悪食グルメハンター   作:輝く羊モドキ

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今回でようやく……ようやく!ハンター試験編終了!


最終試験は最終危険?

 おっす俺はグリード。しがない試験官(一次代理・二次・三次・最終試験代理)だ。役職ェ。もう俺一人で良いんじゃないかな?

 

 さて、最終試験だが……ぶっちゃけなーんも考えてねえんだけどどうしよう。助けてマーえもん!!

 

(三次試験が始まるときには既に予定人数下回ってたんですから、その時点で試験内容を修正すれば良かったのに……)

 

 てってててーっててー、『自業自得ぅー(例の声)』

 

 なんだ今の電波。

 

 と言うかさっきまでの俺よ、何を意味深な事を喋ってんだ。何が武力、感覚、精神力だよ。こんな試験に深い意味なんてねえよ。

 駄目だ、我が事ながら腹が減ったら意味不明の謎理論を展開する悪癖が……。やべえよ、既に『始めよう、心を摘む試験を!』とか言っちゃったし。

 

「それで……試験内容とは……?」

 

 ほらぁー、試験内容聞かれてんじゃーん。くそっ、この考えなしに適当なこと話す口め。と言うかよく考えていきなり最終試験振るハンター協会が悪い!

 つまり俺は悪くない!ネテロ会長が全責任を被れ!

 

 ……おっし、最終試験っぽい内容さっと考えよ。

 

 

 ◇

 

 

 な、なんなのこの試験官……。いきなり食べられるかどうかわからないモノ(美味しい)を振る舞ったと思ったら、質問を受けて返答せず目を閉じるなんて。

 ……まさか、最終試験の内容を今考えてるとか?(正解)

 

「最終試験の内容を説明しよう」

 

 あ、いきなり話し出した。

 

「最終試験で試されるもの、それは『コイツには何かある!』と思わせる何か、あるいは『コイツなら任せられる』と思わせる何か。印象!」

 

「印象……」

 

「ハンターってのは基本的には個人プレーだ。だが大物を追いかける時、一人ではどうにもならない時が間々ある。そん時に畑違いの優秀なハンターが呼ばれる事もな。『実績は無いが、コイツならあるいは』や『強くはないが、コイツなら背中を任せられる』と思われる事!優れたハンターと呼ばれる条件の一つだ。無論強くなければ話にならんが、強さだけが全てじゃない。『プロハンター』ってのは『信頼』と『実績』を延々と積み重ね続ける仕事だ。実績を得るために必要なのが信頼であり、信頼無くして実績はあり得ない」

 

 ……なるほど、ハンターとして長く活動してるだけあってか、その言葉には()()があった。『信頼』と『実績』を積み重ね続ける仕事……か。

 

「さて、最終試験の内容だ。お前らはこれからハンター協会の支部に移動する。その間、俺から出される簡単なミッションを幾つかこなしてもらう。それだけだ」

 

「……えっ?」

 

「おいおい……今までかなり非常識な試験だったのに、今度はハンター協会の支部に行くだけだと?」

 

「……支部の場所が全力で走って1週間以上の距離とか……?」

 

「お前らハンター試験なんだと思ってんだ……この島に船を来させる。お前らはその船に乗ってハンター協会支部に移動。その間俺から出されるミッションをこなしてもらうだけだ」

 

「わかったわ!そのミッションが『狂暴な魔獣を捕らえてこい』とかでしょう!?」

 

「『簡単な』っていってんだろ!船での移動中に出来る体力テストみたいなもんだって思っとけ!」

 

「嘘だろ……?毒を食わされたり、方角もわからない樹海の中を走らされたり、常に死が隣り合わせにいるようなサバイバルやらされたりしておいて……最後の試験内容がそれだけな訳無いだろ!!」

 

 わかる。

 

「勿論それだけじゃねえよ。お前らがハンター協会支部に到着した時、お前らの中で『ハンターになるべき者』を一人決めろ。それが最終試験内容だ」

 

「……決め()?決め()じゃなくて?」

 

「そうだ。お前ら全員で『ハンターになるべき一人』を決めろ。判断方法、基準、全てお前らに任せる。化かし合い、殺し合い、大いに結構。全員が納得してもしなくても、必ず()()決めるように。これ以上の質問は受け付けない。俺は船を手配する。その間各自待機しろ。以上」

 

 言うだけ言って私達から離れていく試験官。内容を纏めると、私達の内一人しか合格出来ないってこと……?

