魔法少女リリカルなのは 紺碧の姫   作:mom

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衝動

 激しい渇きと衝動に駆られる様になったのはいつ頃だろうか。仕事や訓練にも手が付かず上の空が続く日々が多くなった。だが、それも日に日に和らいでは来ていると感じる。アセルスが妖魔としての力に目覚めてから今まで、「美しき者」を欲する衝動に苛まれていた。それは二体目の従騎士との戦いの後、六課の医務室でのことだ。

 

 

 

 アセルスの看病をしている白薔薇がそれに気付いた。うなされ始めると同時に頬が熱を帯びどこか、苦しくも見惚れるような美しさも感じられた。汗をすっと拭ってやり、手を握り見守っているときだ。

 

「白薔薇……」

 

 ベッドへと仰向けに倒され、アセルスが白薔薇に跨る。その目はくすんでおり、心が宿ってないかのようにも見えた。ただ頬を上気させ、目の前の獲物を味わう……。獣のように。

 

 

「アセルス様……やはり血は争えません。目を覚ました時、このことを覚えてはいないでしょうけれども……」

 

 白薔薇はアセルスの首へと手を回し、アセルスをぎゅっと引き寄せ、耳たぶを甘く噛み、甘い息を漏らしながら、白薔薇は甘美な言葉を漏らす。「アセルス様のお好きなように」……と。

 

 

 本能で押さえつけていたアセルスの箍は外れ、暴力的とも思える強引さで唇を奪った。白薔薇は素直に受け入れ、成すがままを受け止める。水音が孤独な空間を支配し、場違いな程の美しさを持つ二人は異色の存在だった。

 

「んん……アセルス様……激しい……」

 

 白薔薇は全て私のものだ。それを証明するかのように、アセルスは無意識の中で、白薔薇を求める。一糸纏わぬ姿で、白薔薇のすべてに自分の存在を植え付けるべく、夢中で貪った。痛みもあるだろうが、それすらも甘美なものと白薔薇は感じていた。それは逆らえぬ力ではなく、純粋な喜びであり、愛なのだと。

 

 

 

 妖魔に性別は関係ない。だから人のような愛は理解できないかもしれない。だが、アセルスは、半妖の身である。それは白薔薇にとっても、また世界にとっても稀有な存在となっていた。それは妖魔の身で知り得なかった感情……。

 

「はぁ……んん……」

 

 身体を捩り刺激に悶えながらも、必死にお互いを求める二人。身体だけではなく、それは白薔薇という存在全てをも欲する衝動にアセルスは突き動かされた。妖魔はそう簡単に死ぬような存在ではない。多少の傷などすぐに完治してしまう。そのことを理解しているのか否か、アセルスは白薔薇の首筋に歯を突き立てる。溢れだす妖魔である証……青い血を吸い、喉を鳴らした。これに驚く白薔薇をよそに、口元を青く濡らすアセルスはまた傷口に吸いつき、血を吸いあげる。

 

 

「……!?アセルス様……御慈悲を……」

 

 力が入らず脱力した様子で白薔薇は必死に声を紡ぐ。だが、経験したことない痛みや、快楽の波に正気を保つことが精一杯で白薔薇も耐えがたい快感に今にでも意識を飛ばしそうな程だ。だがそれも徒労と終わった。紺碧の姫へと姿を変えたアセルスはその後白薔薇の意識を飛ばし、快楽へと誘い、代わり、残ったのは甘い匂いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぼやけた意識が少しずつこちらの世界に引き戻される。最近の中では意識失った時間が一番長かったのではないかと思う程、それだけアセルスの心身は極度の疲労を受けていた。だが、無意識での事は一切覚えておらず、自分がいつ自室に戻されたのかも分かってはいなかった。

 

「ここは……そっか。また疲れて倒れちゃったんだ。スタミナ無いな、ほんと」

 

 ようやくはっきりしてきた視界の中、ベッドから起き上がった。起きた時の感じからして幸い疲れは抜けているようだ。そんなとき、タイミングを見透かしたように、携帯端末に連絡が入る。イルドゥンからみたいだ。ロビーで挨拶があるから出席しろとのことだ。そういえばあの二人にもあれ以来会ってないしね。

