現在、六課の前線メンバーに加え、はやて、シャマル、リィン、ザフィーラは、ヴァイスの操縦するヘリの元、今回の現場へと移動している。
はやてが情報ディスプレイを操作し、今回の事件の再確認を行っている。ディスプレイには、ある男の写真と履歴が映し出されている。が、これをおとなしく見ることができない方が一人。そうフェイトだ。だがフェイトもライトニング分隊隊長である。そのため、今は拳をぎりぎりと握っている。
「現状ではこの男。違法研究で広域指名手配されている次元犯罪者「ジェイル・スカリエッティ」の線を中心に操作を進める」
「こっちの操作は、主に私が進めるんだけど、みんなも一応覚えておいてね」……グシャ
「はい!!」
フェイトちゃん……天井の一部、握り潰さないでね。ほら、エリオとキャロがびくついてるよ。
しかし、内心では、フェイトさんすごい。なんて思っている二人であるが。だが、ヴァイスだけは泣いていた。
「俺のヘリが……」
そんなボヤキは誰にも聞こえるはずもなく、説明が続けられる。リィンがはやての横に移動し、説明を始め、なのはが続けて説明に入る。フェイトも続けて説明する。
「ホテル・アグスタ」ーーー今回はここで行われるオークション会場の警備。それに、レリックも絡めば、ガジェットも動いてくるとの予測から、六課が担当することなった。
「この手の大型オークションだと、密輸取引の隠れ蓑にもなったりするし、色々と油断は禁物だよ」
「現場には昨夜から、シグナム副隊長とヴィータ副隊長と、アセルス、白薔薇姫、イルドゥンがはってくれてる」
「私達は建物内の警護に回るから、前線は副隊長達の指示に従ってね」
「はい!!」
さきほどから、きょろきょろしていた、キャロはついに我慢できなくなったのか、質問をすることにした。
「あの、シャマル先生、さっきから気になってたんですけど、その箱って?」
「ああ、これ?隊長達のお仕事着」
満面の笑みを浮かべて答えるシャマル先生。お仕事着ってなんなのかな?
「いらっしゃいませ、ようこそ」
受付担当が来客に対していつも通りの挨拶を行っている。次々と客が流れていき、ある客がやってきた。受付に出されるのは、身分証明書。機動六課部隊長「八神はやて」のものだった。受付が困惑するのも無理はない。三人ともが、誰が見ても堕ちるであろう、美貌と容姿を兼ね備えている。シャマルが準備していたドレスがなお美しさを引き立てている。
受付に挨拶を済ませると、そのままホテル内を見て回ることに。なのはとはやてはホール内を。フェイトはホールの周りを確認することになった。
ホール三階付近から、開場内を確認している、なのはとはやて。そこに昨日から来ていたイルドゥンが合流した。ただいつもと違って、正装だが。
「昨日からお疲れやな、イルドゥン。なかなか決まってるやん」
「普段とあまり変わらんだろう。中を昨日から調べてみたが、特に変わったことはない。警備も問題なかろう」
「そうやな、六課のみんなが外を固めてるし、万が一でも、私たちでなんとかする」
「油断禁物だよ、はやてちゃん。それじゃ、周りを見てくるから、ちょっと行ってくるね」
言い終えるとホールの外へ。そしてなのはから念話が。
≪仕事中だから程々にね≫
≪あははは、なんのことかな≫
流石はスターズ分隊隊長。色ごとに鈍感なフェイトちゃんの嫁なだけあるわ。一人で解釈を終えると、イルドゥンの横へと移動し、
「なぁ、イルドゥン。その、なんや、あの……」
「何をまごついている。部隊長とあるものがそれくらいで狼狽するな」
「あぅ……」
なぜだろう。はやてが小さく見える。が、そこはイルドゥンも分かっている。何を言いたいのか、そして欲しい言葉を。
「似合わない服を探すのも、お前なら難しいのではないか?」
少しの間、静寂が支配する。彼が言った言葉を理解することに時間が必要だった。そして、理解できたとき、彼女の胸には喜びが満ち溢れていた。
「イルドゥン、ありがとな」
「いつまで惚ける気だ。はやて、お前はこの隊の隊長だろう。我は、我の役割を果たす。お前はお前に役目を果たせ」
そうして、手をとり、手の甲へkissを落とす。