 

 

 ◇

 

 

 あれから大体一時間ほど。船を待っている間私達は名前と出身地程度の自己紹介を行っていた。

 試験官は船を手配するといっていたが、試験官含めこの場にいる5人が乗るには明らかに大きすぎる船舶が一隻やってきた。

 

「豪華客船か?ありゃ……」

 

「でかすぎだろ!世界一周旅行でもする気か!?」

 

「何か嫌な予感がするわね……」

 

 船舶はゆっくりと島近くに止まり、乗船用のかけ橋を降ろしてきた。

 ……急に落ちたりとかしないだろうか?

 

 私達が乗り込めば、そんな心配などなかったかのように船は緩やかに動きだし、私達をどこかに移動させる。

 船の中もとても広く、最低限の部屋と壁、骨組みを残し、それ以外の内装だけでなく床等も全て取っ払った豪華客船のように無駄に広かった。

 

「コイツは『カスタム量産型客船ボーンストラベル』。内装を必要に応じていくらでもカスタマイズ出来るのがウリだが……まぁどうでもいいか。さて、最初のミッションだ。ここから一番下にある動力室に予備の歯車が幾つかある。その内の一つを持って、今度は一番上の展望室に登ってこい」

 

「一番下って……階段もなにもねえのに降りろってか!?」

 

「質問は受け付けない」

 

 そう言って試験官は空を飛ぶように骨組みを蹴り跳んで……次の瞬間姿を消した。

 昔、姉が言っていた。超一流のハンターはまるで透明になったかのように気配を()つ事が出来ると。その時はそんな大袈裟な、と思ったが成る程目の前で実例を見せられれば本当に透明になったかのように存在感が無くなった。

 しかし試験官は超一流のハンターである事は理解出来たが、この()()()()()とやらのクリア方法がわからない。まあとりあえず下に降りてみるか……と思った次の瞬間、ばっ、と飛び降りる29番の男。

 

「はっはぁー!『一番乗り』は俺が貰う!!」

 

 そこで漸く、私は現状を理解した。試験官は何と言っていた?『ハンターになるべき者』を決めろと言っていた、ハンターとは優秀でなければならない……つまりこういったミッションを幾つかこなし、総合成績の良い者が『ハンターになるべき者』なのではないか?

 やられた。完全に出遅れてしまった。後悔の念が募るが、落ち込む間はない。29番を追いかけるように下に向かって飛び降りる。どうやって上ればいいのかとか、それこそ降りた先で考えれば良い。

 私の後を続くように残りの二人が降りてくる。最終試験、合格者は一人だけならば、合格するのは自分で良い。自分でなければならない。皆の意識は一つになった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 つ……疲れた……。

 豪華客船(外側だけ)に乗船してから丸二日。その間オレらはほぼ休み無く試験官から言い渡される()()()()()に振り回され続けていた。

 

「休みたかったら勝手に休んでいいぞ。その間他の受験者がミッションを終わらせても次のミッション言い渡すだけだし」

 

 とか言われたら休んでられる訳無いだろ!

 ああくそっ。昼間はずっとだだっ広い船内をあちこち走らされたり、夜間は外に出て泳がされたりし続けて体力の限界が……。

 唯一の救いは飯の時間だけは全員が同じ時間だけ休め、栄養分を補給できる所か。しかも滅茶苦茶旨い。時折明らかに食えない物使った料理がでてくるが。

 しかしアレだ、キツすぎる……。肉体的には勿論だが、いつまで走り続ければ良いのかわからないまま全力疾走させられ続けている。いつ終わるのかわからないのが精神的にキツい。陸が見えれば終わりが近いと思えるのに、外の景色が見られるのは日の沈んだ後だけ。暗い夜で、しかも延々と雨が降り続けている地域で夜の海の上で見える景色なんぞたかが知れてる。

 

 今は複雑に入り組んでいる船の中を走り回されている。時に船底を走らされ、時に船の骨組みを足場に飛び回され、と危険なマラソンを続けさせられている。足はふらふらだが、表には出さない。気合いで食いつく。

