「りっくん!?起きたのね!?よかった!どこか悪いところはない!?」
執務室に入った瞬間光の速さでリリスが寄ってきた。
ステアとDSRがぎょっとする。
「腕はすぐに直させるから!待ってて!」
「お、おう……」
「それで、今後の話なんだけれど……」
今後。
そう、今後だ。
何とかして部隊と連絡を取らなくてはならない。
「何とか部隊に戻ろうと考えてる」
そう伝えると、リリスの表情は暗くなる。
「そう、だよね……」
「ああ」
「その、りっくんさえ良ければ……ウチに、残ってほしいな……なんて」
「……何だって?」
「えっとね、ウチはライフルによる狙撃活動がメインなの。……今回みたいに、懐に潜り込まれると中々厳しくて」
確かに、ゼロレンジの殴り合いを主とした戦闘を行うアルケミストに遅れを取っている。
「だから、ゼロ距離で戦える貴方がほしいの」
「どうせお金、持ってないでしょ?」
「うっ……!」
……財布なんて持っていない。
無一文で何も持たずここから詰め所に丸2日以上掛けて歩くなんて、それこそ馬鹿の所業だ。
「傭兵として雇われるだけで良いから。それに、隣のS-12地区から戦闘支援してもらえるし」
「………………」
「お願い……!」
両手を合わせて、懇願する様に見上げられた。
……これだ。
嫌いになっても、こうまで頼まれると、断れない。
「……この地区の脅威が排除されるまで」
「え?」
「……俺の手が要らなくなるまで……その、居てやるよ」
これが、最大限の譲歩。
賃金を出すというのならその頃には充分なろ銀が貯められる。
「よ、良かった……ありがとう、りっくん」
「……家族、だからな……見捨てはしない」
「ううん……それでも、嬉しい」
リリスが胸元に飛び込んできて、両腕でしっかりホールドしてくる。
「お、おい……」
「大丈夫、生活の方は任せて。不自由はさせないから……本当は私がお世話したいのだけれど……指揮官業務が忙しくて」
リリスが離れる。
じっ、と俺を見つめる相貌。
「人形達を付けるね。皆、りっくんのこと気に入ったみたいだしね」
「気に入った……?女は苦手なんだ、介護は男に頼みたい」
「ごめんね?この基地の男性は皆別の業務で引っ張りだこなの」
「マジかよ……」
ふと、窓の外に目を向ける。
……見覚えのあるドローンが、ずっとこちらを伺っていた。
確か、楓月……。
「ステアがりっくんのこと、とても心配してたし……取り敢えずステアを付けるね」
「えつ、オイあいつかよ!?」
「じゃぁ、私業務があるから」
「オイ、待てって……!マジかよ……」
こうして、ここ……S-13地区の生活が決まった。
S-13地区での職と生活が決まりました。
果たして、彼は正規軍へ帰れるのだろうか。