未來side
とうとう明日から合宿
少し楽しみにしながら家につくとリビングの電気がついていて顔から表情という表情が剥がれ落ちたのがわかった
家に入り、リビングを通りかかると声をかけられる
「あらお帰りなさい」
「……帰るなら連絡寄越せよ」
「やーね、私の家よ?いつか帰ってきてもいいじゃない」
こいつが自分の母親だなんて信じたくもない
4年ぶりの帰宅にも関わらず私の方を一切見ず、パソコンのキーを叩いている
冷蔵庫から冷やしていた紅茶を取り出し一口飲む…うん美味しい
「そういえばもう夏休み?ちょっと明日手伝って」
こいつは仕事人間でいつも海外転勤で家にはいない
家に帰ってくると直ぐにこれだ
私はこいつが家事をしているのを見たことがない
父親は耐えきれず、私の弟が産まれて1年で別れたらしい…なぜ私も連れて行ってくれなかった
写真でしか見たことない父親に舌打ちをし背を向ける
「明日からいねぇから」
返事を聞かず風呂に入る
自分の部屋へ戻りベッドへにダイブして卓上にあった写真…家族が4人映る写真を手に取る
「……バァカ」
笑顔の父親にそう吐き捨て卓上に戻し明日の荷物を確認して眠りについた
「……っは」
駄目だ…自分以外の気配がありすぐに目が覚める
…あれ、これじゃ合宿中寝れなくね?
そう思いながら目に入った人形を抱きしめ寝転がる
一昨年、宮地達にUFOキャッチャーで取って貰った抱き枕大の猫の人形
それを抱いていると段々と瞼が重くなり自然と眠りについた
もう日が昇り始めているのに気づかずに…
「……やば」
寝坊です
とりあえずショーパンにTシャツにパーカーを羽織りサングラスと荷物をひっつかみ階段を下りると目の前にアイツが立ちふさがった
「あらどこ行くの?ちょっとこれ手伝いなさい」
「了承した覚えはない」
「生活費稼いでるのは私よ?少しは手伝いなさいな」
あーヤバいキレる
「黙れ!!母親気取り!!」
「なんて口の効き方…そんな風に育てた覚えは「あんたに育てられた覚えねぇよ!!」
バイクのキーをひっつかみ玄関を飛び出しエンジンをかける
前輪を軸に旋回し道路へと飛び出す
「(朝から最悪だっ)」
宮地の家にバイクを置かせてもらいお母さんに挨拶をする
「清志ったら…待っててあげたらいいのに」
「いえ、私が寝坊したんで…」
「待ってあげるのが男じゃない?あ、急ぐのよね。いってらっしゃい未來ちゃん。気をつけてね」
「…行ってきます」
なれない言葉を言って集合場所まで走る
…こんな感じなのかな母親って
「遅ぇ!!」
「わり…」
着いたと同時に宮地が怒鳴る
まぁ私が悪いから謝る
「つかなんでサングラス」
「寝坊したから何もしてないんだよ。すっぴんなんか見せられるかアホ」
「未來先輩の素顔見てぇ「拒否」即答!!」
ゲラゲラと笑う高尾に緑間が朝からうるさいと殴る
「ギリギリで全員揃ったな、早く乗れ」
中谷先生の指示で皆バスに乗り込む
一番最後の私は空いてる席、宮地の隣に座る
「は!?、なんでここ!?」
「他にあいてないんだからしょうがねぇだろ」
「……アイツ等ぜってぇ轢く」
どうしてそうなったか分からないが、とりあえず腹減った
そう思ってお腹を撫でてると目の前におにぎりが差し出された
「…何」
「食えよ。どうせ何も持ってきてないんだろ」
「…サンキュ」
口にしたそれは良い塩加減で凄く美味しかった
それを口にすれば何故か宮地がツンと窓の外を向いた
「…もしかして宮地が?」
「わりぃかよ」
「いや、全然」
珍しく照れてる宮地にバレないように小さく笑った
いつの間にか朝のことは頭から消えていた
宮地side
暫く外を眺めていると肩に重みを感じ、視線をずらしてみると未來が俺の肩に寄りかかっていた
サングラスの上から見えた瞼は塞がれ、小さく寝息が聞こえた
「あり?未來先輩寝ちゃってます?」
前の座席から顔を覗かせた高尾は飴の袋をぶらぶらと揺らした
「高尾、それ寄越せ」
「もともとその予定っすよ!」
「おぉサンキュ」
「高尾、ちゃんと座っとけ」
「はーい…あ!監督と大坪さんもどーぞ!!」
「食べ物を投げるな高尾!」
「すんません!」
そして何故かニヤニヤと俺たちを見て引っ込んだ
なんなんだうぜぇな
飴を口に放り肩で眠る未來を見…サングラスが痛ぇ
寝てるから良いだろうとそっと外す
「…睫毛なっが」
普段つけまつげをしているの為気にしたこと無かったが元々も長い
化粧をしていないせいかいつものキツさがなくなり取っつきやすそうになった
そしてサングラスがなくなって寝やすくなったのか肩に擦りよる未來
猫みたいだと思い頭を撫でてやると頬がゆるんだ
そして視線を上げると…
「何ニヤニヤ見てんだよ木村ぁ」
「いや?ただ宮地幸せそうだなと」
「…後で刺す、ぜってぇ刺し殺す」
はいはいとあしらう様にし隣の奴と話し始める木村
「ふぁぁ」
朝が何時もより早かったせいで眠くなってきた
前にもこんなことしたなぁと思いながら未來の頭を枕にし、後ろで監督と大坪が練習メニューを話しているのをBGMに目を閉じた
「高尾、それ送ってくれ」
「俺も」
「私にも」
「うえっ!?まさかの監督の参加!!ついでに真ちゃんにも送っちゃお」
「何故その流れになるのだよ!」
騒がしい声に目を上げれば携帯片手に笑う高尾
携帯には赤いランプがついている…
「高尾…」
「うわ!おはようございます宮地さん!もうすぐ着きますよ!」
「折るぞ」
「何を!?」
携帯を隠し騒ぐ高尾に苛立ちながら未來にサングラスをつける
「ん…ぁ?着いた?」
「おはようございます!未來先輩!もうすぐっすよ!」
「全員荷物纏めろよ!」
大坪の言葉に窓の外を見れば宿泊予定の宿が見えた