ガールズ&パンツァー ドイツ極秘戦闘隊と親善試合です!   作:ロングキャスター

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こちらも編集しました。流れを大きく変えてます。

簡単に前回までのおさらいです。

謎の力でガルパンの世界に来てしまったWW2の戦車兵たちは大洗の西住みほ率いる大洗連合との親善試合をすることになり、ノルマンディー地帯(生け垣エリア)での待ち伏せ戦術はロケットランチャー戦車『カリオペ』の猛威により体制を崩され懐まで入り込まれてしまいます。
そこで新たに編成したどんぐり中隊がこの『カリオペ』の撃破に向かうことになったのです。


って感じで本編どうぞ


地獄の業火を鎮火します!

 

「やっぱ、カリオペだった見たいっすね」

 

謎の砲撃の根元を探しに動いたどんぐり中隊。

そしてペパロニはおおよそ予想していたカリオペを見つけることに成功したのだった。

 

「茂みの裏に隠れてるみたいだが、上の発射機が丸見えだぞ」

 

アンチョビは言った。

茂みの裏で見つからないようにとしているカリオペだが、逆に見つけてくださいと言わんばかりに発射機が丸見えになっていた。

 

「やっぱり読みは当たってたねぇ」

 

杏は4km圏内で、隠れるのに最適な茂みのある場所をあらかじめ選定し、そこをくまなく探していた。そしてその読みは的中し、森の手前で護衛に囲まれるように配置されていた。

 

「護衛は...

イージーエイトにチャレンジャー、Ⅳ号...Hっすかね?」

 

ペパロニはアンチョビに聞いた

 

「さぁ...Gかもな。...あとは、なんだあれ?!」

 

アンチョビは双眼鏡越しに見えた大型の戦車に釘付けになった。

多きな車体に長砲身の主砲を備えたカーキ色の戦車。

 

「あれチリっすよ!」

 

「チリ?チリコンカンか?」

 

「五式中戦車 チリっす!」

 

『五式中戦車 チリ』は太平洋戦争中に大日本帝国陸軍が開発した中戦車で、パンター、ティーガーⅡに匹敵する巨大に『試製七糎半戦車砲(長)Ⅰ型』が装備されており、Ⅰ型は半自動装填装置を設けている。

 

 

「守りは厳重だねぇ」

 

杏は言う。

上記の通り、M4A3E8、チャレンジャー巡航戦車、Ⅳ号戦車J型、五式中戦車、アキリーズと、厳重な守りだ。

 

「ですが、カリオペは丸見えです。これを仕留めれば...」

 

河嶋は言う。

 

「でも桃ちゃん、見つかったら...」

 

小山は心配そうに言う。

 

「桃ちゃんと呼ぶな!」

 

「なら陽動して気を反らさせるかぁ...継続ちゃん?」

 

杏は継続のミカに意見を求めた。

 

「同じ作戦に意味があるとは思えないな」

 

「じゃあどうするんだ!」

 

河嶋が強めの口調で聞く

 

「どうせなら派手にやりたいなぁ」

 

ミッコが言う。

 

「Вы можете стрелять, но это скрыто и не хватает уверенности(狙撃できますが、隠れている以上確実性に欠けますね)」

 

クラーラが言う

 

「ロシア語はサッパリなんすけど...」

 

「狙撃できますが、隠れている以上確実性に欠けますね。と言いました」

 

ペパロニに言われ、クラーラは流暢な日本語で答える。

 

「てことは決まりでいいかな?」

 

杏は改めてミカに確認した。

 

 

 

一方、カリオペの護衛隊は周辺の警戒に神経を尖らせていた。

 

「恐らくは森側から来るだろうな」

 

護衛隊の隊長を任されていたイージーエイトの車長、ドリー・バークは森を監視していた。

 

 

イージーエイトとは、アメリカが開発した『M4 シャーマン』シリーズの最高傑作とも言っていい、『M4A3E8』の愛称である。語尾の『E8』をもじって『イージーエイト』と呼ばれる。

