水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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鉄血工蔵と聞けば流石に納得する。
あそこの人形は頑丈でコスパ良いからうちも採用しようかと検討してたな。



第9話『通すべき義理』

トムボーイを受け取り、司令室へ。

様々なひとと人形が入れ替わりでバタバタしていた。

 

「はい、はい。貴方はそちらへお願いします……もし?ええ、こちらで配備させるのは決めておりますので。失礼しますね」

「失礼するぜ」

「あ、りっくん!!おかえりなさい!どう?腕は。大丈夫?不具合とかない?」

「お、おう……大丈夫だ」

 

俺が声を掛けた瞬間、一瞬でリリスが俺の手をとって矢継ぎ早に質問してきた。

書類を持っているFive-seveNが唖然としている。

 

「そう、良かった。りっくん、よく聞いて」

「鉄血?の襲撃だろ?」

「……本当はもう少しいて欲しかったんだけど、部外者のりっくんを巻き込む訳にはいかないの」

「……そうか」

 

正規軍兵士が民間の戦闘の支援をするなんてもってのほか。

冷たいかもしれないが、これが世の中なのだ。

 

「リリス、世話になった」

「ありがとね、りっくん。会えて嬉しかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて、終わらせるわけねぇだろぉぉぉぉがよぉぉおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

俺は、走っていた。

あれからあれよあれよと基地を追い出されてしばらく歩いたが、来た道を引き返し全力疾走している。

 

「一宿一飯の、恩義を、返さなくて、何がッ、男だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

義足の出力によってそこいらの原付きを凌駕するスピードで走る。

 

しばらく交流が無かったとはいえ、彼女は……同じ孤児院で育った家族なのだ。

 

二人を喪っている俺は、ただひたすら走る。

 

「家族亡くすのはッ、ごめん何だよッ!!!」

 

基地が見えてきた。

防衛線がかなり近いのか、外壁から煙が上がっている箇所もある。

 

目の前で戦闘する集団が見えた。

 

トムボーイを握り、ハンドルを捻る。

内部燃料が燃焼する。

 

「邪、魔、だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

トムボーイが爆発。

飛び込む様に黒の集団に跳躍し、目の前の人形に叩き付けた。

 

周囲の人形がギョッとする。

ライフルを持った人形を叩き潰し、刃を反す。

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

そのまま横一閃。

三体の人形がそのまま吹っ飛んだ。

 

「何だか知らないけど……!好機を逃すな!!」

 

勇ましい掛け声と共に背後から銃弾が飛来する。

慌てて伏せる。

 

「俺ごと撃つ気か!!」

「だったらそこに居るんじゃないわよ!!」

「そっちに行く!」

 

銃撃が途切れたタイミングで、グリフィン側の防壁の方へ飛び込んだ。

 

「っはぁ!!死ぬかと思った!」

「あっ、貴方今朝の!」

「ようねぇちゃん。相棒が世話になったな」

 

軽くトムボーイを振って見せる。

目の前に居たのは、服のセンスは微妙だが胸も尻もデカい人形……確か、

 

「Five-seveNだっけ?」

「FALよ!何でアレと間違えるのよ!」

 

殴られた。

解せぬ。

 

 




口悪いし愛想も無い。
女嫌いだけどスケベ。

だけど、受けた恩と家族の危機には何もかも投げ捨ててでも報いる男・パトリック。

軍も体裁も関係ない。
家族を助ける、ただそれだけだ。


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