悪食グルメハンター   作:輝く羊モドキ

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無味無臭の毒……水かな?
水にこだわる料理人が居るならそういうところにもこだわらないとマズ飯になるよほんと。


無味無臭の毒をそのまま料理にぶちこんだ奴、出てきなさい。もしくは出て行きなさい。

 俺が初めてゾルディック家の料理を作る前、当時の料理長から直々にゾルディック家の料理作法を教わった。日常的に料理に毒を入れるらしい。……まあ、それは人の好みだ。俺の料理に使う毒は『美味しい毒』を使うが、まあ『不味い毒』や『悪臭のある毒』を使うのは好みの差だろう。

 ……で、だ。問題はここから。ゾルディック一家が食べる料理に入れる毒は『無味無臭の毒』なんだと。

 

 いや、無味無臭の毒ってなんだよ……。

 

 俺は腐ってもグルメ。その俺から言わせてもらえば、どんな物にも味と匂いは存在する。たとえ水でも、水道水なら水道に使われる鉄分やカルキ臭、天然水でも土の匂いや近くの生物の匂い、酸素と水素を試験管の中で合成したような純水にだって匂いも味もあるというのに、『無味無臭の毒』なんてものが存在する訳がない。

 有ったとしても、それを料理にぶちこむ意味がわからない。

 んで、実際にその無味無臭の毒を使った料理ってのはどんなものか、実際に食べさせてもらったわけだが、まあ……うん。

 

 俺はこの料理を普段から食べているゾルディック一家はバカ舌か鈍感かのどっちかではないのかと疑問に思った。いや、純粋にね?

 

 料理自体は十分な二級品(一級品は美食ハンターが作る料理だとして)だと思うが、『無味無臭の毒』の使い方が酷すぎる。完成した料理にかけるとか……お前何?店で出てきたパスタに水でもトッピングするタイプ?

 もっとさぁ……もっとこう……あるじゃん!(ぶちギレ)

 俺は頭を抱えたね。ゾルディック家に嫁いだ同郷のキキョウ……様、の紹介でゾルディック家で働く事になった訳だが、正直帰りたい。人に料理を振る舞うのが好きだとは言え、流石に俺も客を選ぶ権利はあると思う。ましてや『グルメハンター(プロ)』を名乗っているのだから。

 

 俺は少し悩んだが、とりあえず一食だけゾルディック家に、あとこのふざけた料理を作った料理長に本物の料理というものを振る舞い、知らしめなければならないと決意した。料理というのは、食材を切って焼いて並べただけのモノではないのだ、と。

 もし、それでもわからない様だったら俺の腕を振るう場所はここではないということだ。例え殺されようと、ソコだけは変わらない、それは俺の、グルメハンターとしての変えちゃいけない線だから。

 

 

 

 

 

 なんか俺の前に(元)料理長の首が落ちてるんだが。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 そいつの顔を見たとき、殺せる、と思った。

 

 体つきはただの一般人と変わらず、顔も特徴的な何かがあるわけではない。身に纏うオーラだって、ごく普通で凡庸な念能力者だった。

 念の勝負に絶対はない、と親父は口を酸っぱくして言うが、オレは目の前のそいつを絶対に殺せるだろう。そう、思った。

 

「俺の名はグリード。グルメハンター(プロ)だ、よろしくね」

 

 このふざけた自己紹介もそうだ。なぜわざわざグルメハンターと言った後にかっこプロと言ったのか。

 何故、オレらの前にこのプロハンターが現れたのか。話は少し遡る。

 事の始まりは、母さんの癇癪だった。

 

「ああもう!こんなクソ不味い毒料理はうんざりよ!子供たちの舌がおかしくなるわ!!」

 

 料理長を呼べ!と母さんは騒ぐ。料理自体は普通の、オレ達にとっては、だが。普通の毒入り料理だ。オレは別にコレを美味いとも不味いとも思ったことはないが、母さんにとっては我慢ならないことらしい。

