水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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第18話『初任給』

Five-seveNにも言われたが、俺がG&K……というよりリリス指揮官の子飼いの傭兵となってから1ヶ月が経過した。

何だかんだ、散発的に発生する鉄血との戦闘にも慣れてきたところ。

 

……というか俺はショットガンの人形達と並んで戦ってるのどうなんだろう。

交戦距離近くない?

 

「はいこれ。今月のお賃金。無駄遣いしないようにね」

 

リリスに話があると言われ、執務室にやってくるなり手渡された茶封筒。

今時まさかの現金手渡しである。

 

「……すまん」

「謝らないの。りっくんのお陰でウチの損耗も抑えられるようになったんだよ?そのお金は、それで浮いた費用から捻出したものだから」

 

封筒を受け取る。

中身は後で部屋に戻った時に確認しよう。

 

「そう言えば、何を買うか決めてるの?」

「え?……ああ。花束を買おうと、思ってる」

「花束……?」

 

リリスが目を丸くする。

そりゃそうだ、キャラじゃなさ過ぎる。

 

「だ、誰に渡すの!?ステア!?それともFive-seveN!?」

「何でそいつらに渡さなきゃならんのだ。……マイクと、アリサにだよ」

「あ……ごめんなさい」

「気にしなくて良い。前に教えてくれた丘の上に……簡素だけど埋葬した。そこに手向ける花だよ」

 

マイクロチップと、ペアリングしか残らなかった二人に手向ける花。

 

「……ねぇ、供えに行く時は……私も、付いて行って良いかな」

「勿論。家族だからな……」

 

何だかんだ、俺とマイクとアリサでよくつるんでたし、リリスは俺達にお菓子とか振る舞ってくれていた。

二人もリリスの事を慕っていたし、構わないだろう。

 

「初めての外出だし、同伴の人形を着けるけど……構わないよね?」「いや構うわ」

 

待て待て、俺ももう20だぞ。

この辺の地理が判ってないとは言え同伴ってお前。

 

「誰が良い?」

「一人で良い」

「だめ」

「何で!」

「心配なの!」

「良い年こいて同伴こそ嫌だわ!!」

 

結局、10分くらい言い争った。

 

「……大丈夫?」

「大丈夫だ」

「ほんとに?」

「本当に!」

「……信じるから」

 

渋々、と言った体でリリスが俺の端末に地図情報をインストールしてくれている。

 

「サンキュー、リリス。それじゃ」

 

……執務室を後にする。

 

「……さて、行くか」

 

s-13地区の管理市街地区。

ここに花屋はあるのだろうか……。

 

「……アレは、楓月」

 

またドローンが空を飛んでいる。

熱心だね……。

 

「銃の手入れでもしようか」

 

ライオットとパニッシャーも最近使い込んでいたし、そろそろメンテをしなくては。

 

……楓月がじっと俺の事を見ていることに、全く気付いていなかった。

 

 




パトリック君、町へ買い物に行く。

……勿論、1人で行けるわけ無いよね。

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