悪食グルメハンター   作:輝く羊モドキ

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最近料理してなくなくな~い!?


ハンターって……なんだ!?(哲学)

 グッドモーニングエブリワン!俺はしがない試験官(プロ)だ。今日は俺の晴れ舞台「遅っそいわよこの寝坊助が!!!」げぶちっ!!?

 

「な、な、なにすんねんメンチテメェこいつ!?」

 

「この馬鹿!もうハンター試験始まってるわよ!だってのにアンタはグーグーすやすやと……馬鹿じゃないの!?」

 

「俺の出番二次試験!昨日変態に絡まれてお疲れモードなんだよ休ませろ!」

 

「知ったこっちゃないわよ!いいからさっさと起きろってんのよ!」

 

「うるせえ!俺先輩やぞ指図すんな!」

 

「残念だったわね、このハンター仕事(業界)先輩後輩で序列が決まる程優しくないのよ!悔しかったら二ツ星(ダブル)になってみなさいよ。ま、ライセンス売ったアンタが星なんて獲得しようもないでしょうけどね!」

 

 ギャッハッハッハ!とクッソ下品な笑い声をあげ、クッソ下品に舌を出して嗤うメンチ。お前ほんとに女か……?

 と、まあなんと一年足らずで星を獲得したこの女(仮)、生意気にも星を取得した途端(どうやって知ったか分からないが)ククル―マウンテンに突撃してきて俺を引っ張り出した挙句『一ツ星(シングル)美食ハンターの最高傑作よ食いなさい!』と投げつける勢いで料理を出してきた。いやもうあれは投げてたね。間違いない。

 ま、味はともかく調理速度がまだまだだから駄目出ししてやったら『へーん!ソコ(調理速度)しか勝ってないからって偉ぶらないでくれる!?』とクソ生意気にも調子乗っていたので俺の得意料理『死ぬほど美味い毒キノコソテー』を食わせて病院送りにしてやった。

 それ以降こうして隙あらば俺に突撃してくるさまはマジで放出系だなと思いました。

 

 喧しいので布団から這い出る、ああ今日も忌々しい一日の始まりだお……

 

「バッ!?ハっ!?あ、ちょ!?あ、アンタなによその恰好!!?」

 

「んぁ?」

 

 恰好?と言われても……

 自分の姿を見る。うん、いつも通りの寝間着姿だ。

 

「なんでアンタ全裸なのよ!?」

 

「パンツは履いてるだろ!人を変態みたいにいうな!」

 

「パン一姿を女に見せつけておいて変態じゃないって言うつもり!?」

 

「寝るときどんな姿してようが勝手だろうが!お前が寝室に侵入してきたことを棚にあげるな!」

 

「うるさい!いいからさっさと服着ろ馬鹿!」

 

「くそ、コレだから理論の通じない短気は……」

 

 仕方がないので普段着に着替える。

 ちなみに俺の普段着は基本的に白シャツにジーパン。たまに『料理人(りょりんちゅ)』と書かれた赤地に白文字のシャツを着ている。某金遣いの荒いハンターは『それが一ツ星の格好か!?』と突っ込むし、某口の悪いハンターは『主張の激しいモブキャラかな?』と突っ込む。余計なお世話だ。

 今日は白シャツ。

 

「ホラ!さっさと顔洗って歯磨いて朝食食べて試験会場に向かいなさい!試験官のアンタが居ないと二次試験始められないでしょうが!」

 

「うるせえな……お前は俺の嫁か」

 

「よめっ、ほっ!!!??」

 

「間違えた。お前は俺のオカンか」

 

「ぼぁっ、だ、誰がオカンよッ!!!私アンタより年下何だけど!?」

 

「自分より年下の母親がいる。自由ってのはそういう事だ」

 

「何意味わかんない事言ってんの!さっさと準備しなさい!!」

 

「朝から叫び続けて元気だねぇほんと」

 

「誰のせいだと思ってんのよ!!!」

 

 自分の性格を人のせいにしないでくれませんかね。

 あくびをかみ殺しながら顔洗って歯磨いて朝食(俺はルームサービス等に頼るグルメハンターではない)を食って試験会場に向かった。時間を見れば大体一次試験が終わる予定時間だった。やっべ遅れかけてるやん!

