白薔薇を連れ去ろうとした、炎の従騎士との戦いから3日。アセルスと白薔薇は目覚めなかった。自分の弱さに怒りを感じ……強ければ、白薔薇が傷つくこともなかった。だから強くならなければならないと……そう願った。
今、私は機動六課の隊長達と、マンツーマンの特訓の最中だ。朝、昼、晩。毎日のように、全ポジションの特訓を行った。正直、大変だ。みんな容赦ない攻撃ばっかりだし…。実際のところ、魔力量の少ない私にとっては防御に魔力を費やす余裕などなかった。なので隊長陣の中で参考とするのは、フェイト隊長。
選ぶ道は一つ。回避能力の向上である。高機動、そして見切りを駆使すれば、防御面には心配はない。まぁ…多少なりと防御の練習はするつもりだけど。
「はぁはぁ…なのは隊長、強いなぁ……」
そんな感想を漏らす理由としては現在、スターズ分隊隊長の、なのはさんと模擬戦の真っ最中なわけである。私のデバイスの基本形態は銃であるため、度々なのはさんとやっているわけだが…。
[ Accel Shooter]
前方に対峙するなのはさんから、アクセルシューターが飛来する。
「無茶苦茶だ……」
飛来する魔力弾は20発。もちろん防御するつもりはない。
「ルナ、ソル!!迎撃いくよ」
ドラグーンⅠにルナ、Ⅱにはソルと呼称を付けている。デバイスのコアの色から月と太陽を連想したからだ。静かに点滅を繰り返し、アセルスに答えるデバイスを見つめなおす。
[All right,my master]
「はぁああ!!!」
シューターを次々と撃ち落としていく。何度も痛い目にあえば、いやでも覚える。
「やるね、アセルス。じゃあこれならどう?」
急にシューターの速度が上がる。これまでは…やっぱり加減してたんですね。でも、負けたくない。
[Sonic Move]
脚に最低限の魔力を込め、そして動きを見切り、回避する。
私は空を飛ぶことができなかった。でも、飛べなくても負ける理由はない。
シューター同士の誤爆を誘い、漏らしたシューターをルナとソルでの撃墜。ついにはシューターは無くなった。
「ルナ、ソル。モード変更。モードブレイズ」
[Blaze Mode]
二丁の銃から、名の如き紅き刃が伸びる。
モードブレイズ。近接戦闘特化形態。
複数の武装を準備するならば、一つのデバイスに複数の形態を準備すべきだとのアドバイスから完成したリーサルドラグーン。その形態の一つ……紅き双刃を携えた私はそのまま一気に間合いを詰める。
「もらったぁあああああ!!!」
[Protection]
寸での所で刃は届かない。淡い桃色の壁のような物で、なのは隊長は守られている。
「アセルス、本当にすごいよ!短期間でここまで出来るようになるなんて!」
なぜか褒められた。うれしいけど、今はそれどころじゃない。器用なことに、防御しながらも、魔力をチャージしているなのは隊長に気付いたのだ。一度間合いを取るべきか…いや、距離はあまり意味がない。遠距離型なら尚更だ。なら…
「ここでシールドを砕くよ」
シールドとの競り合いは休憩。双刃を真っすぐ突きつける。そう、これは双剣でもあり、銃剣でもある。カートリッジをロードせずに詰まった魔力を弾丸として放つ。小気味良い音と共に、5発の弾丸を発射する。上下左右に打ち込み、そして中央に最後の一発が撃ち込まれることで完成する十字砲火。
隊長陣最高の防御力を持つシールドは跡形もなく消え去った。だが、それは終焉でもあった。
「まさか、シールドが破られるなんて思わなかったよ。でも、余力は残さないと…後が続かないよ!」
この空間に散らばっていた魔力塵が収束され、極大の閃光としてアセルスを包み込んでいく。
[Starlight Breaker]
「はぁはぁ…負けたぁ」
連敗はいつになったら止まるのか。リベンジを誓い私の意識は刈り取られた。
意識を飛ばしたアセルスをシャマルと白薔薇が救護室へと運んでいき、訓練所の片付けをするなのはは、先ほどの事を思い出す。びっくりした。まさかシールドが破られるなんて。
「お疲れ様、なのは」
「ご苦労だったな、高町」
「フェイトちゃん、シグナムさん、見てたんですか?」
「はやてが見てこいって。それに私達の教導が活きてるかなって気になったのもあるし。
「どうだった、高町。アセルスの戦い方は?」
だからか…なんか二人に似てると思ったよ。
「回避力に速度、突破力。それに判断力も順調に育ってると思うの。でも、防御面がね」
「なのはも、そう感じる?私も同じ感想なんだけど、ただ私達と話をした結果、防御に魔力は使いたくないって」
「だから、我ら二人が高機動戦闘を教えているわけだ。ただスタミナと魔力のバランスがまだ甘いがな」
そんな話題の中心のアセルスは今は救護室のベットの上だろうか。
「じゃあ、二人とも、先に医務室に行ってて。後で行くから」
「ん、分かったよ、なのは」
「了解だ」
二人の姿が見えなくなると私は膝を付いた。
「最後の一発、貰っちゃったな」
血の味がする…やせ我慢も大変だよ。
「カートリッジのあんな使い方…本当に弾丸だよ…」
そうしてデータをまとめ医務室へと向かった。
「あとで、ばれないように治療しなきゃ…」
アセルスが機動六課に来てから、1ヶ月が経過。最初は戦い方や、魔力の扱いにもかなり慣れたようだ。彼らとの約束もあるが、こちらも組織で動いている以上、アセルスにも、試験を受けてもらう必要がある。嘱託扱いだが、上を誤魔化すには、これくらいする必要があるのだ。
