水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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人形の部隊に放り込まれて戦ってきた。

部隊は家族。
部隊の人形達は家族として接してくれた。

……なら、部隊以外の人形たちは?


第33話『対決、処刑人』

追われていた人形と、赤い剣を持つ人形の間に割り込む。

 

「だ、誰……!?」

 

追われていた方からそんな声が投げられた。

そりゃそうか。

 

でも、俺の投げる言葉は本心だ。

 

「助けに来た!」

「いってぇー……いい一撃じゃねぇか」

 

ふっ飛ばした剣持ちが立ち上がって戻ってくる。

手応えが硬かったから、沈められたとは思っていなかったが……。

 

ほぼ無傷。

 

「硬いなネェちゃん……あん?なんだその剣、サムライソードか?初めて見たぞ」

「お前の剣も大概だっての!……ん?剣士の男?そうか!お前がアルケミスト殺ったやつか!」

 

お互いに得物を油断なく向けて相対する。

 

「アルケミスト?仲間かお前」

「……ホントに知らねぇのかの。俺は鉄血のエクスキューショナーだ」

「処刑人とは大層な名前しやがって。背中のデカい剣は飾りかよ」

「今日はこいつの試し切りさ。しっかしこいつ軽いのは良いんだがよ……全然キレねぇな」

 

サムライソードと言えば切れ味は良いってイメージだが……そうでもないのだろうか。

俺のトムボーイみたいなブースターが付いている訳でもない。

 

「まぁ、イイぜ。お前強いんだろ?グリフィンのクズ共はどいつもこいつも撃ってくるばっかで飽きてきたんだ」

 

右腕だけが明らかに強化されている。

おそらく背の大剣を扱う為に施された様だが……明らかにあのサムライソードに合っているとは言えない。

 

巨大な腕と細い剣のちぐはぐさ……恐らく、勝機はそこだ。

幸いにも奴はグリフィンを舐めている。

油断しているうちに仕留めたい。

 

なら、する事はひとつ。

 

グリップを捻る。

トムボーイのイクシード機構が作動する。

 

「二人共、隠れてろ」

「救援を要請しました……無茶しないで下さい」

 

黒髪のちっこいのがそう告げると、もう一人の手を引き姿を消す。

 

「アイツら殺せって話でシケた戦闘かと思ってたがよ……楽しませてくれよ?ヒーロー気取り」

「ヒーローだ?止せよネェちゃん。反吐が出る」

「あぁ?何トチ狂って人形なんて助けるんだっての」

「さぁな。気付いたら体動いてたんだわ」

「ンだそれ」

「こっちが知りたいね」

 

エクスキューショナーがサムライソードを構えた。

 

……来る!

 

「そうか、よッ!!」

 

対人形戦における基本として、相手は人間と同じ動きをし、その全てを上回るパワーを持っている。

 

生身の人間が人形と格闘戦を行うのは自殺行為。

 

()()()()()()()

 

幸いにも、俺は生身じゃないので……。

 

「ハァッ!!」

「おっと……二度は同じ手は食わないぜ!」

 

袈裟斬りを仕掛けるエクスキューショナーの剣が届く前に横薙ぎでふっ飛ばそうとするが、ワンパターン過ぎたのか直前で止まられ空振る。

 

イクシードを解放し、その体勢のまま前進。

肩からエクスキューショナーにぶつかる。

 

「ごっ……!?」

「せぇりゃっ!!!」

 

すかさず追撃の為にトムボーイを振る。

エクスキューショナーの腹に剣がめり込む……が、歯が立たない。

 

堅い。

 

「ごぁ!?」

 

エクスキューショナーが吹っ飛ぶ。

背後の樹木をへし折って止まる。

 

そこへ追撃の為に走ろうとして……。

 

()()()()()()()()

 

「うおおおぉぉぉ!?」

 

慌ててスライディングしてその下をくぐり抜ける。

 

「躱したか!」

「何飛ばしてんだてめぇ!!」

「飛ばせねぇのが悪いッ!」

 

エクスキューショナーが飛び掛かってくる。

軽い剣だし義手で弾いてカウンターを狙えば……。

 

……そう思案し腕を構えて、

 

「ッ!駄目です!!」

「!?」

 

さっきの黒髪の人形が叫んで、慌てて腕を……。

 

「ッシャア!!」

「ぐっ……!?えっ……!?」

 

既のところで引っ込める。

が、袖を持っていかれ……。

 

「ウッソだろオイ……」

 

斬られた袖と同じ向きに、義手に亀裂が走っていた。

 

軽くだが、装甲を斬り裂かれている。

 

「……こりゃ、骨が折れそうだ」

 

 




堅い義手を容易く斬り裂く刃。
一筋縄で行かない様だ。

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