 

 

 ◇

 

 

 トガリ(裸毛皮コートの姿)の担当する一次試験の内容は、予定通りならば受験生にランダムに一つ配られたA・B・Cのパズルピースの奪い合いだった筈。

 ABC全てのピースを揃えると、それが次の二次試験へと向かう飛行船のチケットになる。故に一次試験は正確に言うと飛行船に乗るまでが試験なのだが、まあそこは重要ではない。

 単純に考えれば突破率三割三分の試験なのだが、そこは意地の悪いハンター試験。ABCのパズルピースは実際に揃えて合わせなければ分からない程度の違いしか無く、当然運が悪かったり下手を打てばダブリを抱える事になる。上手く交渉しようにも、三種類揃えなければ違いが分からない以上交渉は難航するだろう。三種類揃ってれば交渉する意味ないし。更にABCのパズルピースは本当に『ランダム』に渡される。それぞれのパズルピースの数が違うのだ。会場に到着した受験生の数次第だが、まあ大抵の場合偏りが生まれる。当然、合格できる最大人数は『最も少ないパズルピースの数』となる。まあ二割でも残れば良い方かな?

 

 受験生って大変そう(他人事)

 

 まあ腕っぷしの強いヤツなら適当に三種類揃うまで奪い続ければいいだけだし、揃えたら今度は飛行船チケットを守り続けるだけだ。簡単だねえ。

 

 

 

「的な事を考えながら試験会場に来たらトガリが現在進行形で半殺しにされかけてる件」

 

 どういうことだってばよ!?

 しかもよく見たら(よく見ないでも)トガリが戦っている相手が昨日の変態だった。

 いや、もはや戦いじゃない。うわぁこれは酷い……試験官の癖に受験生に一方的にやられてるってどういう気持ち?

 そうか、もしかしてあの変態はトガリ(試験官)なら100%二次試験行きの飛行船チケットを持っていると判断して試験官から奪うという発想を得たのかもしれない。

 その判断は正解だが普通実行する奴おりゅ?やっぱジャンキーの思考って分からないわ。(ブーメラン)

 正直トガリが死のうがどうってことは無いが、まだ一次試験の最中だってのに一次試験官が死んだらどうなるか。まあ二次試験官が臨時で一次試験の試験官になりますわな。

 嫌じゃめんどくさい!!!

 

「ってな訳でソイツが死ぬと俺が迷惑だ」

 

 顔が既にズタズタに引き裂かれているトガリを引っ張り、致命傷を避ける。(若干手遅れな感じがするけど)

 するとその瞬間ようやく俺に気が付いたのか表情が詰まらなさそうな顔から一転、ニチャリィ……と変わったうわきっも。

 

「あぁ……♥ビックリしたよ♠見事な『絶』だ♣」

 

「そうか?」

 

 別に『絶』が得意な訳ではないのだが……まあ、生まれつき『空気』に馴染むのは得意ではあったが。べっべつにボッチとかそういう意味じゃないんだからねっ!『食う気』満々なだけだったんだからねっ!

 

 

 はいっココ笑う所ですよー(投げやり)

 

 

 というか『念』を取得してない受験生も居るんだからむやみに『絶』とか言うな。

 

「キミが出てきたって事は……ボクと()り合う気になったって事かい?」

 

「お前みたいな戦闘狂(バトルジャンキー)に誰がマトモに付き合うか。昨日は逃げるだけだったが、今日は対抗手段を用意してあるぞ」

 

「へぇ……♥それは楽しみだなぁ♠」

 

 とか言いながらトランプを投げないでくれませんかねぇ!懐に常に忍ばせてある小さな包丁で『加工』し『食らう』。うーん味は甘ったるい。食感は水あめ、匂いは小豆。全体的に甘いね!

 

「くくく……♣やはり面白い技術だ……♦」

 

「ふざけた口を利けるのもそこまでだ。くらえ俺の対抗手段!『これ以上試験官に攻撃を加える事を禁ずる!破った場合即座に失格とする!』」

 

「……☠」

 

 必殺『試験官特権』!お前もハンター証を取りに来たんだろう?ならこの言葉は効く!効くはず!お願い効いて!

 

「……ふぅん♥仕方ないなぁ♣」

 

 よし効いた!これにて終了一件落着!