 父さんも、ゼノ爺さんもこの料理には別に不満なんて無いようだ。騒ぐ母さんを宥める。

 母さんが騒ぐ事は今に始まったことではない。キルが産まれて、その才能が発覚してからというもの特によく騒ぐようになった。それは主にキルの教育についてだが、今日の癇癪はどうにも少し違う気がする。

 曰く、『名家であるなら食にもプライドを』だとか、『子供たちが喜んで食べる料理にこそ教育が』だとか、そんな感じの事を言っていた。

 食事なんて、オレにとっては只の栄養補給だ。必要な分摂取出来ればそれでいい。

 

「キキョウ、落ち着け。不味いと言うが、料理を作ってるのは執事達の中でも最も優れた料理人だぞ?」

 

「それが何だと言うのです!こんなモノを作って満足するような者を料理人とは言わないわ!ああ、『デビルキッチン』の『死ぬほど美味い猛毒キノコソテー』が懐かしいわ……そうよ!それなら『本物の料理人』を連れてくればいいのよ!ゴトー!ゴトーは居るかしら!?」

 

「お呼びですか?」

 

「今すぐに『グリード=ダイモーン』を呼びなさい!」

 

「おい、キキョウ」

 

「止めないで!アナタも義父様も彼の料理を知れば同じ事を言うはずよ!」

 

「……やれやれ、そこまで言うのなら『本物の料理人』とやらの力を見てみようか」

 

 そうして呼ばれて来たのが目の前の冴えないプロハンターだ。給仕は執事に任せ、自身は俺達を前にふんぞり返る様に立っている。

 

「生憎だが俺にフルコースを求められても困る、料理の説明もな。俺は評論家じゃねえからあーだこーだウダウダ言うのはシュミじゃねえ。俺はただあんた等に『美味い』と言わせたいがために腕を振るった。『不味い』『口に合わない』大いに結構。そん時は俺の首でも食わせてやるよ」

 

 そう言ってドカッと椅子に座る。

 その姿を見て不愉快そうに眉を顰める執事達と料理長。

 ゴトーは小さい声で『使用人が主人にふざけた口利くんじゃねえよ』とあいつに耳打ちしたがそれすらも意に介さない。さあ食えと言わんばかりの態度で返す。

 

「さあ食え」

 

 訂正、さあ食えと言った態度で返した。

 控えてる執事達は運んできた料理のドームカバーを外し、作りたての料理が姿を見せ……っ!?

 

「『殺意マシマシ、死ぬほど美味いポイズンカレーライス』だ。召し上がれ」

 

 そこに在るのは間違いなくカレーライスだ。カレーライスと言うのを見たことが有るし、食べた事もある。だが、だがこれは……

 

 

 これは本当にオレの知るカレーライスなのか?

 

 

 このカレーライスを見た他の家族もまた同様に動揺していた。いや、母さんだけは嬉しそうにスプーンを持って食べ始める。

 

 一口、食べたら幸せそうに頬を押さえてため息を吐いた。

 

「ああ、この味……心臓を握られるような殺意のある毒味が懐かしいわ……グリード、貴方前より更に腕を上げたわね」

 

「伊達に料理人を名乗ってねえやい」

 

 ゼノ爺さんも、父さんも、ミルも、キルも、カルトも、全員が目の前の皿から発せられる香りに慄いている。そんな中ただ一人母さんだけがスプーンを動かしているのは酷く異常に感じられた。

 

「っ!」

 

 キルがスプーンを持ってカレーを頬張る。

 

「っっっうぅぅぅぅぅ……」

 

「キルっ……!」

 

 父さんが震えるキルの所に素早く移動し、背中を擦る。だが、キルはそんな事をお構いなしに顔を上げ、叫び出す。

 

「うめええええええ!!!」

 

 そうして叫んでからというものの、今までの遅れを取り返すかの様に素早くスプーンを動かし、カレーを食べ進めた。

 

「うめぇ!うめええ!!なんだこれ!めっちゃうめええ!!!」

 

