パトリックの今後の処遇について。
「おはようございます、パトリックさん」
「………………えぇ?」
知らないベッドの上で目覚め、最初に見えたのは……IWS2000の、後頭部。
そして、俺が起きた事に気が付くと満面の笑みで挨拶するのだった。
「えっと、DSR-50だっけ」
「IWS2000です!!全然違うじゃないですか!!」
「分かりにくいんだよお前らの名前……」
「じゃあステアーって読んでください」
「そんなに宜しくするほど長居するつもりは無……オイ、俺の手足は」
起きたは起きたには、手足が付いていなかった。
これでは身動きが取れない。
ついでに言うと見に覚えのない包帯が身体中にしてあった。
それ以外は新品のボクサーパンツだけ。
「挨拶をちゃんと返さない人には教えません」
「はぁ?」
「おはようございます」
「………………」
「おはようございます」
「………………」
「お、は、よ、う、ご、ざ、い、ま、す!!」
耳元で叫ばれた。
「あーもわかったよ!!………………お、おはよう」
「はい、良くできました」
「………………」
駄目だ、ペースに巻き込まれるな俺。
気を強く持て。
「……で、俺の手足は」
「3日前にメンテナンスを始めて、両足は終わった所ですよ」
「って事は腕はまだか……換えがないから壊れると困るんだよな……ん?3日前?」
おい、まさか俺は3日間寝てたってことか?!
「あ、はい……パトリックさんは鉄血のアルケミストと戦闘して……そのまま昏睡してしまって」
……ふと、思い出す。
あと少しコイツの援護が遅かったら俺は殺されていた事に。
「……?どうかなさいました?」
「……いや、別に」
……さて、足をどうやって着けるか。
………………じっ、とこっちを見つめる白いの。
「……何だよ」
「お手伝いしましょうか?」
「要らん」
「……えっ、どうやって着けるんですかそれ」
「あん?口で咥えれば」
「駄目ですよこんな重いもの。顎が外れてしまいます」
俺の足を手に取りニコニコと寄ってくる。
身をよじるが悲しいかな、動けない。
「さ、着けてあげます」
「やめろって」
「遠慮しないで下さい」
「良いから!」
「……むぅ。どうしてですか」
今にも泣きそうな顔になる。
……何となく、アリサの顔が脳裏をよぎる。
その顔には、弱い。
「ちょっ……泣くなよ……分かった、分かったから。
「……っ!!?!(ゾクゾクゾクッ)」
「……えっ」
頼む、と言った瞬間……白いの、ステアが一瞬身悶えした。
と言うか瞳も蕩けてた気がする。
「ふ、ふふ、うふふふ。お任せくださいね」
(……やっべ。地雷踏んだかこれか)
……まぁ、普通に着けてもらえたのだが。
義足がコネクタに接続される。
相変わらず、激痛が奔る。
「……ッ……!」
「あ……い、痛かったですか!?」
「あ?……あー、いや、これ着けるときは痛むんだ。気にしないでくれ」
「そ、そうですか……」
もう片方も着けてもらう。
なんというか、情けないな本当に。
接続された義足を動かす。
問題無く可動する。
特に違和感も無し。
立ち上がる。
しっかりと踏みしめる感覚。
「……よし」
「パトリックさん、指揮官が呼んでますので案内しますね」
「ああ……あ、いやその前に服着ないと」
「え……………………あっ」
今更ながら、ステアが俺の足先から上半身を見る。
ぼふん、と頭から湯気が出る。
「おっ、お手伝いしまひゅか!?」
「あ、いや、流石にそこまでは」
「だ、大丈夫ですっ!任せてください!!」
「ちょっ、やめっ、うおおお!?」
「ちょっとステアー?うるさいわよ……何やってるのよ貴方達」
様子を見に来たFALに呆れられた。
どうしてこうなった……。
世話焼きな人形達に囲まれる干渉が嫌いな男。
何でこいつ頼らざるを得ない癖にここまで頑ななのか。
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