 

シャーマンシリーズの中でも有名な部類であろう本車は、新型サスペンションと新型履帯の採用により、戦中製造されたM4シリーズの中で最も優れた性能を持つと言っても過言ではないシャーマンに仕上がり、『走・攻・守』のバランスにさらに磨きをかけた。

 

 

「ジャック、そっちはどんなだ?」

 

バークはM18 ヘルキャットのジャックに聞いた

 

「敵は見つからんな、というか、こんな広大なとこをヘルキャット1輌で探せって、まず無理なんだよ」

 

「ふん、だろうな」

 

「だろうなってお前な」

 

「ま、しっかり頼むぜ」

 

「ったく...クソッタレ」

 

バークはそんな話をしつつ、ふと後ろを振り向いた。後方にいないか確認するためだったのだが、その一瞬目を話した瞬間だった。大きな砲撃音の後、無線機に撃破されたという報告が入った。それは護衛隊のⅣ号のうちの1輌だった。

 

「クソッ!なんだ!」

 

撃破されたというⅣ号の方に目を向けると、そこには勢いよく走り去る『BT-42』の姿があった。

 

「アイツか...なんだありゃ」

 

「アイツはBT-42。フィンランドのやつだ!」

 

もう1輌のⅣ号の車長が言う。

 

「足が速いぞ、気をつけろ!」

 

その車長がさらに警告する。

 

「全車、カリオペを護衛しつつ迎撃!他の車輌も来るはずだ警戒!Ⅳ号1号車とりあえず追撃!ジャック!敵の俊足が来た!」

 

その矢先だった。

 

車体に衝撃が走る。バークは再び辺りを見渡すとそこには...

 

「敵戦車!11時半の報告!なんだあれは!」

 

「T-44だ!忘れたか?」

 

チャレンジャーの車長が言う。忘れたか?というのも、本試合には不参加だが、テスト用にシャラシャーシカの隊が配備していたからだ。

 

「そういやいたな。ロシアかクソッタレ!」

 

バークは毒づいた。

先程の砲撃は車体正面に命中したが、角度が鋭かったことと、ドイツ戦車に対抗するために苦し紛れに装着していた増加装甲のお陰で弾くことができていた。

 

「ガンナー!11時半方向、ローダー!AP-T(徹甲弾)装填!」

 

「ラジャー!…装填完了!」

 

「Fire!」

 

「on the way!」

 

車長、装填手、車長、砲手の順番で忙しなく、そして荒々しくやり取りがなされE8は徹甲弾を放った。

しかし、砲弾はむなしく砲塔側面にかするように当たり弾かれた。

 

「Shit!」

 

「操縦手、下がれ!」

 

操縦手はシフトレバーを操作し、バックギアに入れ後退を開始する。

その間に敵のT-44はこちらに走り始めた。

 

「次だ!急げ!」

 

「装填完了!」

 

「Fire!」

 

再び放たれた徹甲弾は目標の少し手前に落ちる。

 

「クソッタレ!」

 

「一気にたたみかけるぞぉ」

 

「あいよ~」

 

T-44の後方からヘッツァまで現れた。

T-44の車長、南 陽子の言葉に杏は軽く流すような返答をする。

 

「なにやってる!」

 

E8の後方からチャレンジャーが現れ、T-44に砲撃する。

 

「アイヤ!」

 

チャレンジャーの砲弾はT-44のターレット部に命中、撃破した。

 

 

チャレンジャーはイギリスが開発した巡航戦車で、クロムウェルの後継にあたる。そういえば解説していなかったのでざっくり説明しておくと、クロムウェルの車体を延長し、大型の砲塔に17ポンド砲を搭載した戦車だ。

 

「クソ!ヘッツァが...!」

 

バークは言った。

T-44を撃破している間に、ヘッツァは一気に距離を詰め後方のカリオペに狙いをつけていた。

 

「カリオペいただきぃ!」

 

杏はヘッツァの75mm砲を撃った。

砲弾は茂みの裏に隠れるカリオペに吸われるように飛んでいき命中した。

 

 

...と、思われたが!