 今まで見た事がない程にガツガツと食事にのめり込む姿は、まるで砂漠を丸一日歩き続け、水もなくなりもう死ぬかどうかの瀬戸際に追い詰められていた旅人がオアシスを見つけ、浴びる様に水を飲む姿を幻視した。

 そしてその姿に触発されたのか、ミルとカルトもスプーンを持ちカレーを食べ進め……

 

「ガッ……!」

 

「うっ……!」

 

 同時に口を押さえたかと思えば、

 

「辛っっっ!!!?」

 

「辛い……!!」

 

 異口同音に辛さに悶える。

 その姿を見てようやく再起動したかのように父さんとゼノ爺さんは動き始め、普段の姿からは想像もつかない様な速度でゆるゆるとスプーンを口に運び……普段の姿からは想像もつかない様な速度でパクパクとカレーを食べだした。

 これでカレーに手を付けていないのはオレだけになった。

 

 なんだ、コレは。

 

 なんなんだ、コレは。

 

 食事なんて、オレにとっては只の栄養補給だ。その筈だったんだ。

 

 

 

「よお坊っちゃん、まだ食わないのか?」

 

 

 気が付いたら、奴は俺の隣に立っていて、俺の耳元で囁いた。

 ありえない。例え何かに集中しながらだって、オレに近づく存在を見逃すわけが……!

 

 まさか、オレに近づく存在を見逃すほどに集中していたと言うのか?オレが……!?

 

 

「ほれ、美味そうだろぉ?ガマンは身体に毒だぜ?」

 

 

 そう言ってオレの代わりにスプーンを持ち、カレーを掬ってオレの口に近づける。

 

 

「カレーとご飯の黄金比は決まっている。一口食えばカレーの辛味が口内を暴れ回り、何度も何度も深く噛みしめていけばご飯の甘みが際立つ。一度食っちまえばそれまで。坊っちゃんは死ぬまでカレーの虜だ」

 

 オレの顔に触れるほどに近づいているというのに、一切振り払えない。魔性、とはこの事を言うのだろうか。

 コイツに何か言い返さないと、と口を開いた瞬間、ドロリと口腔内から何かが垂れる。

 

 

「ほうら、ヨダレを垂らすまでに求めてるんだ。素直になっちまいな」

 

 

 ありえない、ありえない。ありえない!オレが、オレが()()()()()()()()()()()()()()()!!

 オレの滑稽な姿を見て、ニタニタと嗤い始める(アクマ)が手を伸ばす。

 その魔性の指は俺の唇に触れ、優しく、緩やかに口を抉じ開ける。

 ドロリドロリと零れ出る液体が、奴の手に持つソレを本能で求めている何よりの証拠で。

 スプーンをゆっくりと、押し込むように口腔内に沈めていく。

 口を閉じ、スプーンを引き抜きながら顎を擽るような指の調べで強制的に口腔内のモノを細かく砕いてゆく。

 (アクマ)の言葉通り、口内を焼く様な辛味の暴力がオレを蹂躙し、その中にある僅かなご飯の甘みがゆっくりと、ゆっくりと広がっていく。ソレを、ソレをオレは……

 

 美味しいと、心の底から思えたんだ。

 

 再び(アクマ)はカレーを掬い、オレの口に近づける。そこで俺は気が付いた。カレーに含まれているこの香り。この香りはいつも嗅いでいる香りだ。

 香りに誘われるように口を開き、咀嚼し、飲み込む。いつも嗅いでいるこの香りは、最近料理によく使われている毒の香りだ。主張らしい主張をしない、だかそこに確かに存在しているこの匂いはまるで(アクマ)の様だ。

 スプーンが近づき、口を開いて咥えこむ。何の特筆する所の無い水の様な匂いは、何の特筆する所の無い(アクマ)の見た目の様だ。

 カレーが近づき、カレーを食べる。このカレーにはふんだんにその毒が入っている。だがカレーの香辛料はその毒の匂いや味を誤魔化さず、最上に高めていった。

 

 そうして、オレはこの(アクマ)に抱えられるようにされながらカレー全てを完食した。

 

 

 

 

 

 

 いや、なにされてんのオレ。

 

 

 

 

 

 冷静になった今、今までオレは何をしていた?