 船の最上階。下を向けば、見える数多もの鉄パイプとその奥にうっすらと見える船底。落下すれば命は無い。

 休まなければ、いずれ足場を踏み外して落下死するだろう……だが、休めば他の奴らに先を越される。どいつもこいつも汗だくだが、表情は余裕そうに振る舞っている。それが演技なのかそうじゃないのかは判断がつかない。

 蓄積した疲労から、少しずつ、少しずつ先頭から離されていき、気がつけば最後尾にオレはいた。先頭を走るのは仮面を着けた女、受験番号500番。その背中にぴったり着くように追うのは帽子が特徴の女、246番。約1馬身程度離れて、何処かの国の芸能人を名乗った男、451番。その背中に腕二本分ほど離れてオレ。かぁんかぁんと鉄パイプの上を走る音がほとんど何もない船内に鳴り響き……目の前の男が鉄パイプの足場を踏み外した。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 死。

 

 死ぬ?

 

 オレは死ぬのか?

 

 世界がこれ以上ない程にぎゅうっと凝縮されていくのが分かる。

 

 足は完全に宙に浮き、体は重力に逆らえず闇に落ちていく。

 

 なぜ、どうして。くそ、あのとき少しでも休んでいれば!

 

 後悔が頭を占める。

 

 後悔以外の何かが頭をよぎる。

 

 それは、オレの原点。

 

 故郷のスラム街に置いてきた、オレの生きる希望。

 

 スラム街出身でも、顔だけは良いオレが世間に、家族に、オレ自信に誇れる仕事なんて有りはしなかった。

 

 その筈だった。ただ、テレビの向こうの世界にはそんなこと(俺の事情)は関係なかった。

 

 ああ、くそ。まだ、死にたくない。

 

 もがく、必死に、ひたすらに。時間の流れは遅く、思考と意識は加速していく世界で。

 

 落ちていく体を支えるために足場だった鉄パイプに手を伸ばす。手を、伸ばす。

 

 時間の流れは遅く、体が動く速度も遅く、思考と意識は加速していく。

 

 オレは四人家族だった。全員の血は繋がっていないが、長男であったオレは弟妹を守るために何でもやった。

 

 オレは、ただ家族で幸せにすごしたかった。

 

 鉄パイプに手が届く、掴む。

 

 

 ずるり、掴み損ねた。

 

 

 死。

 

 死ぬ?

 

 オレは死ぬのか?

 

 暗黒がオレの体を、足先から染め上げていく。

 

 膝、腰、胸、首、顎、口、鼻、そして、目。闇がオレを飲み込んでいく。

 

 光に手を伸ばせども、世界は不可逆。

 

 

 『ごめんな。お兄ちゃん、ここまでみたいだ。』

 

 

 

 時間の流れは元に戻り、加速した意識は等速に戻る。目に見えない死が這い寄って、足首を掴んで離さない。

 死は終わり。そして、絶望だった。

 

 

 がしっ。と、光に伸ばしていた腕が誰かに掴まれた。

 

 

「諦めるんじゃねえバカ野郎がッ!!」

 

「……は」

 

 闇に埋まっていた体が引き抜かれたように、意識が船内に戻ってきた。オレの腕を掴んでいる誰かは、三次試験で一時的に協力し、最終試験ではプロハンターの座を掛けて競い合っている内の一人。

 29番の男がオレの腕を、その鍛え上げられた腕で掴んでいた。

 

「糞ッ!クソクソクソがッ!!オレって奴は本当によお!!」

 

「な、にやってんだ……」

 

「知るかっ!勝手に体が動いたんだよクソが!この手を放せばライバル一人消えて万々歳!んなこと頭じゃわかってんだよ!ふざけんじゃねえっ!死ねよっ!オレの手の届かない所で死ねよせめてよお!」

 

 言葉とは裏腹に、オレの腕を掴む力は弱まらない。

 

「ふざけんなっ!そんな顔してんじゃねえよ!諦めるなっ!勝手に絶望すんなっ!」

 

 汗で少しずつずり落ちてくる。29番の男はその疲れきった体で、大の男を鉄パイプの上から支えるのには限界があった。

 落ちていったオレの腕を掴む為に身を投げ出した男は、まるで曲芸のように足だけで自身の体とオレを支えていた。

 

「ば、かやろ……お前も落ちるぞ……!」

 

「うるせえ!んな事分かってんだよ!でももうどうすりゃいいんだ!お前を助ける!俺も助かる!そんな都合の良い結末なんて……っ!?」

 

 ふ、と意識が逸れたその瞬間に、オレの身体に黒い糸が巻き付いた。

 そして29番の男の足を掴む246番。何が起きている?