 

 

「ハッ!それはダミーだ!」

 

カリオペが隠れていたと思われた茂みから右に20mほど離れた木々の間から、偽装ネットと切り落とした木々の枝や葉っぱを載せ、巧みに偽装していたカリオペが姿を現す。発射済みの発射機をダミーに誤射を誘ったのだ。

勢いよく砲塔上部のロケット発射機からロケットの雨を降らせる。

 

「うわぁ~こっち向いてるぞ~」

 

杏はそう言い、柚子は急いでその場から逃げ出す。

 

「バカ!味方にあたる!」

 

チャレンジャー、E8はヘッツァ同様にその場から立ち去る。

 

「それは私のセリフだぁ!」

 

アンチョビの言葉と共に、P40、T-34/85

が続けざまに現れる。

 

「どんだけいやがんだ!」

 

チャレンジャーの車長は言う

 

「P40はどうとでもなる!85を何とかしろ!」

 

バークは叫んだ。

T-34/85を狙うが高速で移動する戦車を狙うのは並み大抵のことではない。

クラーラが乗るT-34はジリジリとバークのE8に近づく。

 

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一方先手を打ったBT-42も相手を翻弄するように走り回る

 

「くそ!さすがにⅣ号じゃ追い付けない!」

 

BT-42を追うⅣ号戦車J型の車長は言う。

 

「どうするミカ?」

 

「追い付けない戦車をどうこうする必要は無いよ...でも、数は減らしておくべきだからね」

 

「オッケィっ」

 

ミカの言葉にミッコが答え、車輌を180°ターンさせる。

BT-42とⅣ号が一騎討ちの体制に入った

 

...その時だ

 

「ミッコ右!」

 

ミカが注意を促す

右手の茂みから1輌の戦車が飛び出した。ミッコはとっさに車体を反転させ、その場から離脱する。

 

「快速相手には快速を!」

 

茂みから現れたのはジャックのヘルキャットだった。

 

「こいつの目的は陽動だ!俺が引き受ける。お前はカリオペを!」

 

ジャックはBT-42の追跡を引き受けⅣ号を護衛の方へ回した。

逃げるBT-42をヘルキャットが追う。

 

「うげぇ?!」

 

ミッコは驚倒する。

アクセル全開で疾走するBT-42。すでに十分過ぎる速度が出ているがヘルキャットはジリジリと追い付いてくる。

 

それもそのはず。ヘルキャット...

制式には『M18 戦車駆逐車』なのだが、この戦車の最大の特徴は約18tの軽量車体にシャーマンと同じ高出力エンジンを搭載した事による高速性能だ。

 

「おいかけっこで逃げられるとでも?」

 

ヘルキャットは確実に仕留められる距離まで近づいて来る。

 

「ねぇミカ!どうする?」

 

アキは尋ねた

 

「...彼の後ろにワープしよう」

 

「あいよぉ!」

 

ミカの提案にミッコが動く。

距離が近づいたタイミングで車体を左方向に180°旋回。BT-42の左履帯がヘルキャットの車体前面左側に乗り上げた。

乗り上げた弾みで片輪姿勢になったBT-42はミッコの操縦テクニックでそのまま再度180°回りヘルキャットの後方を捉えた。

 

アキは過酷な車内状況下で照準を合わせる

 

「トゥータ!」

 

BT-42は114mm榴弾砲を撃つ。

しかし、そう簡単にジャックもやられる訳はない。

 

砲撃のタイミングでヘルキャットは右履帯をロック。そのまま時計回りに車体が回り一瞬だけBT-42を照準器に捉えた。砲手はそれを見逃さず捉えた瞬間、発射スイッチを押す。

砲弾はBT-42の砲塔左側面に擦るように跳弾する。

跳弾の衝撃で再びバランスを取り戻したBT-42はまた走り始めヘルキャットとすれ違う。

 

逃げるBT-42と追うヘルキャット...