 

 

 よく考えたらトガリの奴重症だから、結局試験官交代は免れられなかったわ。かなすぃ。

 そんなわけで俺が代理で試験を続行することになったんだが、これ制限時間あとどれくらいよ……。

 

 

 ◇

 

 

 マーさんによると試験開始時には約九百人ほど受験者がいたが、現在飛行船に乗船してる受験者は百人程度だそうだ。9分の1……まあ普通だな!そしてよく見たら懐かしの新人殺しのオッサンが居た。お前まだ受験してたのかよぉ!?

 

「さて、俺はグルメハンターのグリードだ。二次試験の試験官でもある、よろしくね。二次試験会場まではだいたい3日程度掛かる。その間この飛行船内で適度に寛げば良い。個室じゃないが寝る場所はある、自由に使いな。飯は自分で済ましても良いが、食堂に来ればグルメハンターの料理を無料で振る舞ってやる。但し食堂が開いてる時間は限られてるから余裕をもって利用するようにな。あとは……あー、飛行船の中で暴れるような奴はまあ居ないとは思うが、要らん揉め事面倒事を起こした奴は俺が飛行船から叩き落としてやるから精々良い子に過ごすんだな」

 

 じゃ解散。とその場を後にする。やれやれ、百人近い受験者を篩にかけるのは面倒臭いなぁ……。

 さて、では余興の準備に取り掛かるか。

 二次試験に多大なる影響を与えかねない余興をなぁ!!

 

 

 といっても俺が今日やることなんて厨房の様子を確認するだけなんだが。

 

「グリードさんお疲れ様っす!!」

 

「「「お疲れ様です!!」」」

 

「うっすお疲れ。首尾は?」

 

「上々っす!」

 

 コイツらはハンター協会所属の事務員。まあ、事務員という名の雑用係みたいなモンだ。ハンター証を持つようなプロではないが、一般人には負けない程度の身体能力を持っている。なんでも心源流道場の一員らしいが、まあ心源流に属さないプロハンターにとっては便利屋程度の認識だ。

 んだもんで、こうして協会から数人程度借りて俺のレシピを叩き込んだ。半年ほど訓練させた甲斐あってか、覚えた料理なら準一級程度に振る舞う事が出来るようになった。

 ま、『誰でも出来るようになる簡単料理レシピ』を考案した俺のおかげだがな。

 

 ともかく、今のコイツらなら例え受験者全員がブハラ並に注文して食ったとしても何とでもなる位には手早くかつ美味に調理に取りかかれるだろう。

 ちなみに俺なら今季の試験応募者全員がブハラ並だったとしても余裕だがな!(ドヤドヤッ)

 

「食材」

 

「オッケーっす!」

 

「備品」

 

「問題なしっす!」

 

「体調」

 

「万全っす!」

 

「厨房機器」

 

「万端っす!」

 

「お前らの勝負の始まりは今から約二時間後。それまで『点』を怠るな。普段は料理を食べる専門でも、今のお前らは『料理人』だ。用意した食材全てを受験者共の腹の中にぶちこめ。お残しは許しまへんで」

 

「「「「合点承知!!」」」」

 

「俺からは以上。じゃ、イカよろしく~」

 

 後はイカ厨房長に任せ、適当にブラつく。

 さて、本格的に暇になった。

 

「じゃあボクと()ろう♥️」

 

「貴様何処から湧いて出た」

 

 まーた変態に絡まれたゾ。さっき失格になりかけてすぐコレだよ!

 

「早く()ろうよ♠ボクもうガマン出来なくなっちゃった♥」

 

「ヒェッ」

 

 コイツマジか、マジかコイツ、ズボンの一部分が張りつめておりまする。ボッしてる。

 

 

 うん。逃げなきゃ。

 

 

 即座に逃走を開始。だがオーラを放出して移動する方法は、安定しているとは言え飛んでいる飛行船の中でやる移動方法ではない。だから違う方法で加速する。

 足の裏のオーラを回転させるように移動させながら踏み込む。ローラースケートの如く両足が勝手に前進する。その動きに合わせて駆け出し、一歩踏む間にもシームレスに移動し続けることで若干速く逃走することが出来る。まあディティールの荒いゲームみたいに見えるがな。見た目なんてどうでもよろしい。

 

「また追いかけっこかい♣️」

 

