水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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左腕に軽微……しかし、無視のできないダメージ。

この戦闘が終わるまで保てば良いが。


第34話『乱入者』

剣戟の音がひたすら響き渡る。

 

「このっ……!」

「せぇりゃっ!!」

 

段々と、エクスキューショナーを追い詰める。

あの一撃はまぐれだった様で、そこからはてんでなってない一撃ばかり。

 

必然的に慣れているこちらに形勢が傾きつつあった。

 

元よりあんな細い剣でトムボーイの馬力を防げる訳でもなく。

 

「あぁックソッ!性に合わねぇ!!」

「オラァッ!!」

 

しかし、あれだけ細いのに俺の攻撃で曲がりもしないし折れもしない。

無茶苦茶頑丈だ。

 

良いなアレ……俺もサムライソード憧れてたんだよね。

 

「喰らえッ!」

「うおぉう!?」

 

まただ。

エクスキューショナーが鎌鼬の様な何かを飛ばしてくる。

 

扱いに慣れてないくせにそんなもん出せるのどうかと思うぞ。

 

「チッ、まだ精度が悪いな!」

「上げられて堪るか!!」

 

今は、押せ。

まだ慣れてない内に圧倒せよ。

 

イクシードを吹かしエクスキューショナーにひとつ、ふたつと傷を増やしていく。

 

堅い、が確実に削れている自信、実感。

 

斬りつける度に感じる、高揚。

 

一手間違えれば俺が刈り取られるスリル。

 

これだ。

俺が望んでいたもの。

 

「ヒッ、はっ……!」

 

口が無意識に歪む。

喉からおかしな音が漏れる。

 

「テメェ何笑ってやがる!!」

「楽しいのさ!今、この瞬間がな!!」

 

楽しい。

楽しい、楽しい楽しい楽しい!!

 

全力で命の削り合いをする、一分一秒が!

 

「なら、もっと楽しませてやらァ!!」

 

エクスキューショナーがサムライソードを投げ付けてきた。

それを避ける。

 

すると、背中の大剣を抜き放つ。

 

「オラァ!」

「おっ、シャァ!!」

 

振られる剣をトムボーイで弾く。

弾かれた剣が戻ってくる。

 

それを払う。

また振りかぶられる。

 

もう一度ぶつける。

 

繰り返し。

繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返す。

 

「は、ははっ」

「へ、へはっ……!ひはははは!!!」

 

お互いに、笑っている。

 

「ネェちゃんも笑ってんじゃねぇか!!」

「しゃーねぇだろうが!楽しいのさ!俺も!!」

「気が合うな!」

「全くだ!だから」

 

一瞬だけお互いの距離が離れる。

 

その溝を、お互いが最大の攻撃で埋める。

 

「「死ねェ!!!!」」

 

イクシードが最大効率で燃焼する。

狙うは上段、これで首を撥ねる。

 

また、スローモーションの様に体感する時間が遅くなる。

 

俺の剣が、先に、ヤツの体に、

 

「が、ぁぁぁぁぁぁ!?!!?」

 

 

 

――――――――獲った!!

 

 

 

エクスキューショナーの右肩から先を斬り飛ばす。

奴が後ろに向けて飛ぶ。

 

仕留めるなら、今しかない。

 

右手で剣を振り抜いた。

 

左手にピースキーパーを持つ。

 

「チェックメイト……!!」

 

トリガーを、引く。

 

 

 

 

 

 

 

その前に、俺の左の二の腕から先が、宙に舞った。

 

 

 

 

 

「遊び過ぎだぞ、エクスキューショナー」

 

チン、と金属音が鳴り、サムライソードを鞘に戻す女。

 

全ての時間が元に戻る。

 

「ぐがぁっ……!?」

 

義肢のダメージが擬似痛覚を通して脳に響く。

 

「ほう、その腕神経が通してあるのか。また無駄な機能を」

 

白髪を短く切りそろえたモデル顔負けのスタイルの女。

 

「ハンターか!助かった!」

 

エクスキューショナーがそいつをハンターと呼ぶ。

まさか、ここに来て増援!?

 

ハンターが興味なさそうに剣を捨てた。

 

「フン、やはり前時代の遺物か……こんな物常用する気にはならん」

 

最悪だ。

俺とエクスキューショナーは両方片手を無くしたイーブン。

俺の方は利き手は無事。

 

しかしここでハイエンドが一体増えるなら話は別。

 

そしてヤツの得物は腰にマウントされたハンドガンらしきもの。

レンジの差で圧される。

 

万事休すか……!

 

「今です!スコーチさん!!」

 

そこで、すっかり存在を忘れていたちっこいのが叫んだ。

 

……あん?スコーチ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を呼んだかッ!一○○式ッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

空から、サムライソードを振り被ったガスマスクのオッサンが降ってきた。

 

 

 

 

 

はぁ!?

 

 

 




形勢逆て……え、コイツ味方!?

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