 

両者一歩も譲らない快速同士の高速バトルだ。

 

再びジリジリと詰め寄るヘルキャット。

それに対してミカは

 

「...ミッコ、減速」

 

BT-42は一気に減速。

後方から追い上げていたヘルキャットはそのまま追い越すと再び後ろを取られることになった。

しかし、ヘルキャットも車体を横にドリフトしながらこちらを狙う。両者共に弾は当たらず、失速した分再度加速する。

 

その場で両者はぐるぐると円を描くように時計回りに回り、そして撃つこのままでは両者共に平行線をたどるだけだろう。

 

「ミッコ、あそこに行こう」

 

ミカは少し離れたところにポツンと建つ一軒家に向かうことを提案した。

牧場なのか、所々に柵があり小屋まである。

ミッコは言われた通りそこまで戦車を動かした。ヘルキャットもそれを追う。

 

そして、BT-42は木造家屋まで行きそこを中心にくるくると回り始める。

わざと速度を落とし相手との距離を摘める。

 

「ミッコ、後退」

 

BT-42は突然後退した。

BT-42はヘルキャットとすれ違うように後ろに下がる。

ヘルキャットはそれを追うように後退と砲塔を旋回するが、あざ笑うかのごとく再び前進したBT-42は通りすがりざまに砲撃。

 

「くそ!...ここでぐるぐるやっても埒が明かん」

 

今度はヘルキャットが攻勢に転じた。

 

「どうやら追いかけっこは嫌いだったみたいだね。」

 

姿を見せなくなったヘルキャットを探し少し家屋の回りを回ったあとアキは言った。

 

「ミッコ、小屋に」

 

BT-42は家屋から離れ、ヘルキャットを探す。

そして近くの小屋に差し掛かった時、

 

「停止」

 

BT-42が止まると同時に目の前を砲弾がかすめた。

ヘルキャットは家屋が大きく一周するには時間が掛かる事を逆手にとり離れの小屋に身を潜めたのだ。

だがミカにはお見通しだったようだ...

 

「クソ!全速後退!壁を突き破れ!」

 

居場所がバレた事でヘルキャットに狙いをつけるアキ。

ヘルキャットはバックで壁を突き破る。

アキが発射するが、ヘルキャットは後退し砲弾は空を切る。外に飛び出し陣地転換のために動き出すが今度はBT-42が追う形となる。

 

「とりあえずこのまま追わせよう。直掩隊が敵を追っ払うまでの辛抱だ。」

 

ジャックはこのまま時間を稼ぐ事にした。

 

 

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一方、ミカとジャックがタイマン勝負をしていた頃、どんぐり中隊は何とかカリオペの撃破に奔走していた。

 

「T-34!来るぞ!」

 

クラーラのT-34がバークのE8を狙って突っ込んでくる。

 

「ファイア!」

 

バークのE8が彼女を狙うが回避された。

 

「避けられた!」

 

「前進!」

 

バークは戦車を前進させ、直前にクラーラからの一撃を間一髪のところで回避出来た。

 

「さぁどうする…アキリーズ!射線通せるか!」

 

バークはファントムナイツのアキリーズに問う。

 

アキリーズとは、アメリカ製の『M10 GMC』のレンドリースを受けたイギリスが自前の17ポンド砲に換装した駆逐戦車だ。

 

「待ってくれ、今射撃体勢に入った」

 

駆逐戦車であるアキリーズが少し遠方より狙撃する。

 

「E8を狙っている85を狙え…」

 

車長が砲手の肩をそっと叩く。

砲手は照準器にクラーラのT-34/85を捉えしっかりと的を絞る。

けたたましい砲声と共に迫力ある発火炎が発生し、クラーラ車の車体右側に着弾。白旗が揚がる。

 