 

 少し身体を伸ばして、自分の部屋に戻りシャワーを浴びる。寝ていた間の世話はよく白薔薇がしてくれていることは話から聞いていたので白薔薇には感謝をしないと。

 

 

 シャワールームから出て、タオル一枚で鏡の前に立つ。絹のような身体には無数の痣、傷が目立つ。それだけ彼女が過ごしている時間は濃密なのだ。

 

「さてと、そろそろ行かなきゃ」

 

 しかし肝心なことを忘れていた。そう制服が無いことを思い出す。さすがにバリアジャケットでロビーに行くには少し気が引けるが……それも部屋に戻れば取り越し苦労に終わることとなった。

 

「白薔薇……」

 

 

 部屋には機動六課の制服が掛けられていた。私の事をほんとに分かってくれている。そう思うだけで、白薔薇の笑顔を早く見たくなった。

 

 

「ありがとう、白薔薇」

 

素早く制服に着替えれば、鏡の前で身だしなみを整え、部屋を後に。鈍った身体を鳴らすかの様に背伸びをひとつ、気合いを入れた。

 

 

 

「さぁ、行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 部隊長オフィス

 

 真新しい机を指で二度なぞる。ついにこの日がやってきたのだから。隣でリィンも喜んでいるようだ。

 

「えへへ、リィンにぴったりですぅ♪」

 

 リィンも嬉しそうやな……おっ、誰か来たようや。

 

 機動六課の制服に着替えた、なのはちゃんとフェイトちゃん。うん、とっても似合ってる。

 

「三人で同じ制服なんて中学校いらいで。なんや懐かしいなぁ……」

 

 昔を思い出し、三人で和んでいると、ついつい時間を使うようで、フェイトがなのはに切り出す形で会話を終えた。仕事上必要なことは例えこの三人の仲であっても疎かにしてはいけないと分かっているからだ。

 

 敬礼後なのはが答える。

 

「本日、只今より高町なのは一等空尉」

 

 それにフェイトも続く。

 

「フェイト・T・ハラオウン執務管」

 

「両名とも機動六課に出向となります。どうぞよろしくお願いします」

 

 はやてもこれに敬礼で返す。

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 少しの間ができ、そしてまた笑みがこぼれる。三人の仲は素晴らしく、絆は深く大きい。それは彼女達が命を賭けた戦いを乗り越えてきたからこそ生まれたのだ。

 

 

 

 そうこうしているうちに、ブザーが鳴る。どうやら来客者が来たようだ。ドアが開くとそこには、成長した懐かしい青年の姿があった。

 

「失礼します。あっ、高町一等空尉、テスタロッサ・ハラオウン執務管。御無沙汰しています」

 

 礼儀よく敬礼し、蒼髪の青年は挨拶をする。ただ、二人とも少し困惑していた。が、二人とも気付いたようだ。

 

 

「グリフィス・ローランです」

 

 しかし、彼の前の二人は大はしゃぎしている。

 

「うわわ…凄い!凄いよグリフィス君!!すっごい成長してる!!!」

 

「前見た時は、もっとちっちゃかったのに」

 

「その節はお世話になりました。今はこの部隊の副官を務めています」

 

「そうや、アセルスがこっちの世界に来た時にも、グリフィス君はかなり頑張ってくれたんや」

 

 ほんと、優秀な人材や。

 

「母も元気でやっています。それと、報告よろしいでしょうか。新規のフォワード4名、それに機動六課のスタッフ、それとアセルスさんも揃いました。現在、ロビーに集合しています」

 

「そうかぁ、早かったな。それにアセルスも復調してなによりやな。それじゃあ、なのはちゃん、フェイトちゃん。みんなに御挨拶や!!」

 

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 ロビーでは、はやてやみんなの挨拶が行われている。ただ病み上がりな私には、ただただ辛い訳で……あっ、次は私の番かな。

 

「アセルス准陸尉です。階級とか関係なく接してください」

 

