魔法少女リリカルなのは 紺碧の姫   作:mom

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 人造魔導師素体の少女。そしてレリック。

 

 彼女とレリックを巡る戦いの後、六課は少しの休息を迎えていた。たび重なる実戦に加えて、今回保護した少女「ヴィヴィオ」と少しでも触れ合いたいとのことから、多忙な業務から時間をつくりこうしてピクニックに来ているわけだ。とはいっても、六課を留守にするわけにもいかず、敷地内の森でゆっくりと行っているのだ。

 

「う~ん。いい天気。ピクニック日和だね」

 

「なのはさん、ちょっとのんびりし過ぎじゃあ……痛っ!?」

 

 なのはの膝の上にちょこんと座るのはヴィヴィオ。一輪のタンポポのように可愛くもどこか凛とした印象を受ける彼女の髪をなのはは、優しく撫でている。事情を知らない他人が見れば普通の母娘だが、正しくはまだそうではない。「仮」という言葉が正しいだろうか。彼女を幸せにできる家庭が見つかるまでの……今はまだそんな思いの最中に彼女はいるのだ。

 

 

 そして、思慮が一歩足りなかったスバルはというと、頼もしい相棒から脳天に一撃を加えられていた。当然、ヴィヴィオには気付かれないように。

 

 

 広げられたシートの上には、スターズ、ライトニング、ナイトのメンバーが揃っている。部隊長から隊長達が勢ぞろいしていて問題ないのか。そこはバックヤード陣の多大なる協力というなの犠牲で成り立っているのはお約束だ。そしてレイジングハートのメンテナンスでなのはが前線に出られないということもあるのだが。

 

 

 

「こんな風にゆっくりできるなんて思わんかったわ」

 

「主はやて、偶の休みも良いものでしょう。後でシャマルとザフィーラには感謝しておかないといけないな」

 

 どこかでクシャミが聞こえたのはさておき、目の前に広げられたオニギリやサンドウィッチ、フルーツタルトなどが用意されている。これはなのはやアイナさん、はやて、フェイトが協力して準備したものだ。この4人が調理したとなれば味も保証済みである。

 

 眼の前の料理に瞳を輝かせ、我慢できなくなったヴィヴィオが取り皿に分けられたサンドウィッチを1つ、口に運ぶ。トマト、ハム、レタス……なじみ深い素材で作られたシンプルながらも味の歴史が感じられる一品を少女は初めて口に運ぶ。

 

 トマトの酸味、ハムの微妙な塩加減、レタスの食感、それら具材をふんわり包むパン。口の中に広がる様々な味が少女に様々な喜び、感想をもたらす。頬を深紅に染め、口いっぱいに頬張るその表情はどこか至福に満ちているようだった。

 

 

 

 ほんとにこの子が人造魔導師素体なんて信じられない。こうして見るとホントに可愛い女の子なのに……あっ!?喉詰まってる!!

 

 

 膝の上のヴィヴィオがサンドウィッチを喉に詰まらせていることに気付くとフェイトちゃんがコップに入ったオレンジジュースをヴィヴィオに渡してくれていた。流石フェイトちゃん、私の自慢だよ…///

 

 コクコクと喉を鳴らしながらオレンジジュースを飲み干し一息付くと振りかえり満面の笑みを浮かべて感想を述べてくれた。

 

「なのはママ、すっごくおいしいよ」

 

「うん。ありがと、ヴィヴィオ」

 

 周囲のみんなも微笑ましいこの光景を見つめている。はやてちゃんも、うんうんと頷いているようでとても嬉しそう。エリスは、はやてちゃんの方を見つめて何か企んでいるようだけど、感づかれたみたいで項垂れてる。うん!見なかったことにしよう。

 

 その横ではスバルとエリオが大食い勝負してたけど。ホントに食べざかりだね、二人とも。

 

 

 

 

 食事も一段落して、各々が思い思いの時を過ごしている。アセルスとエリスがヴィヴィオと遊びたいと言ってくれたのだが、何故だかヴィヴィオが怖がってしまい、代わりにフェイトちゃんがヴィヴィオとボール遊びをしている。クールなタイプが駄目なのかと思ったけど、シグナムさんは大丈夫だったし……なにが原因なんだろ。

 

 

 

 

 リズムよく跳ねるボールをキャッチしようと手を伸ばしたその時、運悪くバウンドが変わってしまい、吸い込まれるように顔へと跳ねる。絵に描いたような展開に思わずフェイトちゃんも駆けだしていた。

