魔法少女リリカルなのは 紺碧の姫   作:mom

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分岐

「ああ~やっちゃったよ……」

 

ルーテシアに対して止めるように助言していたアギトだったが、ルーテシアの召喚した地雷王により、先ほどまで戦っていた地下が消滅した。

 

「ガリュー、サンダー……傷大丈夫……?」

 

 

 ルーテシアの傍らにはガリューとサンダーが立っている。だが腕や胸からは、先ほどの戦闘の影響か赤い血が流れ出している。だが、主人を心配させまいと、気丈に振舞っているのが言葉を発せずとも分かる。

 

 

 コアへと戻って行く二人を眺め、再び潰れた道路へと目を向けたその時だ。

 

 地雷王が鎖に縛りあげられているのが視界に入ってきた。さらに何かに気付いたように顔をあげると蒼と水色の魔力の道がこちらへと向かってきているのが見えた。走るのはナカジマ姉妹。蒼水の道を駆け抜けるのはエリス。

 

 一気に距離が詰まってきているのが分かった二人はすぐさま迎撃に移るが、

 

「させない!」

 

 シルエットを解除したティアナによる牽制射撃が行われ、二人は攻撃を中断をした……かに見えた。回避間際に紫のクナイと火炎球がティアナ、そしてウイングロード上の三人に放たれていた。

 

 ティアナはすぐに飛び退き回避、スバルとギンガはトライシールドを使ってそのまま進むことを止めはしない。その影には隠れるようにエリスとエリオが居た。エリオは完全に二人の視界にはまだ一度も映っておらず完全にノーマークの状況だ。

 

「エリオ」

 

「はい、エリスさん」

 

 

「「ソニック」」

 

金と銀……二筋の閃光が駆け抜けた。

 

 

 日ごろの訓練を通して息は合ってきたのは全員感じていること。全員が自分の役割をきっちり果たしている。まさに今がそうだった。カートリッジの薬莢が二発分落下。

 

 

「そこっ!!ディバイーンバスター」

 

 なのはの代名詞といっても過言ではない砲撃。スバルも彼女を尊敬して使ってはいるが、なにも使えたのは彼女達だけではない。彼女から直接教えを乞うティアナもまたそうなのだ。

 

 

 この勝負の分岐点を逃してはならないことはセンターのポジションを任されているからこそよく分かっている。彼女にはまさに今が分岐点であると判断した。切れる手札は切るべきだ。だからだれにも見せなかったカードをここで切ったのだ。

 

 

「なっろう!!」

 

「・・・」

 

 橙色の砲撃は二人を裂くように間を貫いた。直撃は元々狙ってはいない。二人を別れさせることこそが彼女の狙い。

 

 

「いい判断ですよ、ティアナ!」

 

 アギトとの周りを囲むように水色のダガーが無数に現れる。そして喉元にはデバイスの切っ先が触れている。

 

 

 ルーテシアは道路の淵に降り立った。がそこを狙っていたかのように金銀の閃光が壁を蹴って目前に迫ってきた。

 

 ルーテシアの目に姿が映る……がこちらも喉元にデバイスが突き付けられていた。

 

 

「ここまでです」

 

 言い放つとアギトとルーテシアにバインドで拘束。拘束を担当したのは地下に残っていたリインだ。そしてアギトにデバイスを突き付けていたのはアセルス。そして、

 

「市街地での危険魔法使用及び公務執行妨害で逮捕する」

 

 アギトとルーテシアの前に降り立ったのは、紛れもなくヴィータだった。

 

 

 

 

 やっぱり……あれぐらいなら死なない……

 

 潔く諦めているアギトの横で、素直な感想を心で述べていると、そこに少しお嬢様気味な口調の女性から通信が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

‐‐‐近くのビルの屋上‐‐‐

 

「ディエチちゃん♪、ちゃんと見えてる?」

 

「良く見えてる」

 

 蒼いボディースーツの少女が二人。一人は眼鏡をかけたクアットロと呼ばれ、一人は何かを布で巻いた物を持っているディエチと呼ばれる少女達だ。

 

 

 そのうちの一人、ディエチが遠くを見つめている。ここからでは特に何も見えてはいない……が彼女の眼にはしっかりと見えている。これから狙うべき獲物が。

 

「しかし、この身体って便利だよね、色々と」

 

「まぁ人であって人ではないですしぃ」

 

