水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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106話

 

『よし、聞こえてるなパトリック』

 

インカムから兄貴の副官……?のローニンの声が聞こえる。

 

「聞こえてる」

『今日の作戦は廃墟周りの安全化。S-13が壊滅し流れ込んだ鉄血人形の掃討だ』

「ああ」

『それと同時に……新しくなったその手足と新武装デスペラードの運用試験ってとこだな。その日本のマチェーテでどこまでやれるか見せてくれ』

「ああ。ようやく全力で振り回せる」

 

今までは調整中で代用品を付けていたが、やっとイオンから完成報告を受けたのでこの日を今か今かと待っていた。

 

あんな事があった手前……今は体を動かして何も考えたくはないと言うのが本音であった。

 

「しかし……マウントは両肩なんだな」

 

デスペラードの鞘は両の肩に設置された。

柄を握り捻ると鞘が開き、抜けるようになる。

 

「よし……試してみるか」

 

デスペラードを抜き放つ。

トムボーイやジェットストリームの様な凝ったギミックは一切ない、刀身にコーティングが成されただけの刃。

どっしりと重たい手応え。

トムボーイも重い剣だが、それよりも重い。

 

これで、何が切れるのか。

 

(切る……?叩き潰すの間違いじゃねぇかな……)

 

今回の作戦は俺単独の少数掃討。

相手の数も多くなく負担も少ない。

 

「作戦、開始……!」

 

デスペラードをしまい、静かに呟いく。

 

考える事は多いし、今後の自分の身の振り方、身も知らない黒幕……正直、参っている。

 

けど、戦場はいつも変わらない。

 

戦って、倒して、帰る。

 

それだけだ。

 

「いつも通りだ……そうとも。何も、変わらない」

 

思考を切り替える。

迷って、悩んでいた俺は居ない。

 

今ここに居るのは、敵を屠るだけの暴力装置。

 

『偵察隊から敵発見の報告だ。数は5』

「少ないな」

『先遣隊か?この後に大規模な侵略があるかも知れん』

「出てきたなら、叩くだけだ」

 

走り出す。

軽快に脚は動くが、自重が増した為若干スピードが落ちている気がする。

その分頑丈になっていると考えれば良いだろうか。

 

敵は5体。

暫く走ると、何か動くものを見かけたので近くにあった木陰に隠れる。

 

頭を少しだけ出して、確認する。

 

(……SMGタイプが3、ARタイプが2か)

 

両手にサブマシンガンを装備したリッパーと、その少し後ろにアサルトライフルを持つ個体、ヴェスピドが隊列を組んで歩いていた。

 

(こちらには……気付いてない。さて、どう攻めるか)

 

奇襲したとして、最初の1体持って行ってそれから4体に囲まれる訳だ。

 

(……よし)

 

彼我の距離は……近め。

一息で懐に飛び込める。

 

「ハッ!!」

「「!!!」」

 

跳躍。

一瞬でヴェスピドの懐に飛び込んだ。

左のデスペラードを抜き放ち、左肩から右腰まで一気に切り裂いた。

 

ぐちゃ、と鈍い音がする。

勢いと重さで叩き斬った……と感じられる手応えだ。

 

背中に6門の銃口が向けられている。

次の瞬間、背中は蜂の巣になるだろう。

 

「へ、ハァッ!!」

 

凄まじい跳躍のバク宙。

一気にリッパー達を飛び越え更に背後を取る。

 

「!?」

「オラァッ!!」

 

右のデスペラードを抜き、投げた。

ごしゃ、と鈍い音が鳴る。

一番遠くに居るリッパーの顔面を潰し、剣が宙に舞う。

 

投擲と同時に地面を蹴る。

最も近いリッパーの目の前で軽く跳ね……頭を踏みつけ、更に跳ぶ。

 

空中でデスペラードをキャッチし、その勢いで真下に居た残りのリッパーの両腕を叩き落とした。

 

「ッ!?!!?」

「チェス!!」

 

腹部に正面蹴り。

紙切れの様に軽くリッパーが吹き飛び、背後にあった瓦礫に突っ込んで動かなくなる。

 

それを見届ける前にデスペラードを2本とも背後に向けて一気に振り抜く。

忍び寄っていたリッパーの上半身が吹き飛ぶ。

 

「ハハッ……!」

 

笑みが溢れる。

なんと手に馴染むのだろうか。

 

トムボーイの様に推力に振り回され制御する武器ではない。

自身の体捌き、武器の重さで勝負しているため……俺の磨かれた体術と融合する。

 

不利を悟り、ヴェスピドが撤退しようとする。

 

「逃さねぇ、よ!!」

 

左手首のアタッチメントに、右のデスペラードを接続する。

左腕で握る刃と、手首から伸びる刃が重なりまるでハサミのようなシルエットになる。

 

「くたばれぇッ!!」

 

デスペラードを振り上げ……一気に叩き落とした。

2本を一束にし重量を更に増した一撃を加える機構。

 

それが、ヴェスピドの脳天を叩き割った。

 

「チェェェェェェス!!!!」

 

生体部品が潰れる手応えがした。

 

 

 

 

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