機動六課が緊急事態で慌ただしくしているなか、シグナムは聖王教会本部を訪ねていた。そこには機動六課後見人の三人の内の二人が。一人は制服姿が珍しい、クロノ・ハラオウン提督。そしてカリム・グラシアこと騎士カリム。私はシスター・シャッハに案内され二人の待つ部屋へと案内される。
「失礼します」
「ああ、シグナム。お帰りなさい」
「合同捜査の会議の方はもう」
「ええ、滞りなく」
お二方はちょうど、六課の運営面の話が済んだところらしい。ここからは任務のことについての話とのことで、私も同席して話を聞くことになった。その話の途中だ。直接通信が騎士カリム宛てに届く。相手はそう、主はやてからだ。
「そう、レリックが」
「それを小さな女の子が持ってたいうんも気になる。ガジェットや召喚士が出てきたら市街地付近での戦闘になる。なるべく迅速に確実に片付けなあかん」
「近隣の部隊にはもう?」
「うん、市街地と海岸線の部隊には連絡したよ。奥の手も出さなあかんかもしれん」
「そうならないことを祈るがな」
カリムが少し考えて後、すぐにシグナムも部隊に帰るようにと伝える。帰りはシャッハが送るとのことなので、かなり早く帰ることができそうだ。急いで部隊に戻るべく、聖王教会を後にした。
エリオとキャロにスバルとティアナが合流してから数十分後、ヘリが到着し、すぐにシャマルが診断を行った。バイタルも安定しており危険な反応もなく心配ないらしい。それにはみんな安堵の表情を浮かべていた。
「みんな休みの途中だったのにごめんね」
「いえ、大丈夫です」
フェイトの言葉にもエリオが正直に返す。少しの間だったが、休みを満喫できていたようだ。
ヘリで保護した子を運ぶ事を指示し、FW達には残って調査を任せた。
そして、眠っている女の子を運ぶべくなのはは腰を落とす。だがその目に映るのはただの小さな女の子であった。
FWが地下水路への調査へ向かうまさにその時、ロングアーチが地下水路に現れたガジェットを捉えた。
「地下水路に数機ずつのグループで総数・・・16、20・・・30!?それに海上方面に12機単位で5グループ」
この報告にはやての第一声は「多いな・・・」だ。確かにこれは多すぎる。地下水路に現れたガジェットもかなりの数だ。副官のグリフィスも判断を待っているようだ。
なんとか人員を多くかけるのが最善なのだが。そこに通信が入る。
「スターズ02からロングアーチへ。こちらスターズ02。海上で演習中だったんだけどナカジマ三佐が許可をくれた。今、現場に向かってる。それからもう一人って、もう話はついるらしいけど、ギンガ陸曹も向かってる」
「さっき、通信を貰ったばかりやからな。ほんなら、ギンガは指示通りアセルス達と合流後、スバル達と合流して。ヴィータはリインと合流。協力して、海上の南西方向を制圧」
「南西方向、了解です!」
「なのは隊長とフェイト隊長は北西部から」
「了解」
「ヘリの方はヴァイス君とシャマルに、任せてええか?」
「お任せあれ!」
「しっかり守ります」
一通りの指示が飛ぶと、FW達も動き出す。アセルスとエリスは別行動になるため、いつものスターズ、ライトニングの指揮はティアナが取る。
「ここからは切り替えて、やるわよ」
4人が頷くと、デバイスを前に掲げ、声を揃えて言い放つ。
[Standby]
「セーーーットアーーップ」
4人それぞれが異なる方法でバリアジャケットを展開していく。そして展開が終わると、すぐに地下水路へと降り、女の子が持っていただろうもう一つのレリックの捜索を開始した。
ちなみに、アセルスと、エリスは先行し、ギンガとの合流を急いでいた。ただ二人にはどことなく嫌な予感がしていて、早くこの件を片付けたかった。
なのはとフェイトはバリアジャケットを展開、北西部の制圧を開始。そしてヘリからはバリアジャケットを展開したリインも南西の制圧へと赴くのであった。
時を同じくして、紫髪の少女ルーテシアも行動を開始。奇しくも、六課と同じ地下水道へと向かうのだった。
「いこう……ガリュー」
少しの呟きと共に、少女も自身を転送するのだった。
スバル達4人が地下水道へ降りたころ、私とエリスは別口から地下水道へと降下。当初の第一目的のギンガ・ナカジマ……スバルの姉と合流を急いでいた。すでにバリアジャケットは展開は完了。後はお互い連絡を取り合って合流するだけだったが、予期せぬことは往々にしてある。今回も例に漏れることなく起こった。
「あれは……イカ?」
