(……光学兵器の痕跡)
ある日の偵察中。
真新しい戦闘痕を発見する。
鉄血の人形も光学兵器を使用しているが、これは……。
(正規軍の武器だな)
最新鋭の装備によるものと判断する。
ならば、そんな物を扱える組織など今の世に無く……。
「聞こえるか兄貴……気になる痕跡が見つかった」
『痕跡?どんなヤツだ』
「正規軍で採用されてる光学ライフルの弾痕だ」
『……正規軍の?こんな所でか』
「鉄血の手で制圧された元グリフィンの管轄区。ここにどうして正規軍が……?」
『……少し、嫌な予感がするな』
「同感」
『気を付けろよ』
「ああ」
通信を停止。
弾痕があるという事は撃った奴と撃たれた奴が居るということ。
周辺に血液やオイル等が飛び散った跡もない。
(妙だな)
何故ここにだけ新しい弾痕が残っているのか。
「何でだと思う?」
「っ……!?」
腰に差したジェットストリームを抜く。
……いや、抜けなかった。
手が、動かない。
手足が固まってしまったように動かなくなっている。
「クソっ……!AK-12……!」
「久しぶりね、パトリック」
俺の背後に、両目を開いたAK-12が立っていた。
勿論、とっくの昔にハッキング済だ。
「ハッ……!なんだよ、わざわざ出てきやがって……!」
「あら、隊長にそんな口を聞いて。お仕置きよ」
「が、ふっ……!?」
首に衝撃。
右手が勝手に動き、俺の首を絞めていた。
「さて、パトリック。質問に答えてちょうだい」
「か、は……っ……!」
呼吸が出来ない。
身動きも取れない。
「あの二人のチップ。何処にやったの?」
「しら、ねぇ……!」
「あらそう」
「ぎ、が、ぐ、ぐ」
首にかかる力が強くなる。
「困ったわねぇ。貴方が持ち出して埋めたのは知ってるのだけれど」
全く困ったような顔をしていない。
「なら、処分するしかないわ」
「させると思う?」
「……!?」
同じ声だが……別方向から聞こえてくる。
その瞬間、首の圧力が消えた。
「が、はっ……はぁ……はぁ……」
肺が酸素を欲しがり、激しく呼吸をする。
「……貴方は」
「ハァイ、私」
……AK-12が、二人居た。
お互いに瞳を開き、対峙している。
「脱走兵……こんなところへ何の用?」
「何の用って……この子のお守りよ」
「ふうん……?そう。そんなにこの子が大事?」
「私は別に。でも……指揮官の頼みだもの。無碍には出来ないわ」
「くだらないわ。軍を抜けて、結局やってることが変わってないのね。それに……」
AK-12……元隊長が睨みつける。
俺への拘束が若干強まる。
「私は後期モデル。性能はこっちの方が上よ」
「そう……みたいね。でも」
銃声。
元隊長の片腕が吹き飛んだ。
「……っ!?」
「伏兵の警戒はするべきね。流石ね、スプリングフィールド」
『油断しないでください』
通信が開く。
『無事ですか、パトリック』
「ありがとう、助かった……」
ジェットストリームを握りなおす。
「AK-12……何で、ここに居る……!」
「……有利になった途端饒舌ね」
「んだと……!」
「AN-94」
「なっ……下がれ!」
足元に何かが転がってくる。
俺は慌ててAK-12を抱えて後方に飛び退いた。
グレネードが、爆ぜる。
爆炎が晴れると、そこには誰も居なかった。
「逃げられたか……」
ジェットストリームを鞘に戻した。
(……正規軍が、何故ここに……?)
結局、この日疑問が晴れる事は無かった。