「次!ヘッツァー!」

 

アキリーズが次の獲物を狙う。狙いを定め発射するが弾がややそれた事で直撃とは行かなかった。

 

「こりゃぁ狙われてるねぇ」

 

杏が言う。

 

「およそ500メートル、アキリーズです!」

 

磯辺が遠方から狙撃するアキリーズを発見。

 

「カールのときみたいにはいかないですね…」

 

佐々木が言う。

大学選抜戦ではBT-42の陽動にまんまと引っかかったお陰でカールが無防備になり、反撃を受けても長い装填のお陰で撃破出来た。もちろん角谷の機転も大きいが何より相手が巨大で動きも鈍かったからだ。

だが今回は、陽動はほぼ失敗しカリオペ自身がいわゆる巨大な発射機を付けたただのシャーマンなのでしっかりと自衛として反撃してくる。

 

「一筋縄ではいかないな」

 

アンチョビが言う

 

「カリオペは殺らせるなよ!全員、しっかりとアイツの脇を固めろ!グレッグ、お前は何があってもそこを動くなよ。じゃないと()()()()()()が失敗する」

 

チャレンジャーの車長が言う。

 

「上手く敵をまとめられるか?できれば上のロケットで一網打尽にできる」

 

カリオペの車長が提案する。

 

「なかなか厳しい相談だな…やってみよう」

 

チャレンジャー車長は一応は同意した。

一方のどんぐり中隊も作戦を練り直していた。

 

「一体どうする!守りが厳重だぞ!」

 

「一気に畳み掛けた方がいいんじゃないっすか?」

 

「一斉にアイツを狙ったらそれこそ袋叩きに合うぞ」

 

河嶋の問にペパロニが答えたがあっさりアンチョビに却下されてしまう。

 

「向こうが動かないなら逆手に使いましょう」

 

磯辺が言う。

 

「どういうこと?」

 

「機動戦を仕掛けてランダムに敵にアタックして誰がカリオペを狙ってるのか錯乱させるんです」

 

「なるほど」

 

角谷が磯辺の作戦に乗り気になる。

 

「でも、こっちとしては誰が撃つかは決めるんだろ?誰がやる?」

 

「アンチョビさんお願いします」

 

アンチョビはまさかの返答に驚いた。

 

「だが向こうは6両でこっちは4両しかいないんだそ!」

 

河嶋は言う。

 

「こういう事もあろうかと呼んでたんです…こちらどんぐり中隊のアヒルチームです。そちらの状況は?」

 

磯辺は別の誰かへ問た

 

「こちらはもう少しで到着しますわ」

 

磯辺はその返答を聞き、再び全体へ話し始めた。

 

「機動力で掻き乱し、隙をついてアンチョビさんは森からカリオペの裏を取って下さい」

 

「オッケー!それじゃぁ行こう!」

 

角谷の号令でどんぐり中隊が動き出した。

 

「全車警戒!敵が動き出したぞ!カリオペ今だ!」

 

チャレンジャーの裏に隠れていたカリオペがロケットを撃つために前に出ようとした。

 

「待て!まだヘッツァーが動いてない!頭を出すのを待ってる!」

 

チャレンジャー砲手の言葉に車長はハッとしてすぐにカリオペを制止した。

 

「やっぱり駄目だ!ヘッツァーが狙ってる!」

 

カリオペがもう一度チャレンジャーの陰に隠れる。

 

「会長。会長はスナイパーを」

 

「ほいほーい」

 

磯辺の指示で角谷はアキリーズを狙う。砲撃を受けたアキリーズは車体に衝撃が走る

 

「ヘッツァーか!ようやく顔を出しやがった…ヘッツァーを攻撃!」

 

強力な17ポンド砲弾が付近に着弾した。その衝撃は車内でも分かった。

 

「よーし、スナイパーは引き付けてるよ〜」

 

「こちらアキリーズ!ヘッツァーと交戦中!」

 