 

 ゴムボールといえど顔に当たれば痛いものである。幼ければ尚更だ。瞳には涙が溜まっているのが分かりフェイトちゃんが側に寄ると堰を切ったように涙があふれ出した。

 

「ヴィヴィオ、大丈夫だよ。痛くない、痛くない」

 

「ふえぇえええ」

 

 少し赤くなったところをフェイトちゃんが優しく撫でてくれている御蔭か、ヴィヴィオもすぐに泣き止んだようだ。私が側に来たのが分かると直ぐに飛びついてきたあたり大丈夫みたい。

 

「ヴィヴィオ、えらいよ。すぐに泣き止んだもんね。よしよし」

 

 ヴィヴィオの目線まで顔を下ろし頬笑み頭を撫でてあげる。私に抱きつきギュッと力を込めていたヴィヴィオは声を上げ泣き出してしまった。

 

「どうして泣くのヴィヴィオ?」

 

 困った私にフェイトちゃんは優しく声をかけてくれる。

 

「安心しちゃったからまた泣いちゃったんだよ」

 

 エリオやキャロの小さいころを知っているフェイトちゃんが言うんだからきっとそうなんだよね。まだ泣き続けるヴィヴィオをそっと抱きあげて耳元でそっと呟く。腕の中の少女を心配させないがために。

 

 

 

 

 ママはここにいるからね。

 

 

 

 うん……

 

 

 

 こどもは感情の起伏が激しい。喜怒哀楽を全身で表現するのだ。そして一日に全力を費やし、静かに眠る。先ほどまで泣いていた少女は何処へやら。今はなのはの腕の中で静かに眠っている。

 

「なのは、ヴィヴィオの事、まだ考えてるの?」

 

「まだ、自分じゃ分からないよ」

 

 

 

 フェイトちゃんの言いたいことは分かってる。でも私にはまだ……わからない。

 

 

 

 一方

 

 

 和やかなこの場から森の奥で周囲の警戒をしていた人物がいる。彼の世界で見覚えのある生物から報告を受けるとすぐに血相を変え移動を始めた。

 

 

 普段は冷静沈着だが、此度はそうではない。まだ信用していないといった表情を浮かべすぐさま全体に合流すべく森を駆けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあああああ、怖いよ、ママ!!!」

 

 

 

 

 眠っていたはずのヴィヴィオの悲鳴が和やかな空気を切り裂く。突然の出来事になのはやフェイトも慌てている。

 

 

「痛っ……」

 

 次の瞬間、右足と左足の痛みが走った。

 

 この感覚はいつ以来だろうか……自分では見ずとも理解できていた。負傷したこと。そして血が流れていること。

 

 

 

 

 両足に矢が2本ずつ刺さっている。

 

 

「ママ!?」

 

 事態に気付いたヴィヴィオはパニックを起こし泣き叫び、私に抱きついてくる。

 

「大丈夫だよ、ヴィヴィオ」

 

 心配させまいと、優しく抱きしめヴィヴィオをかばう体勢を取っている。フェイトちゃんも警戒体制に入っており、次の矢を全て撃墜してくれていた。

 

 

「こんな時に襲撃だなんて、一体誰が……」

 

 

 矢の軌道から襲撃者の位置を把握しようとするが、前方には森が広がっており目安も儘ならない状態だ。

 

「なのは、足は大丈夫?」

 

 反射的にかばいながら防御を試みたものの、デバイスの補助なしでは咄嗟に魔法を発動させることもできなければ、強度もまた然りだ。

 

「なんとか。レイジングハートがないから、防御も全然通用しないみたい」

 

 苦痛の表情を浮かべ矢を引き抜く。抜き終わると血が鮮やかに吹きしぶる。止血程度ならば補助無しでも行えるため、なんとか出血は止めることができたのだが……

 

 

 

 

 泣きっ面に蜂。悪いことは続けて起こるもの。見覚えのある異質な空間がなのはを中心に展開され始めた。

 

「これは……妖魔!?」

 

 

 本格的にマズイ状況だ。このままだとフェイトちゃん一人で戦うことになる。はやてちゃんや、みんなも気付いてるみたいだけど距離があり過ぎる。

 

 二人して覚悟を決めかけた矢先だ。

 

 

「高町、テスタロッサ!!」

 

 空間が完成する一歩手前、風を切り、異質な空間に割って入るのは烈火の将「シグナム」だ。

 

