パトリックがMIAになってから、半年が経とうとしていた。
捜索も早々に打ち切られてしまったが……私は、未だに空いた時間を使ってた探し続けていた。
「パトリック……」
あの憎まれ口が聞こえなくなって久しく、どうしても……寂しい。
彼は嫌がるフリをしていたけれど……家族として、私達を……部隊を大事に思っていた。
何だかんだ、彼は私達を気にしてくれていた。
私が未だに失敗作として謗られていても彼はそれに怒ってくれていた。
だから……捜索が打ち切られた時。
彼を上層部が失敗作だと言い放った時。
私は、激昂した。
その時の私は……形容できないほど暴れてしまった。
謹慎と少しの記憶処置を処罰として受けた。
「AN-94。その、あんま……気を落とすなよ。こういう事だってある」
部隊の自律人形の一体が、私を気遣う様に声をかけてきた。
「ありがとう。大丈夫よ」
「アイツは俺達の事大切に思ってくれていた。惜しい奴を亡くしたよ」
「オイV2!縁起でもないこと言うなよ!」
「あー、すまねぇ……アイツは生きてるよ!ぜってー帰ってくるって!」
同僚達が、騒ぐいつもの光景。
でも、彼は居ない。
「ごめん……ちょっと。一人にさせて」
―――――――――――
私はいつも、陰口を叩かれ、それを聞いてしまったとき……決まって屋上に来ていた。
ふさぎ込んで自暴自棄になる時もある。
『おう、暇そうだなAN-94』
『ほら、飲むか?俺珈琲飲めねぇから代わりに飲んでくれね?自販機が壊れてよ?』
『あ?ちげーよ殴ってねーよ!ボタン押しても反応しねーから蹴っただけだっての!』
「AN-94、AN-94!」
「……AK-12?」
感傷に浸っていると、よく聞く声が私を呼んだ。
「何をしているの。次の任務よ」
「ねぇ、AK-12……貴女は……パトリックが心配じゃないの……」
「……私は、彼が死んだとは思ってないわよ」
「え……」
パトリックは、死んでいない?
なぜそう思えるのだろうか。
「少し前から、PMCのとある前線で剣士が活躍しているのが確認されているそうよ」
「剣士……!?それって!」
「鉄血なんてものと抗争してるのはグリフィンくらいよ」
「グリフィンの最前線に、パトリックは居る……」
なら迎えに行かないと。
だって、私は……家族なんだから。
「何だかんだ義理人情に厚い子だからね。それにグリフィンの人形は見てくれも良いし……スケベな彼には天職かもね」
「AK-12、」
「駄目よ」
「どうして!」
「上が少し、不穏な動きをしている……今は、従っておくべきよ」
上が?
どうして……。
「AN-94、大丈夫よ。パトリックは、必ず帰ってくる。貴女が信じなくて誰が信じるの」
「そう、ね……ありがとうAK-12……行きましょう」
生きてくれている。
なら、今はそれで充分だ。
(必ず、迎えに行くから)
そう誓って。
遠く離れた彼を想う。
どれだけ口論しても、家族なのだ。