水没から始まる前線生活   作:塊ロック

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視点は代わり、今日はお隣さんのお話。


幕間ーS-12ー

 

「よう、スコーチ。あの坊やに剣を教えてるんだって?」

 

ある日の事。

灰色の髪をスポーツ刈りで整えた青年が、ガスマスクをした男性に話しかけた。

 

「指揮官殿。ええ、誠に勝手ながら」

「いや良いって。やっと探してた恩人見付かったし、お前も好きな様に生きてくれりゃ良いんだって」

 

指揮官、と呼ばれたにしては軽いノリで青年は笑う。

スコーチと呼ばれた男もガスマスクの下で笑っている様だ。

 

「……で?才能は?」

「感じる物は有りました。あれなら型を一つ位修得出来そうです」

「お前の型を?そいつはすげぇな」

「ええ。本人は無自覚ですが呼吸方法を識っています。後は努力次第かと」

「S-13も安泰だな……って訳には行かねぇけど。スコーチ、14の様子はどうだった?」

 

笑っていた男性の目付きが鋭くなる。

スイッチの切り替え。

状況による意識の切替の上手い男だ。

 

「14区画は見事鉄血に占拠されていました」

「……だよなぁ。不自然な物資の消失に、この前の鉄血一個中隊。無関係とは思えねーもんよ」

 

青年の傍に白い小さな人形が駆け寄り、手にしていた資料を手渡した。

 

「ありがとうトカレフ。愛してるよ」

「ひぇっ……ひゃ、ひゃい……ジョージさん……」

「あー、指揮官殿?」

 

手を取って抱き寄せて、彼女の額に口付けを落として真っ赤にさせた後、青年は彼女の背を押した。

 

「報告書は読んだ。ハイエンドモデルが3体か……それぞれアルケミスト、ハンター、エクスキューショナーか。アニーが一番可愛いな」

「問題は彼奴らが纏まってそこにいる事かと」

「ふーむ……手を組まれたとなるなら厄介だな。確実にお嬢さんのとこは近い内に襲撃されるだろ」

「半年前に一度襲われています」

「勝手知ったる他人の家、応援に行った方がよさそうだな」

 

指揮官が手元にあるバインダーから紙を取り出す。

 

「ほい、今回はそっちの部隊も出てもらうぜ。対屋内戦なら十八番だろ?」

「ありがとうございます。必ずや我が剣にて奴らを」

「任せるぜ、スコーチ。坊や達にもよろしく」

「ジョージぃー、そろそろ休憩は終わりよ〜」

「オットもうそんな時間か。じゃ、頼んだ」

「御意」

 

スコーチは影に溶けるように消えた。

 

「……アイツサムライってかニンジャだろ」

「指揮官!あたい達に仕事任せてどこ行ってたのさー」

「悪い悪い40、アニーもありがとな。仕事するか」

「最近お気に入りみたいね、義手義足の彼」

「突然どうしたんだ?アニー」

「別にー?」

「……わかったわかった。今夜はお前の為に時間作るよ」

「あら、嬉しいわね。じゃあせいぜい私を幸せにする事ね」

「はいはいはい!惚気けてないで仕事してね二人共!」

 

 

 




久しぶりに登場な隣の基地の指揮官。
本編中でついに半年が経過しました。

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