「ずいぶん遅かったが何してたんだ?」
指揮官執務室。
部屋の奥のデスクに座るジョージが書類を見ながらそう聞いてきた。
隣に立って書類の山を整理している白いシルエットの少女……トカレフがこちらを一瞥した。
「イオンのやつがイラン機能の説明を延々としてた」
「ああ……悪いな、あの子は出向って形で俺の正式な部下じゃないからあまり強く言えなくてな」
「別に良い。強くなれるなら我慢するさ」
「悪いな……さて、座ってくれ」
手にしていた書類を纏めてトカレフに渡した後、ジョージは立ち上がって眼の前の接客用スペースに座る。
俺もそれに習って向かい側のソファに座る。
「手短に……事実だけ伝える」
「ああ」
「S-13が壊滅した」
「………………は?」
ばきっ、と手にしていたクリップボードが砕けた。
「先週、定時連絡が途絶えて偵察を行ったところ……既に市街地もろとも廃墟になっていた」
「なっ……え……??」
「……住民の半分が犠牲になってる」
「………………」
言葉が出なかった。
壊滅だって?
嘘だろ……?
「リリスは……皆は」
「目下捜索中。お前には警戒と……残党狩りをやってもらいたい」
「頼まれなくたってやるさ」
鉄血……恐らくアルケミストの野郎だろ。
最近動きを見せなかったと思えばこれか。
「ブッ殺してやる」
「落ち着け。現地の調査、人命救助が先だ」
「………………分かってるよ」
俺とジョージの間にある机の上に、握りつぶしたボードを放る。
ジョージがため息を吐きながら続けた。
「……正直、もっと取り乱すかと思ってたわ」
「今すぐにでも飛び出して向かいたい気持ちはある。生憎俺一人じゃ何にも出来ない事は重々承知してる」
「そうか……明日には現地に行ってもらう。今夜出発だから少し寝とけ」
「寝れると思うか?」
「誰か寄越そうか?」
「何でだよ……」
「案外、人肌があった方が落ち着けるかもな」
「柄じゃない」
「それは外の二人に聴いたらどうだ」
「………………居んのかよ」
「取り敢えず、まずは寝とけ。起きたら出発だ」
話は、終わりと言わんばかりにジョージは立ち上がった。
俺も座ってる訳にもいかないので早々に部屋を後にした。
「パトリック」「兄さん」
指揮官室を出た瞬間に二人から声をかけられる。
「あー……ただいま?ふたりとも」
二人……サイガとベネリだ。
暫く姿を見ていなかったので何かあったのだろうとは思っていたがなるほど、先に招集されていたのか。
「おかえり。取り敢えず寝る?」
「そのつもり」
「そ、じゃあ行きましょ」
……サイガが自然な動作で腕を絡ませてきた。
勿論振り払った。
「何?」
「何じゃねーよこっちのセリフだ」
「一緒に寝ましょう」
「嫌だわ!」
「に、兄さん……!私も……!」
「ベネリもやめろって。しかもここ人通り多いから。ほら見られてるから」
さっきから指揮官室の前を往来する人……ほぼ人形達に微笑ましそうに見られていた。
くそっ、よく見たらこいつら全員指輪付きじゃねーか。
つまり全員俺の義姉じゃん。
「だーもう!寝る!」
「あ、待ちなさい!」
「廊下を走ってはいけません!」
三十六計逃げるに如かず。
全速力で俺の部屋まで逃げたのだった。
「はー……どうしよ」
部屋のドアを閉めて、独り言ちる。
「リリス……」