水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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惰性で続けてハーメルン開くたびにこれを見て、やっぱ終わらせなきゃ駄目かなって気になって続きを書く日々。
更新してもこの低評価ばかり付与されるのでモチベーションも続かない……。


102話

 

息苦しい。

身体がこの先に進むなと警告している様だ。

 

しかし、この通路を引き返すかと聞かれればそれもそれでどうなのだろう。

ずっと感じている胸騒ぎ。

正体が気になりもすればいやいやそんな事はと誤魔化す心もある。

 

何より、消えたリリスやこの基地に居た人形たち、スタッフ達はどうなったのか。

 

気がかりな事が多過ぎる。

 

「………………」

 

後ろから着いてきているサイガも無言だ。

下手に喋られるより静かにしてくれている。

 

そして、狭く短い地下通路が終わりを迎える。

ひときわ頑丈そうに見える扉。

そこそこ厚みもありそうだが……。

 

「鍵が掛かってない……」

 

施錠されていない。

そもそも隠された場所で……何かを閉じ込める目的ではない?

 

「……入るの?」

「ここまで来たしな……」

 

重いドアを開いて、中を確認する。

仄かに明るく……様々なコンソールやよくわからない機械が並んでいた。

 

「誰も居なさそうだ」

「行きましょう」

 

背中のトムボーイに手を掛けながら部屋の中に入る。

背後をサイガが警戒してくれている中、辺りを見回すと……。

 

「………………っ!?」

「どうしたの……!?」

 

思わず、息を呑んだ。

流石に見たこともない代物だがこれ以外に思い当たるものは無い。

 

「これ……脳、か……?」

 

中央に置かれていた円筒状のガラス。

その中は薬液で満たされていて……人の脳が浮かんでいた。

 

「なにこれ……気味が悪い……」

 

サイガが引き攣った顔で後退る。

俺も同感だった。

 

人形とは違う生々しさを感じる。

 

「何だよこれ……」

 

思わず呟く。

あまりにも理解出来ない光景。

 

……いや、理解したくないのかも知れない。

 

「リリスは何でこんなものを隠してたんだ……?」

「リリス指揮官がとんだ食わせ物だった……そういう事かしら」

「いや……アイツは……」

 

アイツは?

 

……アイツは本当に俺の知っているリリスか……?

 

「ちょ……パトリック……!?」

「あん……?何だ……よ……?」

 

……おかしい。

何も俺は触ってない。

 

なのにモニターの電源は点き文字がどんどん流れていっている。

 

「何した!?」

「何もしてないわよ!」

「は?勝手に……?!んなまさか……」

 

サイガと言い合っている間にも、どんどんと部屋中のあらゆる装置に電源が入っていく。

 

「逃げる……!?」

 

サイガの提案に乗ろうとした瞬間。

様々なモニター、ボタン、ランプ光るもの全てが赤く発光した。

 

「自爆か……!?」

 

……しかし、何も起こらない。

 

ただ、

 

「いえ……!パトリック、これ……!」

「文字……?……【待って】?」

 

発光する全ての端末が不揃いに並び、辛うじて文字となって読めた。

 

「な、何だよお前……!」

 

 

 

 

【お願い】

 

【あの子を助けて】

 

【りっくん】

 

 

 

 

「え……?」

 

脳が理解を拒む。

 

まさか。

 

まさか、まさか、まさか。

 

あり得ない。

あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない。

 

そんなはずはない。

だって……。

 

「リリスは、ここの指揮官やって……ついこの前まで……面と向かって喋ってた……」

「パトリック、落ち着いて!」

「嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ……!」

「パトリック!」

 

肩を掴んだサイガを突き飛ばして、俺は部屋を出ようとした。

 

しかし、

 

「……見ちまったか」

「あ……兄貴……?」

 

部屋の外に、見知った顔が苦虫を噛み潰した様な顔をして立っていた。

 

「お、おい……!何だよ、これ……!」

「……パトリック。気を確かに持て」

「説明してくれ!何なんだよ!!」

「……これは、」

 

 

 

 

「本物の……リリス·エールシュタイアーの脳だ」

 

 

 

 

「は……?はは……は……?」

 

その時、俺は何を考えていたのか……今となっては分からなかった。

背中に懸架されたトムボーイの柄を反射的に握り、サイガに取り抑えられた。

 

「待ちなさい!やめて!」

「離せ!!嘘だ!アンタも俺を騙してる!!」

「落ち着きなさい!」

「お前も!お前も……!俺を騙して、」

「いい加減にしなさいッ!!」

 

サイガを振り払うが、頬に拳がめり込む。

 

「ご、はっ……」

 

だが、止まれない。

 

「じゃあ、俺は……!何のために戦ってきた……!何を守るために戦ったんだ……!何の……!!」

 

唐突に、口が塞がれた。

手ではない。

目の前にいっぱいに広がるのは、サイガの顔。

手を抑えるように正面から抱きしめられ、唇を奪われていた。

 

「な……ん……?」

「お願い……落ち着いて……」

 

胸元で、サイガが啜り泣いている。

 

俺は、どうすることも出来ずにただ、呆然と立っていることしか出来なかった。

 

 

 

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