 人であり人ではない……彼女達は機械の身体を後天的に持つ者達

 

 

「戦闘機人だからね……。それより撃っていいのか?ケースは残せると思うけど、マテリアルの方は壊れることになる」

 

「ドクターいわく、本物ならそれくらいでは死なないって。それよりも、敵さんの事、過小評価し過ぎたみたい。Ⅱ型と幻影が全部落とされちゃった。だからディエチちゃん、今すぐ落としてあげて♪」

 

 満面の笑顔を浮かべながら全く真逆のことを口にするクアットロにはついていけないなと、ディエチは首を竦めている。だがドクターからの任務である以上、彼女に断る義務もない。

 

 

 

 

 

 巻いていた布を取り払うと、不釣り合いなカノン砲が姿を現す。使用者は当然ディエチ。

 

 

 

 これって目立つから使いにくいんですけど、まぁドクターにも色々考えがあるんだろうけどさ。ただ悪気はないけど。

 

 

「IS(インヒューレントスキル)ヘヴィバレル」

 

 さて、チャージ完了まで30秒。まだ気付かれてもないし60%ぐらいで十分でしょう。クアットロはウーノ姉さまと通信中か何かあったようだけど、私は私のやる事を全うするまでだ。

 

 

「チャージ完了。ヘヴィバレル発射」

 

 

 そして同じくして

 

 

≪ルーお譲様、手助けします。セインちゃん、手はず通りに≫

 

≪はいよ、クア姉≫

 

 セインと呼ばれる少女もまたどうやら彼女達の仲間のようだ。そしてセインはというと、地面の中から通信しているという奇妙な光景である。これもまた彼女達の能力である。

 

≪クアットロ……≫

 

 ルーテシアは黙って頷き、クアットロからの言葉をリアルタイムで紡いでいく。

 

「逮捕はいいけど…貴女はまた守れないもね…」

 

 その言葉にヴィータは形相変え、ルーテシアへと詰め寄った。彼女の心に残る傷、後悔を的確に狙った言葉だ。そして、この言葉のもう一つはーーー宣戦布告。

 

 

「気付いたようですけど、もう遅いですわ。ち・ょ・く・げ・き♪」

 

 その言葉がタイムリミットだった。

 

 

 

 爆音ともにヘリは爆風に包まれた。

 

 

 

「ふっふふのふ~ん。木端微塵ってやつね」

 

「黙って。今、命中確認中」

 

 異質な眼を使い命中を確認する。そして煙が晴れたそこには健在のヘリと一人。

 

 

 

 

 

 

 

 突然の砲撃に現場、ロングアーチともに慌てふためき管制などあったものではなかった。しかし全員の気持ちは同じ。ヘリは無事だということ。そして無事であることを信じて疑わない者がここに。

 

「大丈夫。ヘリは落ちてない。それだけは確実に言えることだよ」

 

「アセルス、その証拠はあるのか!?」

 

 若干食い気味に詰め寄るヴィータをなだめるアセルス。彼女には確信があった。何故なら、

 

「新モードのテストで何度もやられましたからね」

 

 

 ヘリの方を見上げそう答える……そして煙が晴れたそこにはスターズ分隊隊長。高町なのはの姿があった。

 

「ぎりぎりで防御成功。ヘリも無事だよ!!」

 

 なのは専用の限定解除。レイジングハート・エクシードモード

 

 これにより従来よりも魔力が単純に強化されることになり、全体的なスペックが向上することになる。

 

「なのはさんとレイジングハートエクセリオン、共に無事です。ヘリも問題ありません」

 

 なのはにより防御が成功したことが確認されると管制室がドッと沸きたった。その報告を聞いていたはやても、ホッと胸を撫で下ろし、すぐに行動を開始した。

 

 

 

「あら~ディエチちゃんどういうこと?」

 

「全力じゃないとはいえ、あれを防ぐなんて」

 

 ヘリを破壊しようとした二人は予想外の結果に少々戸惑っている。奇襲が失敗した以上は作戦を中断し、撤退することが鉄則だ。そのことは二人も重々理解はしている。

 

≪セインちゃん、後はお願いね。私達は撤退するから≫

 

≪はいよ~≫

 

 すぐさまセインはルーテシアに連絡を取り、ISディープダイバーを用いて救出を開始した。セインはルーテシア、ケース共に奪取することに成功していた。

 