 変態が紐状のオーラを飛ばし俺を捕獲しようとする、が俺は毒切包丁でそのオーラを断つ。

 

「あぁ♦️やっぱりソレ、厄介だねぇ♠️」

 

 今度は俺の進行方向に向けてオーラを複数飛ばしてくる。ガムとゴムの性質を持つ……だったか?触れると面倒そうだ。

 足裏のオーラの回転数を上げる。オーラを『隠』で隠されているかもしれないが、『凝』で見破るのも面倒だ。アイツは変化系、放出系は苦手だろう。そして昨日、気づかず紐を付けられながら飛んだ際の俺とアイツの物理的な距離から、大体2、30メートル程度は伸びていた。それが限界だとは思わないが、流石にアイツから離れたオーラまでそれほど伸びるとは思えない。

 更に回転数とトルクを上げる。この移動方法は最高速度に達するまでに時間がかかるがオーラの消費は少な目で済むのと……今回はこの特性に助けられたな。踏み出した足にガムオーラが付着し、俺の足を物理的に止める。

 更に回転数とトルクを上げる。ブヂリとガムオーラを瞬時に引きちぎり逃走再開。さらに加速して変態を置いてけぼりに……

 

「くっくっく♠キミは見ていて飽きないなぁ♥だけど追いかけっこには飽きてきたよ♣」

 

 マジかよ車以上の移動速度に追い縋るとかガチ変態やんけ!!?(ブーメラン)

 つーか狭い飛行船内でこれ以上の速度を出すのは無理!仕方ない……仕方ない!!使ってない貨物室に逃げ込む。使ってないからだだっ広い(とはいえ飛行船内だから限度はあるが)空間で変態と対峙する。

 

「追いかけっこはもう終了かい?♦」

 

「ああ終了だよこの変態ヤロー。受験番号49番、テメェは事前に警告したにもかかわらず、試験官に対して攻撃を仕掛けた。よってテメェは現時点をもって不合格とする」

 

「あぁ、それで?ボクを失格にして……ボクから逃げきれたつもりかい?♦」

 

「ほざきやがれ、それで解決するんだったらそもそも逃げてねえよ。此処で始末してやる」

 

「……くく、くくく♥ようやく()る気になってくれたのかい♠」

 

「あぁ、とはいえだ。受験者を直接殺すのはちと外聞が悪い。俺は試験官だからなぁ?だから……テメェのオーラ食い尽くして船から叩き落としてやる程度で済ましてやるよ!」

 

「さあ、ボクと殺し合い(ダンス)しよう(踊ろう)♥」

 

 

 ◇

 

 

 戦闘は苦手だ。苦手というより、出来ないと言った方がいいかもしれん。戦闘において俺が出来る事は『逃げる事』と『防ぐ事』だけだ。殴る蹴る等の『攻撃』は()()()()。俺の両手は何時だって美味い料理を作る為に有る。俺の両足は何時だって生き残る為に有る。生き残る為には、立ち向かう事より逃走する事の方が確実だからだ。故に俺には『攻撃』が出来ない。攻撃用の『発』も無い。

 

 だが、俺は『料理』する事が出来る。何時だって俺は俺のグルメの為に生きている。

 

 戦うことは知らない。だが料理なら知っている。そして、料理とは……世界の(ことわり)を己の(ことわり)(おしはか)る事である。

 俺は、俺の届く範囲なら自在に(おしはか)る。

 

 『円』ッ!!

 

 『円』は苦手だ。俺の『円』は円って書く癖に丸く広がらないのだから。

 俺を始点に前方5メートル程度に枝分かれしながら伸びる『円』。そこまでが俺の手の届く所。そこまでが俺の台所(キルゾーン)

 料理用の『発』の一。『円滑調理(デビルキッチン)』。俺の『円』が届く範囲の物を、オーラを使って『食材』へと加工する。『悪食万歳(デビルキッチン)』を、俺の手が直接届かない距離の物に届かせるために開発した。手元じゃなく、遠くの物体に『水見式』を施すだけだ。ただそれだけの事だが、遠くの物体の水分を増やし、不純物を作り、それを操作する。最後に味を調えて『食材』に加工するのは難しい。難しくて……不可能じゃなかった。