 

‐‐‐‐‐‐「これは余計な邪魔者が入ってしまった」‐‐‐‐‐‐

 

 

 重苦しい空間が完成を迎えると現れたのは白髪の男。そして例にもれずこの男もまた妖魔だ。

 

 

「セアト!!!」

 

 

 叫びと共に空間に飛び込んできたのは緑髪に宵闇の覇者「イルドゥン」だ。

 

 

 妖艶に輝く剣を振り抜くもセアトは後退し回避すると、姿を眩ます。虚無の空間に声は木霊する。

 

 

‐‐‐‐‐「ラスタバンの力を吸収した後だ。お前など敵ではない」-----

 

「やはり、お前だったか!セアト!!!」

 

 

 次に姿を現した時、それは今まで見聞きした妖魔そのものだった。だが今回は今までとのタイプが異なる。右手には弓が装着されている。どうやら私もそれで射られたみたい。

 

 

「許せない……こんな小さな子を狙うなんて」

 

 

‐‐‐‐‐「動けない女が何を喚くか。目的はあくまでもイルドゥンとそこの幼子だけだ」‐‐‐‐‐

 

 

「尚更……許せないよ!!」

 

 

「なのは、私達が何とかするから。ヴィヴィオのこと、お願いね」

 

「悔しいけど……お願い」

 

 

 分かってはいるものの、状況はかなりシビアだ。防衛戦となれば尚更当然だ。なのはは魔法が使えないうえに動けない。さらにヴィヴィオを守らなければいけない。護衛対象が増えることはそれだけ不利になる事は間違いない。

 

 

‐‐‐‐‐「必要ないものだが今回は使ってやるとしよう」-----

 

 

 

 

 空間の外には、5人を除いたFWが取り残されており、この空間を直接突破できるのはアセルス、白薔薇姫だけに限定される。はやてとしてはすぐにアセルスを送り込みたかった。だが状況が許してはくれない。

 

 

「こいつらは!?」

 

 なのは達が飲まれた空間の前に3つの影が出現した。見覚えのあるものは身構え、額に汗を掻いている。

 

 

 倒したはずの妖魔達。炎の従騎士 水の従騎士 森の従騎士

 

 

 エリオ、キャロからすれば因縁の相手も存在している。ましてや、スバル、ティアナ、ヴィータ、はやては妖魔との戦闘経験は無い。

 

 

「こいつら倒したはずやなかったんか!?」

 

「ええ、倒したはずなんですが」

 

 はやてとエリオのやりとりを遮るように、空間を声が支配する。

 

 

‐‐‐‐‐「私の土産だ。妖魔のクローンを存分に味わってくれたまえ」-----

 

 

 妖魔がクローンを。機械などを嫌う妖魔がそのようなこと独自に製作することなど到底不可能だ。

 

 アセルスが思考に耽り、そして一つの答えにたどり着く。だがそれはここではまだ言うべきではない。そう判断するとすぐに行動に移る。

 

「八神部隊長、グループによる各個撃破が最適だと判断します」

 

 アセルスからの提案を受け直ぐに答えを導くは、総指揮官である八神はやて。彼女も同意見であることは間違いなかった。

 

「私とエリスがあの森の従騎士を。スターズ、ライトニング、ヴィータは水の従騎士を。アセルス、白薔薇姫は炎の従騎士を。いけるな!?」

 

 

 

「「「了解」」」

 

 

 グループに分かれるとすぐに対象に走り出す。従騎士は空間を作り出し、それぞれが空間に飲まれていく。

 

 

 

 

‐‐‐‐‐「ヒューマンとは本当に脆いものだ。では大人しく死んでいただこう」----ー

 

 

 

 セアトの完全に見下した言葉に内心怒りを燃やしているフェイト。だが、それを戯言と嘲笑う者がいる。

 

「セアト。貴様はヒューマンというものを甘く見ているようだな。それでは貴様は我に勝てん。ましては我らにもだ」

 

 

 どういうことだと言わんばかりに顔を顰めるセアト。そして堂々と宣言する。

 

 

「そんなものに屈しないといことだ。そうだろう……はやて!!!」

 

 

 

 

 聞こえなくとも気持ちは通ずる。思いが同じだからこそ分かるのだ。

 

 

 

 

「私達はこんなことに屈しはしない!!!」

 

 

 

 

 己が相棒を掲げ全てが光に包まれた……

 

 

 

 

「セットアップ」

 

 

 

 

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