「はやて。しっかりな」
「もちろんや、イルドゥン」
そんなこんなでイルドゥンはすぅっと消えてしまう。こればかりは私も慣れない。気持ちに一区切りつけると、すぐに切り替える。仕事はきっちりせなあかんから。
「なかなかお似合いですよ、アセルス様」
素直な感想を私は述べました。高貴でかつ美しい姿。深紅のドレスが映える。私の監修の元、シャマル様のご助力もと完成させたこのドレスーーー紅い薔薇を携え、アセルス様にお似合いです。
「白薔薇、なんか恥ずかしいな」
バリアジャケットや制服ではなく、このような正装をするのは久方ぶりでした。無理もありませんね。
すっと、アセルス様の手を取り、少し顔を赤らめ、お願いすることにしました。
「アセルス様……お願いしますね」
言いたいことが分かったようで、アセルス様も、顔を赤らめているようだ。けれどすぐに答えてくださいました。
「もちろん、喜んで」
すぐに手を取ると、優しくエスコートしてくれました。すれ違う人達は、私達を眺めているようでしたが、私は気にしていません。もちろん、アセルス様も。
昨日一通り見回りましたが、再度確認ということで、建物内を見回っていると、向こうからフェイト様が来られました。フェイト様も黒を基調としたドレスがとてもお似合いです。
「アセルス、白薔薇姫!昨日からお疲れ様です。二人とも、凄く似合ってるよ」
「フェイト様こそ、凄くお似合いです」
「羨ましいな……胸とか」
アセルス様、少し感想がずれてませんか?
「二人ともいいなぁ。ドレスもお揃いだし、アセルスと白薔薇姫もなんかいい感じだし。私もなのはに……」
公私混同はやめましょう、機動六課。
「と、とにかく、もうすぐオークションだしね。お仕事がんばろうね」
「フェイト様も。頑張りましょう」
「むぅ……羨ましい」
アセルス様、夜は御覚悟を。
「バルディッシュ、オークション開始まであとどれくらい?」
[3 hours ]
「うん」
残りの時間、私達はフェイト様と一緒に回ることにしました。途中、廊下で話をされていた二人の御仁の一人がなにか気付いたようでしたが、特に危険なこともなさそうなので、そのままスルーして見回りを続けることにしました。
≪しかし、今日は八神部隊長の守護騎士団全員集合か~≫
スバルからこんな念話が飛んでくる。今は特に問題もないので警戒しつつ、会話を始めた。そこから、八神部隊長のデバイスのこと、
副隊長とシャマル先生とザフィーラ、リィンを合わせた6人のことについて少し話が進む。だがレアスキル持ちは当然、秘匿事項が多い。
≪ティア?何か気になることでも?≫
≪別に。また後でね≫
気になるなんてもんじゃない。六課の戦力は無敵を通り越して異常だし、八神部隊長がどんな裏技を使ったかしらないけど隊長格はみんなオーバーS。副隊長もニアSランク。ほかの隊員達だって、前線から管制管まで未来のエリート達ばっかり。あの歳でBランクを取っているエリオとレアで強力な竜召喚士のキャロはフェイトさんの秘蔵っ子。それに危なっかしくはあっても、潜在能力と可能性の塊で、優しい家族のバックアップもあるスバル。そしてまだ謎だらけだが、私と同じぐらいで、遥か上を行くアセルス。
「この部隊で凡人なのは私だけか」
その言葉とは裏腹に心の底には熱い想いが渦巻いていた。こんなところでは立ち止まってなどいられないと。今は警備の最中だとすぐに頭を冷静に、持ち場に戻った。
森の中で、親子にも見える男と少女は他愛もない会話をしていた。だが少女にもたらされた情報に間違いはない。ドクターのおもちゃが来ると。
ホテルの屋上に待機していたシャマルのデバイス「クラールヴィント」のセンサーに反応があった。どうやら、お客さんが来たようだ。だが歓迎などはだれもしない。
「シャーリー!?」
ロングアーチのシャーリーに確認を取る。クラールヴィントのセンサーの誤認ではないことも確認できた。
「ガジェットドローン陸戦Ⅰ型、機影三十・・・いや三十五。陸戦Ⅲ型、2、3、4!!」
ホテルの三方からガジェットが襲来していることがディスプレイで確認できた。すぐさま情報は各隊員に通達される。
そこからは早かった。