 俺の『円』に触れたトランプを切断する。既にあの変態に『円滑調理(デビルキッチン)』の性質は見抜かれている。だからどうした。近づく事はすなわち、即座に『食材』に加工されるということだ。そしてヤツは変化系……遠く離れた相手に攻撃する手段なんて限られている上に放出系と相性が悪い。生半可な念弾なら俺に届かない、届いても俺に効かない。

 

 足の裏にオーラを込め、それを回転させることで踏み込みながら不規則な移動を可能としている。俺はこの技術を『回』と名付けた。飛んでくるトランプを刻みながら、オーラを加工しながら、受験番号49番を追い詰める。強化系の『硬』だろうが、具現化系の鎧だろうが、それがオーラ製ならこの毒切包丁は斬ることが出来る。

 

 空気を裂きながら、俺の真後ろからトランプが飛んで来た。テメェいつの間に。

 流石に真後ろまで俺の手は届かない。振り向きながらトランプを加工する。受験番号49番から僅かに目を離した瞬間、今度は四方八方からトランプが飛んでくる。速い!

 カードの嵐、そのど真ん中に放り込まれた俺は届いた範囲全てのトランプを即座に加工し続ける。単純な物量だけなら俺の調理速度は負けてない。

 

 20枚、30枚と加工し続け、カードの嵐を無傷で生き残り続ける。

 

 50枚、60枚と切りながら、嵐を回避し続ける。

 

 100枚、200枚と焼きながら、舞うように包丁を振るう。

 

 そうして枝分かれさせまくった『円』を掻い潜られ、気が付いた時にはヤツの間合いに居た。

 ヤバイと思ったが、俺の両手は飛んで来たトランプを斬る動作に入っていた。それを止め、ヤツを迎撃すれば飛んでくるトランプにやられる。かといってヤツを無視すれば、変化系のヤツが比較的得意な強化系の『周』を施されたトランプに斬られる。俺は特質系。普通の奴等とは違う事情を抱えているとはいえ、強化系の真っ向勝負は分が悪い。どうする。今、俺の意識だけは光速を迎えている。

 

 

 ええい、南無三!!

 

 

 トランプを斬る手を止め、ヤツを迎撃する。両手に持つ包丁に40:40でオーラを割り振り、残り20のオーラで飛んでくるトランプを防ぐ。

 右手に持つ包丁はヤツが直接持つトランプを叩き、左手に持つ毒切包丁に強化系のオーラを施し、近づいてきた奴のオーラをふんだんに切り取った。

 そうして俺の首に飛んで来たトランプは、首に深く刺さる直前に首に回したオーラで『回』をすることでギリギリ致命傷を避け、弾いた。

 

 ヤツは自身のオーラがごっそり持ってかれた事に気付き、僅かに離れる。俺は焼き鳥調理用の鉄串を投げつけながら同じように離れ、一旦仕切り直しとする。

 思った以上に消耗させられた。しんどい。

 ヤツは肉体的な疲労はそうでもなさそうだが、オーラをごっそり奪われ、僅かだが顔色が良くない……ようにも見えるが、薄ら笑いを浮かべている……ようにも見える。わからん。

 

「驚いたな……♥その包丁、『念』を斬るだけじゃなくオーラそのものを刈り取る事も出来るのか♠」

 

「お気に入りの業物だぜ」

 

「ああ……やはり『念』は奥が深い……♥」

 

 投げつけた焼き鳥用の鉄串を掴みながら、事も無げにそう言った。切り取ったオーラを食いながら、裂けた首を軽く抑える。やっぱ強いなアイツ……変態ジャンキーなだけあるわ。

 遠距離戦より接近戦が得意そうなヤツと、接近したヤツ食べちゃうマンな俺とで相性は良い筈なのに、未だにヤツに傷一つ負わせられない。それどころか俺が傷を負わされる始末。

 

 状況は悪い。ヤツのオーラを食って回復こそしても俺が強化される訳じゃない。そして既にこの場はヤツが仕掛けた罠でいっぱいになっていた。

 軽く目を凝らしたら、俺程度の『凝』で見破れる『隠』で辺りに撒かれているオーラが見えた……が、それは本命では無い。鼻に『凝』をすれば、見えた数以上のオーラの『匂い』を感じられた。つまり先程見えた『隠』はミスディレクション。本命は強力に隠された『隠』の方……と見せかけて、実はそれも罠。狙いはただ、俺の意識を分割させる事だろう。一つ一つの注意が薄まれば、必然俺に攻撃を当てるチャンスは増える。

