水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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新年あけましておめでとうございます。
1月も半ばは過ぎていますが新年初投稿です。

そろそろ完結目指していこうかと思います。
今年もよろしくお願いします。


100話

 

風が吹いていた。

つい最近まで過ごしていた場所は、いつからこんなに風通しが良くなったのだろうか。

 

「……パトリック」

 

後ろから声をかけられる。

俺は振り返らず、呟いた。

 

「嘘だろ……」

 

つい先日まで、人々が生活していて……活気のあった街が、廃墟と死体の山となっていた。

 

「……ジョージ指揮官からの命令、忘れてない?」

 

ぐい、と肩を引き寄せられ振り向かされた。

真剣な表情のサイガがじっと見ている。

 

「……分かってる」

「パトリック。アンタは人形じゃなくて、人間。辛かったら言って……絶対」

「………………」

 

俺はそれに答えず、背中に懸架されているトムボーイのグリップを握る。

 

「……うるせぇ」

 

2人で、廃墟を歩く。

過去の喧騒が嘘のように静かだ。

 

油断無く四周を警戒する。

 

「………………」

「………………」

 

気配はない。

反応もない。

人も、動物も、鉄血の人形も。

 

ここには、何も居ない。

 

「………………グリフィンの基地まで、進むぞ」

「待って、連絡するから」

 

サイガが通信装置でS-12基地へ報告を入れる。

俺はその間瓦礫に腰掛けた。

 

足元にボロボロの花が転がっていた。

ここは……前に花束を買った店の近くだろうか。

 

「パトリック」

「……おう」

「前進許可がでたわ。行きましょう」

「……おう」

「ベネリや、他の子も別の方向から基地に前進するみたいよ。時間も決まってるから遅れないようにしないと」

「……ああ」

 

ゆっくりと立ち上がる。

なぜだか、心のなかでずっと警告が鳴らされている気がする。

 

「行こう」

「ええ」

 

間違いなく良くないことが起きる。

でも、行かなきゃならない。

 

リリスと、ちゃんと話し合いたい。

 

「大丈夫よ……みんな、無事だって」

「そう、願ってる……」

 

サイガが俺の手を握ってくる。

 

「何だよ……」

「……ワタシじゃ、アンタを安心させてあげられない?」

「なん、別にそんな事ねぇよ」

「パトリック。待って」

「なっ……ちょ、オイ!?」

 

サイガに手を引かれて、無理やり振り向かされた。

そして……コイツが、俺に飛びついてきた。

 

ぎゅっと、俺の身体を抱きしめた。

色々と押し付けられてドギマギする。

 

「な、何すんだ……!」

「落ち着いた……?」

「ンナ訳あるか……!離れろ……!」

 

こいつら、身体の中は機械なのになんでこんな柔らかいんだよ……!

 

「ちょっと!」

 

俺の馬力だとそれなりに本気の人形のパワーとも張り合えるので、無理やりサイガを引き剥がすことに成功した。

 

「何だよ急に!」

「変ね……お義母さまがこうしたら落ち着くって……」

「あ?誰だって?」

「お義母さま」

「誰の!?」

「アンタの」

「あ?俺?お前の母親じゃねぇだろ」

「いずれそうなるわ」

「は?何で」

「聞きたい?」

「別に」

「何よ、聞いてくれたって良いんじゃない?」

「興味ないね」

「ウソ」

「ネェって!!」

 

そのままお互いギャーギャー騒ぎ出し、たまたま近くに居たトカレフに発見された正座させられて叱られたのだった。

 

 




思いつかなかったので暫くサブタイトルは無しで行きます。

牛歩ですが見守ってくれると助かります。
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