魔法少女リリカルなのは 紺碧の姫   作:mom

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解明

地上本部並びに機動六課襲撃から一夜。たった数名の戦闘機人とガジェットにより管理局は半壊状態まで陥れられた。完全なる敗北。世界の法を握る者達は一個人の思想の前に脆くも崩れ去った。

 

 

「全く脆くて仕方がない……そう思わないかい……ウーノ」

 

「ええ、ドクター。そう思います」

 

昨夜の感想を率直に述べる元凶でもある男、スカリエッティと戦闘機人ウーノ。二人は昨日の勝利など微塵も感じさせることなくコンソールを叩き続けている。二人の眼の前には無数の調整ポットが並んでおり、どれもが調整液で満たされている。その中で浮かぶ裸の女性ーーーノーリ。

 

「ドクターも苦労されましたね」

 

「5年前から仕込みは完了していた。いずれ私の邪魔になるであろう八神はやてのもとに、記憶を封印しておいたノーリを送り込み、時間を記憶が解けた昨日に作戦を合わせることで、こうして素晴らしい結果が得られたのだから」

 

肩を震わせ、狂気に満ちた笑いを浮かべるスカリエッティ。ただ今回、不満があるとすれば、タイプゼロを捕獲しなかったことくらいだろうか。

 

「だが、今となってはそんなことなど、どうでもよい」

 

小さく笑みを漏らし最後の入力を終えた。ポットから調整液が排出され、調整を行っていたノーリが瞼を開く。ポットが開放されると、一糸纏わぬ姿のノーリは二人の前へと悠然な歩みを進める。

 

「ドクター、それにウーノ。調整は終わったのか?」

 

「ええ。身体の検査、及び、「眼」の調整は完了しています。いつでも戦線に復帰できる状態です」

 

「5年の間、調整を行っていなかった割には、問題無く作用していたみたいだ。我ながら自分の技術に惚れ惚れする」

 

「ドクターは相変わらずだな、そのナルシストは。それより、ティエラとラピスはどこにある」

 

「あるではなく、『いる』の間違いではないのかね。隣の部屋に軟禁してある。如何せん、君がいないと意味がないのでな」

 

鼻であしらうとすぐに部屋を出ていくノーリ。5年前と何も変わらない様子だとお互い感想を述べる二人。

 

「やれやれ、私の研究の成果をノーリに聞かせたかったのだが……仕方ない、ウーノ、また聞いてくれたまえ」

 

 

「またですか?仕方ないドクターですね、ほんと」

 

「研究の成果は人に知ってもらってこそ意味があるという物だ。では、最初から話そうか」

 

 

 今を遡り7年前、私の秘密研究室の入口前に一人の少女が倒れていた。身体中酷い傷と出血、それに左目が完全に無くなっていた……いや、抉り取られていたが正しいか。私はその少女を助けた。良心が痛んだのか・・・?いや、私に良心などという物は存在しない。あるのは人体実験の良い材料が手に入ったと思った程度だった。

 

 

 当時、稼働していたのはウーノ始めとする3体のみ。私はウーノと共に身体に有効なウィルスまたは移植など必要な人体実験を行った。だが、ここで信じられない事態が起こった。それは私の欲望をさらに沸き立てた。

 

 瀕死の少女の身体は何に対しても拒否することなく適応したのだ。ウィルスに対する免疫を即座に生成し、また移植に対する拒否反応も自ら抑えていた。

 

 この結果から…彼女の身体が特異体質であること。レアスキル「神に愛された身体」とでも言ったところだろうか。さらに詳しく調べていくと、どうやら拷問に近いものを受けていたようだ。それが左目を失った原因でもあるようだった。普通ならば痛まれない気持ちなどが出るのだろうが、私には探究心が止まなかった。

 

 

 ある書物に記載されていた事実。我ら人間がある生物と長らく戦い続けてきたということ。そしてその生物の血液が偶然にもこの時代に保管されていることを知った私は、戦闘機人を用いて血液を奪取していた。

 

 

