魔法少女リリカルなのは 紺碧の姫   作:mom

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策士

 アセルス達が廃墟へと向かう一方で、FW4人、リィン、なのはの6人はヴァイス陸曹のフライトの下でリニアレールへと向かっている。フェイトは六課から離れていたが、要請を受け、こちらに急行している。

 

 

「訓練通りで大丈夫だから」

 

 

 なのはの声にも4人の表情に不安は隠せない。機動六課としての初任務であり、エリオ、キャロにおいては、人生初だから尚更だ。

 

「はい」

 

「頑張ります」

 

 二人は返事を返すが、エリオとキャロはまだ表情が硬い。それを察してか、リィンが声をかけてくれる。

 

「エリオ、キャロ、フリードもしっかりですよ!」

 

「はい」

 

 二人とも少しは緊張感が解けたようだ。

 

「危ない時は私やフェイト隊長、リィンがいるから、おっかなびっくりじゃなくて思いっきりやってみよう」

 

 

「「はい!!」

 

 ふと、キャロを見てみると、ペンダントを握っている。それにエリオが気付いたようだ。

 

「キャロ、それは?」

 

「アセルスさんから貰ったんです。お守りにって」

 

 紫紺のペンダントをギュッと握るキャロ。

 

「こうすると凄く落ち着くんです。エリオ君……頑張ろうね」

 

「うん、頑張ろう、キャロ!!」

 

 二人の緊張もようやく打ち解け始め、それを見ていた、リィン、なのはも胸を撫で下ろす。一つの心配事の種が消え、なのは達の出番がやってきた。

 

「ヴァイス君、私とフェイト隊長で空を抑えるから」

 

「やっと出番が……って了解っす。なのはさんお願いします」

 

 

 後方のハッチを開放を確認すると、最期に一声。

 

「みんな1人じゃないってこと……忘れないで!」

 

 

 

 改めて、FWを確認すると、そのままハッチから降下。空中へと身体を解き放つなのはを桜色の魔力が包み込む。それは一瞬に霧散し、ガジェット殲滅へと向かった。

 

 

 

 ここからは、早かった。なのは、フェイトが空を抑えている間に5人が降下。隊長達を参考にしたバリアジャケットを纏い、新型デバイス達の性能を確かめるように、次々とガジェットを破壊していった。ただレリックのある車両に新型のガジェットが現れ、エリオがリニアから放り出されてしまった。だが、それを救うべくキャロが追いかけ、自らのトラウマを克服し、フリードの使役に成功した。そのせいもあり、ライトニングの連携で新型は無事に破壊することができ無事に任務を終えることができた。レリックも無事に回収することができた。

 

 

 現在、ライトニング分隊が引き継ぎのため残っている。

 

「二人とも、怪我はなかった?」

 

 フェイトがエリオとキャロを抱きしめる。そんなこんなで、引き継いでいる最中だった。

 

 

 

 まがまがしいフィールドが形成される。フェイトは気付いた様だ。これは、あの試験の日以来見ていなかったが……幼いライトニングを引き連れ、戦いに臨まなくていけなくなった。

 

「二人は絶対守るから」

 

 

 

 

 

 

 

 この決意をどこかの部屋で眺める者がいた。

 

 

「さぁ、見せてもらおうか。Fの残骸…くっっくく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リニアレールガジェット襲撃の事後引き継ぎの最中、それは突如として訪れた。ぞくぞくするような嫌悪感。これと同時に、異質のフィールドが形成された。

 

「エリオ、キャロ!!気を付けて」

 

「フェイトさん、これは……」

 

「フリードも怖がってます」

 

 二人とも、まだ妖魔のことについての知識は、ほとんど無いと言っても間違いではない。ましてや、二人は今日が初陣でもあり、激戦があったばかりだ。

 

 

「私も戦ったことないけど、やるしかないね……」

 

 

 決意を固めると、愛機のバルディッシュを構える。先ほどから通信を試みるが連絡が付かないこともこの警戒の要因でもある。増援は当然計算できない。

 

 

 

 

 

 数分経っただろうかと思う程に神経をすり減らす。実際にはほんの数十秒しか経過してはいないだろう。しかし、護りながら戦うことほど厳しいものはない。二人をかばいつつ、周囲に警戒を払っているときだった。

 

 

 