 今の所判明しているヤツの『念』は二つ。一つは見せ札である『伸び縮みするオーラ』。バンジーガムとか言ってたか?攻撃の際に相手に付けたり、オーラを飛ばして付けたりと応用力は高そう。そしてもう一つは『床、壁、天井に張り付けられているオーラ』。感じた『匂い』から、『伸び縮みするオーラ』とは別の『念能力』っぽい。触れたら発動するタイプのトラップなのか、設置型の砲台として使うのか、まだ判別はつかないがとにかく意識を割かれる。

 全く……良く出来た能力じゃないか。とにかく色んなヤツと戦いたいっていう意志が見て取れるぜまったく!

 

 右手の包丁に操作系と放出系のオーラを込め、見えていた方の『隠』のオーラに向かって飛ばす。スパッとオーラを斬ると、ヒラヒラと布状の何かが飛んで行った。

 

「おや、バレちゃった♣」

 

 まるで気にもしてなさそうな表情のままそう抜かす変態。布状の何かは、等しく布であった。だがその表面はこの貨物室の床そのもの。大方、布の見た目を別の何かそっくりに変化させるって所か?それだけなら大した能力でもないが、もし布の下に武器のトランプを隠していたら、突然床から飛び出てくる殺人トランプの出来上がり。そうでなくても、布の下に滑りやすい下敷きでも入れてたら、気が付かず踏んだら滑って転び、大きな隙を晒してしまう。ましてや俺の『回』での移動はそれこそ絶妙なバランス感覚の基で成り立ってんだ。滑ったらヤバイ。よく見てるぜまったく!

 と言うかコイツトランプやら布やら幾つ持ってるんだ!

 

「というか、だ。お前みたいなヤツがなんでハンター証なんて欲しがるんだよ」

 

「色々便利だからね♠️人を殺しても免責になることも多いし……♥️」

 

「とか言ってお前、明らかに何人も殺してきてるだろ」

 

「くくく……♣️ボクは殺しても大丈夫な場所でしか殺してないよ♦️天空闘技場とかね♥️そういうキミこそ、何人も殺してきてるだろ?♠️グルメハンター……色々ヤッてるようじゃないか♥️」

 

「俺は自分で食う分しか仕留めてないから良いんだよ」

 

「自分で食べる……ねぇ?♥️じゃあボクもキミに食べられるのかな?♦️」

 

「『受験者は食うな』って会長から直々に言われてンだよ。お前は不合格者でも受験者に違いない。だからお前は殺さないし食わない。ま、オーラは別だがな」

 

 ヤツのオーラは不味い。だが……すでに下ごしらえは終わっている。不味いモノ、食べられないモノを美味く仕上げるのは俺の領分だ。

 まずは小麦粉……の代わりに粉末ルビーをオーラに乗せ、ヤツに向けて撒く。粉末ルビーはヤツの粘着質なオーラにくっつき、キラキラと光出す。

 

「コレは……♦️」

 

 粉を付けたらお次は卵液……がわりに暴食バクテリア液に浸ける。それには一瞬……ヤツの足を止めるため接近する。

 食って回復したオーラを使い、軽く跳躍してから放出。反動で接近し、包丁が届く位置に向かう。

 

「(近づいてきた?♠️)何のつもりか分からないけど、させると思う?♣️」

 

「させざるを得なくなるんだよなぁ!」

 

 地面にへばりついてたゴム状のオーラを包丁で剥がし、ヤツに向けて飛ばして返す。

 オーラ操作は操作系の十八番。他人のオーラでもそこは変わらない。飛ばしたオーラは元々の主人の元に戻り、俺の包丁と()()()()

 

伸縮自在の愛(バンジーガム)強制発動』

 

 グン!とオーラが縮む勢いを使い、更に加速する。刹那の間に包丁が届く距離に入る。だがその距離は相手の攻撃が届く距離でもあった。

 固められた拳が俺の腹に向かって振るわれる。その攻撃を……あえて受ける!