 

「こっちはオーケー。合図は任せる」

 

「任されたわ!いち、にの、さんで行くわよ。いち」

 

「にの」

 

「「さん!」」

 

 ぐいっ、とオレの身体と29番の男が持ちあげられ、あっという間にパイプの上に身体を置く。

 助かった……。

 

 ああ、助かったのか……。

 

「……すまん、助かった……」

 

「礼は不要」

 

「私もいらないわ。29番のアンタが掴んで時間稼いでなきゃ間に合いようも無かったんだから」

 

「あー、オレも要らん。結局オレ一人だけじゃ助けられなかったんだ」

 

「……はっ、じゃあオレは誰に感謝すりゃいいんだ?」

 

「……500番と246番?」

 

「だから不要だと言っている」

 

「29番が時間稼いでなきゃ間に合わなかったって言ってるでしょ?」

 

「だからあんた達が居なきゃ助けられなかったんだって」

 

「やめましょう。無限ループにしかなんないわ」

 

「……礼は受け取ってくれなくても、勝手に礼は言わせてもらう。オレを助けてくれてありがとう……!」

 

 ふん、と鼻を鳴らす音が響く。

 

「もう足を止める意味は無い。先に進ませてもらう」

 

「そうか」

 

「そうか、って……お前はどうすんだ?」

 

「オレは今死にかけたばかりだからな、腰が抜けて動けん。すこし休んでいく事にする」

 

「……おう、なら俺も休んでいくわ」

 

「そう」

 

 500番は一度こちらを振り向いて、そして先に駆けていった。

 

「……貴方達、馬鹿じゃないの?」

 

「んだとぉ?」

 

 246番は呆れたように顔を歪めた。

 

「もうすぐそこがゴールよ?こんな不安定な足場よりそっちの方が休みやすいでしょうに」

 

「……それもそうだな」

 

「呆れた」

 

 そう言って246番も先に駆けていった。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 あれから恙なく試験が進行し、船は無事にハンター協会支部に到着した。変わった事と言えば、受験者達は最初の時みたく一切の休みなくミッションをこなし続けることはせずにミッションの合間合間に休憩を入れていた事か。

 自身の調子を管理できない奴なんてハンターになっても長生きできない。無論不調だから仕事(ハント)が出来ません、なんて奴はプロ失格だがな。

 

 船から降り、ハンター協会支部の一室に入る。中は椅子が四つあるだけだ。

 

「全員椅子に座れ。……座ったな?さて、これで長かったハンター試験も終わりを迎える。ほんとに……まじで……長かった……!」

 

 いやもうマジで。なんで試験官俺だけなん?長すぎクソワロタ。なんか一次試験から三ヵ月くらい経ってる気がする……!

 実際には二週間経ってないけど!

 

「あんたの感想なんかどうでもいいのよ」

 

「失格にするぞ246番。さて……試験内容を覚えてるか?今からお前等に『ハンターになるべき者』を一人決めてもらう。決まるまではこの部屋から出られない。決め方は好きにすればいい。話し合いでも、最後の一人になるまで殺し合うも良しだ。そして、必ず()()に絞ること。つまり全員が同じ者を選ばなければならない。もし一人でも別の者を選んだ場合、全員失格とする」

 

「「「……!」」」

 

「……決まったら、このベルを鳴らせ。それをもって試験終了となる。以上だ」

 

 そう言い、俺は部屋から出た。さて、どれくらいかかりますかねぇ。

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

 よし、飯でも食いに行こう!