エリスもそんな馬鹿なといったように前方を見つめている。下水道と言っても問題ないこんな場所にイカがいるのだ。だがただのイカなら可愛いが問題はそうではない。デカイ……そしてこいつは魔物である。
「まさか、こっちの世界に魔物がいるなんて」
アセルスは忘れているが、こっちの世界に迷い込んで初めて戦ったのは魔物である。が、そんなこと置いておき、戦わざるを得ない状況になっている。
「倒さないといけないらしいね。エリスやるよ!」
「準備はできています。行きます!!」
時間も惜しく、また魔物ということで遠慮は不要。二人は最初から全力で倒しにかかる。が、二人にとって現在の状況は非常に厳しい。それはここが限られた空間だということだ。
「くっ……しまった」
巨大なイカ「デビルテンタクラー」は自慢の食腕を使い巧みに攻撃を仕掛けてくる。ただ奴はすっぽりはまっているらしく、その場から動けないのが唯一の救いか。だが食腕の一振りは想像しがたい程の威力を誇っている。
「デバイスが、使えないなんてね。ほんと二人揃って長い物を使うもんじゃないね」
[上官、申し訳ございません]
[・・・]
私のデバイスは相変わらずの黙んまり。レグナも相変わらずといったところか。しかし、デバイス無しで魔物と戦うことは決して楽ではない。が、足を両手で防いでいるとき、指輪が光った。そう、主の窮地を打開すべく準備を終えていた。
[Jacket Purge and Standby]
「セットアップ」
アセルスも意図を汲み紅いバリアジャケットをパージ、即座にデバイスを起動しバリアジャケットを展開。純白の小手に具足を装備した白き姫ーーーフォートレスを起動したアセルスが舞い降りる。
エリスも驚いていたようだが、直ぐに状況を把握し、自分の役割を全うし始める。レグナは振りますことができないので、今は完全に防御に徹する。グランドシールドと刃身を使い攻撃を巧みに防いでいる。そしてオフェンスはというと、
「そんな大ぶり、当たらないよ!]
デビルテンタクラーの食腕、足を使った10本の連続した振り下ろしを全て避ける。ステップにウィ-ビング、または局所的なシールドを使い、流れるように受け流していく。拳と脚しかないなら間合いを詰めることは必須。そして、直撃との恐怖と向き合い徐々に距離は詰まって行く。そして後一歩を踏み込んだ。
「きゃぁああ」
エリスも一発入ったと確信したまさにその時、デビルテンタクラーは口から大量のスミを噴射し、視界を奪った。わずかの思考の混乱がまずかった。身体が硬直、防御に移れない。次の瞬間、器用に横振りされた食腕が胴に直撃した。
そして、そのままエリスに向けて弾き飛ばされた。エリスも緩衝魔法を使い、受け止めたが、背後の壁を二枚貫通するハメに。
「っ痛う」
「お姉さま、大丈夫ですか!?」
少しぼんやりする意識で、身体の状態を確認する。痛みはあるものの、幸い以上はないようだ。直撃の瞬間、オートプロテクションが発動していて身体への直撃は避けられた。
「あのイカ……絶対に潰す!!!」
最近の恨みを晴らすとばかりに私は激情していた。本当なら切り刻みたいのだが、この状況では殴り、蹴り倒すことに専念する。身体の感じが元に戻ったのを確認すると、すぐさま突撃をかけるが、あのイカは食腕を挙げて何かしている。不審に思った矢先、エリスの叫び声が地下に木霊する。
「お姉さま、下がってください!!!魔力反応、かなり大きいです!!!」
その言葉を聞くと突撃を止め、防御に。イカの足元を見ると、徐々に水が溢れだしている。
「イカのくせに魔法まで使うのか?」
吐き捨てる言葉をイカには届くわけもなく、魔力で作られた水が徐々に高くなっていく。
「こんなところで、流されることになりそうなんて、冗談じゃないね」
魔力なら魔力でなんとか防ぐことはできる。集中して気功をプロテクションに練り込む。だが、イカの目がこちらを馬鹿にしたように笑っていた。そこで冷静さを完全に吹き飛ばされた。
「あまり調子に乗ってると痛い目にあうぞ!!!」
ブーストを使うわけにもいかないのだが、感情が逆なでされており、いつ使ってもおかしくない状態だ。が、折しも先ほど発言は当たる事になる。
「ええ、私も同感です」
突如、イカの側壁が吹き飛んだ。そして現れた影が、イカに渾身の左ストレートをぶちかます。
ボコッッッ
なんとも表現しがたい音と共に瓦礫を飛ばしながら、イカは反対の壁を突き破り吹き飛んだ。
