水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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103話

 

どれくらいの時間が経っただろうか。

 

静観していた兄貴が、口を開いた。

 

「状況を説明したい。大丈夫か?」

「……大丈夫に見えるか?」

「思ってないさ。ただ……ここに長く留まっているのは危険だ。一度臨時指揮所に戻ろう」

「ああ……」

 

頭の中がぐちゃぐちゃだ。

どうしてこうなっているのかまるでわからない。

 

(……俺は……ずっと騙されてたってのか……?)

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

――臨時指揮所。

 

廃墟と化したS-13市街地のそばにひっそりと設置されていた。

 

「さて、パトリック。落ち着いたか」

「……全然」

「だろうな」

 

仮設指揮官室に俺と兄貴だけが居る。

さっきスプリングフィールドがコーヒーを淹れに来た以外、誰とも会っていない。

そして、そのコーヒーは一口も口を付けられなかった。

 

「S-13は何者かに襲撃され……壊滅。生存者もかなり少ない。まるでそこにあった存在すら消すかの如くな」

「何者か、って?」

「……おそらく、正規軍だ」

「はぁ!?何でだよ!あんた達は正規軍の依頼で鉄血の人形と戦ってたんだろ!軍が襲ってくるなんて意味分かんねぇよ!!」

「反撃に遭って落としたんだろう。コイツが落ちていた」

「R-301……」

 

見せられた写真には、正規軍に居た頃見覚えのあったカービンが映っていた。

 

「鉄血の装備ではない、そして」

 

次に並べられた写真。

壁や警備人形の損傷箇所に光学兵器による焦げ跡が残されていた。

 

「グリフィンの戦術人形が成す術も無く蹂躙されている。これは個々の判断能力よりも戦術指揮ありきの統率された戦力がぶつけられている……これが判断基準だ」

「………………目星は」

「ある」

 

その一言に、俺は勢いよく立ち上がる。

 

「誰だ!!」

「正規軍に取り入った……アメリカ人だ」

「……それで?」

「名前はパッドロウ·アームストロング。エールシュタイアー計画の実質的な指導者だ」

「……エールシュタイアー計画?」

 

俺達のファミリーネーム。

何でそれが。

 

「……この計画は……強力な兵士を確保する為に立案された。内容は……主に人体と機械の融合による強化兵士の生産」

「おい……それ、まさか」

「……そのまさか、だ。お前は手足を機械化、マイクとアリサは脳の一部を機械化している」

「じゃあ、リリスは」

「彼女は……人形に自分の意識を写すことが出来る」

「俺達は……テロリストに改造されたんじゃなくて……」

「……正規軍の計画の一端として、最初から改造されるたに産まれたクローンの子供たちだ」

「………………」

 

崩れるように、力なく、椅子に座った。

 

「続けるぞ」

「ああ……」

「何故リリス指揮官を連れ去り……あの部屋にリリス指揮官の脳が保管されていたのか。意識を転写した人形が問題だった」

「人形に……?」

 

そういう能力があるのなら、まずはそれ専用の人形を用意するものだが……。

 

「イミテーションメーカー。聞き覚えは?」

 

すぐには思い出せなかったが……、なんとか、記憶の片隅からサルベージした。

 

「……ある。鉄血のアルケミストが探してるから手伝えとか言ってきた」

「……それでお前は内通者として指名手配されてたってわけか……」

「なぁ……まさかイミテーションメーカーにリリスは意識を移したってのか」

「その通りだ……ただ、事故が起きた」

「事故……」

「リリス指揮官の身体と、イミテーションメーカーのボディ両方に意識が存在してしまった」

 

つまり……リリスが二人存在した?

 

「これがまたややこしくてな……イミテーションメーカーはまず鹵獲された鉄血人形だ。その能力を有効活用しようとリリス指揮官に意識を乗っ取らせて利用するつもりだったらしい。メンタルを削除したつもりだが……イミテーションメーカーは再起動した」

「何で……」

「そこまでは分からない。だが……それによりリリス指揮官の分身とイミテーションメーカーが()()()()しまった」

「それで……どうなったんだ」

「発狂してリリス指揮官を攻撃し暴走。施設を半壊させて行方不明……その際にリリス指揮官を連れ去っている」

「そんな事が……」

「今になってやっとここまで掴めた情報だ。まさかグリフィンに紛れ込んでたとはな。クルーガーに吐かせるのには苦労した」

「それで……正規軍が狙った理由は?」

「バレたからだろう。それと……使いやすそうな手駒を見付けた」

「手駒?」

「お前だよ、パトリック。行方不明になっていた機械化兵士がいて、戦死した兵士二人のチップも持っていた」

「……マジかよ。なら……AK-12とAN-94は」

「おそらく計画に噛んでいるだろうな」

「クソ……」

 

己の不甲斐なさに歯噛みする。

俺は、ただ手の内で踊らされていただけに過ぎないのか。

 

「今、イミテーションメーカーと二人のチップは奴らの手にある。居場所は割れているし……個人的にも因縁の相手だ。何より……アームストロングは正規軍から見捨てられている」

「……潰すのか?」

「俺の家族と後輩を好き放題利用した代償を払ってもらう。お前にも暴れてもらうぞ、パトリック」

「……俺は」

 

俺は……どうすれば良いのだろうか。

自身の生まれと、正体と。

やってきた事、された事があまりにもショックで。

 

「パトリック」

 

ジョージが優しく声をかけてきた。

 

「リリスを、助けたいか?」

「俺は……アイツと、仲違い……誤解されたままだ」

 

だから……もう一度、話をしたい。

 

それに。

 

「あの部屋の……リリスに、助けてあげてくれと言われた。頼まれたんだ」

「……頼まれた?」

 

兄貴はきょとんとした後……言いにくそうに顔を顰めた。

 

「何だよ」

「……パトリック。落ち着いて聞いてくれ」

「あ……?」

 

 

「あの部屋は……既に死んでいる。あの脳も……形は残っていたが死んでるんだ」

 

 

「なっ……?!は……?!」

 

 

 

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