悪食グルメハンター   作:輝く羊モドキ

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細かい時系列なんて考えてないわ


毒を食らわば皿まで……食べられても困るな、ちゃんと食べられるように加工しないと。

 おっす。俺はしがないグルメハンター(プロ)。長期休暇中で、今は実家から職場に戻るところだ。

 久々に会った知人に料理を振る舞ったりしたが、私は元気ですってな。ついでに臨時収入も得てホクホク顔で職場に戻る……最中に寄った鍛冶屋で新しいおろし金を買う。今まで使ってた奴も悪くはなかったが、骨のように硬いモノをすりおろすのに丁度良い塩梅の粗さと鋭さの揃ったおろし金が欲しいと思っていた所だったのだ。まあ、鋭さは今あるおろし金に『周』を使えば良いんだが、粗さはそう上手くはいかない。ゾルディック家で発注しようにも、この手の道具は僅かな違いが直接味や食感に関わる。それなら最初っから俺が見て、気に入った物を買えば良い。故に普通の休日なら職場の近くの腕の良い鍛冶屋で探すんだが、せっかく遠出してるわけだし普段見つからないような品を探すのもまた一興。

 

 お、刀身に毒鉱石を使うことでカスっても毒で相手を仕留める剣か。洗っても毒が落ちない点は有用かな?だとしても普通に剣に毒を塗った方が良いだろうが。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 今の職場、ゾルディック家のある場所はパドキア共和国のククルーマウンテン。実家からそこまで真っ直ぐ向かっても丸1日は掛かる。しかも入国手続きもあって面倒……だったんだが、一ツ星になってからは顔パスで移動出来るようになった。ライセンスを持ってなくても一部の特権は有効らしい。流石に立ち入り制限の掛かってる地域に入るのは厳しいが。

 まあ、別にそんな制限がある場所になんか行く必要なんてないから困らない。同僚は「それでもプロハンターか?」とか言うが、ハンターだからって危険地帯に行かなければならないみたいな規則無いから。

 パドキア共和国の特別空港に降り立つ。人生遊んで暮らせる程度の資産を持つ俺はその資金にモノを言わせ、自分専用の飛行船と発着場を持っている。とはいってもここにあるのは俺だけでなく、コネのない成金が専用飛行船を纏めて置いておく共用の空港だ。ただ高い金出してるだけあって一般の空港より遥かに自由で待ち時間なんてモノもない。

 ……ちなみにゾルディック家の使用人、特に俺みたいな偉い(伊達に料理()ではないのである)使用人はゾルディック家の敷地内に飛行船を置くことが許可される事を発着場を買ってから教えられた。性格悪いよゴトーの野郎……。

 特別空港から出て少し歩いたところで、見知った顔を見つける。

 

「よう、変ジン!」

 

「お前に変人言われたかねえわ!」

 

 ターバンを巻いたクソ野郎ことジン=フリークス。通称『変ジン』(俺しか言わないが)

 凄い奴なのだが何故か同じハンター仲間からはバリクソ嫌われてる。でも一部のハンター達は変ジンを手離しに誉める。俺?好ましくは思うが嫌いな訳でも無ければ手離しに誉めるほど心酔もしちゃいない。凄い奴ではあるが。

 ちなみに出会いの初めはとあるオンラインゲームだ。その中で、違うプレイスタイルでレイドボスをソロ撃破する俺と変ジンは互いに興味を持ちあってオフ会で実際にあったのが最初。

 そしてなんやかんやあって時間が合えばオンラインゲームで一狩り行ったり冒険いったりとする程度に仲良くなった。まあ友達と言っても良い間柄だな。

 そして全く異なる話だが、俺の名前を冠するゲームの製作者(の一人)だ。記念と言う事で一度テストプレイをさせてもらったが、その一度で出禁扱いされた。ヒドス。

 

「おめーがゲーム内のあらゆる物を食っちまうからだろーが」

 

「全部『念』で出来てるとか食えと言ってるモノでは?」

 

「おめーの能力知ってたら最初っからテストプレイに呼ばねえよ!」

 

