グリフィン&クルーガーS-13地区管理市街地。
国という体系が失われた今、力のあるPMCやら自治体が区画を管理している。
そんな、ある日。
「人、多いなぁ……」
活気がある、その一言に尽きる。
リリスの尽力があって治安が良いのだ。
だからあれだけ忙しいのか。
「さて、花屋花屋……」
目当ては二人の墓に備える花。
何が良いだろうか……。
「……うん?」
路地裏で、言い争いをしている集団を見掛けた。
目に入ってしまったので見逃すのも後味が悪い。
……ワインレッドの長い髪をした美女。
恐らく人形だろう。
それを男二人が囲んで何やら言い争っている。
「だから、興味無いって」
「そう言わずにさ」
「君ならすぐにトップ取れるって」
ああ、人形風俗の勧誘か何かだろう。
見てくれが良いからやっぱりそう言うビジネスは一定の需要があるだろう。
……そこで、ふとその人形が左手の薬指を抑えていることに気が付いた。
グローブの上から、握り締めていた。
「おい」
気が付いたら、俺は声を出していた。
「な、何だよ」
ナンパ野郎が怯む。
人相が悪いのも、そう捨てたものじゃないとこの時は思った。
「人形にだって意思はあるんだ。嫌がってんだろ」
「部外者は黙っててくれるか?」
「あン?部外者だァ?関係ないね」
「てんめぇ……」
もう一人の男がナイフを抜いた。
判りやすい切り替えで本当に助かる。
男がナイフを突き出すので、俺も掌を突き出す。
パキッ、と小気味良い音が鳴り……刃が根本から折れた。
「エッ……!?」
「手を出したのは、そっちが先だからな」
「ゲファッ!?!!?」
軽く拳を突き出してやる。
顔面にめり込み吹っ飛んで行った。
「失せな。グリフィンに見つかったらタダじゃ済まないだろ」
「く、くそっ……!!」
みっともなく一目散に逃げ出した。
「はぁ……怪我は?」
「……呆れた。お人よしにも程があるわね」
それが、第一声だった。
……何となく、人間くさいと感じてしまった。
プログラムされた言動ではなく、誰かとずっと一緒に居て染み付いたもの、そんな感じの。
「うるせぇ。だったらそんな指輪大事に抑えて無くても良いだろうが」
「……目敏いのね」
「昔、知り合いのカップルが似たような事してたから見覚えがあっただけだ」
「ふーん……」
「で?人形さんが裏路地で何やってんだ?見てのとおり治安は悪い……巡察か?」
グリフィンでまだ会った事の無い人形が居ただろうか。
「いえ、私は隣……S-12の所属よ」
「お隣さん?どうして」
「……それは」
言い辛そうに口ごもる。
……妙な動きをしたら速攻で撃てるように、腰のパニッシャーに手を伸ばす。
「……旦n、じょ……相棒への、プレゼント選び」
「………………えぇ?」
一気に警戒が霧散した。
というか、やっぱり結婚指輪だったのか。
「世の中何があるかわかんねーけど、人形とも結婚する物好きな奴が居るんだな……」
「……!もういっぺん言って見なさい。アンタの頭、風穴開けるわよ」
「え……」
目の前の女の目の色が変わる。
気が付けば額にマグナムが突きつけられていた。
恐ろしく早いクイックドロウ。
そして、その銃は軍のカタログで見たことがある……ウィングマンだ。
「わ、悪い……言い過ぎた」
「………………分かれば、良いのよ」
そういうと女はウィングマンをしまった。
ほっと息を吐く。
「ここまで想われてるなんて、お相手が羨ましいね」
「そう?あんたも、黙ってれば険の強い美丈夫って感じよ」
「そりゃどうも。だが生憎女嫌いなんでね」
「……それなのに私を助けたのね。ますます呆れるわ……」
いい加減女、と表すのも面倒になってきた。
「俺はパトリック。パトリック・エールシュタイアー。ここのグリフィンで雇われてるんだ。もしかしたら前線でまた会うかもな」
「私の名前は、WA2000よ。そのときはよろしく、パトリック」
軽く手を振って、彼女は歩いていった。
「……いい女だな」
さて、目的が脱線しちまった。
お隣さんのWA2000……向こうの指揮官は一体どんな借k……どんな指揮官なのだろうか。