 

 ()()()()()()()!?

 

 まるでまともに食器も持てない赤ん坊の様に抱えられながら

 

 まるでまともに食事も出来ない幼児の様に抱えられながら!

 

 まるで無意識に乳飲み子が母乳を求める様に餌付けされながら!!

 

 

 ……幸いと言うか、他の家族は自身の前にあったカレーに全ての集中を持ってかれて、使用人共はいつの間にか配られていたカレーを食っては毒に悶絶している。だからオレの痴態は誰にも見られて……

 

「美味かったか坊っちゃん?ん?」

 

 コイツを殺さなければ(使命感)手に持った針を投げる。だがこの男はあろうことか針を歯で受け止め、そのまま噛み砕いた。

 

「ふぅん、中々良い金属使ってるじゃないか」

 

 バギ、バギ、と噛み砕き飲み込む姿に、今まで抱いたことの無い感情が胸を占めた。この感情は、オレがゼノ爺さんや父さんに抱く感情とも違う、母さんに抱く感情とも違う、ミルやキル、カルトに抱く感情とも違えば、『ナニカ』に抱く感情でも無い。複雑で、難解な感情だが、ただ一つ分かる事があった。

 

 

 オレは、この(アクマ)を殺せない、と。

 

 

「……成程。確かにキキョウの言う通りだった。コレが料理だと言うのなら、俺等が今まで食ってきたモノは料理では無い。『料理』と呼ぶのも烏滸がましい。素晴らしかったぞグリード」

 

「お褒めに与りまして恐悦至極にございます……と言えとでも?悪いが俺は伊達にグルメハンター名乗っちゃいねえ。一般人(パンピー)が作るメシと一括りにしないだけ良かったと思ってるぜ俺は」

 

「それは悪かったな、非礼を詫びよう。そして……お前はこの料理に『首』を賭けてたな」

 

「今作ったカレーだけじゃねえ。今まで作ってきた料理全てに、これから作る料理全てに、俺は常に『首』を賭けてる。必要なら俺の両手も、心臓だって賭けよう。『料理』こそ俺の生きる(ことわり)だから」

 

「……素晴らしい!見事な心意気だ。料理に『首』を賭けたのなら、こちらも『首』を出さなければならないな」

 

 そう言い、一条の風が吹く。そうして奴の目の前には料理長の首が落ちていた。

 

「今、料理長の席が空いた。そこに就いて、これからも我々に料理を振る舞ってもらいたい。当然、報酬は弾む」

 

「いいよ」

 

「助かる」

 

 そうしてあっさりと奴はゾルディック家の料理長の椅子に座った。

 それが奴、グリード=ダイモーンと俺達ゾルディック家のファーストコンタクトとなった。

 

 

 

 

 その後、ゼノ爺さんはトイレから出てこず、親父は自室で伏せ、ミルとカルトは悶絶しながらウロウロと徘徊し、母さんとキルはピンピンしていた。

 

「ま、あれだけ毒食えばそらそうよ。と言うか本気で一人くらい殺せるかと思ったが流石ゾルディック。伝説の殺し屋と呼ばれるだけあるな」

 

「お前はウチに何しに来たんだ」

 

(ハント)だ。俺は俺が求めるグルメの為に命を懸ける。とはいえ流石に致死量の毒を扱うのは怖いんでね、そんな折にキキョウ……様、から丁度いい依頼を受けたもんだから渡りに船とな。まあ美味いメシ食って死ぬんなら本望だろ?」

 

「勝手にオレ等の命も賭けないでくれない?まあ暗殺一家が言っても説得力は無いか」

 

「ん~?解毒薬をあーんで食わされてるキミが説得力を語るか~いお坊ちゃま~?」

 