チャレンジャー車長はその声に再び周囲を確認する。

 

「ヘッツァーじゃないと…!クソ!八九式かP40だ!豆タンクは気にするな!」

 

直掩隊が狙いを変える。

 

「アイツが合流したら仕掛けるぞ」

 

「了解です…バレー部!ファイトォ!」

 

「おお!」

 

アヒルチームが掛け声と共にチャレンジャーへ攻撃。直撃だったが貫通はしなかった。

 

「クッ…!そんななまくら弾が効くかよ!」

 

チャレンジャーが反撃し八九式の体勢を崩した。

 

「根性!」

 

再び磯辺の掛け声で体勢を立て直し更に突き進む。

 

「八九式が!バーク!」

 

バークのE8がアヒルチームに攻撃。車体で跳弾したがバランスを大きく崩す事に成功した。

 

「P40!警戒!」

 

Ⅳ号1号車の車長が言ったその時だった…

 

「待たせたな…ですわ!」

 

水色の俊足が現れる。

 

「なっ!クルセイダーだ!まずいぞ!」

 

チャレンジャー車長が叫ぶ。

 

「今のうちに」

 

宣言通りにバニラの合流でアンチョビは森の方へと急いだ。幸い直掩隊はクルセイダーに釘付けになって気付いてない。

バニラは持ち前の機動力で相手を混乱させた。

 

「まずはチリを!」

 

バニラがチリを攻撃する。

しかし弾が防がれた。

 

「次はⅣ号行きますわよ!」

 

Ⅳ号への攻撃はシュルツェンを吹き飛ばした。あれだけのスピードで走るのだから直撃は難しい。

 

「このっ!…あれ?」

 

Ⅳ号砲手が違和感を覚えた。

 

「どうした?早く撃て」

 

車長が言うが…

 

「いや…砲塔が回らないんだ!」

 

「はぁ?」

 

「フッ…ぐぬぬく!」

 

確かに力一杯砲手がハンドルを回そうとするが回る気配がない

 

「装填手!」

 

車長は装填手側のハンドルも回すよう促すが二人がかりでも回る様子がない。

 

「クソ!こちらⅣ号!砲塔旋回装置破損!旋回不能!」

 

車長はそう伝えるとハッチを開けて被弾箇所を確認する。白旗は揚がっていないので撃破判定で動かない訳では無さそうだ。だとすると当たりどころが悪かったかあるいは…

 

「あ゙!シュルツェンが食い込んでやがる!」

 

恐らく吹き飛んだ時にターレットに挟まったのだろう。しかもその状態で余計に回そうとしている為に更に食い込んでしまったようだ。

 

「こりゃ駄目だ!撤退!」

 

Ⅳ号が故障で戦力外となる。

これで数的な有利が無くなった。

 

「クソ!あのヘッツァーやるな!…こちらアキリーズ。移動して射撃ポイントを変える!」

 

「クルセイダーで一気に流れが変わったな…」

 

チャレンジャー車長がぼやく。すると…

 

「なぁ、そういえばパスタ野郎がいないぞ?」

 

チャレンジャー砲手が言う。

 

「ん?カルロベローチェならそこに…」

 

「違う!重戦車の方!」

 

車長はハッとした。

 

「P40か!」

 

そして周りを見渡す。確かにクルセイダーが来るまで確かに居たP40がいない。車長は後ろを見た。カリオペ目掛けて突進するように突き進むP40が見えた

 

「クソ!森…カリオペ!後ろだ!」

 

カリオペが慌てて後方へ砲塔を向けようとするがP40は彼の真後ろに飛び出した。

 

「フォーコ!」

 

P40の75mm弾がカリオペの砲塔後部に直撃。

白旗が揚がる。

 

不思議と時が止まったような静寂で包まれた。しかし、アヒルチームがその場を現実に引き戻す。

アヒルチームがバークを撃つべく全速力で側面を取りに来た。

 

「なんで俺ばっかり!」

 

