宮地side
朝練を終え教室へ戻る途中沢山の生徒が共通の話題で持ちきりだった
「喧嘩したみたい」
「今年入ってから無かったのに」
「喧嘩しなくなったと思ったのに」
「俺はまたすると思ってた」
「「「………」」」
なんだかアイツな気がして3人で顔を見合わせた
途中、未來の教室を一瞬だけ覗いたが姿はなく、不安に思いながらも午前中の授業を終えた
そして昼休み、俺は屋上へと走り扉を勢い良く開け屋上を見渡す
姿が無いことを確認し、扉の横の梯子を登ると
「いやがった」
そこには鞄を枕にし眠る未來の姿
その顔にある痛々しい傷を見て自分で眉間にしわが寄るのがわかった
未來の横に腰を下ろし顔にかかる髪をのけてやる
「っん」
傷に触ったのか未來は身じろぎをしたが、猫のように俺の手にすり寄ってきた
なんとなくそのまま撫でていると扉が開く音がした
「宮地いるか?」
「月島いたか?」
大坪と木村だ
木村は梯子を登って来ると俺と未來を見てニヤリと笑った
「木村キモイ、ぶっ殺すぞ」
「軽トラ貸さないからな」
木村がそう言って梯子を降り大坪と話し始め、俺が舌打ちすると共に再び扉が勢いよく開いた
「あ!大坪さん!木村さん!未來先輩は!?」
「うお!?高尾!?落ち着け!!」
「未來先輩の顔に傷ってなんすかぁあぁ!?」
「やめ!高尾、酔う…」
下を覗き込むと高尾が発狂したように木村の肩をつかみ勢いよく揺らし騒いでいた
その後ろにいる緑間もどこかそわそわしていた
「おい未來」
死にそうになっている木村を見て、後ろで眠る未來を起こす
「んぁ?……ぁ…宮地?」
「そー宮地。早く起きろ、その怪我の説明しろ」
「あ…」
起き上がった未來はばつの悪そうに乱暴に頭をかいた
梯子を降りた未來に高尾はうわぁぁんと言いながら抱きついた
「未來先輩の顔に傷がぁ!!」
「まったく、女性が顔に傷など作るものではないのだよ」
「高尾落ち着け大丈夫だ。緑間なんかムカつく、刺していい?」
「嫌なのだよ」
今のは高尾じゃなくても分かる
緑間も噂聞いて心配したんだな…眼鏡を直す回数が多い……取りあえず
「高尾いい加減離れろ」
「…はぁい」
意外と素直に離れた高尾に内心驚きつつも未來に問う
「なんでやりあった」
「…正当防衛だあんなん」
フイッと視線を逸らした未來に苛立ち何か言おうと開いた口は木村に抑えられた
「今口喧嘩してる場合じゃねぇ」
「…」
「はぁ……取りあえず月島。詳しく教えてくれ」
大坪の問いに渋々と言った感じで月島は昨日、俺達と別れた後の話をし始めた
未來side
「「「……」」」
「以上」
座りながら昨日の事を思い出しながら話すと目の前にいる男達は皆表情が違うものの無言のまま私を見ていた
やっぱ幻滅されたか…
そう思い立ち上がると高尾が再び引っ付いてきた
全力で押し返すもびくともせず更に腕に力を込めてきた
「たか「…さい」
「え?」
「助けを求めて下さい。助けてって一言…未來先輩1人で頑張りすぎ…」
「別にそんな」
肩に顔をうずめる高尾に困惑していると大坪が頭を撫でてきた
「高尾の言うとおりだ。いつも言ってるだろ」
「そうそう。俺達友達だろ?分かってるか?今凄く泣きそうな顔してる」
「っ!」
木村の言葉に目の奥が熱くなったと思ったらそれは頬を伝った
「不器用ですね月島先輩」
「お前にだけは言われたくねぇよっ」
緑間にそうツッコむと大坪達は笑った
そんな中、宮地は笑いもせず低い声で名前を呼んだ
高尾も私から手を離し宮地を振り返る
「お前俺んちから通え」
「「「は!?」」」
真顔で何言ってんだコイツ
頭可笑しくなったかと突っかかるもいつもなら何かしら文句言ってくる宮地が顔色1つ変えなかった
「未來のバイク、うちに置いといて良いからバイクで通え。そうすりゃ絡まれねぇだろ」
「宮地……でもそれじゃ宮地が目つけられんぞ」
「構わねぇよ、そこまで弱いつもりはない」
「私が構うんだよ!!」
大声を出せば高尾がビックリしたように少し離れ、宮地以外が目を丸くした
「絡んでくんのは女ばっかじゃねぇし!暴力をふるう事が当たり前のやつばっかだ!」
「……」
「私は…私は!お前達がバスケを本気でやってるの知ってるから…お前達がバカみたいにバスケの話してんのが好きだから!!巻き込みたくねぇんだよ!合宿は行く、だから無駄に関わるな!!」
言い切った私に呆然としている皆
私は屋上を走り去った
後ろから聞こえる声を無視して
宮地side
高尾が未來を呼び止めようとするもアイツは屋上を去る
俺は後ろへ倒れ空を見上げた
「アイツ、あんな事思ってたんだな」
木村が屋上の扉を見ながらそう呟くと大坪も頷いた
「前よりバスケの話を楽しそうに聞いていたからな、そう思ってくれていて良かったがとは思うが…」
「確かに月島先輩の言うとおりです。暴力沙汰は出場停止になる危険があるので避けたいのだよ…だが」
「それでもアイツを1人になんか出来ねぇよ……ん?」
大の字に寝っ転がりながら言う俺の顔を高尾がのぞき込んできた
「なんだよ」
「未來先輩、追いかけなくていいんすか」
「いーんだよ。あいつの行くとこなんか分かってるし鞄もおきっぱだ」
「ふーん、愛の力は無限大っすね!」
場の空気が固まった
数秒たち、俺の頭が高尾の言葉を理解すると同時に起き上がり高尾につかみかかる
「テメ「ぶふぉ!宮地さんってば!か、顔真っ赤!!」
高尾に指摘されフラフラと後退しフェンスにぶつかる
高尾が爆笑し転がってる間によく見れば木村や大坪も笑ってるし緑間も顔を背け肩を揺らしている
「っ高尾!テメェ殺すぞ!!」
「無理っす!その前に死ぬ!笑い殺される!!」
死ね、笑い死にでもいいから死ね!