 これが我の標的か…くっくっ…

 

 

 

「誰だ!?」

 

 猟奇的な声に瞬時に反応する。直接頭に響くように、不快な声は木霊する。

 

 

 

 

 

 不意に後ろを振り向くが何も居ない。が……

 

 

 どこを見ている…Fの残骸

 

 

 正面から杖のようなものが空気を切り裂く音と共に、頭部目がけて正確に振り下ろされている。

 

 

「はぁああ」

 

 

 杖が振るわれる場所にはもうフェイトはいなかった。杖を振りおろしてきた何かの背後に回り込み、バルディッシュを振り切っていた。しかし…手ごたえはまるでなかった。

 

「幻影!?」

 

「フェイトさん、後ろです!!」

 

 エリオが対象を確認すると、ストラーダを手に突撃する。しかし、これもまた手ごたえがなかった。

 

「!?、キャロ、後ろ!!」

 

 

 すでに対象はキャロの頭部目がけ杖を振り下ろしている。

 

 

 ブレインクラッシュ

 

 

 当たってしまえば即死といっても過言ではない。実際、キャロは避けることは不得意であり、異端の存在に飲まれていた。

 

 

「きゃぁああ」

 

 

[Protection]

 

 悲鳴と同時に、ケリュケイオンがプロテクションにより防御を図る。訓練のおかげだろう。咄嗟の防御で、即死は免れた。

 

「キャロから離れなさい」

 

 自分の持ちうる可能な限りの速度で突撃するが、それに気付いたのか、キャロから離れ、距離を置く。

 

 

 

 これはこれは…くっくっくっ

 

 

 紹介が遅れましたね。私は森の従騎士と呼ばれる者。以後、お見知りおきを……いや、ここで、さようならですかね?

 

「妖魔!!!一体何が狙いなの?」

 

 

 それは、貴女とそこの坊やですよ…プロジェクトFの残骸達。私も、異界の技術には興味がありましてね……生体サンプルとして捕えようと思いましてね。それに……邪魔者は消しておきましたよ。

 

 

 

 森の従騎士が指を鳴らすと、アセルス達が向かった廃墟が爆発する映像が映し出される。

 

 

 餌を撒けば必ず食いつくと思っていましたよ。貴女方の司令官も大したことはないですね……

 

 

「はやてを馬鹿にするな!!!それにアセルス達も生きてる。絶対に」

 

 怒りの形相で、従騎士に突撃する。しかし距離が詰まるにつれて、身体が重くなる。

 

「まさか…AMF!?」

 

 ほう、さすがですね……しかし、こんなもので、ここまで抑え込めるとは。あの科学者も大したものですね……

 

 

 おどけたように、話しかけるこの妖魔に怒りしか感じない。ただ、親友を侮辱したこと、エリオや私のことについて……許せない。

 

 

 

 貴女にも人並みの感情があったんですね。いやいや、これは驚きですよ……

 

 

「貴様、黙れ!!!」

 

 私やエリオが関わっているFについてここまで露骨に言われることは久しぶりだった。久しぶり過ぎたためか、激昂している。いつ以来だろうか、この感情に支配されたのは。ただ、もうこいつを許すわけにはいかない。

 

 

「バルディッシュ、殺傷設定に」

 

[Yes,sir]

 

「フェイトさん……」

 

 エリオから声が聞こえる。こんな私を見たことが無かったからかな……怯えている。

 

「大丈夫。守るから、二人とも!」

 

 怯えを取り除くように二人に笑みを浮かべると、再び、怒りの形相へと変える。そして魔力を込めて、愛機を振り切る。

 

[Haken Slash]

 

 魔力斬撃が従騎士へと迫る。だが、目前で何かに接触し、爆散。

 

「AMFがこんなに強いなんて……ん!?」

 

 周囲に何か粉のようなものが漂っている。そしてバリアジャケットに粉のようなものが触れると、触れた部分が溶けていた。

 

 

 

 もう少し前に出ていれば、簡単に楽になれたものを…本当に貴女は運がいい。

 

 

「毒か……どこまで卑怯なんだ、貴様は!!!」

 

 

 二度、三度、バルディッシュを振るい、斬撃を飛ばすも、すべて直前で消えてしまっている。

 

 

 無駄ですよ…我の胞子には通用しない…

 

 

