水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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今日はそういう日らしいので。


第29話『思い出す味』

トリガーを引く。

散弾が発射され、反動が来る。

 

2射目を撃とうとして……。

 

「コッキングしなさい、パトリック」

「……おっと」

 

くるっ、とピースキーパーを一回転。

かちっ、と音がする。

 

……杖で後頭部をドつかれた。

 

「いってっ!!」

「スピンコックはするなと言ったはずです!」

「楽なんだよ!こっちのが片手空くから」

 

俺の横に立っていたジェリコがため息を吐く。

 

「……確かに、貴方は技工剣を使いますし片手が空く方が良いかもしれません」

「だろ?」

「で、す、が!基本を押さえなくては応用はできません。あと弾は12発あります。打ち切る前に基本姿勢を覚えなさい!」

「わーったよ……ったく」

 

しぶしぶとピースキーパーを両手で構える。

もう一度、的を狙う。

 

教えられた通り、息を吐いて、トリガーを引く。

 

星型の弾痕が、建てられた的に刻まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァイ、リック。精が出るわね」

 

射撃場から出てすぐ。

57にタオルを投げられた。

 

……思っていたより緊張していたらしい。

額から汗が流れていた。

 

「……さんきゅ、57」

「57も訓練ですか?」

「違うわ、ジェリコ。様子を見に来ただけよ」

 

ばちっ、とウィンクされた。

 

「ま、元気みたいね」

「それなりに……部屋から出る時に監視されるのは正直うんざりだけど」

「貴方の責任なんですから。甘んじて受け止めなさい」

「へいへい……気がちっとも休まらねぇぜ……」

「あはは……じゃあ差し入れあげる」

 

57がポケットから縦長の箱を取り出した。

 

「ん?ああ、懐かしいポッ〇ーか」

「伏せるなら言わなくていいのに」

「なんか、言っとかないといけない気がして」

 

棒状のクッキーにチョコレートがコーティングしてある菓子。

見るのは孤児院に居た頃以来だ。

 

……正規軍の時にそう言えばマイクとアリサが食ってたな。

 

「……リック?どうしたの?」

「いや、大丈夫だ……」

「なら、良いけど」

「まぁ、ちょっと昔をな……悪いけど、一人にさせてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――自室。

 

結局、一人になれるって言ったらここに居るしかいない。

自室のベッドに腰かけて、菓子の封を開いた。

一本引き抜く。

 

「……甘ぇ」

 

ジャンクな感じがする。

 

……部屋のドアに、控えめにノックがされた。

 

「……ん?」

『パトリックさん、今……大丈夫でしょうか』

「ステアか……今は、やめてくれ」

『……何かあったんですか?』

「何でもない……!」

「嘘ですよ」

「勝手に入ってくんなよ!」

 

普通にドア開けて入ってきやがった。

まぁ鍵かけてなかったからな。

 

ステアが俺に詰め寄ってくる。

 

「パトリックさん、思い詰めてるなら……話してください」

「思い詰めてるって言うか……まぁ、これだよ」

「……お菓子、ですか」

「ああ……ちょっと、昔思い出して……って、何でお前にそんな事話してるんだろ。食うか?」

「え、あー……それじゃあ、頂きます」

 

……ステアが来てくれて、良かったのかもしれない。

少しだけ、気が晴れたのかも。

 

 




何だかんだ、人形達に絆されている。
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