顔を見られないよう背を向けフェンスに手をつきずるずるとしゃがみ込むと更に五月蠅くなった
未來side
屋上を飛び出した後、いつもの空き教室で机にのびた
自分から居場所を離れるのは慣れているが今回は一緒にいた時間が長すぎて、楽しくて、離れたくないとか思い始めて…辛い
あぁ、鞄忘れた
後で取りに行こう
そう思い目を瞑れば意識は沈んでいった
ふわふわと水の中を沈んでいく私の身体
泡が浮いていくのを見ていると段々光が小さくなって暗くなっていく
不安になり浮いていこうと思うと底の方から伸びる複数の黒い手が私を掴む
もがく私を下へ下へと引っ張っていく
消えゆく光に無意識に伸ばした手には温もりを感じた
「っあ…」
「ん、起きたかよ」
掴んだのは宮地の手だった
「んで、いんの」
「もう部活終わったし、お前の鞄もったままだし、探しに来てやったんだよ。感謝しろ」
手を離し体を起こして窓の外を見れば空は橙色が暗く変わり始めていた
「なんで…鞄置いときゃいいじゃん」
「ほっとけねぇからな」
そう言って宮地は手を伸ばし、私の頬に触れた
そして親指で目元を撫でる
その指は黒くなり、そこで私は泣いていたことに気付いた
「怖い夢でも見たか?」
「……うん」
「そうか」
手は頭へと移動しゆっくりと撫でた
暫くそのまま無言でいると手が離れた
「帰るか」
そう言って立ち上がり私に手を差し出す
私は頷いてその手を取った
一定の距離を保ったままずっと無言で歩いているとふと思ったことを口にする
「突き放したのに、なんで関わろうとすんの」
「はぁ……あれで突き放してたのか、俺には逆に手を伸ばしてるように聞こえたけど?」
「え…」
「未來はさ、結局俺らといるのが好きなんだろ」
宮地の言葉に少し間を開けて小さく頷くとだったらいいじゃねぇかと私を振り返った
「未來が無理することねぇよ、大坪や木村、高尾や緑間だって未來にいて欲しいんだから」
「……」
「また無理にでも距離取ろうとしてみろ、そん時はアイツ等とどこまでも追いかけてやる」
その目はまっすぐに私の目を見ていてその瞳に吸い込まれそうになる
すると宮地は私の腕を取り歩き出した
「家まで送るからちょっとうち来い」
「はぁ?」
「チャリで送るんだよ、文句あんなら轢くぞ」
普段通りにの宮地に戻り、内心安心すると腕を離し手を繋いだ
「チャリで轢くってんなら、バイクで轢き返す」
「お、調子戻ったな」
握り返してくれた事に安心し、手を繋いだまま宮地の家を目指した
宮地の母親に彼女に間違われるという事件がありながらも(2人で全力否定しといたが微笑ましそうに見送られ)帰路についた
宮地の後ろに座り、その背中を見ていた
「宮地さ、本当急に身長伸びたよね」
「あ?あーまぁな」
「会った頃私とそんな変わんなかったのにな」
そう言うと宮地は絶対わざと自転車を蛇行させた
バランスの崩れた私は咄嗟に宮地の腰に腕を回ししがみつく
「っぶねな!」
「そりゃ悪いな!次は?」
「悪いと思ってねぇだろ…あそこ右で道なりにずっと行って突き当たりの家」
何だか面倒になったのでそのままの体勢で道を言うと返事が帰ってきたので背中に頭を預ける
宮地も文句言わずに受け入れたから調子のってそのままでいた
家の前につき自転車から降り宮地と向き直る
「ありがとう。明日からよろしく」
「おぉ。じゃあ」
「それと、さ…」
帰ろうとした宮地の袖を掴み引き止めると宮地は首を傾げ真っ直ぐに見つめてくる
自転車に跨ってるから視線は同じくらいだ
思わず視線を逸らしたが、息を一つ吐き見つめ返す
「もう…今度こそ卒業まで喧嘩しないから」
「未來…」
「絶対に手…出さないから」
宮地はフッと笑って私の頭に手を伸ばしてきた
「わかった。ただし、また昨日みたいに襲われそうになったら一発かまして逃げろよ?最後までヤられたんじゃ約束した俺のせいみたいで嫌だからな。学校に猛抗議しに行ってやるよ」
心配そうにのぞき込んできた宮地の言葉にわかったとふにゃりと笑った
「ありがとな宮地。じゃあまた明日」
「おぅ」
今日はよく眠れそうだ