さて、今日は試験と階級とかの説明をすることとする。
部隊長報告書
「急に呼び出して悪いんやけど,アセルスには試験を受けてもらわないかんのや。と、いうわけで、早速試験受けてもらうで!!」
アセルスには悪いが、そろそろ隠しきれそうにないからな。早くこっちに正式な形で所属させな……
「部隊長、話が急でいまいち分からないのですが」
「私の事は、「はやて」でええって。まぁ資料を渡すから」
そういって、数枚の資料をアセルスとイルドゥン、白薔薇姫に渡した。
「はやて、我らは単独で動くと条件を付けたはずだが?」
……ってまだ事情を話してないし、そんな怒らんでも。
「この機動六課は色々問題も山積みなんよ。そこに上には隠してる三人もおるやろ?加えて、1週間後に査察に来るとか言いはじめてな…本当、なんか恨みでもあるんかいなって話なんやけど」
その話は軽く三人に無視されたようだ。はやての威厳とはなんだったのか。
「この資料を読む限りでは、ある程度自由にするには階級とか軍属といったものが必要になるわけですね?」
白薔薇姫、物分かりが早くて助かります。
「ふーん。それで私は何の試験を受ければいいの?」
「お!その質問待っとったで。」
やっと話が進むで…そういってモニターにデータを展開する。
「今回受けてもらうのは、陸戦魔導師Bランクへの昇格試験や。いままでのデータからみると、多分この試験くらいがちょうどやと思うんよ。ただ戦技のレベルは、遥か上になるんやろうから、色々ハンデを背負ってもらうことになるし、試験が終わるまでは、あくまで他人のふりや」
どうやら納得はしてくれているが、色々不満がありそうな様子だ。
「はやて、まずハンデについての説明。それに受験するこの二人は?それに試験を受けるってどこ所属で受けるの?」
色々と感づくのが早いな。見込んだだけのことはあるで。
「魔力のランク的には相応なんやけど、それを上回る戦闘技術をアセルスはもっとるから、怪しまれる可能性もある。だから、今回はソルとルナは使用禁止で!!」
三人がめっちゃ睨んでるんですけど…仕方ないやん…。だからこれ説明するの嫌やったんや。……あそこで、グーを出していれば。
どうやら、アセルス達への説明をなのは、フェイト、はやての誰が行うのかジャンケンで決めたようだ。大丈夫か、機動六課。
「ま、まぁ決定事項やから。それに同時受験者の二人はフロントタイプにセンタータイプや。だから、センターが被るのもなんやから。今回はサポートメインで!」
「戦闘技術はなるべく使うなということか?はやてよ」
あいかわらず、イルドゥンは核心に触れてくるな…
「そういうこっちゃ。だから、代用品のものを渡すことになってるんやけど…おっ来た来た」
扉が開くと、1人はシャーリーと分かったが、もう一人の初老の男性は面識がないため分からないようだった。イルドゥンを除いては。
「なるほど、時空管理局陸上警備隊第108部隊所属にしてしまうことで問題を解決したわけだ」
なんで、イルドゥンはなんでも知っとるんや?ほら、ゲンヤさんもびっくりしとるやん。
「こいつは驚いた。私は君と会うのは初めてのはずだが?」
「常識では測る事ができないことは、常に存在しているものだ」
「そいつは聞いてみてぇもんだ」
何故か馬が合いそうなこの二人…危険すぎる。
「まぁ、とりあえず、そのなんだ。俺はゲンヤ・ナカジマ。時空管理局陸上警備隊第108部隊の隊長をやってらぁ。よろしく頼む」
「と、いうわけや。アセルスには、第108部隊に所属していて試験後、スカウトされ、機動六課って予定になっとるから。それと、シャーリー」
シャーリーが私に新しいデバイスと、カードの様なものをくれた。なんだろ?
「これが、バックアップ用に作ったデバイス、通称フォートレス。ストレージですが、アセルスさんの防御面や移動に凄く役立つと思います。それと、カードなんですけど、これはイルドゥンさんと白薔薇姫さんから、情報をもらって作った試作品です。今回、作る事ができたのは、剣と盾だけです。それに一回しか使えませんので」
説明をうけたあと、せっかくなのでセットアップしてみることにした。ちなみに監修には白薔薇も参加したらしい…何故?
答えはすぐに分かった。
「フォートレス、セットアップ」
バリアジャケットの展開が完了し、鏡を見てみた。
「これって、白薔薇?」
いつもの紅いドレスではなく、純白のドレス。そして腕と脚には、純白の小手と具足が装着されている。そして白薔薇のコサージュが。
「はい。私も参加したいのですが、私達はロングアーチでバックアップという形になりましたので、是非と思いまして。お気に召しませんでしたか?アセルス様」
「ううん。全然。白薔薇、うれしいよ」
そういうなり、私達は唇を重ねる。周囲に人が居ようが関係ないことだ。私は白薔薇に感謝しているだけなのだから。
「ゲンヤさん。日常茶飯事やから」
「あ、ああ」
やっぱり誰が初めて見てもそう思うのが当たり前やな。
「うちの娘二人も、ああだったんだが、やっぱりあれが普通なんかね?」
なんという爆弾発言。ああ、この部隊はどうなるんやろ。だってスカウトする一人って…はぁああ。
「試験日は明日や。よろしくな。アセルス」
なぜかサムズアップで返すアセルス。もういやや。
帰って、リインやみんなと…やな。
さて、連絡回しとこか。