水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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108話

 

(……光学兵器の痕跡)

 

ある日の偵察中。

真新しい戦闘痕を発見する。

鉄血の人形も光学兵器を使用しているが、これは……。

 

(正規軍の武器だな)

 

最新鋭の装備によるものと判断する。

ならば、そんな物を扱える組織など今の世に無く……。

 

「聞こえるか兄貴……気になる痕跡が見つかった」

『痕跡?どんなヤツだ』

「正規軍で採用されてる光学ライフルの弾痕だ」

『……正規軍の?こんな所でか』

「鉄血の手で制圧された元グリフィンの管轄区。ここにどうして正規軍が……?」

『……少し、嫌な予感がするな』

「同感」

『気を付けろよ』

「ああ」

 

通信を停止。

弾痕があるという事は撃った奴と撃たれた奴が居るということ。

 

周辺に血液やオイル等が飛び散った跡もない。

 

(妙だな)

 

何故ここにだけ新しい弾痕が残っているのか。

 

「何でだと思う?」

「っ……!?」

 

腰に差したジェットストリームを抜く。

……いや、抜けなかった。

 

手が、動かない。

手足が固まってしまったように動かなくなっている。

 

「クソっ……!AK-12……!」

「久しぶりね、パトリック」

 

俺の背後に、両目を開いたAK-12が立っていた。

勿論、とっくの昔にハッキング済だ。

 

「ハッ……!なんだよ、わざわざ出てきやがって……!」

「あら、隊長にそんな口を聞いて。お仕置きよ」

「が、ふっ……!?」

 

首に衝撃。

右手が勝手に動き、俺の首を絞めていた。

 

「さて、パトリック。質問に答えてちょうだい」

「か、は……っ……!」

 

呼吸が出来ない。

身動きも取れない。

 

「あの二人のチップ。何処にやったの?」

「しら、ねぇ……!」

「あらそう」

「ぎ、が、ぐ、ぐ」

 

首にかかる力が強くなる。

 

「困ったわねぇ。貴方が持ち出して埋めたのは知ってるのだけれど」

 

全く困ったような顔をしていない。

 

「なら、処分するしかないわ」

「させると思う?」

「……!?」

 

同じ声だが……別方向から聞こえてくる。

その瞬間、首の圧力が消えた。

 

「が、はっ……はぁ……はぁ……」

 

肺が酸素を欲しがり、激しく呼吸をする。

 

「……貴方は」

「ハァイ、私」

 

……AK-12が、二人居た。

お互いに瞳を開き、対峙している。

 

「脱走兵……こんなところへ何の用?」

「何の用って……この子のお守りよ」

「ふうん……?そう。そんなにこの子が大事?」

「私は別に。でも……指揮官の頼みだもの。無碍には出来ないわ」

「くだらないわ。軍を抜けて、結局やってることが変わってないのね。それに……」

 

AK-12……元隊長が睨みつける。

俺への拘束が若干強まる。

 

「私は後期モデル。性能はこっちの方が上よ」

「そう……みたいね。でも」

 

銃声。

元隊長の片腕が吹き飛んだ。

 

「……っ!?」

「伏兵の警戒はするべきね。流石ね、スプリングフィールド」

『油断しないでください』

 

通信が開く。

 

『無事ですか、パトリック』

「ありがとう、助かった……」

 

ジェットストリームを握りなおす。

 

「AK-12……何で、ここに居る……!」

「……有利になった途端饒舌ね」

「んだと……!」

「AN-94」

「なっ……下がれ!」

 

足元に何かが転がってくる。

俺は慌ててAK-12を抱えて後方に飛び退いた。

 

グレネードが、爆ぜる。

 

爆炎が晴れると、そこには誰も居なかった。

 

「逃げられたか……」

 

ジェットストリームを鞘に戻した。

 

(……正規軍が、何故ここに……?)

 

結局、この日疑問が晴れる事は無かった。

 

 

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