飲んだ。

 

「こっちのコーヒーは質がいいみたいだな」

 

「ええ、安くても上質な物もありますね」

 

「それに加えて、お前の淹れ方もいいしな」

 

ウィットナーは笑った。

エンドラーはもとの世界において、カフェを営む両親のもとに生まれた。なので、幼い頃からコーヒーや紅茶の淹れ方は叩き込まれていたのだ。

彼の生まれ育ったカフェは地元民の憩いの場になっていた。しかし、その憩いの場も今はない。激化するアメリカ軍の爆撃によって瓦礫にされてしまった。そして恐らくは両親も...

 

「副隊長が淹れるコーヒーは美味しいですからねぇ。うらやましい」

 

大隊長防衛の為にその場にいたツェフィカが言った。

 

「お前のは絶望的に薄かったからな」

 

「あれはお湯の量間違えただけです!」

 

ウィットナーの言葉にツェフィカは赤面した。

 

「俺が叩き込んでやろうか?」

 

「いや、結構です」

 

ウィットナーはエンドラーとツェフィカの言い合いを聞き流しながら、コーヒーを見つめた。

 

「こうやって、何も恐れることなくコーヒーや会話が出来るのはうらやましいな...」

 

「...確かにそうですね」

 

ツェフィカは言った。

 

「…了解。隊長、カリオペ隊によると再装填完了までおよそ30分だそうです。」

 

エンドラーはカリオペ隊からの報告をコーヒーを見つめるウィットナーに伝えた。

 

「分かった。カリオペ隊は再装填後その場で待機」

 

「それにしても、こんな手段…よろしいのです?」

 

ウィットナーが指示を出すと間髪入れずにエンドラーは彼に問う。

 

「ああ、少々手荒だが勝つにはそれしかないさ」

 

「勝つにはって...」

 

「実際そうだ。俺たちの錬度は遥かに上だろう。だが、俺たちは戦闘機や爆撃機による航空支援、砲兵による対地支援、そして、歩兵による近接支援を前提に訓練されているしそれが当たり前だった。一部を除いてな。...そんな俺たちが戦車オンリーの戦車道なんかをやったところで、戦車道に精通している彼女らが有利なことに違いはない。この序盤で想定異常の損害も出してる。」

 

ウィットナーはコーヒーを再び口に運んだ。

 

「俺もロンメル将軍のように優秀で頭もキレたなら、こんなに被害は出さなかったろう。…彼女達は試合をしてるつもりだろうが、俺にとってこれは試合ではなく戦いだ。そういう考えも悪くは無かろう?」

 

そしてまたコーヒーを飲む。だがその時だった。

 

「敵中隊規模、こちらに接近中!」

 

と無線が入った。三人はその方向に双眼鏡を向ける。

ヘッツァー、八九式中戦車、BT-42、CV-33カルロベローチェ、T-44、P40、T-34/85がいた。

 

「どんぐり小隊改め、中隊前進!」

 

杏は言った。

 

「このっ!隊長を狙いに来た!...全車、フォイア フライ!」

 

ツェフィカは護衛隊全車に号令を出し、その号令に合わせて突撃してくるどんぐり中隊に砲撃を開始した。

着弾と共に発生した土煙に消えたどんぐり中隊だったが、その土煙が晴れた後もその姿を消した

 

「うそ...消えた?!」

 

「ツェフィカ、双眼鏡を外せ...」

 

「ん?...あ、いた」

 

ツェフィカはウィットナーに言われた通りに双眼鏡を外す。しっかりとそこにはどんぐり中隊がいたのだった

 

「追跡開...」

 

「待てツェフィカ。行っても無駄だ」

 

「でも...」

 

「アイツ等は陽動しようと… いや、恐らくは本命はカリオペ隊か」

 

「なぜそう思うんです?」

 

エンドラーが聞いた

 

「お前等も選抜チーム戦を研究しただろう?相手にとって、カリオペの火力は強大だろうからな、潰したいだろうからな」

 

「だったら直ぐに追っかけたほうが...」

 

「この護衛隊の中で、追い付けるのはお前のパンターくらいだ。いくらパンターだとしても、7輌に袋叩きに合うだけだ」

 

「そっか...」

 

「とはいえ、このまま見過ごす訳もないがな...

カリオペ隊、そっちに敵中隊規模が向かった。注意しろ」

 

ウィットナーは後方のカリオペ隊にそう知らせた。無線からは「了解」という言葉が返ってきた

 

「ツェフィカのパンターDと、IS-2、Ⅲ号Mで後を追え」

 

ウィットナーは言った。

 

「でも、追うなって...」

 

「追撃はするなって意味だ。あの数では、カリオペ隊でも対処は無理だろう。お前らは後をこっそり追えばいい」

 

「なるほど!」

 

「だが、すぐすぐ行った所で向こうが場所を把握してるとは思えないからな...しばらくは待機するといい」

 

「ヤヴォール!」

 

ウィットナーはその返答を聞くと、コーヒーを思い出したかのように飲み始めた。

 

「さっき、勝つためにはっていったよな?」

 

「ええ。確かに」

 

エンドラーが答えた

 

「正直、勝ち負けはどっちでもいいとは思ってるんだけどな」

 

「へ?なんで?」

 

ツェフィカが聞いた

 

「どうせなら勝つのがいいだろう。だが、別にこれは戦争じゃない。勝とうが負けようが人は死なないし、それ以外の何かを失う訳でもない。...だったら、何も失わない敗北の味も味わってみるのもいいとは思わないか?」

 

「まぁ、それは一理ありますか...」

 

「いや、私は勝ちたいですよ!」

 

ツェフィカが強い口調で言った

 

「負けてもいいやって思うなんて出来ないです!勝つ気持ちでいって、私達の腕を見せつけたいし、そういう気持ちで負けた方がさっぱりするじゃないですか...」

 

何故自信を失ったのか、ツェフィカの口調は徐々に弱くなっていった

 

「ふっ...ハハハ!たしかにそうだな。お前、以外とスポーツマンなんだな」

 

ウィットナーは笑った

 

「じゃあ、ブラッド・ハウンドの勝利のために、作戦の大詰めといこう。ノルマンディ上陸作戦のような戦いになるだろうな。...よしケイラー、オーヴァーロード作戦を結構しよう。俺たちの戦車道を...いや、戦争道を見せてやろう」

 

 

 

次回、「オーヴァーロード作戦」

 

 

 

 




さあ、試合も中盤に差し掛かりました!
今回になって色々と新戦車まで出てきましたね。まだまだ、新戦車はでますからこうご期待!

さて、話は変わってサンダースのケイちゃんの話なのですが...
私、この前(と言っても、半年以上前)に気付いた事がありまして。
ケイはTVアニメで、「ザッツ戦車道。道を外れたら戦車が泣くでしょ?」と、言ってとてもフェアプレーを重んじる隊長だとされてますよね?

でも、劇場版の台詞でとても疑問に思ったのです
大学選抜チーム戦の時のミーティングにおいて、「優勢火力ドクトリンじゃない?1輌に対して10輌で攻撃ね」と...


ザッツ戦車道はどこにいったんだろう...

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