モチベーションがリスポーンしてくれたので更新していきます。
「……頑丈だな」
左腕でアルケミストの持つ小さな……カタール、か?を左腕で受け止める。
「危ねえ……何なんだアンタ」
「私を知らないのか?珍しい人間も居たものだ」
武器に込める力を一切緩めずに、世間話をするノリで目の前の女は続ける。
「鉄血工蔵製ハイエンドモデル、アルケミストだ。以後お見知りおきを」
「なる程な……いい加減、手を離せっ!!」
「おっと」
左腕を振り払い、背中に担ぐトムボーイを振り抜く。
……奴は一瞬で姿を消した。
「は……!?」
「パトリック!アレはテレポートを使うわ!奇襲に気を付けて!」
「先に言え!!」
俺はリリスとFive-seveNに向かって走り出す。
奇襲を仕掛けるなら、確実に狙いは大将首!
「さ、せ、る、かッ!!」
リリスとFive-seveNの死角からアルケミストが出現する。
トムボーイのイクシードを全開にしてその推進力を以てして飛び込む。
「……!その剣、肩が吹っ飛ぶぞ?」
「その為の、腕だ!!」
アルケミストの両手の小剣によるラッシュを捌く。
こちらの長物より、相手の方が手数は上。
近接戦での有利は向こうにある。
しかし、だからといってはいそうですかと引き下がるのは阿呆のする事だ。
イクシードを燃焼させて振りを加速させる。
剣戟が奔る。
金属音が鳴る回数がどんどん増えていく。
「ハッ……ハハハ!!着いてくるか!」
「まだまだァァァァッ!!」
本来、俺の仕事は化物退治……基本的にE.L.I.Dだ。
こんな至近距離で何度も得物をぶつけ合うなんてあり得ない。
しかし、目の前の相手は限りなく人に近い形をしていて、両手の剣で殴り合いを演じている。
段々と、俺の中で乾いていた何かが満たされていくのを感じる。
(何だこれ……俺は、楽しんでる?)
たまらなく、楽しい。
目の前の人形と、命の奪い合いをしているというのに。
銃声。
アルケミストが弾丸を斬り払う。
「邪魔すんなFAL!!」
「あんな奴と間違えんな!私はFive-seveNよッ!!」
「余所見している暇があるのか?」
「うおっ……!?」
FAL……じゃなかった、Five-seveNに怒鳴った瞬間テレポートされ、真後ろから剣戟が飛んでくる。
慌てて前に飛び込んで回避する。
やばい、一度離されたせいで奴が小刻みにテレポートを始めた。
目で追えない。
Five-seveNが出現する度に弾を当てていく。
練度に舌を巻くが、ハンドガンの火力では決定打にならない。
(どうする、どうする……!?ジリ貧だ)
焦りが募る。
いつリリスが狙われるか分からない、外の部隊がどれだけ保つか分からない。
そして、俺の手足がどれだけ保つか。
左から刃の光。
ほぼ無意識に空いた左腕を振り上げて剣とぶつかる。
既に羽織っていたコートの左腕部分はズタボロだ。
「こなくそ……っ!!」
トムボーイを空振る。
段々と動きを読まれてきた。
(何か、状況を変える一手を……!!)
考え事をしていた一瞬。
その隙を、見逃すほど相手は甘くなかった。
「獲った……!」
「……ッ!」
……窓を突き破って、弾丸が一発。
俺に向けられていた小剣が砕けた。
「なっ……!?」
「うおらァァァァァッ!!」
イクシードを最大出力で解放する。
床を削り、思いっ切り上方に向かってアッパーカットの様に振り抜いた。
「ぐぁっ……!!」
突き出された腕が、宙に舞う。
もう一撃。
あと一撃。
たった一回剣を振れ。
今しか無い、この瞬間こそトドメを刺す最大のチャンス。
殺れる……ッ!!
世界がスローになる。
後ずさるアルケミストも遅い。
俺の一歩一歩も遅い。
だが、頭の中は脳内麻薬で滾っていた。
初めて感じる、闘いの歓び。
物言わぬ化物を狩るだけでは満たされない。
自分と同じように喋り、考え、意思疎通する相手と命を賭した全力の殺し合い。
楽しい、どうしても、楽しい……ッ!!
「……え」
足が動かない。
トムボーイが何故かすっぽ抜けて遠く執務室の壁に刺さっている。
顔や胸に衝撃。
気が付くと、俺は床に転がった。
両の手足の感覚が無い。
いや、
「りっくんーーーーーー!!!」
あ、死んだ。
俺の義手義足は、熱が貯まりすぎると接続された生体部分への伝導を防ぐため……強制的にパージされるリミッターが掛けられている。
要するに、オーバーヒート。
「ふ、ハッ……!天に見放されたな……!!」
……いつだってそうだ。
神様は俺達を救っちゃくれない。
あぁ、俺も死ぬんだな。
アリサ、マイク……お前らのトコに、俺も行けるかな。
目を閉じる。
悲鳴と、Five-seveNの銃声が聞こえる。
……それを全て覆う程の轟音。
堪らず目を開くと、アルケミストが胸に風穴を開けて吹っ飛んでいった。
「……は?」
一発。
たった一発で仕留めたのか!?
『指揮官!?ご無事ですか!?』
リリスの持っていた無線機から、聞き覚えのある声が聞こえる。
窓の外……敷地内のかなり端に、白いコートをはためかせる人形が立っていた。
『遅くなりました』
「ありがとう、IWS2000」
こうして、鉄血の襲撃は幕を閉じた。
借金前線も終わり、蒼き雷霆もアズレンの方も目処が立ってきたのでこちらも続けて行こうかと思います。
感想お待ちしております。