 しかし、この二人はそうはいかなかった。

 

 

「ディエチちゃん、撤退するわよ」

 

「ああ、分かってる」

 

 クアットロは飛行可能だが、ディエチは飛行することができない。なので、ビルを飛び継いでいくことになる。

 

 

「見つけた……」

 

 突如飛来する金色の閃光…なのはと共に空を抑えていたフェイトだ。

 

「市街地での危険魔法使用及び殺人未遂で逮捕します」

 

「遠慮しときます~」

 

 踵を返し、すぐさま逃亡を図る二人。当然これを黙って見逃すわけもなく追撃に出るフェイト。しかし敵も愚かではない。フェイトのスピードに勝てないとみるや、ディエチをクアットロが抱えこみ、彼女のISを発動させる。

 

「ISシルバーカーテン」

 

 ISが発動と同時に、二人の姿が景色に同化していく。どうやら光学迷彩の類のようだ。

 

「はやて!!」

 

 

 しかし二人の思惑とは違い、フェイトは離脱していく。ビルの影に降り立つとすぐにシルバーカーテンを解除し、後方を振り返る。

 

「離れた?」

 

「クアットロ、上!」

 

 

「ほんま、苦労させてくれたなぁ……おかげで何発のフレーズヴェルグ撃ったと思ってんねん。しゃあないから、これで憂さ晴らしさせてもらうで」

 

 はやての詠唱が完了すると、黒紫の球体が頭上に浮かぶ。だがこの球体の大きさは尋常ではない。

 

「遠き地にて、闇に沈め」

 

 シュベルトクロイツを振りかざし、最期の詠唱を完了させる。

 

「デアボリック・エミッション」

 

 見えないなら広域殲滅であぶりだすまで。フェイトもこの事を理解していたからこそ直ぐに退いたのだ。

 

 

「広域魔法~!!!」

 

 広域魔法の拡大からディエチを抱えなんとか範囲外に逃げることに成功し、何とか一息付こうとした矢先……二人を桜と金色が挟みこむ。同時にカートリッジが一発ロードされる。

 

「エクセリオン・バスター」

 

「トライデントスマッシャー」

 

 桜色と金色の砲撃が二人を強襲する。逃げることもできずにただ、直撃コースなのだがーーー着弾間際に何かが二人を連れ去った。そして二色の砲撃は相殺され爆ぜた。

 

「避けられた!?」

 

「なのは、何かが割って入ったの見えた?アルト、追って!」

 

 どうやら何者かが砲撃に割って入り、二人を連れ去って行ったようだ。間もなく反応をロストしたことが前線に伝えられた。

 

 

≪すまない、なのは、それにはやて。こっちは完全に持って行かれた…FWは悪くなかった。あたしのミスだ≫

 

≪私もです、はやて、ごめん≫

 

 今回は敗北に近いものがある。敵の能力を知る事ができたことは大きいが、隊長3人の限定解除を使ってまで敵を逃してしまった。そして捕えていたアギト、ルーテシアに逃げられ、レリックも奪われてしまった。

 

 

≪今回は私達の負け……やな。ただ女の子とみんなが無事でなによりや≫

 

 FW達もその言葉を受け少しは気分が楽になったようだ。ひとまず、現場での報告書をまとめることと、病院に女の子を搬送するため六課に戻る事を選択した。六課に到着したころシャッハと、シグナムも到着した。だが二人も戦闘後の様子だった。

 

 

 

 

 

 

 一方では

 

「全く、セインはケースにルー御譲共に助けたというのに、お前たちはなんてざまだ」

 

「ごめんなさいトーレお姉さま」

 

「感謝……」

 

トーレと呼ばれる長身の女性…彼女のISライドインパルスによる高速移動で二人を救出したのだ。

 

「それよりセインちゃん、ケースを確認してちょうだいな」

 

 はいはーいと答えるとケースを開封。中には11番のレリックが。

 

「これも違う……」

 

 自分の欲しい番号とは違う為少しがっかりした様子のルーテシア。だが他人から見ればポーカーフェイスの為、普段となんら変わらないが。

 

「セインちゃん。このレリック、ドクターが実験に使うからって。持って行ってあげて」

 

「はいは~い」

 

 

 

 少女の代わりに奪われたレリック。そして病院で眠る女の子。物語は混迷を極めることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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