その体には痛々しい傷跡が残る。
スコーチと100式コンビと別れて。
俺たちは、目の前で怯える小動物の様な人形と向き合っていた。
服もだいぶズタボロで、こんな時に申し訳ないがたわわな装甲が零れ落ちそうで直視し辛かった。
「………………」
「貴女の所属を教えて頂けますか」
「………………」
人形は喋らない。
酷く怯えているようだ。
「なぁ、アンタ……」
俺が声を掛けるとびくっ、と肩が震えてボロボロと涙を流した。
……よく見ると、両足とも明らかに人工皮膚の無いロボット然とした義足がくっつけられていた。
「駄目ですよ、お姉さん、リックさん。お二人は顔が怖いのですからそんなキツく言っちゃ恐がってしまいますわ」
「「うっ……」」
顔が怖いってちょっと気にしてんのに。
G36も心当たりがあるのかちょっと凹んでいる。
「こんにちは。私はS-13地区所属のG36cと申しますわ。貴女の所属とお名前、聞かせてくれませんか?」
G36cが武器を置き、彼女の目の前に屈んで目線を合わせる。
去り際に100式がなにか言っていたとはいえ……やはり怯えたまま。
「わ、たし、は……88式で、す。所属は……S-14」
「S-14……この先じゃないか」
思わず呟く。
この前前線からこっちの市街地近くまで鉄血の集団を素通りさせた元凶。
「どうして、S-14管理地区の近くで鉄血に?」
「それ、は……」
88式が、俯く。
全員が彼女の言葉を待っていた。
「S-14は壊滅……鉄血に、占拠されました」
俺達は、顔を見合わせた。
これは……思っていたよりも、重い事態だ。
「一度、戻りましょう。ご主人様に報告を」
「そうですね……歩けますか、88式さん」
「すみません……脚の系統をやられたみたいで」
参ったな、歩けないのか。
G36cが、俺を見てにっこり微笑む。
「じゃあリックさんが担いでくださるかしら」
「俺左腕無いんだけど!?」
「背負えば大丈夫ですわ」
「……もしかして、怒ってる?」
恐る恐る尋ねてみる。
……G36cは笑ったまま答えた。
「ええ、とても」
笑顔って怖いなぁ、そう思った瞬間だった。
「指揮官さんの言いつけも聞かずに単騎で突出、挙げ句戦闘に介入、そして左手まで無くして……本当に正規軍の兵士だったんですの?」
「それは……その、居ても立ってもいられなかったと言うか」
「言い訳しない」
「はい……」
「私も、お姉さんも心配したんですよ」
「G36c。私は心配などしていません」
「まぁまぁ。兎に角、そういう事ですので!」
88式の方を見る。
見られたと判って、ちょっと肩が跳ねる。
……めちゃ怖がってるけど。
気は進まないなぁ。
俺は、切り傷だらけのズボンを千切った。
「……えっ?」
88式が思わず声を漏らした。
「……どうして」
「小さい頃に……何だ、手足失くしてな。それから、こんなんだ」
「そう、なんですか……貴方は、人間なのに、こんな」
「慣れたよ、もう」
88式が俺の黒い義足に触れる。
……同情買ったみたいで反吐が出る。
けど、落ち着いてもらうにはこれしか無かった。
つくづく不器用な自分が嫌になる。
「背負うぞ」
「は、はい……よろしくお願いします」
無い左腕を無理やり膝裏に通して固定した。
…………………背中、背中がぁっ!!
なんか、すごい!やわいのが当たってる!!
「さぁ、帰りましょう」
G36cがそう切り出す。
……G36が俺のピースキーパーとトムボーイを担いでいる。
ちょっと申し訳ない。
さっきのサムライソードは俺の腰にマウントされている。
やっぱりカタナって言ったら腰だよなぁ。
「あの……」
そんな事考えてたら、耳元で囁かれた。
くすぐったい。
「な、何だよ」
「まだ、お礼言えてなくて……すみません。男の人はちょっと苦手で」
「……悪いな、野郎で」
「そ、そんな事……その、ありがとう、ございました……カッコよかったです」
「かっ……!?よ、止せやい……結局負けたし」
「それでも、です」
……基地に帰るまで、俺の顔は髪の色に負けないくらい赤かったらしい。
S-14地区は既に鉄血の手中にあった。
88式を保護。
これから、どう動いていくのか。