水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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パトリックの居る、隣の基地の話。


幕間 S-14地区基地

 

とある基地。

廊下や室内には未だ乾いたオイルや血がこびり付いている。

 

「……ん?」

 

そんな中、白い髪の女が目を覚ます。

 

「そうか、私は……破壊されたんだな?」

 

女……鉄血の、アルケミストは立ち上がる。

たった今、データのダウンロードが完了しバックアップから再生されたのだ。

 

「不思議な人間だったな」

 

機械の手足を持ち、アルケミストと対等に渡り合った男。

名前は、なんと言っていただろうか。

 

「次は、負けんぞ……」

「アルケミスト、いるか?」

「ん?」

 

ひょこ、と開けっ放しのドアから、黒い頭が出てきた。

……引き締まった美麗な肉体をしているが、右腕だけ無骨で巨大な籠手状のユニットになっている。

 

「エクスキューショナーか」

「おお、居た居た。殺られたって聞いたから様子見に来た」

「代理人からか」

「ついでだけどな。俺もちょっとこいつ試し振りしたくて」

 

エクスキューショナーと呼ばれた人形が手にしていた獲物。

鞘に収められた一振りの細身の剣だ。

 

「意外だな。もう少しデカい武器の方が好みだと思ってた」

「こいつなー。ハンターがくれたんだけどさ、軽いんだ」

 

エクスキューショナーが鞘から剣を抜く。

……片刃の、反りのある剣。

たしか、カタナと言うものだったか。

 

「ほう……表面に特殊なコーティングがされているな。刃の切れ味はそのまま刀身の強度が上げられている」

 

血のように赤い刀身が不気味さを醸し出す。

 

「それをどこで?」

「ハンターが奪った物資の中に入ってたんだってさ」

「何故IOPがそんな物を……」

「さぁな。案外剣で戦う奴がいるのかも」

「まさか………………………いや?」

 

アルケミストがにやりと微笑む。

 

「居たな。S-13地区とやらに」

「……!へぇ?このご時世に?面白そうだな」

「私と対等にやり合った奴だ。満足出来るだろう」

「そいつ、名前は?」

「さぁ」

「さぁってオイオイ……」

「そんな奴、見れば分かるだろう」

「……確かに」

 

そこで納得するのか。

エクスキューショナーが思い出したように口を開く。

 

「そういや人形が二体逃げ出したんだった」

「逃げられたのか」

「面倒な事にな。さっさと壊しときゃ良かったのによ」

「そう言うな。グリフィンの人形どもは反応が面白いからな……特に、あの義足の」

「アイツか?いっつもビクビクしてた」

「それをハンターは追ってるんだな?」

「ああ。俺も加わるつもりだ」

 

エクスキューショナーとハンターが揃えば満身創痍の人形二体程度直ぐにスクラップになるだろう。

 

ただし、

 

「グリフィンには注意しろ。奴らはまだ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「わーってるよ」

「なら良い。行ってこい。私はまだ調整がある」

「あいよ」

 

エクスキューショナーは出て行った。

 

「ふむ……あの男、出てくれば面白いが」

 

 

 




以前、残党と称してほぼ無傷な鉄血が襲ってきた理由。

すでに、ここは陥落していたから。

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