副隊長やシャマルの指示のもと行動が開始される。新人FW4人はティアナの指揮下でホテル前に防衛ラインの設置。ヴィータ、シグナム、ザフィーラは追撃に出ることになった。ただザフィーラが喋れたことに、エリオとキャロは少々驚いていたようだ。
それぞれ内容を把握すると返事を返し、移動を開始した。ティアナは魔力アンカーを使い、シャマルの元に。状況を見たいとのことで、シャマルからデータを受け取っていた。
「副隊長のみなさん、デバイス、ロック解除。グラーフアイゼン、レヴァンティン、レベルⅡ起動承認」
「クラールヴィント、お願いね」
「グラーフアイゼン」
「レヴァンティン」
それぞれのデバイスを掲げバリアジャケットを展開する。そこにはいつもの副隊長ではなく「八神はやての騎士達」の姿があった。
バリアジャケットの展開が終わるとヴィータ、シグナムは追撃へと赴く。
「新人達のところには、ぜってーやらねぇ」
それを聞いていたシグナムはやれやれといった感じで、話を聞いていた。
「お前も案外過保護だな」
そんなやりとりをしながらも、目標のすぐそこまで迫っていた。木々をなぎ倒しながらもこちらへ一直線といったところか。
それを確認したヴィータとシグナムはどちらが大型を倒すかで揉め始め、最終的に早い者勝ちとなった。子どもですかと言いたくなるようなこの二人。ただここ最近出番がなく暇を持て余していたのは事実である。
「今度、アイス奢れよな!!」
「分かった、分かった」
そして二人と一匹は戦闘を開始した。
≪八神部隊長、私が防衛ラインに参加してもいいでしょうか?≫
外の状態を確認していると、アセルスから確認が飛んできた。中の警備は十分やろうし、アセルスがFWに合流すれば、さらに安心やな。
≪了解や。アセルスはそのままFWに合流、ティアナ指揮下で防衛ラインの維持と遊撃。各ポジションのカバー頼むで≫
≪了解しました≫
確認を終えるとすぐさま、窓へと走り出す。白薔薇は中の警護を任せて、私はラインの維持に専念することにした。
「いくよ。ルナ、ソル」
両耳のピアスを触り、外へと飛び出す。同時に深紅のバリアジャケットが展開される。二階から勢いのままに飛び出してしまったが、なんなく着地。そのまま皆の元へ合流することにした。
ホテルから少し離れた場所から、ゼストと呼ばれる騎士と少女は眺めていた。そこにドクターから通信。
「断る。レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めたはずだ」
「ルーテシアはどうかな?」
「うん、いいよ」
ルーテシアと呼ばれる少女は断る事もなくDr.そうジェイル・スカリエッティの依頼を受けた。依頼を受けてくれたことに彼は感謝しているようで、今度お茶とお菓子を御馳走すると言ってくれた。別にお菓子とかはいいんだけどとも言いたそうだ。依頼品のデータを受け取ると、ルーテシアは召喚を始める。そう、彼女も召喚士なのだ。
「吾は乞う、小さき者、羽摶く者。言の葉に応え、我が名を果たせ。召喚インゼクトツーク」
紫の魔力陣から、卵のようなものが現れ、それが破裂するとそこから小さな羽虫が大量に召喚された。ルーテシアはオブジェクトコントロール、つまり無機物の操作を羽虫にさせるというのだ。だが、これは彼女の能力の一端にすぎないのだが。
放たれた羽虫はガジェットに入り込み、コントロールを奪いとる。そして動きは格段に良くなり、シグナムや、ヴィータが一撃で落とせなくなった。ヴィータがラインまで下がることになり、シグナムとザフィーラの二人で当たることでなんとかラインの維持を優先することにしたが、さらに相手は追い打ちをかけてくる。
「ブンターヴィヒト」
これには同タイプであるキャロがいち早く気付いた。
「遠隔召喚!?」
言葉と同じくして、眼前に召喚魔方陣が展開される。そこから転送された11機のガジェットが出現する。スバルやエリオが転送魔法により現れたガジェットを見て「どこから」と叫んでいる。だがキャロは知っていた。
「すぐれた召喚士は、転送魔法のエキスパートでもあるんです」