 簡単な挨拶で話を終わる。実のところを言えば、体調がいまいちなのですぐに切り上げることとなった。挨拶が終わり、解散となった後、シグナムとフェイトが一緒に歩いていた。どうやらこの二人は色々あったみたい。そんな妄想している私に、二人は気付いたようだ。

 

「アセルス!!もう大丈夫なの?みんな心配してたよ。」

 

「そうだアセルス、もう身体はいいのか?」

 

 二人とも…心配してくれてたんだ。……ありがとう。

 

「もう大丈夫。二人とも、ありがとう」

 

 少し照れながらも二人に頬笑みかける。ただ二人は少し赤面していたけど。

 

「まだまだ、二人みたいにはいかないな。二人とも、また教導お願いね」

 

 強くならなきゃいけないから。守るため、勝つためには……そんな思いに耽っていると、二人に手を握られていた。

 

「喜んで!!!」

 

 

 二人とも…ちょっと怖いよ。

 

 

 そんなこんなで、時間を潰していると、フェイトがあることを思いだした。

 

「アセルス、実はフォワードの4名が模擬戦を行ってるんだ。それでね、アセルスにも模擬戦に参加しておいてほしいんだ」

 

「模擬戦って…隊長達といつもやってるやつ?」

 

「それもあるけど……アセルスも聞いたことあるでしょ?「ガジェット・ドローン」。私達はこれとも戦わないといけないの」

 

 ガジェット・ドローン。話には聞いているけど、実際にまだ戦ったことはない。経験を得るためにも戦っておくべきだろう。

 

「わかった。で、どこで模擬戦やってるの?訓練スペースはまだ…壊したままだし……」

 

 壊した本人は全く気にしない。

 

「それなら大丈夫!さぁ、案内するから!行くよアセルス。リハビリついでに、身体動かそう」

 

 二人に引っ張られながら、アセルスは外に連れ出された。

 

 

 

 

 

 

 

 隊舎の外に移動し、しばらく歩くと眼前には、荒廃したビル群が立っていた。しかし、以前ここはただの人工の土地だったはずだ。いつの間にこんなものができたんだろう。ビル群を眺めながら歩いていると、そこにデータを整理しているシャーリーが居た。

 

 

「あっ、アセルス!もう身体は大丈夫?なのはさんも心配してましたよ」

 

 コンソールを操作しながら、シャーリーは淡々と話している。どうやらデータを取っている様だ。

 

「シャーリー、なんのデータ取ってるの?」

 

 何気ない疑問だが、これがフェイトがここに連れてきた理由である。

 

「いま、フォワード4人のデバイスのデータを取っているんです。みんな良く走りますからね。みんないい子に仕上げますよ」

 

 なるほど……だからシャーリーが楽しそうなんだ。そういや、私もこの模擬戦に混ざらないと。

 

「シャーリー、私のデバイスのデータを取っておいて。最近、ルナとソルを使ってなかったから、調整を兼ねてお願いしたいんだけど」

 

「言われなくてもそのつもりでしたよ、アセルス。妖魔とのデータはありますが、ガジェットのデータはまだありませんから。ドラグーンもしっかり調整しますよ!!!」

 

 頼むよ、シャーリー。さて、私も訓練に混ざろうかな。

 

「アセルス、頑張ってね!無茶はしちゃだめだよ」 

 

「アセルス、無理はするな」

 

 やはり、少し心配なのだろう。大丈夫だよ……二人とも。

 

 

 

 待機形態のルナとソルに触れる。それに答えるように、二機は光る。久しぶりに使う相棒達だけど……きっと大丈夫!!

 

 

[Standby ready]

 

「セットアップ」

 

 待機中のピアスが銃形態へと変化、同時に紅きバリアジャケットが展開される。

 

 魔方陣が消えるとそこには、紅き姫が舞い降りた。

 

 

「ふぅ…やっぱりこれがしっくりくるかな?さてと、みんなに混ざらないと」

 

 

[Sonic move]

 

 風を切って駆けていく感覚は久しく、気持ちのよいものだった。一歩ずつ速度を上げていき、模擬戦が行われている、ビル群へと向かうのだった。

 

 

 

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