魔法少女リリカルなのは 紺碧の姫   作:mom

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邂逅

今回が私達、機動六課の実質的な初任務というわけだ。現在、現場に出ることができるのは、高町、テスタロッサ、ヴィータと私しかいない。幸い、現場の確認が主な任務であり実質、私1人というわけだ。

 

「俺っちのこと忘れないで下さいよ。姉御」

 

すっかり忘れていたことは気にしないでおこう。しかし、こんな無人島に魔力反応とは…何もなければよいのだが。

 

「ヴァイス陸曹。私が先行して現場の状況確認を行う。連絡があるまで手前で待機だ。」

 

「了解しました!今、ハッチ開けますぜ」

 

ゆっくりと開くハッチの先には闇が広がっている。もう日も暮れたのだろう。

 

 

さて…仕事だ。

 

 

「ライトニング02 シグナム出る!!」

 

闇夜の空に身体を預け、しばらくの自由落下を楽しむ。そして彼女の持つ紫に輝く魔力に包まれた。

 

「行くぞ!!レヴァンティン」

 

[Jawohl]

 

アームドデバイスであり相棒のレヴァンティンに声をかけ、騎士甲冑を纏う。騎士そのものともいえるバリアジャケットだ。

 

 

準備を終えた彼女は島へと飛翔した。

 

 

 

上空から島を見下ろす。島自体は広くはない、むしろ狭い部類に入るだろう。

 

さて、どうしたものか…幸い月は出ているものの視界は良いとはいえない。島に降りて捜索するしかないのか…。

 

「苦手だが、この際仕方がない」

 

そういうと、魔力を込め、魔方陣を展開する。広域のエリアサーチを行うわけだが、あくまで何があるのか分るわけではない。魔力の波を打ち、それにより魔力反応を確認しようというのだ。

 

「レヴァンティン」

 

魔法陣にレヴァンティンを突き刺すと、島を覆うように魔力の波が広がって行く。水面に波紋が広がるように。するとすぐに反応があった。

 

[Entdeckung]

 

どうやら発見したようだ。数は…3か。状況は把握できた。そうして島に降り立った。

 

[Gefahr]

 

降りた瞬間、デバイスから唐突に危険が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれは機械か?無粋な物だ」

 

そんなボヤキを吐きながら、イルドゥンは飛来する者に向かっていた。今は夜。闇が支配する夜こそ彼らの日常的な場といっても過言ではない。森の中を颯爽と駆け抜け、視界が開けようとした時だった。彼は急に身体を隠し、気配を殺した。

 

「なんだ、今のは?」

 

思わず口に出してしまう程の奇異感。何か感覚のない何かが身体をすり抜けていった感覚に危機感を覚える。

 

「これは・・・」

 

この世界には魔術のようなものが存在しているのか?思考を巡らすなかでも、緊張感と警戒は解かない。気配も完全に消している。「宵闇の覇者」は伊達ではない。

 

思考を巡らせたその刹那…

 

 

 

来たか!!

 

彼は気付いた。この疑問をもたらした本人である、シグナムの姿に。

 

 

 

 

もうその場所には居ない。疾風の如く、彼は駆けた。アセルスなど比ではない。音も立てず、砂地であろうとも、足跡も残りはしない。「宵闇の覇者」たる彼は斬りかかったのだ。

 

 

 

妖艶に輝く 「妖魔の剣」を手に。

 

 

 

「ほぅ…あれを止めるとはな、少しはできるようだな」

 

 

一撃で決めるつもりだった。いや、決まるはずだった。だが眼前の敵である彼女は生きている。

 

 

 

シグナムはレヴァンティンの警告に瞬時に反応し、攻撃を防いでいた。彼女の騎士としての経験、そして烈火の将としての力だろう。

 

「貴様!!いきなり何をする!?」

 

困惑と怒りに満ちた声だシグナムは問いかける。

 

「貴様か?不快な魔力を打ち込んだのは?」

 

「不快とは失礼ではないか?それよりも貴様、いきなり斬りかかるとはどういうことだ」

 

やはり魔力…魔術があることを彼は確信した。つまりこの世界も少しばかりは似ているところがあるのかもしれない。ファシナトゥールに戻る方法も探さねばなるまい。思考をまとめると次の質問に答える。

 

「敵と判断したからには情けなど一切ない。それに不意打ちなど当然だろう」

 

「貴様に騎士道などという考えはないようだな」

 

剣と剣が激しくぶつかり合う。火花を散らし、お互い譲らぬ鍔迫り合い。顔と顔が密着する程の距離で視線が交錯する。

 

「くっ…押されているのか」

 

「どうした、娘。その程度か?」

 

剣を打ち払うとそのまま斬り払い、彼女の騎士甲冑を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

はっきりとした痛みを感じる。斬られた胸に手を当てる。生温かく、ぬめっとした感触。

 

「血か…」

 

どうやら私を殺す気のようだ。あの剣はデバイスなのか分らんが、どうやら殺傷設定であることは間違いない。

 

ふっ…どうやら本気らしい。

 

「ふふふ…はっはっは…」

 

高らかに笑い声をあげる。久しぶりに胸が高まる。死合だ。死合ができる。私の心は湧き上がる感情を抑えきれなかった。

 

「レヴァンティン…殺傷設定。 カートリッジロード」

 

[Jawohl]

 

カートリッジを装填。すぐにロードされ薬莢が排出される。デバイスを通じて流れ込む魔力に昂揚感を抑えきれず、痛みも忘れ眼前の相手の命を刈り取りに。さぁ、存分に楽しもうではないか。死合を!!