 

「ッ”!!」

 

 鳩尾に向かって振るわれた拳は、俺の両腕の防御の隙間を縫うようにして正確に鳩尾に叩き込まれた。70:30程度に集中していたガードの上からでも容赦なく内臓を滅茶苦茶にする威力は近接戦闘においてやはり特質系のオーラは厳しい。

 だが、その代償にヤツのオーラに暴食バクテリア液を浸ける事に成功した。防御の際に液の入った容器を破壊し、攻撃を受けつつカウンターとして液をヤツのオーラにかけた。さあ、次だ。

 ジャリジャリと粗めに砕いたヒノキのチップをまぶす。平行して『ポケット』から大量の植物油を取り出し高温にしていく。

 準備は、完了。仕上げ時間は1分。

 

「精々死ぬなよ」

 

「これは……♦」

 

 200℃近くまで上昇した高温油を操作し、ヤツごとオーラを一気に揚げる。ジュワアアアアア!と弾ける音が非常に心地よい。

 ヤツは激しく暴れる。これが生きたままの調理を難しくするポイントだが既に慣れた物。火傷による窒息死を避けるために高温で一気に、躊躇いなく。

 1分。高温の油を『ポケット』に収納し、完成した『衣』をヤツから全て剥ぎ取る。高熱に晒された受験番号49番の火傷の重症化を防ぐため、先程開けた貨物室の扉から叩き出す。

 

 

 貨物室と、飛行船の外を隔てていた扉から……な。

 

 

「受験番号49番!お前は今年度の試験は不合格だがテメェは十分ハンターの素質有りだ!また来年受けに来な!生きてたらの話だがな!!」

 

 ヤツの顕在オーラ全て残らずカラッと揚げたから……まあ五体満足に着地出来るとは思わんがな!下が海だしまあ許せ!

 それより揚げた『変化系オーラコロッケ』だ。元々クッソ甘ったるかったオーラだが、粉末ルビーと暴食バクテリア液、そして揚げ油によって高温で仕立てた事により熱々ジューシーなステーキの様に食べごたえのある一品に仕上がった。一口齧れば、熱々サクサクの衣に包まれた甘いオーラが口いっぱいに広がる。ゆっくりと噛み続けると、粉末ルビーと暴食バクテリアの程よい塩気が甘いだけじゃない、飽きの来させない作りだ。美味い美味い。

 一食のおかずとして食べるというより、デザート……或いはおやつとして十分なポテンシャルを持っている。屋台や出店の一品料理としてなら非常に人気の出そうな物だ。

 

「はー。疲れた身体に甘い物が染み渡りますわぁ~っとぉ」

 

 食べ終えた頃には、首の傷や強かに打たれた内臓の痛みは無くなっていた。

 

 

 

 

 

「アレが……一ツ星(シングル)ハンター……♥」

 

 空を落ちながらヒソカは呟く。

 

「あぁ……もったいなかったなぁ……♦もっと早く本気を出せば良かった……♠」

 

 感じるのは後悔と……興奮。

 

「次は全力で、命をかけて対決(デート)をしよう♥『グリード=ダイモーン』♣」

 

 そして新しい玩具(オモチャ)が増えた事に悦楽を感じていた。

 

 笑いながらヒソカは海に落ちていった。

 

 

 ヒソカ(受験番号49番)二次試験失格(リタイア)

 

 




戦闘描写が……書けませんんんんんん!!
仕方ないね(諦念)


 実はグリード、『グルメレシピ』だけでなく『最も美味しく自分を食べる方法』という名の本を書き、世界に知られています。食方面だけでなく物書きでもあります。アホだけど。
『最も美味しく自分を食べる方法』というタイトルですが中身は啓蒙書の類いで、ハンター目線から見た死生観、自分の死の迎え方が書いてあります。
自身の終活に悩む年寄りや、日々を無為に過ごす若者、自身の『今』に悩む中年等にウケ、世界中で出版されています。
ただ、内容がかなり過激であり発売禁止となっている国も存在するほど。
ハンター十ヶ条に添っていえば、仮にグリードが上官職に就き後進育成をし、そいつが星一つ与えられた場合即座に三ツ星ハンターに成れる資格を有してます。
暴食バクテリアの無害化(厄災クラスの鎮静)や食料問題の解決、問題作とはいえ有名な啓蒙書の執筆等で様々な功績を残していますのでね!
メンチは今のうちにふんぞり返っているといいゾ♥️
(弟子が出来るとは言っていない)
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