 それもそうか。

 俺の『悪食万歳(デビルキッチン)』は何でも『食材』として加工する能力だが、思わぬ副次効果としてあらゆる『念能力』も加工する事が可能だった。勿論食う事も出来る。そして何より問題なのが、強力な『念能力』は美味であるのだ。つまり何が言いたいかというと……

 

「次G・I(グリードアイランド)に行けたら完食する自信あるわ」

 

「だから食うなって言ってんだろ!完食ってなんだよ!?島全部食う気かおめー!」

 

「島全部は流石に無理だ。全部食いきるまでに何週間かかることやら」

 

「時間があれば食い切るみたいな言い方すんな!」

 

 とまあ、ゲームにとって存在がバグみたいな俺にテストプレイさせる事が間違ってたということで。

 

「……まあ、グリードがテストプレイに参加したお陰で致命的なバグの発生は抑えられたから助かりはしたがな」

 

「ほー、素直じゃないんだからーもー」

 

「うっせえ!」

 

 さて、変ジンをおちょくるのもこの辺にして。……ふむ、時間はまだ余裕があるな。よーし、メシ食いに行こうぜ。

 そうして移動した先はパドキア共和国の台所、セントラル市場。その片隅にある寂れた食堂に入る。昼時だと言うのに客一人と居ない。まあ今はそれで丁度いい。堂々と厨房に入り込み、一瞬で厨房服に着替え、全身消毒、完全に清潔になる。

 『身支度(インスタントアピアランス)』コック服に着替え、自身の身だしなみを整え、清潔、衛生的に問題ない状態に変化する能力。

 流星街出身(衛生観0)曰く『メモリの無駄』の能力だが、流石に流星街の外で血だらけ泥だらけのまま料理なんぞしようものなら料理人としての信頼は地に落ちるので控えている。流石にね。

 勝手に厨房を借りる訳だが、ここの店主とは知った顔。その上閑古鳥も鳴いてる状況故に二つ返事でOKを貰う(事後承諾)。

 

 さあ、まずは前菜。取り出したるは丸太。

 包丁を『周』で強化し薄く(0.1mm)スライス、樹皮は素手で剥いで微塵に潰す。特製のダシ醤油を沸騰させ投入。すぐに火を止め、軽く冷ましておく。

 冷ましてる間に針状に尖っている葉っぱを擂り潰し、酢、味噌、みりんを入れて練る様に混ぜる。

 隠し包丁を無数にいれ乾燥させた木の根を皿に敷き、その上に先程冷ましておいた丸太のスライス、練った葉っぱを乗せ、微塵に潰した樹皮を振りかけ、最後に特製の秘伝ドレッシングを全体にかけて完成。

 『スギノキサラダ』だ、召し上がれ。

 

「……相変わらず狂ってるな。食うけどよ」

 

「人間その気になりゃ何でも食えるもんだ。野菜も木も同じ植物だろ?」

 

「そこじゃねえよ。(沸騰させるためにオーラを『熱』に変化させたり、オーラに『味』を付けて調味料にしたり……『念』の使い方間違ってるだろ絶対)うん、うめえ」

 

「ドレッシングが決め手さ」

 

 変ジンがサラダを食べている間に生きている豚を1頭取り出す。指を豚の頭部に突き立て、仮死状態にした後、『周』をした包丁で一気に解体する。溢れ出た血は全て『ポケット』に仕舞い、肉、骨、内臓と分けた。

 内臓はまた今度別の料理に使うので『ポケット』に仕舞い、肉をフライパンに乗せ火を入れる。骨は薄くスライスしたり、細かく砕いたり、細く刻んだりして様々なバリエーションに富む食材へと変化させる。

 

「ほいほい、『豚骨チップフライ』『豚骨スティックフライ』のフライドボーン盛り合わせに『豚刺』『豚ユッケ』『ポークステーキ』!」

 

「骨はともかく、豚肉を生で食うのか?」

 

「毒料理ならともかく、それ以外の料理で食中毒は出さねーよ!良いから食ってみろ!」

 

「そーか。……ほぉー、フライドボーンっつーのはなかなか……豚刺もこのタレが絶妙だ。焼いてるヤツの方も良い、舌触りが違うな」

 

 ガツガツ、カリカリと豚の肉と骨を余すことなく食べる変ジン。骨は硬いが、適切な加工をすれば表面はザックリ、中はカリホロの食感がヤミツキになる美味さ。それにもう夢中になっている。肉も言わずもがなだ。

 うめえうめえと口に出しながらメシを食っているのを横目に、最後の一品を作る。

 シメのデザートはアイスクリーム。意外と簡単に作れるからみんなも作ろう!

