水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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どんなに小さくても、恩は恩。

返さなくては男が廃ると言うもの。


第10話『遭遇、錬金術師』

「で!?アイツは!?」

「アイツって誰よ!Five-seveN!?」

「ちげーよ!リリスだよ!!」

「指揮官!?指揮官なら司令室よ!Five-seveNと一緒よ!」

「司令室だな……!」

 

トムボーイを背に担ぎ直して走り出そうとする。

そこで襟をFALに引っ張られた。

 

「ちょっとどこに行く気!?」

「ぐえっ!お前!何しやがる!」

「まだこっちに鉄血が居るのよ!手伝いなさい!」

「バカヤロウ!拠点攻撃なら狙いは頭…指揮官だろ!!」

 

FALがはっとした表情になる。

通信をつなげようとして……。

 

「クソッ!ジャミングか!」

「……俺が行く!」

「……部外者の貴方に指揮官を任せなきゃいけないのね」

「俺とあいつは家族だ!悪いようにはしない!」

 

ここで言い争っていても時間の無駄だ。

行くしかない。

 

「……信じるわよ!指揮官に怪我させたら男で産まれたこと後悔させてやるわ!!」

「ハッ!任せな!一宿一飯の恩義は果たす!」

 

弾幕が止む。

その瞬間走り出す。

とにかく、この基地の司令室に向かわなくては。

 

基地内のあちこちに火の手が上がっている。

迫撃砲を撃ち込まれたらしく、損壊もそこそこ受けている。

 

「司令室、どっちだ…!?」

 

案内されていた筈なのに、道に迷う。

何故……!?

 

「くっそ、道に迷っただと……誰かに聞くか」

 

ちょうど曲がり角の先に誰かがいるっぽい。

 

「おーい!そこのあんた!」

「……?」

 

振り返る。

……長い白髪に、白い肌。

オマケに眼帯までしている。

戦術人形も個性的な見た目している奴がいるんだな。

 

……しかし、コイツもアレだな……デカい。

 

「……あからさまだな」

「うへぇあ!?べ、べべべべ別に見てねーし!」

「……それで?要件は?一応聞いてやろうじゃないか」

「あ、あー……司令室の場所が分からなくてな。案内して欲しいんだわ」

「私にか……?」

「え?ああ……生憎とアンタにしか会えなくてな。頼めないだろうか」

「フッ……ハハハ!面白い奴!私もちょうど司令室に用があったんだ!良かったら一緒に来い」

「本当か!?助かる!」

 

ラッキー、これであいつの所に行ける。

急ごうと思い走り出そうとして……。

 

「おいおい、案内しろと言ったのに私を置いていくのか?」

「イヤなんで歩いてんだよ!急いでるんじゃないのか!?」

「大丈夫よ……まだ襲われてないから。少し話そうじゃないか」

「え、えぇ……」

 

頼む相手を間違えたのだろうか。

 

「お前、人間だな?」

「あ、ああ……一応な。義手だけど」

「ほう……ふむ、良い手だ。記念に片方貰っても良いか?」

「何のだよ!てか駄目だ!これは換えが無い」

「それは残念」

 

なんだこの掴み所の無さは。

何となく居心地画悪い……いや、まぁこんなとびきりの美人を前にして何だって感じだけどさ。

 

女嫌いだが別に性欲まで無いわけじゃない。

と言うかこうして見るなら普通に好きだし。

 

だが……コイツからは何だか底の知れないものを感じる。

 

「お、着いたぞ」

「マジか、サンキューな!アンタ名前は?」

「名前?そうだな……」

 

白い女がドアを開く。

中では……ぎょっとしたリリスと、Five-seveNが銃を向けて立っていた。

 

「お、二人共無事……って、物騒だな」

「り、りっくん!退いて!そいつ殺せない!」

「は……?」

「パトリック!そいつは……鉄血の錬金術師(アルケミスト)……!親玉よ!!」

「……はぁ!?」

 

振り返った瞬間、眼前に刃が閃いていた。

 

「うぉ……!?」

 

……鈍い金属音が響いた。

 

 

 




鉄血ハイエンド、アルケミスト参戦。

はい、こっちも相当久しぶりの更新です。
借金の方もカタがついてきましたのでね。

ぼちぼち更新していきます。

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