 私は人の手で、化け物を作り出すことを長年試みていた。だが、今まで満足のいく結果は得られるどころか、全ての人間が制御の利かないただの化け物になり果てるだけだった。だが、ようやく神は私に微笑んだ。残っていた血液をこの少女に輸血すればどのような結果が得られようか。だが私も貴重なサンプルをみすみす失う程愚かではない。ならば今回この特異的な少女には是非試してみたいことが1つ。

 

 

 

 化け物と機械の共存

 

 

 この血液が例えこの少女であっても大丈夫かどうかは分からない。だが、1つだけ少女に足りていないもの……左目。ここならば問題はないだろう。私の考えは決まった。人間の眼球に戦闘機人の技術を使い、耐久や機能の充実を図った。そして少女に眼球を移植した。例え瀕死であろうとも、少女の身体は何も異変を起こすことはなかった。そして最後のサンプルを眼球へと注入した。

 

 

 

 素晴らしい……その一言につきる。

 

 少女は化け物になり果てることなく、ただ受け入れるのみにとどまった。ならば私がすることはただ一つ。少女の治療だ。

 

 

 

 私の技術力を持てば、瀕死であろうと問題はなかった。少女は2日で元気な姿を取り戻していた。だが困ったことに、少女は喋ることもできなければ、私から逃げるばかりだ。こどもというものは扱いが難しいものだ。だが、ウーノはこの少女に懐かれることとなった。

 

 

 私の力をもってすれば睡眠学習や刷り込みなどいくらでも手段はあった。行動に移せばすぐに結果はあった。

 

 

 少女には名前も無ければ親もいなかった。だから私は名前を与えた。番号無しの意味を込めた…「ノーリ」という名を。

 

 しかし、ここから何も変化は得られなかった。ノーリは成長はするが身体に飛躍的な影響をあの血が与えている様子は見られなかった。移植した左目にもこれといって変化が無かった。

 

 

 それから2年が経過した。私は来るべき時に備え着々と準備を進めていた。この間にも戦闘機人の数は増えていった。ノーリを家族といった形で一応育ててはいた…がほぼウーノに任せきりだが。戦闘機人達との戦闘訓練は毎日欠かさず行わせた。何かの足しにはなるだろう……その程度にしか考えていなかった。

 

 

 だが……ある日を境にそれは一辺した。

 

 

 私のラボに堂々と侵入してきた者が居た。そいつは私にこう言った。血を受けた者に力を欲させよ……と。

 

 それだけを残してその侵入者は消えた。人の言うことを素直に聞くことなど癪だが、探究心には勝てなかった。ノーリと戦闘機人達の連続の訓練。負けても負けても止めることはなく……ただ続けられた。

 

 何も無ければ殺して構わない。それが私が下したオーダーだ。期待はしてはいなかった。だが、またしても期待は裏切られた。もちろん良い意味で。

 

 

 死を直前にしたノーリから溢れだした魔力。

 

 爆発的な魔力の上昇、そして突如現れた2本の剣。そしてなにより顕著な変化は左目。

 

 顔をあげたノーリの左目は妖々しく紫紺に染まっていた。

 

 

「素晴らしいじゃないか!」

 

 私の胸は躍るばかり。そしてその侵入者は私のもとにまた現れた。

 

「少女が力を求めたことで、血が目覚めた。それにあの娘は特異なようだな。ふむ…面白い存在になりそうだ。それにあれを2本従えるとはな」

 

 

 言いたいことを言うとまたしても消えてしまった。だが私にはそんなことはどうでもよかった。何も変化が無かったノーリに爆発的な変化が得られたのだから。

 

 

 そこからの訓練は立場が一辺。ノーリ一人に誰一人として勝つことができなくなっていた。だが、力に目覚めたばかりではレアスキルありでも辛いところだった。だがそれも予想はしていた。眼帯型のリミッターと眼球に組みこんでいた魔力調整装置。この二つを持って、力のコントロールに成功した。

 

 

 

 

 私のプランは急展開を見せた。ノーリが戦力として計算が立つこと、なにより人としての機能を左目以外完璧に保持していること。これが意味するはつまり……長期間に渡る潜伏が可能であること。

 

 