バークは八九式を迎え撃とうと砲塔を回す。そしてアンチョビを再装填してバークの正面を狙う。

 

「アターック!」

 

磯辺の声で八九式が側面P40が正面に攻撃。E8が黒煙に包まれる。

 

「やった!」

 

アヒルチームが喜ぶがそれは早すぎた。

黒煙が晴れていくにつれてこちらに旋回する砲塔が見えてきた。

 

「効いてない!」

 

アヒルチームはすぐさまその場から去ろうと走り出す。前にも述べたがバークのシャーマンは増加装甲を施している。それは正面だけではなく側面にもあった。

 

「増加装甲は付けとくもんだな」

 

2発の砲弾を受け止めたE8が八九式に攻撃。弾は運良く逸れて尾ぞりを吹き飛ばした。

 

「よ~し。カリオペやったし撤収するよ〜」

 

角谷の言葉でどんぐり中隊並びにバニラが撤収に移った。

 

…しかし

 

一発の砲弾がかめチームの左側面に命中。行動不能となった。

 

「こちらアキリーズ。ヘッツァーを撃破、残りは…逃げたな」

 

「あっちゃ~…ごめんね西住ちゃん。やられちゃったぁ…でもカリオペはやったよ」

 

「ありがとうございます。残りのみなさんも撤収してください」

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

「こちらアヒルチーム、目標を撃破したので撤収中てす。ミカさんも撤収してください」

 

磯辺からの無線に短くカンテレを弾いて答えるミカ。

 

「ミッコ撤収するよ」

 

「え〜っここでやっつけたかったのにぃ」

 

「目的は果たしたからね。長居する必要はない…それに、タイミングというのは無理に掴もうとしなくても向こうからやって来るものだよ。今はその時じゃない」

 

ミカが特有の価値観でミッコをなだめる。そして後ろを見つつ

 

「それに2対1で戦うのは得策ではなさそうだよ」

 

「え?」

 

アキも後ろを確認する。そこにはヘルキャットに合流するルクスがいたのだ

 

「Ⅱ号だ!」

 

BT-42でも20mmをまともに食らえばやられてしまう。BT-42は相手に砲撃しつつ撤収を始めた。

 

「あいつら逃げるぞ」

 

ジャックが追撃を掛けようとしたその時、一報が入る

 

「こちら直掩隊。敵は撤収した、カリオペはやられたが…そっちも深追いせず合流しろ」

 

「了解…クソッ、運が良かったな!」

 

ヘルキャットとⅡ号は逃げるミカ達を諦め直掩隊との合流へ進路を変えた。

 

「敵は撒いたから私達も合流する」

 

ミカは転進するジャック達を見てみほに報告する。

 

「分かりました。ここから体制を立て直しましょう。合流して市街地に向かいます。...皆さん、次は私達のターンです!」

 

 

『はい!』

 

 

みほの言葉に全員が大きく答えた。

 

 

しかし、ブラッドハウンド隊も手を抜くなんて事はない。

 

 

「こっちの部隊も撤退したけど、今度はどこで戦うつもりなのかな?」

 

 

生け垣エリアから合流したケイラーはそう呟いた

 

「十中八九市街地だ」

 

そしてウィットナーがそれに答えるように言う

 

「てことは市街地でまた待ち伏せ?」

 

「だろうな」

 

「懲りないねぇ」

 

「フン...ブラッドバウンド連合ではなく、ドイツ軍ブラッドバウンド隊全車に告ぐ。これからはドイツ軍のターンだ。...ドイツの恐ろしさを思い知らせてやれ」

 

『ヤヴォール!』

 

「ブラッドバウンド全車、市街地への最短ルートで市街地に向かえ!エンドラー、中隊指揮を頼むぞ!」

 

ウィットナーは一段の気合いの入った声で告げた

 

果たしてどちらが痛手を追うことになるのだろうか...

 

 

 

 

 

 

 

次回「私達のターンです!」

 

 


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