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 今日のメニューはお手軽メシの筆頭格『牛丼』。

 用意するのは牛バラ肉に玉ねぎ、白メシ、あと調味料色々。お好みで鶏卵を用意しておこうね。俺は卵好きだから用意しておく。

 まず玉ねぎを5ミリ幅にくし切りにします。厚みが均等じゃないと火の通りと味付けにばらつきが出て美味しくないぞ。

 次に予め熱しておいたフライパンに油(普通のサラダ油で良いが今回は綿実を主原料にしたお手製の油を使用)を引き、先程切った玉ねぎを投入。油が馴染むまで炒める。

 その後水、醤油、砂糖、俺特製ダシ調合酒(ない場合はみりんと料理酒、和風だしで代用可)をそれぞれ適量投下しひと煮立ちさせる。

 煮立たせる合間に牛バラ肉を薄くスライスし、更に約5センチ幅に切ってフライパンに投入。あまり大きすぎると食べづらいので注意。

 アクを取りつつ煮込みながらご飯を用意。米の下ごしらえなぞカットじゃ!

 ご飯が炊けたと同時に煮込み終わった具を盛り、お好みで紅ショウガと卵を入れよう!俺は片手間に作った温玉を乗せて完成!

 シンプルイズベスト!ここまでかかった調理時間は約3分(人外感)まさにお手軽、ファストフードの王様やったー(小並間)

 

 牛丼は食う時大抵箸だが、今回はつゆだくねぎだくで作ったので匙が良い。

 早速いただきます。匙に山盛り乗せて一口!

 

ンまぁぁぁい!!!

 

 メインの牛の程よい柔らかさ、玉ねぎのシャキシャキ感とふわふわ感の絶妙なバランス、そしてつゆと零れんばかりに吸った熱々白米が奏でる味の四重奏(クァルティト)!それを指揮するのは高レベルの安定感を叩き出す温玉の黄身と白身!ンDelicious(デリシィァス)

 美味しいなあとゆっくり味わうのではなく、一気に掻っ込んで食らう旨味の喜び!おもわずうまい!うまい!うまい!うまい!と叫びながら爆食不可避のスタミナメシ!一口食らう毎にパワーが漲る!

 

 あっ、しまった!牛丼を食ってから気が付いたがコレ味噌汁欲しい奴だ!だがしかし今の俺は完全お食事モード。お料理モードにスイッチするのはとても難しい!略してとて難!

 と、そこで神の天啓が舞い降りる!

 

貴方が作れないのなら、貴方と同じ力量の者に作らせればよいのです

 

 やるじゃん俺の中の神様!と次の瞬間に俺の新たな『念能力』が生まれた。

 

 

 『悪魔の料理長(デビルオーダー:グルメシェフ)

 

 

 今俺の目の前には()()()()()が料理器具を持って立っていた。俺は悠々と牛丼をかっ食らいながら味噌汁のレシピを想起する。すると目の前の()()()()()は俺が料理を作るように『ポケット』から食材を取り出し、鍋に水を張ってオーラで加熱し沸騰させた直後味噌を投下、攪拌しつつ食材に隠し包丁を刹那で入れ、あっという間も無く俺が作りうる最高の味噌汁を作り上げた。(ここまで(味噌汁欲しい奴だ!と思い始めてから)約5秒)

 

 ズズッ……

 

うまい……

 

 牛丼を食って急上昇したテンションは味噌汁を飲んでゆっくり落ち着ける。しかしそれは決してマイナスなイメージではなく、言うなれば緩急。最後まで飽きずに食事を続けられる大事なアクセント。

 『次の一口』によって再度引き上げられたテンション。二口、三口と貪り、口休めにお手製紅ショウガを齧る。丼の底まで掻っ込んで、最後に味噌汁を飲み干す。

 

 完璧(パーフェクト)……。

 

 まさに完璧な食事だった。俺の求める理想の一つ(グルメ)がここに在った。

 俺以上に料理が上手い奴は存在しなかったからこそ、俺が俺の為に料理を行い、振る舞っていた。だが、これはどうだ。俺の能力とはいえ、俺自身は座って待っているだけ。いや、牛丼作ったのは俺だけど。

 ああ、こんな事ならもっと早くこの『念能力』を作っていれば良かった……。

 

 満足、満足……と『悪魔の料理長(デビルオーダー:グルメシェフ)』を消して……気が付いた。

 料理器具が無くなっとる……。

 

