水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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鉄血の襲撃もひとまず落ち着く。
パトリックの今後の処遇について。


第12話『開きかける扉』

「おはようございます、パトリックさん」

「………………えぇ?」

 

知らないベッドの上で目覚め、最初に見えたのは……IWS2000の、後頭部。

そして、俺が起きた事に気が付くと満面の笑みで挨拶するのだった。

 

「えっと、DSR-50だっけ」

「IWS2000です!!全然違うじゃないですか!!」

「分かりにくいんだよお前らの名前……」

「じゃあステアーって読んでください」

「そんなに宜しくするほど長居するつもりは無……オイ、俺の手足は」

 

起きたは起きたには、手足が付いていなかった。

これでは身動きが取れない。

ついでに言うと見に覚えのない包帯が身体中にしてあった。

それ以外は新品のボクサーパンツだけ。

 

「挨拶をちゃんと返さない人には教えません」

「はぁ?」

「おはようございます」

「………………」

「おはようございます」

「………………」

「お、は、よ、う、ご、ざ、い、ま、す!!」

 

耳元で叫ばれた。

 

「あーもわかったよ!!………………お、おはよう」

「はい、良くできました」

「………………」

 

駄目だ、ペースに巻き込まれるな俺。

気を強く持て。

 

「……で、俺の手足は」

「3日前にメンテナンスを始めて、両足は終わった所ですよ」

「って事は腕はまだか……換えがないから壊れると困るんだよな……ん?3日前?」

 

おい、まさか俺は3日間寝てたってことか?!

 

「あ、はい……パトリックさんは鉄血のアルケミストと戦闘して……そのまま昏睡してしまって」

 

……ふと、思い出す。

あと少しコイツの援護が遅かったら俺は殺されていた事に。

 

「……?どうかなさいました?」

「……いや、別に」

 

……さて、足をどうやって着けるか。

 

………………じっ、とこっちを見つめる白いの。

 

「……何だよ」

「お手伝いしましょうか?」

「要らん」

「……えっ、どうやって着けるんですかそれ」

「あん?口で咥えれば」

「駄目ですよこんな重いもの。顎が外れてしまいます」

 

俺の足を手に取りニコニコと寄ってくる。

身をよじるが悲しいかな、動けない。

 

「さ、着けてあげます」

「やめろって」

「遠慮しないで下さい」

「良いから!」

「……むぅ。どうしてですか」

 

今にも泣きそうな顔になる。

……何となく、アリサの顔が脳裏をよぎる。

その顔には、弱い。

 

「ちょっ……泣くなよ……分かった、分かったから。()()()()()()()

「……っ!!?!(ゾクゾクゾクッ)」

「……えっ」

 

頼む、と言った瞬間……白いの、ステアが一瞬身悶えした。

と言うか瞳も蕩けてた気がする。

 

「ふ、ふふ、うふふふ。お任せくださいね」

(……やっべ。地雷踏んだかこれか)

 

……まぁ、普通に着けてもらえたのだが。

義足がコネクタに接続される。

相変わらず、激痛が奔る。

 

「……ッ……!」

「あ……い、痛かったですか!?」

「あ?……あー、いや、これ着けるときは痛むんだ。気にしないでくれ」

「そ、そうですか……」

 

もう片方も着けてもらう。

なんというか、情けないな本当に。

 

接続された義足を動かす。

問題無く可動する。

 

特に違和感も無し。

 

立ち上がる。

しっかりと踏みしめる感覚。

 

「……よし」

「パトリックさん、指揮官が呼んでますので案内しますね」

「ああ……あ、いやその前に服着ないと」

「え……………………あっ」

 

今更ながら、ステアが俺の足先から上半身を見る。

ぼふん、と頭から湯気が出る。

 

「おっ、お手伝いしまひゅか!?」

「あ、いや、流石にそこまでは」

「だ、大丈夫ですっ!任せてください!!」

「ちょっ、やめっ、うおおお!?」

「ちょっとステアー?うるさいわよ……何やってるのよ貴方達」

 

様子を見に来たFALに呆れられた。

どうしてこうなった……。

 

 




世話焼きな人形達に囲まれる干渉が嫌いな男。
何でこいつ頼らざるを得ない癖にここまで頑ななのか。

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