「毒、そして魔力を打ち消すこの能力…AMF!?」

 

 

 

 ほう、気付いたようですね…だがもう遅いんですよ…

 

 

 

 気が付けばこの空間の九割は毒とAMFの力を持つ、胞子で満たされていた。どうやら、爆散したときに撒き散らしていたようだ。

 

 

 大丈夫、生け捕りにしたいので、殺しませんよ…ただ、生きてるとは言える状態で留まるかは分かりませんがね。

 

 

 淡々と話す従騎士に怒りは滾々と湧き上がる。だが、それを排除しうる策を準備はしている。

 

 

「勝ったつもりなのかな?これくらいで」

 

 胞子に気付いたときから、すでに時間は稼いでいた。そう、焔を扱う竜を召喚するために。

 

 

「フェイトさん!お待たせしました。フリード、ブラストレイ!!!」

 

 

 

 咆哮と共に、火球が放たれる。フェイトは気付いていた。焔ならば、この状況を打開できるはずと。

 

 フリードは首を振りながら広範囲に焔を撒き散らし、胞子を焼却していく。フェイトの予想通り、焔には弱かったようだ。

 

 

 

 おやおや、そんなに苦しみたいのですか?くっくっ……ほんとに物好きな方々だ。

 

 

「おしゃべりはそこまでだ」

 

 

[Sonic Move]

 

 二つの雷鳴が両サイドから同時に斬りかかる。

 

「消えなさい!!」

 

エリオと私は同時にデバイスを振り切る……しかし、急に身体が自由が利かなくなった。

 

 

「エリオ!!っく」

 

 よく見てみると、網に絡まったようになっている。当然、エリオも同じ状態だ。

 

 

 

 エクトプラズマネット。切り札は隠しておくものですよ……

 

 

 やられた。警戒が足りなかった。ましてやここまで策士じみた相手ならなおさらだ……。そしてこの後悔は最悪な形を迎えることとなる。

 

 

 

 ここまで活きがいいと我も苦労する…。狂気じみた声がこの空間を支配する。途轍もなく嫌な予感がする。

 

 

 

 貴女の心を破壊させてもらいますよ……

 

 

 もちろん、少年……君もだよ。ただ、君には働いてもらうがね……

 

 

 従騎士は笑いを浮かべながら二人に近づいてくる。もちろんキャロもネットに捕らわれている。

 

 

 そして、二人の横に達すると、頭に手を触れる……

 

 

 

 

 

 

 

 切り札は一枚だけとは限らないんですよ

 

 

 

「やめろ……触るな……!?いやぁぁあああーーーーー」

 

 手が触れた瞬間、二人が急に苦しむように声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイトさん、エリオ君!!」

 

 

 二人が急に苦しみ、叫んでいるのがよく見える。あの妖魔の手が触れたときからこうなっているのだ。

 

 

 

 

 貴女は、さらに苦しんでください……貴女の犯してきた罪と後悔すべき過去に捕らわれて……

 

 

「いやぁああ、やめて……あああああ……」

 

 

「フェイトさん!!!!」

 

 声は聞こえていない、ただフェイトはかなり苦しんでいるようだ。

 

 そして、同様に……エリオも苦しんでいる。

 

 

「嫌だ、僕は、あああああ……」

 

 

 二人ともがかなり苦しんでいる。そう肉体的に追い込めないなら、精神面から……そう考えたのだ。

 

 

 くくく、やはりヒューマンはもろい……もろすぎる

 

 

 私の方にゆっくりと近づいてくる。足音はしない。ゆっくり……ゆっくり……近づいてくる。

 

 

 

「いや、来ないで……来ないでーーーー」

 

 錯乱するキャロ。当然フリードは口を封じられている。

 

 

 

 

 貴女には興味はないので……壊れて死んでください。

 

 

 そう言って、頭に手を触れてくる。そうこれが従騎士のもう一枚の切り札。

 

 

 カウンターフィアー

 

 

 心の闇に漬け込み、錯乱させていくこの能力。二人が苦しんでいるのはこれが原因である。

 

 

 

 さぁ…逝きなさい・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、何も起こらない。キャロは何も苦しんではいない。

 

 

 

 馬鹿な!?ヒューマン如きに破られるはずが……

 

 

 

 相当な自信があったのか、または人間如きに破られたことがショックだったのか、少し狼狽している。そして、これを防いだ原因が明らかとなる。

 

