とある基地。
廊下や室内には未だ乾いたオイルや血がこびり付いている。
「……ん?」
そんな中、白い髪の女が目を覚ます。
「そうか、私は……破壊されたんだな?」
女……鉄血の、アルケミストは立ち上がる。
たった今、データのダウンロードが完了しバックアップから再生されたのだ。
「不思議な人間だったな」
機械の手足を持ち、アルケミストと対等に渡り合った男。
名前は、なんと言っていただろうか。
「次は、負けんぞ……」
「アルケミスト、いるか?」
「ん?」
ひょこ、と開けっ放しのドアから、黒い頭が出てきた。
……引き締まった美麗な肉体をしているが、右腕だけ無骨で巨大な籠手状のユニットになっている。
「エクスキューショナーか」
「おお、居た居た。殺られたって聞いたから様子見に来た」
「代理人からか」
「ついでだけどな。俺もちょっとこいつ試し振りしたくて」
エクスキューショナーと呼ばれた人形が手にしていた獲物。
鞘に収められた一振りの細身の剣だ。
「意外だな。もう少しデカい武器の方が好みだと思ってた」
「こいつなー。ハンターがくれたんだけどさ、軽いんだ」
エクスキューショナーが鞘から剣を抜く。
……片刃の、反りのある剣。
たしか、カタナと言うものだったか。
「ほう……表面に特殊なコーティングがされているな。刃の切れ味はそのまま刀身の強度が上げられている」
血のように赤い刀身が不気味さを醸し出す。
「それをどこで?」
「ハンターが奪った物資の中に入ってたんだってさ」
「何故IOPがそんな物を……」
「さぁな。案外剣で戦う奴がいるのかも」
「まさか………………………いや?」
アルケミストがにやりと微笑む。
「居たな。S-13地区とやらに」
「……!へぇ?このご時世に?面白そうだな」
「私と対等にやり合った奴だ。満足出来るだろう」
「そいつ、名前は?」
「さぁ」
「さぁってオイオイ……」
「そんな奴、見れば分かるだろう」
「……確かに」
そこで納得するのか。
エクスキューショナーが思い出したように口を開く。
「そういや人形が二体逃げ出したんだった」
「逃げられたのか」
「面倒な事にな。さっさと壊しときゃ良かったのによ」
「そう言うな。グリフィンの人形どもは反応が面白いからな……特に、あの義足の」
「アイツか?いっつもビクビクしてた」
「それをハンターは追ってるんだな?」
「ああ。俺も加わるつもりだ」
エクスキューショナーとハンターが揃えば満身創痍の人形二体程度直ぐにスクラップになるだろう。
ただし、
「グリフィンには注意しろ。奴らはまだ
「わーってるよ」
「なら良い。行ってこい。私はまだ調整がある」
「あいよ」
エクスキューショナーは出て行った。
「ふむ……あの男、出てくれば面白いが」
以前、残党と称してほぼ無傷な鉄血が襲ってきた理由。
すでに、ここは陥落していたから。