 最近私を調べ回している者がいるらしいので気になって調べたところ、なんとあの「フェイト・テスタロッサ」だった。これには私の心が震えずには居られなかった。さらに、テスタロッサと親交の深い、この「八神はやて」。これもまた体内にロストロギアを保持するレアな存在だった。この少女がみるみる出世をしているところからすると、近いうちに私に牙をむく存在になりかねん。そう判断しうる最近の現状だった。

 

 

 だから私はノーリを八神はやてのもとに潜伏させることにした。ノーリに作戦を説明すると、すぐに承諾はした。だが、どこからか連れてきた男の子と女の子がノーリの傍らにいた。ノーリは、この二人も連れて行きたいといったが、私は怪しまれる可能性があるために断り、得体のしれない二人を軟禁した。

 

 

 ノーリの記憶を封印。そして記憶喪失の少女へと作り上げていく……さらに眼帯を人前で外さない、身体検査を受けないことを刷り込んだ。最後に記憶の復活を時間指定。時間はそう…5年後の今。

 

 

 最後に事件に巻き込まれ、一人身になったという状況を作り上げるために、これを使った。

 

 

 

 ジュエルシード

 

 

 

 小規模な次元振を伴う大規模な爆発を起こさせ、そこにノーリを送り込んだ。

 

 

 

 そして思惑どおり、ノーリは八神はやてに保護され、今に至ったというわけだ。

 

 

 

「どうだい、ウーノ。やはり完璧ではないだろうか・・・・ん?誰もいないではないか」

 

 どうやら途中で飽きた様子で、ウーノは出て行ったようだ。それには激しく同意したいところだが。

 

 

「まあかれこれ100回くらいはウーノには言ってきたものだ。さて、ノーリは隣か」

 

 モニターを開くと隣の部屋の様子が映し出されていた。

 

 

 鎖で縛られている幼い二人の男女……「ティエラ」と「ラピス」

 

 二人とも疲れた様子でぐったりとしている……が、ノーリを見た瞬間、それは一気に変わった。

 

「ご主人様!!」

 

 

 鎖に捕らわれた二人は鎖を忘れたかのように身体を捩って、ノーリに近づこうとする。だが鎖といってもスカリエッティ特製なために見た目以上に頑丈なのだ。

 

「ふふ……二人とも、私が留守の間、いい子にしてたかい……まぁ我慢の限界のようだけど」

 

「ご主人様、5年も待ったんです。早く…ご主人様…」

 

 双子とも見えるそっくりなティエラとラピス。ノーリが二人の元へと近づき、そしてノーリが二人の頬へと手を差し伸べた……それが合図になった。

 

 

三人は5年の空白を取り戻すかの如く、舌を絡め、唇を貪っていた……

 

 

 ティエラとラピス……5年前に現れた謎の人物……だが主の帰還に伴いあるべき姿へと戻った……

 

 二対の剣……ただ剣にしては少々大きいのだが……それに、重さが尋常ではない。だがノーリからすればなんの重さも感じてはいないのだろうが。軽く素振りを行うだけで部屋の中の鎖やコンテナは両断されていた。

 

 

「ノーリ、忘れものだ」

 

 急に部屋に来たドクターから投げ渡されたのはバッテリーのような物。だがこれの使い方は分かった。

 

「こんなもの私にしか使える者はいないからな。ありがたく貰っていく」

 

「ああ、君なら大丈夫だろうが、無理はしないでくれたまえ。まだ本番ではないのだからな。それと部屋をあまり壊さないでくれ」

 

「それと眼帯はもう必要ないだろう。つねにあの力を使ってくれたまえ」

 

 そう言い残し、部屋に戻れば、そこには懐かしい侵入者の姿が。

 

 

「久しぶりだね、ドクター」

 

「久しぶりだね、君」

 

 そんな他愛もない挨拶を終えた二人はすぐに用件を言い終え、また部屋にはスカリエッティ一人となった。

 

 

「私のほうは何も抜かりはない。後はそちらだけだ……」

 

 

 それに……私の手にはジョーカーもあるのでな…

 

 裏切りは……なしだよ。

 

 

 黒い笑みを浮かべ、狂気に酔う科学者の姿があった…。

 

 

 

 

 

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