 

 呆然と意識を飛ばしていると、シャリリィンとベルが鳴る音が響いた。ああ、戻らなければ。

 

 ああ。

 

 

 

 はぁぁぁ~……(ガチ凹み)

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「……で、戻ってきた試験官がまるで『楽しみにしていたオヤツを取られた犬』の様な顔をしている件」

 

「お前に判るまい、この俺の喜びと悲しみのアップダウンを……」

 

「んな事はどうでもいいのよ。さっさと試験終わらせるわよ」

 

「ああ……そうだな……はぁぁ……」

 

「ガチ凹みやめろ」

 

 試験試験、ささっと終わらせないとちょっとまじ傷心の俺にしんどい……。

 

「はい、じゃあ『ハンターになるべき者』を指し示せ。はい、せーの」

 

 パッ

 

 

 

「……なるほどね。500番、何故ソイツを指した?」

 

「深い理由ではない」

 

「ほう。次、29番」

 

「……まあ、偶々だ」

 

「成程。246番は?」

 

「運が良かっただけよ」

 

「運……ねぇ。451番」

 

「……オレは別にロマンチストを気取ってる訳じゃねえが、まあなんだ、運命ってやつかな」

 

「ふむ、単に気持ち悪いな」

 

「おま、なんでオレだけ!?」

 

「くっそ気取ってるから」

 

「……」

 

 なるほどなるほど。しかし運ねえ……。

 

「お前等、どうやって決めた?」

 

 

 

「「「「 ジャンケン 」」」」

 

 

 

「ジャンケン、ジャンケンか。く、くくく……そんな運任せでよく『ハンターになるべき者』なんて決めたな」

 

「……むしろ、ジャンケンで決めるって案が出た時これしかないって思ったわよ」

 

「ミッションの達成率とか、順位とかで決めようと思ったんだがな」

 

「よく考えたらあんなミッション程度でハンターの素質なんて見ようがない」

 

「つまり試験官はただオレ達に何かしらの理由で()()()()()()()()()を付けようとしたんじゃねえのかってな」

 

「『コイツには何かある!』だっけ?アンタが言った印象って奴。私は、この場に居る全員に感じたわよ」

 

「私も」

 

「俺もな」

 

「なら、最後は恨みっこ無しの運試しにしようってな」

 

「成程な。成程……くく、面白い奴等だ」

 

 そういう事なら遠慮はいらねえな。きっと会長も、俺の選択を喜ぶだろうよ。

 

 

「受験番号……29番!最終試験合格だ!」

 

 

「……ああ。……あぁ……」

 

「……やったな、リョータ!」

 

「ありがとよ、アキラ」

 

「あーあ、また来年受け直しか~」

 

「こればかりは時の運。でも来年は絶対合格する」

 

「おおっと、まだ話は終わりじゃねえぞ?」

 

「は?」

 

「ん?」

 

「……?」

 

 

「受験番号246番!451番!500番!お前等も合格!」

 

「「「……え!?」」」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「合格者は一人じゃなかったんかい!!!」

 

 なんて叫び声を背にして、長かったハンター試験も終わり。ハンター(ライセンス)の説明は支部にいた事務員に任せる。

 

「お疲れ様ですグリードさん!」

 

「ああ、本当にな……!」

 

 俺の目の前に現れたマーさんの頭を掴んで万力の様に力をゆっくり込める。

 

「いたたたた!!?なにするんですか!!?」

 

「なぁんで俺が一次試験から最終試験までやらなきゃならないんですかねえ!?しかも一人で!一人で!!」

 

「その件に関してはスミマセン!スミマセン!会長がどうしても外せない用事が出来たからと……!!」」

 

「いやね、分かるよ俺も。トガリの野郎が脱落したのも予想外だろうし、二次試験の段階で予定人数を大きく下回ってるのも予想外だろう。だがな?だがな?三次試験を切り上げて最終試験をするって決めたんなら手紙と一緒に最終試験の試験官を連れて来るべきじゃないかな?かな?」

 

「いやもうほんとスミマセン!会長のワガママが炸裂しましてほんと!」

 

「俺の鉄拳がネテロに炸裂しそう」

 

「あ、そ、そうでした!会長より手紙を預かってます!」

 

