水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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107話

 

戦闘終了。

 

体感10分にも満たない、接敵と同時に終わる戦い。

だが……こんなにも、充実した時間。

 

「は……はは……」

 

そして、笑う。

 

「俺は……何なんだろうな……」

 

色々あった。

本当に色々。

 

死にかけた、疑われた、逃げ出した。

悩みも、問題も、課題も何もかもそのまま。

 

でも、こうして戦場に立ち命を削って戦っている時が最も気分が晴れやかで。

 

終わった瞬間に全てを思い出して嫌になる。

 

「リリスの事も、イミテーションメーカーの事も……S-13のアイツらの事も……全部解決しなきゃいけないのに……俺は、全部忘れて戦ってた……」

 

命を懸ける事に快楽でも見出してるのか。

 

「俺は……何をやってるんだ……?」

 

思わず呻く。

あまりにも人間とは思えない所業。

まるでこんなモノとして生まれたかのよう。

 

「……」

 

結局、俺はサイガ達が迎えに来てくれるまで立ち尽くしていた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「パトリック」

「……?」

 

前線指揮所に戻った後。

珍しい奴に声をかけられた。

 

「えと……WA2000……」

 

兄貴はリサと呼んでいた。

誓約した人形の中でも、別格なのだろう。

 

「あら、お姉ちゃんって呼んでくれないのかしら」

「お前もかよ……呼ばねぇよ」

「ふふ、そう。……ちゃんと寝てる?」

「この前ベネリとサイガに無理やり寝かされたよ」

「そうじゃなくて……それ以外、全然寝てないでしょ」

「………………」

 

痛いところを突かれて黙ってしまった。

 

あれから、全くと言っていいほど眠れなくなっていた。

いつから、と聞かれても上手く答えられないが……横になっても、いつまで経っても眠れない。

 

「図星、か。全く……似た者同士ね、あんた達は」

「あんた達?」

「ジョージもよ。あっちは服用してる薬のせいもあるけどね」

「……興奮剤か」

 

あの薬についてはよく知っている。

俺も服用したことがあるからだ。

基本的にあの薬は何十倍も希釈して服用するのが原則とされている。

それでも2、3日は不眠に悩まされる代物なのだが。

 

「あら、知ってるのね」

「俺も使ったことあるからな……」

「そんなタイプには見えないけど」

「まぁ人形部隊に混ざってる人間もどきだからな。あんま無いけどそれでも厳しい時がある」

「正規軍でも支給してるのね、アレ」

「あんなもんそこら中に溢れてるだろ。量加減出来なくて自滅するのがオチだけど」

「………………そうね」

 

WA2000の顔が少し引き攣っている。

何か思うところがあったのだろうか。

 

「パトリック」

「あ?」

 

名前を呼ばれて生返事。

そして、柔らかい抱擁。

 

「……あ??」

「困ったら頼りなさい。貴方は一人じゃないから」

 

抱き締められて、そう告げられた。

 

「………………あんがと、姉貴」

 

自然と、口からそう零れた。

 

 

 

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