三人のやり取りを聞いていたティアナだけは違っていた。彼女はすでに臨戦態勢に入っている。副隊長達のリミッター付きでの戦いを見せつけられ、さらに「やらなければ」の感情に飲まれかけている。
今までと同じだ。証明すればいい。自分の能力と勇気を証明して。私はそれでいつだってやってきた。クロスミラージュを正面に構え、魔方陣を展開し、迎撃の準備を整える。リィン曹長もこちらに合流することになったそうだ。ただ虫にやられたとかなんとかで少し合流が遅れるとのことだ。
だが、ルーテシア達の目的を知る者はいない。ガジェットは囮であり、本命の物を探している最中だった。そしてそれもついには見つかる。
「見つけた」
右手を掲げると「アスクレピオス」から黒い塊が放出された。それこそが彼女の召喚虫で信頼を置くガリューだった。すぐにガリューは倉庫へと向かっていった。
「くっ!!」
足を止め、ガジェットに対して射撃を行うも、効果的なダメージを与えることができていない。避けられるし、当たっても破壊することができていない。ガジェットから放たれたミサイルを撃墜することに気を取られ過ぎて、背後を完全に取られていた。が、キャロの声でなんとかジャンプして回避し、二発打ち込むもAMFにより決定打にはならない。
「ティア!?大丈夫?」
ウイングロードを滑走し、ガジェットをかく乱しているスバルから声が飛ぶ。何とかの意味を込めて、左手を少しあげ、木に身を隠し、マガジンを交換していたとき、シャマル先生から連絡がくる。
≪防衛ライン、もう少しだけ持ちこたえてね。すぐに、ヴィータ副隊長がすぐに戻ってくるから。それに左舷はアセルスが抑えてくれてるから、みんなは正面だけに注意して≫
≪アセルスも出てるの!?それにシャマル先生、ちゃんと全機落とします≫
≪ティアナ大丈夫なの?無茶しないで≫
朝晩訓練してきてますから……大丈夫です。
「エリオ、センターに後退!スバル、クロスシフトAで行くわよ!!!」
「おおお!!!」
ティアナの意図とする動きを理解し、さらにガジェットをひきつける。それを確認するや、カートリッジ4発ロードする。
証明するんだ。特別な才能がなくたって、一流の隊長達がいる部隊でだって、どんな危険な戦いだって……
一つ、また一つ。シューターが生成されていく。そして十数発のシューターがティアナの周りに漂っている。
大丈夫。打てる。クロスミラージュも……私も。
「ランスターの弾丸は敵を貫けるって」
スバルは準備が整ったことを確認すると、車線軸にガジェットを追い込んでいく。そしてティアナを確認すると、その場から急速に離脱した。それが合図となるのだ。
「クロスファイアーシュート!!!」
ガジェット目がけ、一斉に放たれるオレンジの弾丸。カートリッジのおかげか、易々とガジェットを貫通していく。だが、彼女の技量では、この数を正確に制御することがそうそうできるはずものなく、さらに、精神的にも不安定なら尚更だ。一発だけ逸れてしまい、それが運悪くスバルの方へと飛んで行った。背後に魔力を感じたスバルが振り返るもすでに眼前。防御するにも、魔力量が大きくて貫通されてしまう。
「ああっ……」
どうすることもできずに、ただ固まってしまう。バリアを使うこともできずに直撃する寸前、目をつぶってしまう。だがスバルには衝撃などは何も来なかった。
「ティアナも無理しすぎだよ。スバルも、もう少し集中しないと、怪我だけじゃすまないよ」
目を開けると、深紅のバリアジャケットに身を包むアセルスが、シューターを受け止めていた。しかも、バリアとかじゃなくて、魔力の刃を使って受け止めているのだ。
十字留め
普段からの地獄のような訓練のおかげで、魔力弾も止めることができるようになった。さらにここから応用である。勢いを吸収すると同時に方向を変え、余ったガジェットに跳ね返した。左舷のガジェットを全て切り裂き破壊してきた。Ⅲ型であろうと、今のアセルスを止めることはできなかった。左舷を片づけ、急いで駆けつけた時、ちょうどスバルが誤射されるところだった。
「ふぅ。ティアナ、無茶は良くないよ。スバルもそうだよ。こうなるってくらい予想はついてたでしょ?ここは私に任せて、二人は休んでて。ヴィータ副隊長も来てくれたみたいだし」
