この戦闘が終わるまで保てば良いが。
剣戟の音がひたすら響き渡る。
「このっ……!」
「せぇりゃっ!!」
段々と、エクスキューショナーを追い詰める。
あの一撃はまぐれだった様で、そこからはてんでなってない一撃ばかり。
必然的に慣れているこちらに形勢が傾きつつあった。
元よりあんな細い剣でトムボーイの馬力を防げる訳でもなく。
「あぁックソッ!性に合わねぇ!!」
「オラァッ!!」
しかし、あれだけ細いのに俺の攻撃で曲がりもしないし折れもしない。
無茶苦茶頑丈だ。
良いなアレ……俺もサムライソード憧れてたんだよね。
「喰らえッ!」
「うおぉう!?」
まただ。
エクスキューショナーが鎌鼬の様な何かを飛ばしてくる。
扱いに慣れてないくせにそんなもん出せるのどうかと思うぞ。
「チッ、まだ精度が悪いな!」
「上げられて堪るか!!」
今は、押せ。
まだ慣れてない内に圧倒せよ。
イクシードを吹かしエクスキューショナーにひとつ、ふたつと傷を増やしていく。
堅い、が確実に削れている自信、実感。
斬りつける度に感じる、高揚。
一手間違えれば俺が刈り取られるスリル。
これだ。
俺が望んでいたもの。
「ヒッ、はっ……!」
口が無意識に歪む。
喉からおかしな音が漏れる。
「テメェ何笑ってやがる!!」
「楽しいのさ!今、この瞬間がな!!」
楽しい。
楽しい、楽しい楽しい楽しい!!
全力で命の削り合いをする、一分一秒が!
「なら、もっと楽しませてやらァ!!」
エクスキューショナーがサムライソードを投げ付けてきた。
それを避ける。
すると、背中の大剣を抜き放つ。
「オラァ!」
「おっ、シャァ!!」
振られる剣をトムボーイで弾く。
弾かれた剣が戻ってくる。
それを払う。
また振りかぶられる。
もう一度ぶつける。
繰り返し。
繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返す。
「は、ははっ」
「へ、へはっ……!ひはははは!!!」
お互いに、笑っている。
「ネェちゃんも笑ってんじゃねぇか!!」
「しゃーねぇだろうが!楽しいのさ!俺も!!」
「気が合うな!」
「全くだ!だから」
一瞬だけお互いの距離が離れる。
その溝を、お互いが最大の攻撃で埋める。
「「死ねェ!!!!」」
イクシードが最大効率で燃焼する。
狙うは上段、これで首を撥ねる。
また、スローモーションの様に体感する時間が遅くなる。
俺の剣が、先に、ヤツの体に、
「が、ぁぁぁぁぁぁ!?!!?」
――――――――獲った!!
エクスキューショナーの右肩から先を斬り飛ばす。
奴が後ろに向けて飛ぶ。
仕留めるなら、今しかない。
右手で剣を振り抜いた。
左手にピースキーパーを持つ。
「チェックメイト……!!」
トリガーを、引く。
その前に、俺の左の二の腕から先が、宙に舞った。
「遊び過ぎだぞ、エクスキューショナー」
チン、と金属音が鳴り、サムライソードを鞘に戻す女。
全ての時間が元に戻る。
「ぐがぁっ……!?」
義肢のダメージが擬似痛覚を通して脳に響く。
「ほう、その腕神経が通してあるのか。また無駄な機能を」
白髪を短く切りそろえたモデル顔負けのスタイルの女。
「ハンターか!助かった!」
エクスキューショナーがそいつをハンターと呼ぶ。
まさか、ここに来て増援!?
ハンターが興味なさそうに剣を捨てた。
「フン、やはり前時代の遺物か……こんな物常用する気にはならん」
最悪だ。
俺とエクスキューショナーは両方片手を無くしたイーブン。
俺の方は利き手は無事。
しかしここでハイエンドが一体増えるなら話は別。
そしてヤツの得物は腰にマウントされたハンドガンらしきもの。
レンジの差で圧される。
万事休すか……!
「今です!スコーチさん!!」
そこで、すっかり存在を忘れていたちっこいのが叫んだ。
……あん?スコーチ?
「俺を呼んだかッ!一○○式ッ!!!!」
空から、サムライソードを振り被ったガスマスクのオッサンが降ってきた。
はぁ!?
形勢逆て……え、コイツ味方!?