「黙れ、身体が動けばお前如き幾らでも殺してやる」

 

「ひょっひょ、お生憎ですが俺が死ぬときは『旨いモノを食って死ぬ』と決めてるんで、誰かに殺される訳にゃいかんですねーお坊ちゃま?」

 

「そのお坊ちゃまって言うの止めろ」

 

「かしこまりましたお坊っちゃん」

 

「……やはり殺す」

 

 ゲラゲラと笑う声がククルーマウンテンに響いた。

 

 




イルミ兄やんにあーんってしたい人生だったお……


嘘だお……



オマケ


ハンター協会の一室


「ほぉ~、見事にウマそうじゃのぉ」
「だしょ~?一目見た時から絶対美味いって思ったもんコレ。とはいえ如何調理したもんかねー」

「ちょっとジジイ!人呼んどいて当人居ないってどういう事だわさ!」

「げ、ビスケ!スマン、ちょっと珍しい人物と出会っての」
「あん?珍しい人物って……ゲ、悪食」
「ゲ、とはなんだオメーこの見た目詐欺お姉さんが」
「うへへそういうとこだわさ気持ち悪いわねーもー」
「喜ぶんだかキモがるんだかどっちかにしてくれない?」

「で、アタシを差し置いて何してるんだわさ?」
「うーん……まあ、いいか。いや、ここにある宝石があるやん?」
「宝石!?見せなさい!」

「ふ、ふぁぁ……綺麗な青い輝き……こんな宝石見たことないわ……ちょ、ちょっと!コレ何処で見つけたの!?」
「どこって……あー、悪いな。ジンに内緒にしろって言われてるんだ」
「ジン!?なんでそこでジンが出るわさ!?」
「さぁて、なんでだろーねー?どしてだろうねー?」
「ぶん殴るわよ?」
「殴っても答えんよ。まあ、んなこたどうでもええんや。とにかく、コレをどうすれば最高に旨く料理出来るかを考えててな、折角だしストーンハンターのビスケお姉ちゃんの意見でも聞こうかと」
「……ん?ん?ゴメン、今なんて言った?」
「ビスケお姉ちゃんの意見でも聞こうかと」
「ん”っ、其処じゃないわさ!もっと前!前よ!ちょっと信じらんない言葉が飛び出たと思ったんだけど!?」
「殴っても答えんよ……?」
「其処じゃないわさ!もっと後!」
「折角だしストーンハンターの「アンタもうワザと言ってるでしょ!?『コレを美味く料理出来る方法を考えててな』って言ったアンタ!?」
「……そう言ったっけ?『コレをどうすれば最高に旨く料理出来るかを考えててな』って言った気がするんだが」
「細かい所はどうでも良いわさ!えっ!?食うの!?アンタ宝石食うの!?」
「オレに調理出来ないモノは無い!(断言)」
「馬鹿じゃないのアンタ!!なんで他に食べられる物があって態々宝石を食うのよ!?食費に幾らかける気!?」
「別に好き好んで食わねえよ。でもよく考えろ、仮に坑道に生き埋めにされ、食料が何もなくなった時。もし、そこらに落ちてるクズ宝石が食べられる方法があったのなら……きっと世界はもっと平和になるんだぁ」
「正気かアンタ!!?普通の人間は石なんて消化できないわさ!!」
「ここに普通の人間でも石を消化できる超すごいバクテリアがあります」
「わあすごい」

「じゃないでしょおおお!!?なんで!よりによって!宝石を!食べるのかって!聞いてんのよアタシは!!」
「食ったら美味いかもしれないじゃないか」
「食っても美味くないかもしれないでしょうが!!」
「美味いか美味くないか、その未知を探求するために俺はハンターになった」
「何良い事言ってる風にしてんのよ!美味いはずが無いでしょ!?」
「あそー、言ったな?言ったなビスケ?じゃあ賭けよう。この宝石が美味いか美味くないか」
「美味くない一択よそんなの!!」
「ほー。一択か、なら俺は美味いに賭けるぜ。掛け金は……全財産(オールイン)だ」
「……は?」
「聞こえなかったか?掛け金は全財産(オールイン)だ」
「……正気?」
「勿論。俺はあらゆる物を美味しく捌く事に命張ってるんだ。宝石も例外じゃない。絶対美味く仕上げてやる」
「……ふーん、いいわ、上等じゃない!乗ってあげるわよその賭け!」
「おーん?いいのかぁ~?もし負けて足りない分があったらぁ~カラダで支払ってもらうけど~?」
「ぐっ、…………いいわ!乗ってやろうじゃないのその挑発に!!」
「はいきた」