イカを殴り飛ばした影の正体は・・・合流すべき人物。スバルとよく似たデバイスを左手に装着した紫髪の女性。
ギンガ・ナカジマ陸曹だった。スバル・ナカジマの姉で、SAの先生で階級も歳も2つ上とかなんとか。
「アセルス准陸尉ですね。ギンガ・ナカジマ陸曹、現在よりナイト01の指揮下に入ります。よろしくね、エリス」
急な展開だが、事前に確認はされてあったことであり、今はあの憎たらしいイカを潰すことが先決だ。
「私のことはアセルスでいいよ。それよりあっちは少し広いみたい。いくよ」
イカを追って穴を進む。後ろでは、エリスとギンガが少し話ていたがすぐに緊張した面持ちになった。そして、イカが吹っ飛んできた場所と思われるところに着いたが肝心のイカの姿が見当たらない。少し開けているが天井が低すぎるため、デバイスは振りませず、状況は変わらない。周囲を見渡していると、少し奥に貯水用の窪みを見つけたが、イカはそこまで飛んでいた。そしてそれはイカにとっては最大の幸運。食腕を挙げ、準備は整っていた。
地下水道に響き渡る轟音。そして巨大な波が押し寄せてきた。イカが狙っていたのはこれだったのだ。
メイルシュトローム
よくよく見てみるとガジェットやらが一緒に流されており故障している。だが下水も流れているここで、これを直撃するのは正直嫌なのだ。なので私も対抗することに。
魔方陣を展開、詠唱に入る。同時にエリスとギンガは後ろに下がった。
「眼前に贖す全てを飲み込む天より流るるは光の波」
「フラッシュフラッド」
詠唱が終わると、私の前から光の波が押し寄せる。これまたガジェットが巻き込まれ故障、爆発していく。お互いの波がぶつかり合い、波は天井を勢いよく貫き消滅。地上まで広々とした穴が出来上がった。これにはイカも目を見開きびっくりしていたようだが、私はすでに間合いを詰めていた。
「ほら、おとなしくしててよ」
「サミング」簡単にいうと眼つぶしだ。デカイ目に目がけて拳を一発叩きこむ。潰れるのはいやだったので軽くだったがダメージはあったようだ。これでイカの動きが完全に止まった。この機を逃すことはなく、三人がイカをトライアングルに囲む。
「エリス、格闘いけるよね?」
「もちろんです、お姉さま」
レグナを収納すると、軽くステップを踏みを準備をしていた。ギンガは言うまでもない。
「ギンガ、エリス、私に合わせて!!」
「了解!!!」
三人の身体が光る。そしてアセルスから仕掛ける。三角形の一辺を描くように、鋭く蹴り込む。続けてエリスも一辺を描くように蹴り込む。最期にギンガが一辺を蹴り描きトライアングルが完成する。三人は合わせたかのようにイカに接近、そして拳を突き上げる。
「昇龍……ぶちぬけ!!!!」
秘技 三龍旋
それぞれの魔力光 深紅、銀、群青の龍が螺旋を描き、イカを飲み込んでいく。昇龍により地上まで飛ばされたイカは、そのまま光となった。
「すごい……アセルス、今のって?」
「さぁ?詳しくは良くわかんないけど、とにかく凄かったってことで」
「二人とも、先を急ぎましょう。ガジェットの反応はこちらにはありません。先の戦いでほとんど落としました」
エリスの説明に首を縦に振り、直ぐにティアナ達に合流するために駆けだした。
「ところでその人造魔導師って?」
私は疑問に思ったことをギンガに尋ねた。先ほどの会話に再々でてきているこの言葉。今回の任務にも関わっていることはよくわかった。
「優秀な遺伝子を使って人工的に産まれた子達に投薬、または機械部品を埋め込むことで後天的に魔力を強化したり、能力を持たせる。それが人造魔導師」
「もっとも倫理的な問題や技術、コストといった問題が生じるからよっぽどな連中じゃない限り手は出さないはずだ」
ギンガの説明に加え、エリスも説明をしてくれた。なるほど、そんな技術使って何をしようっていうのか。だが、確証は持てないが、その技術を成すことが可能な人物が裏にいるってことだ。
移動中ながら思考に耽っていた私の後ろで、ギンガが連絡を取っていた。どうやらティアナと連絡が付いたらしく、すぐに合流できそうだとのことだ。
そしてすぐに目的の場所に到達。がそこは行き止まり。さて、道を間違ったかと思ったが、ギンガは迷うことなく壁を破壊した。
「姉妹って似るもんだね」
聞こえないように呟くとギンガを追って壁の向こうに。そこで、身構えていた4人と合流できた。
「ギン姉!それにアセルスにエリスも」
ここにFWの合流がなった。そのころ空はなのはさんとフェイトさんが頑張ってくれているようだ。