 

「温かい…」

 

 キャロが呟くと、胸のペンダントが光っている。それは朝、アセルスからもらったものだった。

 

 

 

 何故、それを!?命の結晶を何故貴様が……

 

 

 アセルスにもらったペンダント。これのおかげで助かっているらしい。

 

 

 命の結晶と呼ばれたそれはトウテツパターン。アセルスの命の一部……そういっても過言ではない。

 

 

 思わぬ持ち物に狼狽するも、通用しないならば別の手を使うまでと、従騎士は淡々と事を進める。

 

 

 どうやら、貴女にはこの方法は通用しないようだ……では、こういうのはどうでしょうか?

 

 

 急に、身体が自由になる。急に開放されたことに、不信感を覚えつつ何とかして二人を助け出す方法を考えていると……

 

 

「エリオ君!?」

 

 

 エリオもまた開放される。そして、ゆっくりとこちらに向かってきている。

 

 

「エリオ君、大丈夫!?」

 

 近づいて様子を伺おうとした時だった。ストラーダが真一文字に振り払われる。

 

[Protection]

 

またしてもケリュケイオンに助けられる形になった。が……エリオは間違いなくキャロを攻撃してきた。

 

 

「エリオ君!?私だよ、キャロだよ!?分からないの!?」

 

 必死に呼びかけるも返事がない。眼にも光が感じられない……

 

 

「操られてるの・・!?」

 

 

 

 その通りですよ。ははははは……くぅくっっっ……

 

 

 あの小娘を殺りなさい。命令ですよ。

 

 

「はい……」

 

 生気のない声で妖魔に対して返事を返すエリオ。完全に心が支配されているようだ。

 

 

「エリオ君、しっかりして!!」

 

 私の声は届いていない。ゆっくり、ゆっくり近づいてくる。その手に握られているストラーダは殺傷設定のようだ。

 

 

[Sonic Move]

 

 

 突如、眼前に現れるエリオ。躊躇することなく、ストラーダは振りぬかれる。

 

 

「エリオ君!!」

 

 

[Protection]

 

 

 

 

 

 魔力とデバイスの激しいぶつかり合い。魔力が火花のように飛び散る。現在はなんとか均衡を保っているが、キャロの心は揺れている。

 

 

 「攻撃なんてできないよ」

 

 

 

 3分ほど経ったころだ。徐々にだが状況に変化が見られた。キャロが押されている。

 

 

 防御に徹して、疲れを誘うつもりだったのだが、一向に攻めてが緩まない。むしろ増してきている。

 

 

「はぁはぁ……魔力が、もう持たない。それにエリオ君も限界を超えてるよ……」

 

 無理やり動かされているようなものだ。エリオは自分で疲れを感じていない、ましては、魔力も無尽蔵に使っている。当然、身体に掛かる負担は計り知れない。

 

 

 必死に考えた。エリオ君を止める方法を。そして見つけたのだ。苦肉の策をひとつ。上手くいく確証なんて全然ない。でも……やらなきゃ。

 

 

 

 

 おやおや、何かするみたいですね……ほら、貴女も見なさい。

 

 

 隊長は伊達ではない。ここまでの精神汚染にも耐えている。意識もかろうじて残していた。

 

「はぁはぁ…」

 

 しかし、喋る気力もない。過去の事件などを記憶の奥底からかき回されれば、こうなってしまうの当然だ。

 

 

「…め…・て…二人…と・・・も」

 

 

 気力を振り絞りなんとか声を発するも、聞こえるわけもない。

 

 

 

 

そして…なにか私のなかの何かが壊れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 肉を貫いた音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 ゆっくりと前を見てみる。

 

 

 

 

 キャロを貫いた、エリオが立っていた。

 

 

「あ、あ、あ、いやあぁぁぁあーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エ……り……お、君、ケホッ」

 

 フェイトの叫びに涙し、口から血を吐き、眼の前の男の子の名前を必死に呼ぶ。まだ、無機質な表情を崩さないエリオ。しかし、これはキャロが賭けにでた苦肉の策だった。力の入らない手でペンダントを握りしめる。そして顔をゆっくりと近づけていく。その瞬間、二人の唇は重なっていた。

 

 

 

 

「…オ…君……きだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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