「あぁ?今時手紙かよ……映像媒体にしやがれせめて誠意を見せるならよー」

 

 ガサガサ

 

誠意が足りなくてスマンの

 

「やっぱあのジジイ妖怪だわ」

 

「あ、あはは……」

 

わし、ネテロ。今回の件は悪かったの。ワザとじゃあないんじゃ、鉄拳は勘弁して。

さて、最終試験はどうじゃったかの?弟子を取る気の無いお主の事じゃから期待の新人(ニュービー)の面倒を見るのはちと退屈だったかもしれん。じゃがきっとお主にとって良い経験となったはずじゃ。

ま、お主の事じゃ。どうせそんな事関係なしに新しい念能力でも開発したんじゃないかの?

普段から引きこもってるんじゃ。偶に外に出たのなら寄り道回り道色々楽しむもんじゃよ。

 

「余計なお世話だ馬鹿野郎!」

 

 手紙をぐっしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に放り込んだ。

 

「ええ!?まだ途中だったじゃないですか!」

 

「知らん!読む気も失せたわ!」

 

 ()()()()()()()()料理道具が自分の能力に食われて激おこなんだよ俺は!

 あーもー!この苛々は次あのジジイに会った時にオーラ食ってやらねば気が済まん。

 

 

「……あ、毒切包丁無くなったんだった」

 

「……毒切包丁?」

 

「ああ……かなり長く使っていたからそろそろ……と思っていたんだがな……」

 

「……もしかしたら何とかなるかもしれません(そろそろ交換しようって事ですかね?)」

 

「何ィ?」

 

「今丁度この支部に『メタルハンター』の鋼裡さんが居るんですよ!彼女に頼めばきっと新しい包丁を打ってくれるはずです!なにせ彼女は珍しい鉱石集めが趣味で、その鉱石を使って刀を打つのが本業なんです!きっとグリードさんが気に入る包丁が見つかるはずですよ!」

 

「えぇ、あー、うん……そーねー……」

 

「(あれ!?思った以上に食いつきが悪い!?)」

 

「まあ、見るだけ見てみるかぁ……」

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

「グリードさん、彼女が『メタルハンター』の鋼裡さんです!鋼裡さん、こちら一ツ星(シングル)『グルメハンター』のグリードさんです!」

 

「おぅっす。俺はしがないグルメハンター(プロ)。よろしくね」

 

「はい、鋼裡です。よろし……」

 

「……んぁ?なんだよ俺の顔じっと見て」

 

 

 

 

 

 

「生まれた時から好きです!結婚を前提とした末永くお付き合いよろしくお願いいたします貴方様!!」

 

「(えぇー何この果てしなく面倒な予感しかしない人物ゥー!?)」

 




つーびーこんちぬ→


悪魔の料理長(デビルオーダー:グルメシェフ)』具現化・特質系能力
 自分自身と全く同じ念能力を持った肉体を具現化し、悪魔を憑依させる異質な念獣タイプ。
 姿は憑依させた悪魔によって変わり、対価もまた悪魔によって変わる。
 姿及び対価が不明だが、それ以外の制約も誓約も無い。


20世紀コソコソ小話

ビスケ「グリード、アンタなんで包丁とかの料理器具を具現化しないんだわさ。包丁だけならともかく、まな板や鍋なんか何処にしまってんのよ。邪魔だわさ」
グリード「そんなもん理由は一つだけだ」
ビスケ「器具がかさばって邪魔っていうデメリットを許容してまで料理道具を持ち運ぶ理由……!」ごくり


グリード「長年使った調理器具は食材の味が染み込んで滅茶苦茶美味いからだ!!!」
ビスケ「(こいつ調理器具まで食うつもりなのかよ……!)」
グリード「仮に具現化して出しっぱなしだったらともかく、一度しまうと味がリセットされちまうんだ。……まあ、味がリセットされないように制約組めばもしかしたらいけるかもしれないが、俺の勘が無理ぽげと叫んでるからやってないだけだ」
ビスケ「あ……そ……」
グリード「だから愛用の包丁を失ってマジショボンヌなんじゃぜ俺」
ビスケ「知ったこっちゃないわよ。訳の分かんない念能力つくってからに」
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