 ◇


「まあ公平にこのブループラネットを三分の一に分けて、全員で美味いか美味くないかの投票と行こう。置物と化している会長も審判よろしー」
「あ、ワシ存在を忘れられたかと思ったぞい」
「忘れる訳無いじゃん」
「ジジイあんた私が何しに来たと思ってんだわさ!」
「そうじゃよな?ワシ忘れられてないよな?」

「「(すっかり忘れてたわ)」」

「で?『ブループラネット』って言うのねこの宝石。中々洒落てる名前じゃないの」
「あ、やべ。名前言っちゃったよ。まあいっか、さて……話は最初に戻ってどう調理するべきかなぁ」
「そうじゃのー、とりあえず焼いてみるかの?」
「……本当に調理するつもりなのね」
「勿論、生でも美味いかもだけど」
「そのままの事『生』って言わないでほしいわさ」
「じゃあ刺身でも美味いかもだけど、揚げてみるのも一興かな。よし、とりあえず先に分割してみるか」

「……ちょっと待ちなさい、分割ってまさか……割る気!?その綺麗な真円の様な宝石を!?」
「今更すぎではないかの?」
「あーうっさいうっさい。とりあえずチャチャッと調理するけんねー」
「あーちょっと待ちなさい!待って!その宝石私が買い取るから!お願い待って待って待ってああああああああ!!!」


「マモレナカッタ……」
「とりあえず焼いてみた。暴食ソースをかけて召し上がれ」
「ふむ、石である事を除けば、見た目は悪くないのぅ」
「うーむ、見栄えは要改善……味はどうかな?あ、暴食ソースをかけても石は石だから噛むとき気を付けなはれよ」
「ふむ、とりあえず『凝』でええかの?ではいただきます」
「俺も、頂きます」
「うぅ……こうなりゃヤケよ……」


「ゥンまああ〜いっ!!」
「おほぉー、石故硬いが、噛めばまるでジューシーな完熟トマトの様な弾ける旨さ、火が通っていてまるで熱々のスープの様な味わい深さがあるぞ」
「……」
「うーむ、宝石がこんなに旨いとはのう。ワシ、石食主義者になりそう」
「うんうん、焼きは正解だったな。同じ火を通す調理でも煮込みだと水分が余計な気もする。揚げるのが最適解かな?見た目も石っぽさが無くなる」
「……なんで」
「では投票と行こうかの。『ブループラネット』が美味いか美味くないか。ワシは、まあ見ての通りじゃ」
「オレも当然美味い、だ」
「……なんで」
「……ビスケ?」


「何でこんなのが美味しいわさーっっ!!!」


「ほい三票」
「悪食アンタッ!どうしてくれんのよ!新しい宝石見るたびに『あ、美味しそう』とか思っちゃったら!!責任とれんの!?」
「うーん……じゃあ俺に宝石持って来てくれるんなら調理を……」
「そういう事言ってるんじゃないわさ!!!」
「えー?」


「あ、じゃあ責任とってビスケを娶る……ゴメン、やっぱ無しで」
「ふざけクサレこの野郎ッ!!!」
「どっひょぅ!?K・G・Y(きゅうな・ゴリラモードは・やめたまえよ)!!」
「うるさい!死ね!」
「死ねと言われて死ぬアホがどこニベアッ!?」

「ワシ、しーらねっと」


 賭けはうやむやになった。
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