「みんな、再会したばかりだけど、お敵さんみたいよ」
ティアナの声で全員が戦闘体勢に切り替わる。現れたのはガジェットⅠ型Ⅲ型の混成小隊、そして刺又を持った魚人。魔物だ。
動いたのはティアナ。多重弾核射撃を使いながら、ガジェットのコースを読んで無駄なく落としていく。エリオは狭い中で高機動戦闘をやってのけ次々に三枚におろしていく。キャロはフリードを使役し、次々と燃やし、破壊していく。背後のⅢ型はナカジマ姉妹が当たっていた。
「トライシールド」
Ⅲ型の放ったエネルギー弾を最低限のシールドで弾くと、アームを拳で受け、均衡状態を作り出す。
「一発で決めるんでしょ?」
「もちろん!ディバイーン」
思いっきり踏み切り、ギンガの上を越えていく。Ⅲ型はこれに気付きバリアを展開するが振り下ろされた右腕に簡単に突破され装甲は貫通。
「バスター!!」
止めとばかりに内部に打ち込まれ爆散した。
そして、のこった魚人は、残らず壁にめり込んでいた。
戦闘後、レリックがあるであろう場所に到着。すぐに捜索が始まったがそうそうに、キャロがケースを発見した。キャロがケースを抱えているのを見てこれからどうやって地上に戻るか考えていた時だった。
何かが柱を蹴っているような音が聞こえた。そしてその音はキャロへと近づいている。正体はすぐに分かった。イルドゥンから報告を受けていたあいつだ。キャロの前に割って入り、すぐさまプロテクションで受け止める。受け止めた相手は、その通りだった。
「ぐッ!?重い……」
じりじりと押しこまれるが、この広さなら問題はないと判断した私は、首に下げているデバイスを起動。すぐにジャケットは深紅のものに変わり、腰にはデバイスが備わっていた。
「はぁああ!!」
居合の要領で、斬りかかりった。さらにエリオがこれに合わせてサイドからの攻撃となったが、キャロが魔法により吹き飛ばされた。それに気付いたエリオがかばう形で受け止め、柱へとぶつかる。キャロは完全に不意を突かれたので意識を失っているが、エリオはなんとか大丈夫のようだ。だがキャロをかばうことには変わりなく、その場に固定となってしまった。そして、私は奴と鍔迫り合いになり今度は押し込めている。ケースを持って逃げようとした時、押し込められている光景が目に入ったためか、はたまたスバルの「そこの女の子、それ危ない物なんだよ。こっちに渡して!」といったことが効いたのか、歩みをとめた。その隙を狙ってオプティックハイドを使っていたティアナがダガーモードを起動しており、その刃は首筋にあてられていた。
「ごめんね、乱暴で」
ルーテシアは表情こそ変えないも内心、どうしようか考えているところだ。そこに念話が。
≪ルールー、1,2,3で目をつぶれ≫
≪1,2,スターレンゲホイル≫
爆音と光がこの空間を支配した。視力に感覚を一時的に奪われ、ティアナは拘束していたルーテシアを逃がしてしまった。なんとか視力を取り戻し、ルーテシアに銃口を向けるが、何者かに蹴り飛ばされた。
アセルスは相変わらず斬りあっている。エリスはすぐにその影を追いかける。そして見つけた。
「レグナ、やっと出番だ。遠慮はいらん。斬り伏せろ!」
「上官、了解です」
豪快に振り下ろすと、そこで何かが避けるのが確認できた。だが肩には出血があることから、避けきれなかったようだが。
「サンダー、ガリュー。無理しないで」
ルーテシアが呟いた先にはサンダーと呼ばれるオーガがいた。すぐに引くと、アセルスと斬りあっていたガリューと呼ばれる生物も引いた。
「たくもー、本当に心配したんだからな。でも、この烈火の剣精アギト様が来たからにはもう大丈夫だ」
リインと同じくらいの大きさの赤髪の女の子がいた。どうやらさっきのは彼女の仕業らしい。相手のデータがない以上は迂闊に手を出せず、みんなは一か所に集まっている。
「おらおらおら、お前らまとめてかかってこいやー」
「遠慮なく」
アギトはえっ!?といった顔をしている。それはそうだ。眼前ですでにレグナを振り下ろしたエリスが居たからだ。
「うおっ!?危ねえじゃねえか!!!」
間一髪かわしたようだが、エリスは舌打ちをしていた。
「貴様がかかってこいといったのだろう?」
「それにしたって汚いだろう!!」
「汚いのはそっちも同じだろうが」
言いくるめられたアギトは空中で地団駄とうなんとも奇妙な光景を演出してくれている。彼女もまた短気らしい。
「絶対ゆるさねえからな!!」
戦いは続くのだった。