 

[Schlangeform]

 

「はあぁあああ」

 

剣を振るうと鞭の様に剣が伸び、撓る。正しくは連結刃であるが。縦横無尽に軌道を変え、相対する彼へと押し寄せる。

 

「やるな、そこの騎士よ。ただの魔術使いではなかったか」

 

迫りくる連結刃に彼は動いてはいない。ただ高速で軌道を変えて襲い来る刃を交わし、打ち払う。

 

「どうした、こんなものか?これでは掠り傷さえつけることはできんぞ」

 

胸躍らせるようなことを言ってくれる。このような強者に会えたことに感謝せねばな。戦闘狂の一面を持つ彼女は今をただ楽しんでいるかのようだ。

 

「ならば、これでどうだ!!」

 

連結刃を砂地へぶつけると、砂を巻き上げ、視界を奪った。

 

「ほう、少しは考えたな」

 

イルドゥンもまた同じであった。アセルスの教官を務めるくらいで、自分以上、または同等の剣を扱う者と戦うことがなかった。彼も飢えていたのだ。シグナムみたくな強者を。

 

「だが視界を奪った程度では何も変わらん!!」

 

実際に、シグナムの位置は掴めていた。妖魔の中でも上位に位置する彼になら容易いだろう。だが、彼女とて無策ではなかった。

 

[Schwertform]

 

いつのまにか連結刃は元の剣に戻っていた。そして機械的な音と同時にカートリッジが二発分ロードされた。

 

「はあああ!! 紫電一閃」

 

シグナムが持つ「魔力変換資質 炎」レヴァンティンに烈火の如き炎を纏い、なぎ払った。

 

両者の剣が再度交錯する。だが…拮抗することはなかった。魔力が上乗せされた攻撃に流石の彼も耐えることはできなかった。

 

「ぐはっ…」

 

口から息を強制的に漏れる。剣で防御したとはいえ、そのまま吹き飛ばされてしまった。

 

「はぁ…かはっ」

 

内臓系にダメージを負ったのだろう。口に溜まった血を吐き出す彼の前に、剣は振り下ろされた。

 

 

「終わりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで噴水のようだ。

 

彼の首から上がぼとりと砂浜に落ちた。

 

そして周りには青い血を撒き散らして。

 

 

「ふふふ…勝った!!!勝ったぞ!!!!」

 

狂気乱舞。まさしく今の私はそうだ。強者との死合に勝ったこの喜び。何物にも代えがたい至福。シグナムは久しぶりにむさぼっていた。

 

 

「甘いな…狂気に飲まれた騎士よ」

 

なにが起こったのか。彼の死体が急に消えた。そして私の首筋に痛みが走る。

 

 

「妖魔の剣よ。力を解放せよ。ブラッドスレイ!」

 

イルドゥンが生きていることを理解したと同じく脱力感に襲われる。まるで血を吸われているようだ…

 

「最後まで油断しないことだな。我の罠に貴様はかかっていたのだからな」

 

いったい何をされたのか見当も付かない。ただ、この状況はまずい。血を吸われているのだ。このままでは、意識を…

 

 

 

そんな危機感は無駄に終わり、急に私は自由となった。

 

「はぁ…はぁ…」

 

息が整わない…相当吸われたようだ。さらに彼をみると傷が癒されていく。

 

「悪いが、回復させてもらった。しかし、貴様人間ではないな?」

 

いきなり核心に触れられ唖然とする。何故分かったのだ?

 

「貴様の血は人間の血ではなかった。それに魔力を感じる。あと言っておくが、私は吸血鬼のような類いではないからな」

 

こちらの考えを見透かされたような答えだった。思考を読む能力を持っているのかもしれん。

 

「さて、恨みはないが死んでもらおうか。せめて名前でも聞いておいてやる。名前はなんだ?」

 

「烈火の将がシグナム」

 

「では、さらばだシグナム」

 

剣が首を撥ねようとしたその時だ。

 

≪イルドゥン!!アセルス様が!!≫

 

イルドゥンの動きが止まった。私はその隙に距離を取った。

 

「最後まで油断するなと言ったのはそちらではないのか?」

 

彼に言い放つも見向きもしない。何かあったのか?

 

「シグナムとかいったな、少々まずいことになった。貴様に協力してもらいたいことがある」

 

殺されそうになった相手に協力を申し込まれるとは思ってもいなかったのだろう。彼女は前のめりに倒れそうになっていた。

 

「なにを急に言い出す。私達は敵同士だぞ」

 

「だが、そんなことは関係ない事が起きているのだ。人数が足りん。それに貴様の力ならば役に立つ」

 

上から言われていることに怒りを感じながらも、私は答える。

 

「そんなこと信じられん」

 

「早くしないと、この世界が終ってしまうかもしれんぞ?それでもいいのか?」

 

冷静になれ。私の任務はなんだ…。そうだ。思い出したか?烈火の将 シグナムよ。

 

「分かった。協力しよう。ただあとで貴様たちを連行する。いいな?」

 

「好きにするがいい。我らとて知りたいことがあるからな。それよりも行くぞ」

 

彼は駆けだした。私も飛翔し、追いかける。

 

「後で再戦だ!!!次は絶対に勝つ」

 

くっく… 戦闘狂の騎士め… まぁ我も間違いではないがな。

 

「いいだろう。二度と戦いと思えんまで叩きのめしてやろう」

 

戦闘狂の二人は闇夜に溶け込んでいった。

 

 

 

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