普段のティアナの事を考えると厳しく言うことは止めよう。今日の事で何か変わるかもしれないから。
ティアナの身体が震えてる。自分のやったことが招いた結果ーーーフレンドリーファイアになりかけていたのだ。できると啖呵をきっておきながら、この結果だ。無理もない。
「アセルス、今のは私がいけないんだよ、だから……」
聞きわけのない二人だねホント。前思考撤回。少し、イラッてしちゃったよ。
「引っこんで」
深紅の瞳が心を抉る。圧倒的な強者が弱者を眼だけで殺すような……深く、暗い視線。
「何回も言わさせないでね。それに、私の階級は4人より上、つまり上官命令だよ」
「は……い……」
これほどの恐怖をアセルスからは感じたことがなかった。妖魔に向けられる視線はこれに近いものがあるのだろうか。押しつぶされそうなプレッシャーを感じる。それにティアナも相当こたえてるみたい・・・
アセルスとヴィータ副隊長に任せて、スバルとティアナは後ろにさがった。この時スバルは気付かなかった。ティアナは声を殺し、泣いていたことを。
ガリューは何も問題なく目的物を回収し、離脱を開始した。ルーテシアからのオーダーを受け、スカリエッティのもとへ向かっている最中だ。だが、機動六課も簡単に終わる相手ではない。ノーマークだったガリューの前後に影が現れた。
「はやてとアセルスの読みは当たっていたようだな」
「はい、イルドゥン」
前後を挟むように、イルドゥンと白薔薇姫が躍り出る。完全に気配を殺し、ガリューを待ち伏せていた。その身に輝く、妖魔の剣と妖魔の小手、具足を装備した状態で。
待ち伏せは上手くいったが、はたして抑えられるものか……が、やるしかないようだな。
だが、相手と殺りあうつもりのないガリューは逃げることだけを考えている。なので、二人を避けることだけに集中している。至極簡単な方法をガリューは選択した。そう、正面突破だ。
「・・・」
さらに加速し、そのまま抜き去ろうと試みる。だが、イルドゥンも易々抜かれるわけにはいかない。抜刀の構えをとり、相手を見据える。空気が変わった。
「一撃で決める」
ガリューが通り過ぎようとしたその刹那……
きぃいいんと、金属と金属がぶつかる音が鳴り響く。
「金属音だと!?一体何とぶつかったのだ!?」
土煙りをあげた後、スピードを相殺するために、足でブレーキをかける。白薔薇姫が近づくも、そこにはイルドゥンしかいない。
「イルドゥン……」
「すみません、逃しました。だが、一太刀は入った……がはぁっ」
膝を付き、吐血するイルドゥン・・・どうやら、すれ違いさまに貰ったようだ。
「まさかここまで、動けないとは。情けない」
膝を付きながら、少しあがった息を整えている。その目には悔しさがにじみ出ている。
「今は治療が先です。シャマル様を呼びます」
白薔薇姫から連絡を受けてシャマルがやってきた。前線はすでに全機撃墜していたので持ち場を離れることにも問題はなかった。
「二人とも、無理はしないでくださいと言ってるじゃないですか。本来の5割程度しか出せないんですから」
治療を受け、なんとか出血は止まった。治療が終わるとすぐに、イルドゥンは動きだす。
「迷惑をかけた。すぐにホテル内に戻る」
「待って、まだ終わってないです……ってもぅ」
すでに、そこに姿はない。白薔薇姫はやれやれといった感じで笑っていた。
「何故、無茶をするんですか?二人とも」
治療データをまとめながら、白薔薇姫に問いかける。前にも話は聞いているのだが、どうしても納得ができないのだ。誰だってそう思う。二人の力が落ちているのは分かっているのだから。
「シャマル様、私達には時間がないのです。あの方が本腰を入れてくる前に、その時までに成さなければならないことがあるのです」
成さなければならないこと。それがなんなのかは二人にしか分からない。だか、命をかけるほどに、何か大事なことがあるのだろう。今は詮索せずに、私もホテルへと戻るのだった。
その後、オークションが開催され、はやては、アコース査察官と。なのはとフェイトはそれぞれユーノと再会することとなった。