水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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パトリック君に新装備フラグです。


第30話『桃色スペシャリスト』

謹慎が解けたある日。

 

「体動かせるって最高だな……」

 

さっきまで振り回していたトムボーイとピースキーパーを壁に立てかける。

首に巻かれたタオルで汗を拭った。

 

何となく取り回しの確認を行っていたらいつの間にか夢中になっていたらしい。

 

格好はタンクトップにジャージ。

義肢の調子も良好だ。

 

「……あら、自主トレ?精が出るわね」

 

ふと、背後から声をかけられた。

この声は、確か。 

 

「ネゲヴか」

「こんにちは、リック」

 

桃色の髪をした、白を基調とする服に身を包んだ人形。

何となくジェリコの服に似ている気がする。

 

この基地唯一のマシンガンを担当する戦術人形だ。

 

「どうした、こっちにジェリコは居ないぞ」

「四六時中ジェリコに用があるわけじゃないわよ」

「そうか」

「むっ、何よその態度」

「え」

 

ネゲヴの事を表すなら……気分屋と言う言葉が当てはまる。

さっきまでニコニコしていたと思ったら急に激昂することもある。

 

基本的には良いやつなんだけど。

 

「用があるのはアンタよ、甘ちゃん」

「誰が甘ちゃんだコラ」

「アンタ以外誰が居るっての」

「あんだと?」

「あら、やる気?良いわよ、今日こそその生意気な根性叩き直してやるわ」

「やれるもんならやってみろよ桃色!」

 

まぁ、なんと言うか……売り言葉に買い言葉。

喧嘩なんてしょっちゅうである。

 

本人的にはジェリコが俺に指導しているのが気に入らないらしい。

 

一触即発。

拳がどちらかから出る瞬間。

 

「ネゲヴさん!喧嘩してる場合じゃないですよ!!」

「イテッ!?」

 

ドローンが飛んできて、頭に激突した。

こいつは、楓月……。

 

「TAC-50!」

「こんにちは、パトリックさん。指揮官が呼んでましたよ」

「……リリスが?分かった」

 

ふと、ネゲヴを見るとバツが悪そうな顔をしていた。

 

「……ごめん、パトリック。ちょっと気が立ってたみたい」

「そうか……まぁ、その、何だ。そういう時もあるさ。ほら、やるよポッキー」

「え、ありが……って!これ食べかけじゃない!!」

 

さて、執務室に行くか……。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

執務室にて。

本日の副官はFALらしい。

 

「指揮官。パトリックが来ました」

「りっく……!こほん、パトリック。仕事です」

 

リリスが一瞬だけぱあっと笑顔になった気がしたけどすぐに表情を引き締めた。

隣に立つFALも少し呆れていた。

 

「久しぶりの仕事か……腕が鳴る」

「今回は強奪された物資の奪還になります」

「物資の奪還?って事は追撃戦か」

「ええ。IOPが開発していた装備が奪われたのでその奪還依頼がこちらに回ってきました」

「へぇ……ちなみに何作ったんだ?」

「近接戦装備、とだけ」

「ショットガンかな。オーケイ、メンバーは?」

 

戦術人形メーカーが作る接近戦用装備なんて恐らく外骨格とかショットガンとかになるだろうな。

まさかトムボーイみたいな剣作るわけ無いだろうし。

 

「メンバーは機動力を重視してSMGとARを随伴させます」

「三人……少数精鋭って事か」

 

この基地にSMGは一人しかいない。

G36Cが来ることになるだろう。

 

AR枠は……。

 

「FALか?」

「いいえ、G36です」

「……マジ?」

 

大丈夫かな……俺。

背中から撃たれたりしない?これ。

 

 




MG、ネゲヴ登場。
何となくパトリックとは喧嘩友達みたいな関係です。

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