水没から始まる前線生活   作:塊ロック

44 / 102
あれから暫くして。


第40話『ジェットストリーム』

俺は動くようになった左手を握ったり開いたりを繰り返す。

 

「……よし!」

「無事に動くようになったみたいね」

 

ペルシカさんが珈琲を置いてくれた。

……飲めないんだけど無碍には出来ないので気合で飲んだ。

 

美人が出してくれた物だからな。

 

「さて、これで修理は完璧ね。良いデータも貰えたし」

「ありがとうございました。おかげで何とかなりそうです」

 

側転、バク宙。

体に異常が無いか調べる為に動き回る。

 

調子は悪くない。

 

「問題無いみたいね」

「すごいな、民間も。ちょっとずつ正規軍(ウチ)に追いついてる」

「いつまでも後塵を拝してる訳じゃないのよ、民間(わたしたち)も」

 

ペルシカが部屋から出ていく。

 

「それじゃあ……ついでにそのジェットストリームのテストもしてもらおうかしら」

 

俺の左腕に握られている技工抜刀剣。

以前鉄血達から唯一奪還した資材だ。

 

ペルシカはどうにもこいつのテストを俺にさせたいらしい。

 

報酬も出してくれるそうなので受けない理由はない。

 

そして何より。

 

(いやった……!遂に俺もカタナが触れる……!昔コミックで読んでからずっと使ってみたかったんだよなぁ……)

 

俺の鋼鉄の義手を斬り裂く切れ味を持つ名刀。

やっぱり新しい武器って言うのはテンションアガるなぁ。

 

『聞こえる?パトリック。まずは、ジェットストリームの安全装置を解除して』

 

言われた通り、鞘に付いた安全装置を外す。

鞘を握り、人差し指を()()()()()()()()

 

右手でジェットストリームの柄を握る。

 

「スゥゥゥ……」

 

深呼吸をする。

これから刃物を扱う。

心を落ち着けて、冷静に。

 

浮ついた気持ちで剣を握ってはいけない。

大怪我をしてしまう。

 

腰を落とし、右足を前に出す。

以前見たサムライ、スコーチの見様見真似だ。

 

呼吸を整える。

 

 

 

そして、トリガーを引いた。

 

 

 

 

ズバァン!!!!!

 

 

 

 

自分でも驚くスピードで、カタナは振り抜かれていたり。

 

「早っ……!?」

 

鞘に内蔵された炸薬によって加速を得た神速の抜刀術。

 

……ただ、これ生身で使ったら腕ごと飛んでいくぞ。

 

「……これが、カタナか」

 

右腕で持っている赤い剣を眺める。

惚れ惚れする様な波模様。

 

トムボーイとはまた違う、繊細で、軽い。

細く、薄い刀身。

 

上段に片手で振り上げ、落とす。

 

(……軌跡がブレる!)

 

真っ直ぐ落としたつもりなのに、剣が震える。

真っ直ぐ振り抜くのが難しい。

 

トムボーイの様に振ると剣がガタつく。

 

(これは、難しい!)

 

何もかもがトムボーイと違う。

力任せに振る武器ではない。

 

……しかし、俺はそれから一時間、汗だくになるまで夢中で振っていたのだった。

 

 

 




鬼滅の刃、面白いですね(待て

ちゃんと修行パート書こうかなって気にさせてくれたので暫くはパトリックの習熟のお話になります。

……善逸すき……。
霹靂一閃カッコ良すぎだろ……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告