「よう、スコーチ。あの坊やに剣を教えてるんだって?」
ある日の事。
灰色の髪をスポーツ刈りで整えた青年が、ガスマスクをした男性に話しかけた。
「指揮官殿。ええ、誠に勝手ながら」
「いや良いって。やっと探してた恩人見付かったし、お前も好きな様に生きてくれりゃ良いんだって」
指揮官、と呼ばれたにしては軽いノリで青年は笑う。
スコーチと呼ばれた男もガスマスクの下で笑っている様だ。
「……で?才能は?」
「感じる物は有りました。あれなら型を一つ位修得出来そうです」
「お前の型を?そいつはすげぇな」
「ええ。本人は無自覚ですが呼吸方法を識っています。後は努力次第かと」
「S-13も安泰だな……って訳には行かねぇけど。スコーチ、14の様子はどうだった?」
笑っていた男性の目付きが鋭くなる。
スイッチの切り替え。
状況による意識の切替の上手い男だ。
「14区画は見事鉄血に占拠されていました」
「……だよなぁ。不自然な物資の消失に、この前の鉄血一個中隊。無関係とは思えねーもんよ」
青年の傍に白い小さな人形が駆け寄り、手にしていた資料を手渡した。
「ありがとうトカレフ。愛してるよ」
「ひぇっ……ひゃ、ひゃい……ジョージさん……」
「あー、指揮官殿?」
手を取って抱き寄せて、彼女の額に口付けを落として真っ赤にさせた後、青年は彼女の背を押した。
「報告書は読んだ。ハイエンドモデルが3体か……それぞれアルケミスト、ハンター、エクスキューショナーか。アニーが一番可愛いな」
「問題は彼奴らが纏まってそこにいる事かと」
「ふーむ……手を組まれたとなるなら厄介だな。確実にお嬢さんのとこは近い内に襲撃されるだろ」
「半年前に一度襲われています」
「勝手知ったる他人の家、応援に行った方がよさそうだな」
指揮官が手元にあるバインダーから紙を取り出す。
「ほい、今回はそっちの部隊も出てもらうぜ。対屋内戦なら十八番だろ?」
「ありがとうございます。必ずや我が剣にて奴らを」
「任せるぜ、スコーチ。坊や達にもよろしく」
「ジョージぃー、そろそろ休憩は終わりよ〜」
「オットもうそんな時間か。じゃ、頼んだ」
「御意」
スコーチは影に溶けるように消えた。
「……アイツサムライってかニンジャだろ」
「指揮官!あたい達に仕事任せてどこ行ってたのさー」
「悪い悪い40、アニーもありがとな。仕事するか」
「最近お気に入りみたいね、義手義足の彼」
「突然どうしたんだ?アニー」
「別にー?」
「……わかったわかった。今夜はお前の為に時間作るよ」
「あら、嬉しいわね。じゃあせいぜい私を幸せにする事ね」
「はいはいはい!惚気けてないで仕事してね二人共!」
久しぶりに登場な隣の基地の指揮官。
本編中でついに半年が経過しました。