水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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第24話『ピースキーパー』

俺は今、壁を走っている。

 

「う、おおおおお!!!」

 

先陣を切って()()()()()()()()を追いかけている。

 

「坊主!着いてきてるか!?」

「舐めるなァ!!」

 

オッサンの身に着けている外骨格。

アレが人間離れした起動を実現している。

 

腕から出すグラップルワイヤー、腰に装着されたジャンプキットを駆使して三次元的な挙動を取る。

 

確かに、これならたかだかAI程度なら翻弄できる。

 

それを指揮官がやることではないがな!!

 

「見えた……!中枢だ!上がるぞ!」

 

オッサンが上に向けてワイヤーを射出する。

俺も近くの窓に足を掛けて思いっ切り跳躍した。

 

低めの階層のビルの屋上にたどり着いた。

 

「着いてこれるか。正規軍も随分と優秀な兵士育てたんだな」

「はぁ……はぁ……褒めたって何も出ねーぞ」

「そいつは困る。やる気出してもらわないといけないからな」

 

オッサンが身を乗り出して下を覗き込む。

俺も見ておくか。

 

……眼下には、迫撃砲系のメカと数体の鉄血人形、

 

中心に居るちょっと豪華な奴がターゲットか。

 

「降りなくても、こっから狙撃すりゃ良いんじゃね?」

「俺の持ってる武器じゃ射程に難があるからな」

 

オッサンが俺に見せたのは、アサルトライフル・フラットラインとショットガン・ピースキーパー。

 

「そのフラットライン、アンビルレシーバーは?」

「付いてねぇよ。それ、最新のポップアップだろ?買えねーよそんなもん」

「んだよそれ」

「で、坊主の銃は?」

 

俺は無言でパニッシャーとライオットを見せた。

 

「似たようなもんじゃねぇか」

「うっせぇ。俺は接近戦仕様なんだ」

「じゃあ、大将首は譲ってやるよ」

「あぁ?」

「お前の武器……その剣なら威力も充分だろ。高度からの落下と剣戟を合わせて一撃で仕留められる」

 

なるほど。

……こっから飛び降りるのかー。

 

「何だ?ビビったか?」

「抜かせ。やってやろうじゃねぇか」

「しくじるなよ」

「言ってろ。これよりやべぇ状況は経験済みだ」

「行くぞ」

 

二人同時に、跳んだ。

 

……凡そ25mの自由落下。

言うほど自由じゃないけどな。

 

奴らが上を向くが、遅いッ!!

 

「オラァァァァァッ!!!」

 

トムボーイが爆炎を吹かし加速する。

勢いを殺さず……振り下ろす。

 

剣先が地面に当たり、衝撃波で吹き飛ぶ。

 

「うおっ……!?」

 

衝撃波で一瞬体が浮き……地面を転がった。

何とか体勢を立て直し起き上がる。

 

「親玉は……?!」

 

衝撃波でバラバラになりながら吹っ飛んだ人形が見えた。

……その後ろで、こちらに銃を向けている個体が居るが。

 

「やっべっ!!」

 

トムボーイが吹っ飛んだので急いでライオットを構えて撃つ。

 

……一人が少し大勢を崩した程度。

 

そいつ等の真横を、吐き出されたヘビーアモの嵐が通過した。

 

「お前さん、射撃はそれ程得意じゃないみたいだな」

「……」

「ショットガン使うのは確かに理に適ってる……が、相性自体良くなさそうだな」

 

オッサンが俺にピースキーパーを差し出す。

 

「……は?」

「こいつはウィンチェスターみたいなもんでな。片手でコッキングが出来る。どうだ?使ってみないか」

「い、要らねぇよ」

「そう言うな。その代わり、そっちのベネリは……そうだな、嬢ちゃんに言ってIOPに渡すと良い」

 

……ピースキーパーを押し付けられた。

割と手に馴染む。

悔しいが言ってる事は正しい。

 

「さて、残党処理といこうか」

 

 




パトリックは、ピースキーパーを手に入れた。

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