 作り方は簡単。牛乳に卵黄と生クリームと砂糖をぶち込んで冷やしながら混ぜるだけ。分量は各々でめくれ。

 俺は面倒だから牛乳風に加工した薪に卵黄風に加工した石炭、生クリーム風に加工した樹液に砂糖風の味付けの野草を混ぜてオーラで冷やして作る。あっという間にキンキンに冷えたアイスクリーム(風)の完成。

 俺はさらにこだわるぜ。盛り付ける器はチョコレートで作り、アイスの上に振りかけるトッピングは贅沢にサファイアの原石を粉々に砕いて散りばめる。最後に特製のカラメルソースをかければ出来上がり。

 『大地アイスクリーム~暴食ソースを添えて~』おあがりよ!

 

「普通の人間が消化も出来ない物に更に消化できない物を乗せるんじゃねえよ!石炭ってお前、サファイアってお前……!」

 

「食ってみろ。話はそれからだ」

 

 もの凄い顔をしながら変ジンは大地アイスクリームを口に入れる。

 

「……意外とイケるな」

 

「だっしょ?」

 

 確かに普通の人間は鉱石類を消化することは出来ない。だが世の中には金を食う犬やボーキサイトを食う空母なんて物が居るんだ。絶対に消化出来ないってことは無い。そして俺は見つけた、何でも食ってエネルギーに変えちまう『暴食バクテリア』の存在を。

 人ってのは不思議なモノで、真の意味で『食えない物』の味を認識する事は出来ない。だが、『食えない物』が『食えるようになる』とその味を認識する事が出来るのだ。つまり、この『暴食バクテリア』を使ったソースをかけた鉱石アイスをジンは食い、『暴食バクテリア』ごと鉱石アイスを消化することでジンはサファイアの味を認識するに至ったのだ。

 正直この『暴食バクテリア』があれば、人はあらゆる物を普通に食べる事が出来る。俺が態々『加工』しなくても。だから俺はあまりこのバクテリアを使わない。

 

 ただしこのバクテリアを使った方が美味くなるならその限りでは無い!

 

 ちなみに某ストーンハンターの前でとある宝石を食ったら本気で殺されかけた。

 美味しかったです(^p^)

 

「……っふー。ごっそさん」

 

「うい、おそまつさん」

 

 変ジンは変人だが、食生活は至って普通だ。ゲテモノ食いでもないのに俺の料理を食ってくれる数少ない存在だからこれからも仲良くしていきたいと思っている。

 

 

 

 

 

「じゃあ飲食代5千万ジェニーな!」

 

「悪いな!今手持ちねーんだわ!」

 

「嘘つけお前絶対口座に兆単位で金有るゾ!」

 

 ただしソレ(友情)コレ()は別だがな!!

 

「金が払えんと言うのなら新しい包丁の試し切りに付き合って貰おうか!!」

 

「うおお!?おまっ!?急に刃物を振り回すな!」

 

「ふぅははは!どうだ腹が重かろう!あれだけ重量のある食材をパクつけばそれだけ体重も増えようぞ!」

 

「っぶね!?ってオーラを切り取る包丁って何だ!!お前そんな能力持ってなかっただろうが!!」

 

「これは毒切包丁!『切る』と『味付け』を同時にこなせる優れものだ!ついでにオーラも切れる!少し前に買った!」

 

「それ絶対オーラ切る方がメイン性能だろうが!」

 

 ギャアギャアと騒ぎながら店を出る。

 どうやら変ジンは今『かくれんぼ』の最中らしく、居場所がばれるような携帯端末は持っていないらしい。後で必ず支払う事を約束させて別れた。

 

 さて、俺の休暇もあと半日。さっさと職場に戻るとするかね。

 

 




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